ダンサナブルな曲が目立つ
Title:ディスコの卵
Musician:ゲスの極み乙女
途中、ベスト盤のリリースも挟みつつ、オリジナルアルバムとしては約4年ぶりとちょっと久々となったゲスの極み乙女のニューアルバム。例の川谷絵音の騒動から、かなりの月日も経たため、良くも悪くもゲスとしての注目度も落ち着いた感もありますが、川谷絵音のワーカホリックぶりは相変わらず。ゲス以外にもindigoやジェニーハイ、さらには他にもいくつかのバンドの掛け持ちを続けており、その精力的な活動ぶりが目を見張ります。
ただ、このワーカホリックぶりの中で驚くべきことは、楽曲としてのクオリティーが全く落ちていないという点。バンドなどを掛け持ちしてワーカホリックな活動を行うミュージシャンは他にもいますが、ほぼ例外なく、やはり作品が乱発気味となり、全体のクオリティーが落ちてしまいます。
しかし、今回の新作を聴く限りだと、川谷絵音の楽曲のクオリティーは落ちるどころか、むしろ脂に乗っている感すら今回のアルバムでは感じることが出来ます。全14曲長さ48分の今回のアルバムは、2~4分という比較的短めな曲が並ぶ作品になっているのですが、それだけに次から次へと展開されるバリエーションある作風がユニークな構成に仕上がっていました。
今回のアルバムで特に特徴的なのが、「ディスコの卵」というタイトル通り、リズミカルなダンスチューンが目立つ点でしょう。ちょっとメランコリックなディスコチューン「Funky Night」からスタートし、ミディアムテンポからスタートし、サビでハイテンポなディスコチューンへと展開する「ゴーストディスコ」、ファンキーなベースラインが入ってダンサナブルな「DJ卵」、女性ボーカルを入れてメランコリックに聴かせるダンスチューン「ドーパミン」などなど、全体的にはダンサナブルな曲が多く、アルバムの大きなインパクトとなっています。
他にもジャジーな要素を加えたダンスチューン「悪魔のおまけ」や、ラップを取り入れた「晩春」、indigo la Endを彷彿とさせるような哀愁感たっぷりのメロディーが印象的な「ハードモード」など、バラエティー富んだ音楽性は本作ももちろん健在。アルバムの中でちょっとユニークなのが「作業用ディスコ」「作業用ローファイ」なるナンバー。YouTubeなどで「作業用~」として、ながら聴きが出来るような音源が配信されていたりするのですが、おそらくそれに倣ったものでしょう。シンプルなインスト気味の、インターリュードを兼ねたような曲になっているのですが、比較的音を絞ったタイトなサウンドがなにげに耳を惹くような楽曲になっており、タイトルとは裏腹に、これらの曲にもしっかりと力が入っていることを感じさせます。
毎作、オリジナルアルバムでは傑作を聴かせてくれる彼らですが、本作も文句なしにそんな傑作に名前を連ねるようなアルバムに仕上がっていたと思います。むしろ、いままでのゲスのアルバムの中でも指折りの出来かもしれません。性格面はともかく、川谷絵音の才能にはあらためて、舌を巻かされます。ゲスの勢いはまだまだ止まりそうにありません。
評価:★★★★★
ゲスの極み乙女 過去の作品
踊れないなら、ゲスになってしまえよ
みんなノーマル
魅力がすごいよ
両成敗
達磨林檎
好きなら問わない
ストリーミング、CD、レコード
丸
Gesu Sped Up
ほかに聴いたアルバム
カネコアヤノ Billboard Live ワンマンショー 2023 - 12.15 Billboard Live OSAKA/カネコアヤノ
昨年12月15日にギタリストの林宏敏と2人のみで実施したBillboard Live OSAKAでのライブの模様を収録したライブアルバム。ギターのみをバックとしたシンプルなサウンドの中、力強く歌い上げるカネコアヤノの歌声が大きな魅力。シンプルだからこそ、彼女の歌の良さを引き出しているライブアルバムとなっています。
評価:★★★★★
カネコアヤノ 過去の作品
燦々
燦々 ひとりでに
よすが
タオルケットは穏やかな
カネコアヤノ 単独演奏会 2022 秋 - 9.26 関内ホール
タオルケットは穏やかな ひとりでに
よすが ひとりでに
The Crown/MY FIRST STORY
マイファスのニューアルバムは、今年1年かけて毎年リリースされた配信シングルをまとめて収録した企画盤的なアルバム。加えて、TikTokを機に大ヒットを記録した「I'm a mess」のリミックス版も収録されています。これでもかというほどダイナミックなアレンジに、これまた過剰なまでメランコリックなメロは、全体的に過剰感がありつつ、マイファスらしい曲が並ぶ印象。「I'm a mess」もヒットしたのだからオリジナルバージョンを入れればよかったのに、とも思ったのですが、同曲がカップリングとして収録されたCDシングル「告白」も未収録ですので、次のオリジナルアルバムに取ってあるということでしょうか。毎月リリースされたシングルを並べただけなので、ちょっと統一感は乏しいのですが、一方で、シングル曲ばかりなのでマイファスらしさは強く感じられるアルバムに仕上がっていました。
評価:★★★★
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