今回も水カンらしいポップアルバム
Title:POP DELIVERY
Musician:水曜日のカンパネラ
ボーカリストを詩羽に変わってから、ほぼ毎年、EP盤をリリースしている水曜日のカンパネラの、詩羽ボーカル後3枚目となるミニアルバム。すっかり詩羽は水曜日のカンパネラの「顔」となって久しいのですが、楽曲の勢いも全く止まっておらず、今回もインパクトのあるエレクトロポップを聴かせてくれています。
タイアップのついたアニメに合わせた、猫が運営するラーメン屋というユニークな曲「赤猫」からスタートし、「キャロライナ」のリズミカルながらもダークなラップが入ってくるスタイルも水カンらしい作品。トランシーなダンスチューンの「たまものまえ」は、歴史上の伝説上の人物をネタとしているのも彼女たちらしくユニーク。聖徳太子が10人が、一度に発した言葉を聴き分けたというエピソードに因んだ歌詞の「聖徳太子」はこちらも水カンおなじみの歴史ネタの軽快なポップに仕上げています。
「アルキメデス」はコムアイ時代の「シャクシャイン」や「バッキンガム」に通じるような軽快なラップの歌モノ。漫画によくありがちな強者キャラのグループである四天王をコミカルな歌詞で取り上げたトランシーな「四天王」など、最後まで水曜日のカンパネラらしい、歴史上の出来事などをユーモラスな視点で描いた歌詞に、軽快でリズミカルなエレクトロポップというスタイルで貫かれています。
基本的に楽曲はいつも通りの水曜日のカンパネラといった感じ。あえて言えば「マーメイド」にちょっとラテン風のリズムを取り入れている点とか、「幽霊と作家」ではストリングスやピアノを入れて爽やかにまとめている点とか、バラエティーを加えている点はあるのですが、ここらへんも完全に目新しいかと言われると微妙なところ。
ほぼ毎年リリースが続いていますし、正直言うと、大いなるマンネリと言われても、ちょっと否定できない部分もあります。ただ一方で、これだけ水曜日のカンパネラらしい楽曲が続いても、聴いていて飽きが来たのか、と言われると全くそういう訳ではありません。今回も8曲入りのミニアルバムという一気に聴き切れるようなボリュームという点も大きな要因なのですが、聴いていて最後まで耳の離せないようなワクワク感もあるポップチューンの並ぶアルバムになっています。
それはやはりそれだけ、ケンモチヒデフミの書くメロディーラインやサウンドが、ポップスとして強度が強いからでしょう。軽快でテンポのよいリズムは、リスナーの壺を正確についてきますし、それはポップなメロディーラインも同様。素直にリスナーの心を楽しませるような作風が非常に魅力的で、それが水曜日のカンパネラの大きな魅力となっています。
そんな訳で、本作もまた文句なしの傑作アルバムといえる作品。その勢いはまだまだ止まっていません。これからどんな作品が飛び出してくるのか、これからもまだまだ楽しみです。
評価:★★★★★
水曜日のカンパネラ 過去の作品
私を鬼ヶ島へ連れてって
ジパング
UMA
SUPERMAN
ガラパゴス
猫は抱くもの(オリジナル・サウンドトラック)
YAKUSHIMA TREASURE(水曜日のカンパネラ&オオルタイチ)
ネオン
RABBIT STAR★
ほかに聴いたアルバム
ぼくらの涙なら空に埋めよう/マカロニえんぴつ
マカロニえんぴつの新作は4曲入りのEP盤。アニメ「忘却バッテリー」のエンディングテーマともなっている「忘レナ唄」をはじめ、4曲中3曲がタイアップという点でも彼らの勢いのほどがわかりますが、おそらく現在、ポップミュージシャンでは最も脂ののっているのが彼らではないでしょうか。4曲入りながらも4曲ともタイプが別々の曲が並び、そのいずれもメロディアスでインパクトあるポップスが並んでいます。わずか4曲のEP盤ながらも、今の彼らの勢いを感じさせる充実盤に仕上がっていました。
評価:★★★★★
マカロニえんぴつ 過去の作品
season
hope
愛を知らずに魔法は使えない
ハッピーエンドへの期待は
wheel of life
大人の涙
ヒカシュー ゴールデン☆ベスト/ヒカシュー
複数のレコード会社共通タイトルとしてリリースされている廉価版ベスト「ゴールデン☆ベスト」シリーズの本作はヒカシュー版。最近はライブ活動が中心のようですが、1970年代から活動を続けているテクノポップバンドで、P-MODEL、プラスティックスと並んで「テクノポップ御三家」とも呼ばれたそうです。ヒカシューのアルバムを聴くのは本作が初なのですが、以前、一度だけライブは見たことがあります。軽快なテクノポップが予想以上に楽しいステージでした。本作も、軽快なテクノポップの作品が聴けるのですが、全体的にはアバンギャルドやフリージャズ的な要素も強く、ポップという観点ではもうちょっとリスナーを選ぶ部分もあるかも。ただ、テクノポップ黎明期から活躍する「レジェンド」的なバンドであることは間違いないだけに、ヒカシューについて手軽に知れるという意味ではチェックしたいベスト盤です。
評価:★★★★
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