大人なユニット
Title:若葉
Musician:岡村靖幸
岡村靖幸と斉藤和義のユニット、岡村和義。以前から親交のあった2人だそうですが、岡村靖幸のラジオ番組に斉藤和義が出演し、セッションを行ったことがきっかけでユニットを結成。今年の1月から毎月、配信シングルをリリースしてきましたが、1月からリリースしてきた配信シングルをまとめた作品が本作。1月からリリースしてきた5枚のシングルと本作にのみ収録している「真夜中の海へ」の全6曲入り。ライブ会場と通販限定でのリリースとなりますが、先日足を運んだライブ会場で入手してきました。
YOASOBIだとかVaundyだとか最近の若手ミュージシャンは、楽曲発表はすべて配信シングルで、アルバムは既発表の配信シングルをまとめただけ、というリリース形態が多く、アルバムの地位が低下している感じがあり、寂しさを感じています。そのような中、岡村靖幸と斉藤和義のユニットも、楽曲発表は基本的に配信シングル。CDはライブ会場+通販限定だけ、というのは時代を感じてしまって寂しくは感じてしまいます。まあ、こちらのアルバムの方に1曲追加している点は、ファンに対するサービスなのでしょうが・・・。
さて、このユニット、特に岡村靖幸に関しては様々なミュージシャンとのコラボが目立ちます。例の事件があって袂を分かってしまったものの、石野卓球とのコラボや、最近ではDaokoやRHYMESTERとのコラボなども発表しており、様々なミュージシャンとのコラボが目立ちます。そんな中、斉藤和義とはちょっと意外だったものの両者同い年。お互いビートルズが好きという共通項もあり(ただ、その共通項はほとんどのミュージシャンに共通してしまうような気もするのですが)意気投合した2人のコラボという形になりました。比較的早熟なデビューだった岡村靖幸に対して、どちらかというと遅咲きだった斉藤和義。お互い、全盛期の時期はズレているので、この2人が実は同い年だった、というのもちょっと意外に感じます。
そんな2人のユニットなのですが、お互い、相当なキャリアを持ち、それぞれが個性を発揮しているミュージシャンなだけに、岡村和義の曲に関しても、それぞれの個性が発揮されており、微妙に混ざり合っていません。曲を聴くと、どちらが主導して曲を作ったのか、比較的容易にわかります。「I miss your fire」は斉藤和義、「春、白濁」は岡村靖幸、「愛スティル」はイントロからして完全に斉藤和義のギターですし、「サメと人魚」は岡村靖幸らしいセクシーなバラードナンバー。「カモンベイビー」はタイトルからして完全に岡村靖幸ですし、今回の新曲「真夜中の海へ」はフォーキーな作風が斉藤和義のソロとしても普通に通用しそうな楽曲となっています。
もちろん、楽曲の名義は作詞作曲岡村和義となっていますし、完全な分業ともなっていないのでしょう。例えば「I miss your fire」にしても、どこか岡村靖幸っぽさも感じますし、逆に「カモンベイビー」にしてもアレンジなどに斉藤和義っぽさも感じます。そういう意味では岡村靖幸と斉藤和義の良い部分がほどよく混じっている部分もあり、岡村和義というユニットらしい楽曲に仕上がっています。
ただ一方、楽曲にそれぞれの個性が遠慮なく発揮されており、それぞれが作風を分け合っている点、いい意味でこの岡村和義というユニットが大人同士のユニットなのではないか、という点も感じました。昔からこの手の既にキャリアのある大物ミュージシャン同士のコラボというのは短期間で失敗するケースが少なくありません。それはやはりお互いが自分の個性を持ったミュージシャン同士なだけに、お互いが自分のやりたいことを主張し合って、その結果、喧嘩してしまう、というケースが少なくないからでしょう。ただ彼らは既に30年以上のキャリアを持った、58歳という大人同士。それだけに、それなりにお互いに尊重し、楽曲によって主導権を分け合った結果、今回のような、ある意味、どちらが主導権を握ったのかわかりやすい楽曲が並ぶ結果になったのではないでしょうか。今回のユニットには、そんな大人な2人だからこそ生み出した傑作になっているように感じました。
そんなことを書きながら、コラボがこれでおしまいで、お互い喧嘩別れしちゃったら、それはそれで残念でビックリなんですけどね(笑)。ただ、今後もコンスタントに活動を続けてほしいなぁ。特に次は、シングルの寄せ集めではない、新曲も多く収録されたアルバムも聴いてみたい!岡村靖幸と斉藤和義のいいとこどりをしたユニットなだけに、これからの活躍にも期待したいところです。
評価:★★★★★
ほかに聴いたアルバム
7th/miwa
ジャケット写真から、以前のmiwaのイメージと大きく異なり、ちょっとビックリするのですが・・・あまりにそのままなタイトルの、miwaの7枚目となるニューアルバム。約5年弱の結婚に終止符を打った彼女ですが、そのため彼女自身のイメージを一新しようとする意図があるのでしょうか。ただ楽曲自体は以前と変わらず、ポップな楽曲が並ぶmiwaらしい作品。ギターロックに打ち込みを入れた曲にラップまで取り入れており、いつも以上にバリエーションも増え、新しい彼女像を模索しようとしている感もある一方、良くも悪くもポップにまとまっている感は、彼女の器用さも感じさせます。ジャケット写真で挑戦するのなら、楽曲ももっと挑戦してもいい感じもするのですが。
評価:★★★★
miwa 過去の作品
guitarium
Delight
ONENESS
SPLASH☆WORLD
miwa THE BEST
Sparkle
君に恋したときから
バレンタインが今年もやってくる
月に願いを
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