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2024年7月15日 (月)

グラミー賞受賞で知名度が一気にアップ

Title:Night Reign
Musician:Arooj Aftab

前作「Vulture Prince」が大きな話題を呼んだアメリカはニューヨーク・ブルックリンを拠点に活躍するパキスタン出身の女性シンガーソングライター。前作の時点で、日本では完全に無名のミュージシャンで、前作を聴いた当時はGoogle検索をかけても日本語のサイトは皆無という状況でした。しかし、前作が大きな評価を受け、グラミー賞ではなんと最優秀新人賞にノミネート。こちらは残念ながら受賞は逃したものの、最優秀グローバルミュージックパフォーマンス賞を受賞。それに伴い日本での知名度も一気に上がり、現時点でGoogle検索をかけるとレコード会社やCDショップ、音楽系メディアの彼女の日本語の紹介記事がズラリと並ぶ結果となっています。

前作では、彼女の美しい伸びやかな歌声とエキゾチックな雰囲気あふれるアコースティックなサウンドが見事に融合し、独特の幽玄的なサウンドを作り上げている傑作アルバムとなっていました。今回のアルバムに関しても基本的にその方向性は変わりありません。まさにアルバムの冒頭を飾る「Aey Nehin」は、まさに低音部を利かせ、ちょっと気だるさを感じさせつつも美しいボーカルと、エキゾチックなアコギの音色がピッタリとマッチ。

続く「Na Gul」はジャジーなピアノをバックに、美しくも伸びやかなボーカルを聴かせる楽曲。もともと本作は、マ・ラカ・バイというインドの詩人によるウルドゥー語の詩を中心に構成されたアルバムだそうで、この曲は、その詩人によるウルドゥー語の詩に曲をつけた1曲。ウルドゥー語の独特の1曲。さらに次の「Autumn Leaves」はスタンダードナンバーの1曲なのですが、トライバルなパーカッションも入り、独特のエキゾチックな雰囲気がムンムンあふれる1曲となっています。

この「Autumn Leaves」に続く「Bolo Na」も非常にダークな低音で聴かせる不気味さを感じる曲で、美しく清涼感あふれる前半からガラッと変わった中盤へ。さらにその後は再び清涼感のある明るいナンバーへとシフト。特に後半では「Reat Ki Rani」の哀愁あふれる歌が心に響きますし、「Whiskey」でも美しいアコースティックギターの音色をバックに歌い上げる彼女のボーカルの美しさに心を捉えられます。

最初にも書いたとおり、前作と同様、エキゾチックさを感じさせるアコースティックでジャズの要素も入ったサウンドに、ほどよくトライバルな要素も加わり、低音部を聴かせつつ、伸びやかで美しく聴かせる彼女のボーカルのバランスが実に素晴らしい傑作アルバム。前作も2021年の私的年間ベストアルバムの7位に本作を選びましたが、今回も間違いなく年間ベスト候補と言える傑作アルバムに仕上がっていました。前作以降、日本での知名度のグッと上がった彼女。これだけの傑作をリリースするだけに、まだまだその人気は高まりそうです。

評価:★★★★★

Arooj Aftab 過去の作品
Vulture Prince


ほかに聴いたアルバム

POST HUMAN: NeX GEn/BRING ME THE HORIZON

2020年にEPをリリースしつつも、オリジナルフルアルバムとしては約5年8ヶ月ぶりとなるイギリスのヘヴィーロックバンドの新作。メタルやハードコアの影響を受けつつ、メランコリックなメロディーラインと、打ち込みを入れつつ、これでもかというほど分厚くしたバンドサウンドが特徴的。日本で言えば、完全にONE OK ROCKやMY FIRST STORY、coldrainあたりがこのバンドの流れを組むようなサウンドを奏でていますが、新作はまさにBMTHらしさ全開のアルバムに。前述の日本のバンドが好きなら、まずは聴くべき1枚。

評価:★★★★

Silence Is Loud/Nina Archives

イギリスのブラッドフォード出身のシンガーソングライターによるフルアルバムとしてはデビュー作。UKのクラブ/ジャングルシーンの中心人物として注目を集めているそうですが、終始、軽快なジャングルのビートが鳴り響く中、キュートさも感じる彼女のボーカルでポップに歌い上げている作品。クラブシーンで注目を集めつつ、作品はいい意味でポップにまとまっていて、いい意味で広いリスナー層が楽しめそうなポップな内容に仕上がっていました。

評価:★★★★★

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