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2024年7月

2024年7月31日 (水)

珍しく(?)LDH系グループが1位獲得

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

ロングヒット曲かK-POPアイドル勢の1位が目立つ中、珍しく(?)LDH系のグループが1位獲得です。

1位初登場はLDH系の男性アイドルグループTHE RAMPAGE from EXILE TRIBE「24karats GOLD GENESIS」が獲得。タイトルといいジャケット写真といい、いかにもLDH系らしいガテン系の成り上がり志向ヤンキーらしい雰囲気があふれています。CD販売数及びラジオオンエア数で1位獲得。オリコン週間シングルランキングでは初動売上21万9千枚で1位初登場。前作「CyberHelix」の初動6万7千枚(3位)から大幅アップとなっています。

2位はMrs.GREEN APPLE「ライラック」が先週と同順位をキープ。ストリーミング数1位、動画再生回数3位は先週から変わらず。これで15週連続のベスト10ヒット&通算9週目のベスト3ヒットとなりました。さらに今週、「青と夏」が先週の11位から7位にランクアップし、2週ぶりのベスト10返り咲き。こちらは通算9週目のベスト10ヒットとなりました。ほかにも「ケセラセラ」11位、「コロンブス」14位、「アポロドロス」16位と、今週も5曲が同時にベスト20にランクインしています。

3位はCreepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」が先週の4位からランクアップし、2週ぶりにベスト3返り咲き。今週もストリーミング数、動画再生回数及びカラオケ歌唱回数いずれも2位をキープ。これで28週連続のベスト10ヒット&通算25週目のベスト3ヒットとなりました。

続いて4位以下の初登場曲ですが、まず4位にSTARTO for you「WE ARE」がランクイン。旧ジャニーズ事務所であるSTARTO ENTERTAINMENT所属のアイドルたちが集結したチャリティーシングル。CD販売数2位。オリコンでは初動売上20万6千枚で2位に初登場。ジャニー喜多川による性加害問題がまだ記憶に新しい今で、こういう事務所あげてのプロジェクトを行っている場合か?とは正直感じてしまいます。収益は能登地震の被害者に全額寄付ということですが、これ、性暴力の被害者を支援する団体に全額寄付、とかなら、理解できる気もするのですが。チャリティーを隠れ蓑とした、新事務所のPR活動としか、正直個人的には感じられませんでした。

今週ですが、あと紹介するのはロングヒットが1曲のみ。Omoinotake「幾億光年」は先週と変わらず6位をキープ。ストリーミング数も今週で11週連続の3位をキープ。これでベスト10ヒットは24週連続となります。

今週のHot100は以上。Hot Albums&各種チャートはまた明日に!

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2024年7月30日 (火)

大人なユニット

Title:若葉
Musician:岡村靖幸

Wakaba

岡村靖幸と斉藤和義のユニット、岡村和義。以前から親交のあった2人だそうですが、岡村靖幸のラジオ番組に斉藤和義が出演し、セッションを行ったことがきっかけでユニットを結成。今年の1月から毎月、配信シングルをリリースしてきましたが、1月からリリースしてきた配信シングルをまとめた作品が本作。1月からリリースしてきた5枚のシングルと本作にのみ収録している「真夜中の海へ」の全6曲入り。ライブ会場と通販限定でのリリースとなりますが、先日足を運んだライブ会場で入手してきました。

YOASOBIだとかVaundyだとか最近の若手ミュージシャンは、楽曲発表はすべて配信シングルで、アルバムは既発表の配信シングルをまとめただけ、というリリース形態が多く、アルバムの地位が低下している感じがあり、寂しさを感じています。そのような中、岡村靖幸と斉藤和義のユニットも、楽曲発表は基本的に配信シングル。CDはライブ会場+通販限定だけ、というのは時代を感じてしまって寂しくは感じてしまいます。まあ、こちらのアルバムの方に1曲追加している点は、ファンに対するサービスなのでしょうが・・・。

さて、このユニット、特に岡村靖幸に関しては様々なミュージシャンとのコラボが目立ちます。例の事件があって袂を分かってしまったものの、石野卓球とのコラボや、最近ではDaokoやRHYMESTERとのコラボなども発表しており、様々なミュージシャンとのコラボが目立ちます。そんな中、斉藤和義とはちょっと意外だったものの両者同い年。お互いビートルズが好きという共通項もあり(ただ、その共通項はほとんどのミュージシャンに共通してしまうような気もするのですが)意気投合した2人のコラボという形になりました。比較的早熟なデビューだった岡村靖幸に対して、どちらかというと遅咲きだった斉藤和義。お互い、全盛期の時期はズレているので、この2人が実は同い年だった、というのもちょっと意外に感じます。

そんな2人のユニットなのですが、お互い、相当なキャリアを持ち、それぞれが個性を発揮しているミュージシャンなだけに、岡村和義の曲に関しても、それぞれの個性が発揮されており、微妙に混ざり合っていません。曲を聴くと、どちらが主導して曲を作ったのか、比較的容易にわかります。「I miss your fire」は斉藤和義、「春、白濁」は岡村靖幸、「愛スティル」はイントロからして完全に斉藤和義のギターですし、「サメと人魚」は岡村靖幸らしいセクシーなバラードナンバー。「カモンベイビー」はタイトルからして完全に岡村靖幸ですし、今回の新曲「真夜中の海へ」はフォーキーな作風が斉藤和義のソロとしても普通に通用しそうな楽曲となっています。

もちろん、楽曲の名義は作詞作曲岡村和義となっていますし、完全な分業ともなっていないのでしょう。例えば「I miss your fire」にしても、どこか岡村靖幸っぽさも感じますし、逆に「カモンベイビー」にしてもアレンジなどに斉藤和義っぽさも感じます。そういう意味では岡村靖幸と斉藤和義の良い部分がほどよく混じっている部分もあり、岡村和義というユニットらしい楽曲に仕上がっています。

ただ一方、楽曲にそれぞれの個性が遠慮なく発揮されており、それぞれが作風を分け合っている点、いい意味でこの岡村和義というユニットが大人同士のユニットなのではないか、という点も感じました。昔からこの手の既にキャリアのある大物ミュージシャン同士のコラボというのは短期間で失敗するケースが少なくありません。それはやはりお互いが自分の個性を持ったミュージシャン同士なだけに、お互いが自分のやりたいことを主張し合って、その結果、喧嘩してしまう、というケースが少なくないからでしょう。ただ彼らは既に30年以上のキャリアを持った、58歳という大人同士。それだけに、それなりにお互いに尊重し、楽曲によって主導権を分け合った結果、今回のような、ある意味、どちらが主導権を握ったのかわかりやすい楽曲が並ぶ結果になったのではないでしょうか。今回のユニットには、そんな大人な2人だからこそ生み出した傑作になっているように感じました。

そんなことを書きながら、コラボがこれでおしまいで、お互い喧嘩別れしちゃったら、それはそれで残念でビックリなんですけどね(笑)。ただ、今後もコンスタントに活動を続けてほしいなぁ。特に次は、シングルの寄せ集めではない、新曲も多く収録されたアルバムも聴いてみたい!岡村靖幸と斉藤和義のいいとこどりをしたユニットなだけに、これからの活躍にも期待したいところです。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

7th/miwa

ジャケット写真から、以前のmiwaのイメージと大きく異なり、ちょっとビックリするのですが・・・あまりにそのままなタイトルの、miwaの7枚目となるニューアルバム。約5年弱の結婚に終止符を打った彼女ですが、そのため彼女自身のイメージを一新しようとする意図があるのでしょうか。ただ楽曲自体は以前と変わらず、ポップな楽曲が並ぶmiwaらしい作品。ギターロックに打ち込みを入れた曲にラップまで取り入れており、いつも以上にバリエーションも増え、新しい彼女像を模索しようとしている感もある一方、良くも悪くもポップにまとまっている感は、彼女の器用さも感じさせます。ジャケット写真で挑戦するのなら、楽曲ももっと挑戦してもいい感じもするのですが。

評価:★★★★

miwa 過去の作品
guitarium
Delight
ONENESS
SPLASH☆WORLD
miwa THE BEST
Sparkle
君に恋したときから
バレンタインが今年もやってくる
月に願いを

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2024年7月29日 (月)

25年目にして念願の初ライブ参加

HIKARU UTADA SCIENCE FICTION TOUR 2024

会場 Aichi Sky Expo 日時 2024年7月19日(金)18:30~

宇多田ヒカルのライブに、はじめて参加してきました!今から25年前、「Automatic」で衝撃的なデビュー。当時は本場アメリカのR&Bに勝るとも劣らない、天才ミュージシャンの誕生とかなり騒がれ、当サイトでも常連の方が軒並み宇多田ヒカルを推してくるという、当時の音楽ファンの間ではかなりの衝撃だったことを今でも覚えています。それはら早くも25年。もともとあまりライブを数多くこなすタイプではないので、いつもチケットは争奪戦になるのですが、今回は見事、抽選に当選!25年目にして初となる念願のライブ参加となりました。

Utada1

会場はAichi Sky Expo。セントレアのすぐ脇にある大きな展示場です。今回、はじめて足を運んだのですが、ちょっと遠い・・・。とはいえ、都心から特急を使えば40分弱なので、そんなに極端に遠い場所ではないのですが。このホールAが今回の会場。基本的に展示場なので、客席はフラットなので、ちょっと後ろの方からは見にくいつくりになっています。ただ、これだけの広さとしては音は悪くなく、ほとんど気になりませんでした。ただ、キャパは6,500人と、宇多田ヒカルの人気を考えると、ちょっと狭い会場という印象。ナゴヤドームくらい普通に埋めれるでしょうが・・・「音」などを考えると、あえてこの程度の会場を選んだということでしょうか。

Utada2

この日は日本人のライブとしては珍しく(とはいえ最近増えてきてはいるのですが)写真・動画撮影可のライブ。定時を約10分程度経過したところでライブスタート。ただちょっとユニークだったのは、客電が消えて、いきなりスタート、という通常の形ではなく、前のモニターが少しずつ動き出したかと思えば、いつの間にかライブがスタートしていた・・・といった演出がなされていました。そして宇多田ヒカルが登場!本物だ!!と感動しつつ、さらに1曲目は、なんと「Automatic」のカップリングの「time will tell」からスタート。かなり意外な選曲にちょっとビックリしつつ、25年前に彼女の曲をはじめて聴いたことを思い出してしまいました。

続く「Letters」ではちょっと歌詞を間違えるなど、ライブならではのハプニング(?)もありつつ、選曲は、ベスト盤リリース直後のツアーということでベスト盤に収録されている彼女の代表曲を入れつつ、ベスト盤に入らなかった曲も、むしろ積極的に選曲されているというスタイルのセットリストに。序盤では「Wait&See~リスク~」や「In My Room」など、懐かしくも、「そういえばベスト盤に収録されていなかったな」といった曲を懐かしく感じながら聴いていました。

基本的には原曲に沿った形のアレンジだったのですが、ただその中でもちょっと歌いずらかったのでしょうか、「For You」などは若干ピッチが下がっているアレンジも。また、前半では「Distance」は原曲よりテンポがあげられていたり、「traveling」では、より強いビートのドラムが入っていて、踊りやすくなっていたりと、ライブならではのアレンジも要所要所に聴かせてくれました。

Utada3

ステージ演出は全体的に比較的シンプルな感じ。中盤にはおなじみ「First Love」もしっかり聴くことが出来ましたし、セットリストは基本的に過去の曲から最近の曲という時系列に沿った形になっており、彼女の25年の歩みを知ることが出来ました。途中では何か所かMCを挟んでいたのですが、彼女、曲の雰囲気とは異なり、意外とほんわかした雰囲気の天然ボケ気味のMCで、「ここ、周りに水がいっぱいあるけど、これ海なんだよね?」なんていう、「いや、すぐわかるじゃん!」という天然ボケ気味のMCも飛び出して、かわいらしいという印象も受けました。

さらに中盤では、ベスト盤に入っていなかったもののちょっと意外な「ぼくはくま」も披露。彼女の曲の中でもちょっと異質な曲なので、セットリストに組み込んできたのは意外だったのですが、ちょっと箸休め的に、かわいらしく聴かせてくれました。

その後は「Keep Tryin'」や「Kiss&Cry」を聴かせてくれた後、マイクスタンドの前に立ち、力強くそして感情たっぷりに「誰かの願いが叶うころ」をしっかりと聴かせてくれました(写真↓)。

Utada4

その後は一度、彼女はステージから退場。会場のモニターにはアニメ映像が流れます。おそらく大学か何かの講義を聴いている宇多田ヒカルの頭のねじが文字通りはずれて、その頭のねじに乗って、くまがいろいろと旅をするというようなアニメ。宇多田ヒカルの空想の世界を表現していたのでしょうか。そしてアニメが終わると、彼女は、かなり派手で奇抜なコスチュームに身を包み再登場。ステージにセットされた高い台の上に登って「BADモード」を歌い上げました(写真↓)

Utada5

概ね発表順のセットリストなだけに、後半は比較的最近の曲が並びます。「いままでで一番『ありがとう』の気持ちを込めた」という「花束を君に」からラストは「何色でもない花」「One Last Kiss」へと続き、本編ラストは「君に夢中」へ。ラストに盛り上がる曲を並べる、といった感じではなく、あくまでも25年の歩みを聴かせる、というセットリストを最後まで貫き、ステージは一度幕を下ろします。

もちろん盛大なアンコールへ。やがて再び宇多田ヒカルが登場し、アンコールがスタート。まずラスト1曲目は「Electricity」へ。その後のMCではメンバー紹介へ。この日のサポートメンバーはキーボードの1人を除いてすべて外国人プレイヤーといった構成で、彼女のネイティブ張りの英語もチラッと聴かせてくれたりもしました。

そしてラストの曲は、まさに宇多田ヒカルはここからスタートした、という「Automatic」へ!さらになんと黄色の椅子がステージ上にセットされ、そこに座っての歌いだしという演出になっていました(写真↓)。

Utada6

これ、ファンなら当然知っているかと思うのですが、「Automatic」のPVに沿った演出。当時、このPVは繰り返しいろいろな媒体で流れていたため、まさに天才少女はこの椅子に座って歌い始めた、ということを強く覚えています。25周年ラストの最後の演出を、彼女にとっての「スタート」で締めくくるというのは、かなりグッとくる演出でした。

ライブは約2時間半弱。21時ちょっと前に終了。かなりボリューミーなステージで、かつヒット曲を網羅的に披露してくれ、かなり満足度高め。あっという間の2時間半で、やはり宇多田ヒカルの曲は素晴らしいな、と感じたライブでした。

今回、初の宇多田ヒカルライブとなった訳ですが、まず1点目に感じたのは、やはり宇多田ヒカルの歌の上手さ。もともと彼女の歌唱力には定評がありましたが、やはり安定感と声量に関しては光るものがあります。さらに年齢に伴って表現力も加わり、その歌唱力に磨きがかかったように感じます。あらためてシンガーとしての彼女の実力を感じたステージでした。

2点目に、25年の彼女の歩みを実感できるセットリストだったのですが、25年を経て、その才能に衰えを感じさせない点にあらためて驚かされました。デビュー当初は、「本場のR&B」的なもてはやされ方をした彼女ですが、現時点においても最新のポップミュージックをフォローし続けており、むしろ楽曲のクオリティーは今も最高水準を維持。ともすれば最高傑作は最新作の「BADモード」では?とも思っていますし、25年間、その才能を維持し続ける彼女に、今回のライブで過去の代表曲を聴いてあらためてそのすごさを感じてしまいました。

そして3点目。観客の層が若い・・・。普通、25年間活躍しているミュージシャンのライブというと、どうしても年齢層がそれなりになるのでしょうが、この日のステージの主な年齢層は20代から30代がメイン。極端に若くもないものの、予想していたよりも年齢層は低めで、おそらく「Automatic」の衝撃を知らないだろうなぁ、という層も少なくありませんでした。逆に、それだけ今なおファン層をアップデートし続けているという意味で、その点も彼女のすごさを感じてしまいました。

そんな訳で、あらためて宇多田ヒカルのすごさを感じた今回のステージ。はじめて見た彼女のステージでしたが、やはり足を運んでよかったと実感し、非常に高い満足度を持って会場を後にすることが出来ました。これからもチケットを取るのはやはり至難の業だとは思うのですが、またぜひともライブに足を運びたいなぁ。

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2024年7月28日 (日)

ワクワクして楽しめるエレクトロポップアルバム

Title:BRAT
Musician:Charli xcx

2022年にリリースした前作「Crash」が、イギリスのチャートで1位、全米チャートでも7位を記録するなど、大ヒットとなったイギリスの女性シンガーソングライター、Charli xcx。もともと、イギリスのレイブシーンで活躍していたミュージシャンだそうで、もともとJusticeのようなフレンチ・エレクトロのミュージシャンたちからの影響を公言しているとか。今回のアルバムもイギリスチャートでもアメリアビルボードチャートでもベスト10を記録。また、各種メディアでも高評価を記録しているなど、注目のアルバムとなっています。

個人的に彼女、Charli xcxのアルバムを聴いたのは本作がはじめてなのですが、確かに一言で言えば、難しいこと抜きで楽しめる、聴いていてとても心地よいエレクトロのアルバムだったと思います。

まずアルバム冒頭の「360」は、まずは軽快でリズミカルなエレクトロポップからスタート。まずはアメリカのR&B系ポップの流れを組むような、ある意味、今どきなポップチューンからスタートするのですが、続く「club classics」はタイトルの通り、クラブ系の王道を行くような疾走感あるトランシーなエレクトロチューン。聴いていて思わず身体が動き出しそうなナンバーとなっています。

その後も、基本的には軽快なエレクトロアレンジを主軸に置きつつ、「Talk Talk」「Apple」のような軽快な歌を聴かせるようなタイプの楽曲を聴かせてくれたかと思えば、「Von dutch」「Rewind」「Mean girls」のような疾走感ある強いエレクトロビートを前面に押し出して、よりクラブ寄りの楽曲を聴かせてくれたりと、クラブシーンに軸足を置きつつ、広くポップフィールドで活躍する彼女らしい構成のアルバムになっています。また、「I might say something stupid」「So I」のようなしんみり聴かせるミディアムチューンも間に挟んでおり、アルバムの中でほどよくチルアウトできる展開にもなっています。

基本的に最初に書いた通り、難しいこと抜きで楽しめるエレクトロポップが並んでおり、聴いていてワクワクしてくるような楽曲が大きな魅力。その分、正直なところ目新しさはありませんし、作風的にも挑戦的といったものもあまり感じません。ただ、それを上回る楽しさがこのアルバムでは感じられるのは間違いなく、それがこのアルバムが高い評価を得ている大きな要因であるのでしょう。

個人的にも年間ベストクラスに楽しめたアルバムだったと思います。クラブシーンで活躍している彼女なだけに、クラブや、あるいはライブでこれらの曲を聴けたらとても楽しめそうだし、軽くトリップできそうだなぁ、ということも感じます。広いリスナー層にお勧めできそうな楽しいエレクトロポップアルバムです。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Forever/BON JOVI

デビュー40周年を迎えた彼らが、約4年ぶりにリリースしたニューアルバム。いつも通りの王道的なハードロック路線といった感じで、良くも悪くも安心して聴ける作品。あえて言えば、ちょっと爽やかにポップにまとまった感じもあって、若干今風にアップデートされているのかな、といった感もあるのですが、基本的にはいままでのBON JOVIの路線から大きく変わるものではありません。良くも悪くも大いなるマンネリといった感も。

評価:★★★★

BON JOVI 過去の作品
Lost Highway
THE CIRCLE
GREATEST HITS-THE ULTIMATE COLLECTION
What About Now
Burning Bridges
This House Is Not For Sale
2020

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2024年7月27日 (土)

海外進出を意識

Title:AG! Calling
Musician:新しい学校のリーダーズ

Agcalling

昨年前は紅白歌合戦の初出場。さらに今年は海外ツアーも実施。アメリカの音楽フェス「コーチェラ」に出演するなど、日本のみならず海外にもその活動の舞台を広げている新しい学校のリーダーズ。「オトナブルー」が大きな話題となりブレイクした後にリリースした2枚のアルバム「一時帰国」「マ人間」はいずれもミニアルバムやEP盤。純粋なオリジナルフルアルバムとしては2019年にリリースした「若気ガイタル」以来、実に5年ぶりとなるニューアルバムとなりました。

今回のアルバムで大きな特徴としてまず一つ目にあげられるのは「オトナブルー」の作曲を手掛けたyonkeyが、11曲中8曲に参加しているという点でしょう。「一時帰国」ではyonkeyをはじめ、複数の作曲家が参加していましたが、yonkeyが最も彼女たちのイメージとマッチしていたように感じました。今回のアルバムでも例えば「Hero Show」は、まさに「オトナブルー」を彷彿とさせるような懐かしさすら感じさせる歌謡曲風のナンバー。「Arigato」も同じく、歌謡曲的なメロが印象的なナンバーとなっており、ここらへんは彼女たちのオフィシャルイメージを形作った「オトナブルー」に続く路線と言えるかもしれません。

もうひとつ大きな特徴として、海外への本格的進出を志しているという点が大きいのでしょう。海外で売るという点を意識したような曲が目立つように思います。まず、実に日本的な曲が目立つという点。まずは「Toryanse」で、歌詞がまず日本の民謡を意識したようなものとなっていますし、和のサウンドを意識したような曲作りがされています。「Omakase」も同様で、こちらは笛の音や和太鼓を意識したようなビートで、いかにも和風な雰囲気を作り出しています。「焼き鳥寿司味噌ラーメン」や「カラオケ」といった日本をイメージしやすい単語が歌詞の中に散りばめられているのも、あえて日本的なイメージを作り出すための狙ったものでしょう。日本的な掛け声をそのまま用いた「Essa Hoisa」も同様でしょう。

また、海外で売るということを意識したという意味では、今どきを感じさせるサウンドが目立つのも大きな特徴でしょう。冒頭を飾る「Fly High」もまた、いかにも今どきなエレクトロチューンからスタート。さらに海外のクリエイターも今回多く起用しており、「Superhuman」ではロストプロフェッツやナイン・インチ・ネイルズと活動したこともあるマルチ楽器奏者のイラン・ルービンが参加。「Forever Sisters」はアメリカの音楽プロデューサー、マニー・マークが参加。メロディーラインこそ、歌謡曲の色を感じさせるものが多い反面、サウンドはかなりカラッとしたあか抜けた雰囲気を感じさせます。

個人的には、ちょっと最近の彼女たちの売り方には心配している部分もあり、正直、世間一般の知名度以上に大きく見せて売り出そうという部分も否定できず、紅白出場時も、若干「誰?」という空気も流れましたし、他にもいかにも「売り込んでいる」といった感が見え見えのプロモーションも目立ちます。それだけに、今後の行方に心配している部分もあるのですが、ただ一方、このアルバムに関しては、そんな周りの「売り方」にもしっかりマッチしているだけの勢いはしっかり感じさせてくれました。楽曲はもちろんのこと、この曲を元としたパフォーマンスも、一度是非見てみたい。これからの彼女たちの活躍にも注目したいところです。

評価:★★★★★

新しい学校のリーダーズ 過去の作品
一時帰国
マ人間


ほかに聴いたアルバム

Plastic Tree/Plastic Tree

デビューから30年以上が経過し、初のセルフタイトルとなる約4年ぶりのニューアルバム。分厚いギターサウンドにヴィジュアル系バンドらしい、耽美的でメランコリックなメロが重なる、いかにもPlastic Treeらしいアルバム。彼らが強い影響を受けたシューゲイザーの色合いはちょっと薄い感じがするのは、個人的にはちょっと残念な感もするのですが、ベテランバンドらしい、いい意味での安定感ある作品で、セルフタイトルらしい、これぞPlastic Treeといった感じのアルバムになっていました。

評価:★★★★

Plastic Tree 過去の作品
B面画報
ウツセミ
ゲシュタルト崩壊
ドナドナ
ALL TIME THE BEST
アンモナイト
インク
echo
剥離
doorAdore
続 B面画報
十色定理
(Re)quest -Best of Plastic Tree-

Life Is a D.A.N.C.E/the telephones

Lifeisdance

今年5月1日から10日まで10日連続新曲をリリースし、その直後にリリースされたのが、約1年8ヶ月ぶりとなるthe telephonesのニューアルバム。その前に配信シングルとしてリリースしていた曲を含む全19曲入りのアルバムとなっています。全編トランシーでリズミカルなダンスチューンの連続。これでもかというほどthe telephonesらしいダンスチューンが怒涛のように展開される構成になっています。正直、ちょっと一本調子な感も否めないのですが、その点を差し引いても、彼ららしい勢いのあるアルバムに仕上がっていました。

評価:★★★★

the telephones 過去の作品
DANCE FLOOR MONSTER
A.B.C.D.e.p.
Oh My Telephones!!! e.p.

We Love Telephones!!!
100% DISCO HITS! SUMMER PACK
Rock Kingdom
D.E.N.W.A.e.p.
Laugh,Cry,Sing...And Dance!!!
SUPER HIGH TENSION!!!
BEST HIT the telephones
Bye Bye Hello
NEW!
Come On!!!

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2024年7月26日 (金)

エピックレコードのコンピレーション再び

Title:EPIC 45 -The History Is Alive-

主に80年代から90年代にかけて、数多くの新進気鋭のミュージシャンたちを世に送り出し、その名前を世に知らしめたレーベル、エピックレコード。当時はエピックソニーという名前でしたが、非常に個性的なレーベルであったため、おそらくこの時代に青春を過ごした世代にとっては、一番最初に意識したのがこのエピックソニーであった、という方も少なくないのではないでしょうか。かく言う私もそうなのですが、そのエピックレコードの創設45周年を記念して、昨年、様々なイベントが行われましたが、その一環として45年のエピックレコードの代表曲を収録したオムニバスアルバムがリリースされました。

・・・と言っても、エピックレコードはいままでも度々、「周年」記念のイベントが行われており、25周年の時は大々的なライブとオムニバスアルバムのリリースが行われました。35周年はさほど規模としては大きくなかったのですが、配信限定でオムニバスアルバムがリリースされています。そして45周年は、以前、ここでも渡辺美里のライブ映像の映画館放映を紹介しましたが、そんなライブ映像の映画化と、そして本作のリリースが目玉となっています。

今回のオムニバスアルバムは1981年から89年、1989年から2005年、2005年から2022年と三世代にわけてCD3枚に収録されています。TM NETWORKの「Get Wild」や佐野元春の「サムデイ」のように、王道路線の代表曲も収録されている反面、さすがにオムニバスも3作目ということなのか、代表曲から若干外したような選曲も目立ちます。例えばBARBEE BOYSは「目を閉じておいでよ」ではなく「Blue Blue Rose」、渡辺美里は「My Revolution」ではなく「サマータイムブルース」、PUFFYも「アジアの純真」ではなく「これが私の生きる道」と、微妙に外したような選曲も目立ちます。これはこれでファン以外にとっては新たな曲を知れる機会とも言えるのでしょうが。

ただ、35周年のオムニバスの時も感じたのですが、レーベルとしての力を感じるのは圧倒的にDisc1に収録された80年代の曲たちでしょう。35周年のオムニバスの紹介の時も「当時10代、20代の若者たちが、自分たちの世代のための、自分たちのための音楽を作り出そう、そういう気概を今回のコンピの曲から感じます。」と書いたのですが、その印象は本作を聴いても変わりません。当時の時代の先端を行くような、それでいてポップでしっかりと「ヒット曲」の範囲の入るようなポップスをしっかりと作ってきており、レーベルとしても、勢いのある若手をしっかりと売り出そうという意気込みと勢いを感じさせます。この時代の曲がいまでも多くの人に支持され、このように45周年のオムニバスがリリースされるのも、そのあたりが大きな理由なのでしょう。

一方で残念ながらDisc2以降はそのような勢いはどんどんと終息していきます。いや、あえて言えばDisc2の頃までは、まだレーベルとしても勢いが残っており、80年代を彷彿とさせるような時代の先端を行くような若手も少なくありません。ただ、そういういかにもエピックらしく、かつ大ブレイクしたミュージシャンというとJUDY AND MARYが最後じゃないかな、と思います。そういえば私がはじめてジュディマリを知ったのも、90年代初頭に、CDショップ店頭で無料で配っていた、エピックソニーのミュージシャンたちを紹介したサンプラーCDだったなぁ。あえて言えばTRICERATOPSも、エピックらしいミュージシャンと言えるのですが、残念ながらそれなりにブレイクはしたのですが、他の先駆たちほどの大ブレイクには至りませんでした。

Disc3の頃のミュージシャンについては、残念ながら売れ線のJ-POPミュージシャンというイメージが強く、80年代90年代の頃のような「時代の先端を行くような」というイメージは強くありません。ただ一方で、今回紹介されたミュージシャンを聴くと、緑黄色社会や小袋成彬と言った勢いのある若手ミュージシャンは積極的に取り上げており、そういう意味での「エピック魂」はまだ残っているんだな、ということは感じました。正直、80年代のような「尖った」という印象は薄いのですが・・・。

あらためてエピックレコードの魅力を感じさせてくれたオムニバスアルバム。ただ、また25周年の時のようなエピックのミュージシャンが一堂に会するようなライブを行ってほしいなぁ。正直、80年代に活躍した若手ミュージシャンも、そろそろ還暦を迎えるような年になっており、元気にライブが出来るのも、あと10年程度ではないか?とすら思うだけに、今のうちに、という感じもあります。あと5年後、50周年の時に、どうかなぁ。

評価:★★★★★

黄金の80'sベストヒッツ35曲!~Epic35~
青春の90'sベストヒッツ35曲!~Epic35~
情熱の2000'sベストヒッツ35曲!~Epic35~


ほかに聴いたアルバム

Sparkle X/THE YELLOW MONKEY

前作から約5年ぶり、ちょっと久々となったTHE YELLOW MOKEYのニューアルバム。歌謡曲テイストの哀愁感あるメロディーラインにグルーヴィーなギターロックという組み合わせはいかにもイエモンらしさを感じるアルバム。良くも悪くも安心して楽しめるアルバムではあるのですが、一方で正直なところ目新しさは皆無。なんとなく、現状に停滞してしまっている作品になってしまった印象も。悪いアルバムではないのですが、再結成後のアルバムでは一番今一つだったかも。

評価:★★★★

THE YELLOW MONKEY 過去の作品
COMPLETE SICKS
イエモン-FAN'S BEST SELECTION-
砂の塔
THE YELLOW MONKEY IS HERE.NEW BEST
9999
Live Loud
30Years 30Hits
THE NIGHT SNAILS AND PLASTIC BOOGIE(夜行性のかたつむり達とプラスチックのブギー)

BAD HOP FOREVER(ALL TIME BEST)/BAD HOP

今年2月の東京ドームライブで解散したHIP HOPグループの初となるベストアルバム。基本的にトラップをベースとしたトラックに、彼らの生まれ故郷、川崎の池上町近辺の現状をそのまま描いたリリックが印象的。メランコリックなトラックや力強いラップは耳を惹きます。一方で、いまさらながらですが、彼らのリリックには女、車、ブランド品など、ともすれば「昭和な価値観」的なアイテムがよく登場します。いや、これらを「昭和の価値観」と言ってしまうのは、本当は一部で、彼ら仲間内では、このような「いかにも」なアイテムを手に入れることを憧れとすることが、まだまだ価値観として有効なのかもしれません。それはともかく、東京ドームワンマンをやり遂げたHIP HOPグループの活動を網羅的に把握できるベストアルバム。いまさらながらBAD HOPというグループを知りたい方にもうってつけのベスト盤です。

評価:★★★★★

BAD HOP 過去の作品
BAD HOP 1DAY
Mobb Life
BAD HOP HOUSE
BAD HOP ALLDAY vol.2
BAD HOP WORLD
BAD HOP HOUSE 2
BAD HOP
BAD HOP(THE FINAL Edition)

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2024年7月25日 (木)

ベスト3はK-POP勢が並ぶ

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

ネット発のミュージシャンが目立った先週から一転、今週はベスト3をK-POP勢が占めました。

まず1位は韓国の男性アイドルグループENHYPEN「ROMANCE:UNTOLD」がランクイン。CD販売数1位、ダウンロード数7位。韓国盤としては2枚目となるフルアルバム。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上28万9千枚で1位初登場。直近作の「MEMORABILIA」はWebコミック作品の「DARK MOON」シリーズというリンクしたスペシャルアルバムという立ち位置で、同作はランクイン2週目にして2万2千枚(3位)を売り上げていますが、同作よりは大幅にアップ。ミニアルバムの直近作「ORANGE BLOOD」の初動18万7千枚(1位)からもアップしています。

2位は同じく韓国の女性アイドルグループTWICE「DIVE」がランクイン。CD販売数2位、ダウンロード数4位。日本盤の5作目となるフルアルバム。オリコンでは初動売上10万4千枚で2位初登場。直近の韓国盤ミニアルバム「With YOU-th」の初動2万枚(4位)からアップ。

3位には、ご存じ韓国の男性アイドルグループBTSのメンバーJIMINによる「MUSE」が初登場。CD販売数3位、ダウンロード数1位。オリコンでは初動売上8万3千枚で3位初登場。前作「FACE」の初動22万4千枚(1位)からダウンしています。

続いて4位以下の初登場盤です。4位はLDH系男性アイドルグループFANTASTICS from EXILE TRIBE「Temporal Transition」。初となるミニアルバム。5位にはDXTEEN「Quest」が初登場。吉本興業と韓国のCJ ENMによる合弁会社LAPONEエンタテイメント所属の男性アイドルグループ。本作がアルバムではデビュー作となります。7位初登場はめいちゃん「やきそばパン」。人気YouTuberグループ「肉チョモランマ」のメンバーでもあるYouTuberによるアルバム。8位は韓国の男性アイドルグループTHE BOYZ「Gibberish」。日本盤では3作目となるフルアルバム。9位も同じく韓国の男性アイドルグループStray Kids「ATE」が初登場。8曲入りのミニアルバム。そしてラスト、10位には「初音ミク マジカルミライ 2024 OFFICIAL ALBUM」がランクイン。初音ミクのイベント「マジカルミライ2024」のオフィシャルアルバム。


今週のHeatseekers Songs

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=heat_seekers

なんと今週はボカロ系、吉田夜世「オーバーライド」が1位を獲得。現在、休止中の「ニコニコVOCALOID SONGS」チャートで1位を獲得したことはありますが、Heatseekers Songsでも見事1位獲得となりました。ただ、最高位10位を記録した動画再生回数は現在19位までダウン。どちらかというと、他に強力な曲がなかった影響でしょうか。


今週のTikTok Weekly

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=tiktok

TikTok Weeklyは今週も鹿乃子のこ (CV.潘めぐみ) & 虎視虎子 (CV.藤田 咲) & 虎視餡子 (CV.田辺留依) & 馬車芽めめ (CV.和泉風花)「シカ色デイズ」が2週連続1位獲得しています。中毒性の高い曲だけに、今後ヒットが続くのでしょうか。

なお、今週のニコニコVOCALOID SONGSはニコニコ動画休止の影響で今週もチャートは発表されていません。

今週のHot Albums&各種チャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2024年7月24日 (水)

新たな1位獲得作品が

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

先週、ついに1位を獲得したMrs.GREEN APPLE「ライラック」ですが、残念ながら1週のみで1位陥落となってしまいました。

Back_atarashii

今週1位を獲得したのはback number「新しい恋人達に」。ダウンロード数及びラジオオンエア数1位、ストリーミング数4位。フジテレビ系ドラマ「海のはじまり」主題歌。バクナンらしいゆっくり歌い上げるバラードナンバーとなっています。ダウンロード数及びラジオオンエア数もさることながら、ストリーミング数も上位につけており、ロングヒットも期待できます。

そしてMrs.GREEN APPLE「ライラック」はワンランクダウンの2位。とはいえ、ストリーミング数は1位をキープしており、動画再生回数も先週と変わらず3位。来週以降の1位返り咲きも期待できます。14週連続のベスト10ヒット及び通算8週目のベスト3ヒットとなります。また、先週10位に返り咲いた「青と夏」は今週11位にダウン。とはいえ、まだベスト20圏内に14位「ケセラセラ」、18位「コロンブス」、19位「アポロドロス」と5曲が同時にランクインし、今週もその人気のほどを感じる結果となっています。

3位は女性アイドルグループAKB48「恋 詰んじゃった」がランクイン。CD販売数1位、その他はランク圏外。オリコン週間シングルランキングでは初動売上29万5千枚で1位初登場。前作「カラコンウインク」の初動32万枚(1位)からダウンしています。

続いて4位以下の初登場曲ですが、まず5位に男性アイドルグループOCTPATH「FUN」がランクイン。CD販売数2位、ラジオオンエア数6位。オリコンでは初動売上5万5千枚で2位初登場。前作「OCTAVE」の初動5万8千枚(2位)よりダウン。

7位にはロックバンドONE OK ROCK「Delusion:All」がランクイン。ダウンロード数3位、ストリーミング数12位、ラジオオンエア数3位。映画「キングダム 大将軍の帰還」主題歌。

そして最近話題となっている曲がついにベスト10入り。10位にこっちのけんと「はいよろこんで」が先週の12位からランクアップし、初のベスト10入りとなりました。こっちのけんとは、俳優の菅田将暉の実弟という男性シンガーソングライター。本作は、生きずらい世の中を病みながらも生きていく人たちへのエールとなっている歌詞も話題となり、さらにかねひさ和哉が手掛けた昭和レトロアニメ風のMVも大きな話題となり、ヒットを記録しました。特に動画再生回数は3週連続1位を記録。ダウンロード数も12位、ストリーミング数16位にランクインし、徐々に順位を上げています。今後のさらなるヒットも期待できそうです。

続いて今週のロングヒットですが、まずCreepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」は4位にダウン。ついにベスト3陥落となりました。ただ、ストリーミング数、動画再生回数及びカラオケ歌唱回数いずれも2位をキープしていますので、まだ来週以降の巻き返しもありえそう。これで27週連続のベスト10ヒット。

Omoinotake「幾億光年」も5位から6位にダウン。ただ、こちらもストリーミング数は今週で10週連続の3位をキープ。これで23週連続のベスト10ヒットを記録しています。

先週、ベスト10に返り咲いたtuki.「晩餐歌」は今週、再び13位にダウン。こちらはベスト10ヒット通算31週で再びストップとなりました。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums&各種チャート!

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2024年7月23日 (火)

今回も水カンらしいポップアルバム

Title:POP DELIVERY
Musician:水曜日のカンパネラ

ボーカリストを詩羽に変わってから、ほぼ毎年、EP盤をリリースしている水曜日のカンパネラの、詩羽ボーカル後3枚目となるミニアルバム。すっかり詩羽は水曜日のカンパネラの「顔」となって久しいのですが、楽曲の勢いも全く止まっておらず、今回もインパクトのあるエレクトロポップを聴かせてくれています。

タイアップのついたアニメに合わせた、猫が運営するラーメン屋というユニークな曲「赤猫」からスタートし、「キャロライナ」のリズミカルながらもダークなラップが入ってくるスタイルも水カンらしい作品。トランシーなダンスチューンの「たまものまえ」は、歴史上の伝説上の人物をネタとしているのも彼女たちらしくユニーク。聖徳太子が10人が、一度に発した言葉を聴き分けたというエピソードに因んだ歌詞の「聖徳太子」はこちらも水カンおなじみの歴史ネタの軽快なポップに仕上げています。

「アルキメデス」はコムアイ時代の「シャクシャイン」や「バッキンガム」に通じるような軽快なラップの歌モノ。漫画によくありがちな強者キャラのグループである四天王をコミカルな歌詞で取り上げたトランシーな「四天王」など、最後まで水曜日のカンパネラらしい、歴史上の出来事などをユーモラスな視点で描いた歌詞に、軽快でリズミカルなエレクトロポップというスタイルで貫かれています。

基本的に楽曲はいつも通りの水曜日のカンパネラといった感じ。あえて言えば「マーメイド」にちょっとラテン風のリズムを取り入れている点とか、「幽霊と作家」ではストリングスやピアノを入れて爽やかにまとめている点とか、バラエティーを加えている点はあるのですが、ここらへんも完全に目新しいかと言われると微妙なところ。

ほぼ毎年リリースが続いていますし、正直言うと、大いなるマンネリと言われても、ちょっと否定できない部分もあります。ただ一方で、これだけ水曜日のカンパネラらしい楽曲が続いても、聴いていて飽きが来たのか、と言われると全くそういう訳ではありません。今回も8曲入りのミニアルバムという一気に聴き切れるようなボリュームという点も大きな要因なのですが、聴いていて最後まで耳の離せないようなワクワク感もあるポップチューンの並ぶアルバムになっています。

それはやはりそれだけ、ケンモチヒデフミの書くメロディーラインやサウンドが、ポップスとして強度が強いからでしょう。軽快でテンポのよいリズムは、リスナーの壺を正確についてきますし、それはポップなメロディーラインも同様。素直にリスナーの心を楽しませるような作風が非常に魅力的で、それが水曜日のカンパネラの大きな魅力となっています。

そんな訳で、本作もまた文句なしの傑作アルバムといえる作品。その勢いはまだまだ止まっていません。これからどんな作品が飛び出してくるのか、これからもまだまだ楽しみです。

評価:★★★★★

水曜日のカンパネラ 過去の作品
私を鬼ヶ島へ連れてって
ジパング
UMA
SUPERMAN
ガラパゴス
猫は抱くもの(オリジナル・サウンドトラック)
YAKUSHIMA TREASURE(水曜日のカンパネラ&オオルタイチ)
ネオン
RABBIT STAR★


ほかに聴いたアルバム

ぼくらの涙なら空に埋めよう/マカロニえんぴつ

マカロニえんぴつの新作は4曲入りのEP盤。アニメ「忘却バッテリー」のエンディングテーマともなっている「忘レナ唄」をはじめ、4曲中3曲がタイアップという点でも彼らの勢いのほどがわかりますが、おそらく現在、ポップミュージシャンでは最も脂ののっているのが彼らではないでしょうか。4曲入りながらも4曲ともタイプが別々の曲が並び、そのいずれもメロディアスでインパクトあるポップスが並んでいます。わずか4曲のEP盤ながらも、今の彼らの勢いを感じさせる充実盤に仕上がっていました。

評価:★★★★★

マカロニえんぴつ 過去の作品
season
hope
愛を知らずに魔法は使えない
ハッピーエンドへの期待は
wheel of life
大人の涙

ヒカシュー ゴールデン☆ベスト/ヒカシュー

複数のレコード会社共通タイトルとしてリリースされている廉価版ベスト「ゴールデン☆ベスト」シリーズの本作はヒカシュー版。最近はライブ活動が中心のようですが、1970年代から活動を続けているテクノポップバンドで、P-MODEL、プラスティックスと並んで「テクノポップ御三家」とも呼ばれたそうです。ヒカシューのアルバムを聴くのは本作が初なのですが、以前、一度だけライブは見たことがあります。軽快なテクノポップが予想以上に楽しいステージでした。本作も、軽快なテクノポップの作品が聴けるのですが、全体的にはアバンギャルドやフリージャズ的な要素も強く、ポップという観点ではもうちょっとリスナーを選ぶ部分もあるかも。ただ、テクノポップ黎明期から活躍する「レジェンド」的なバンドであることは間違いないだけに、ヒカシューについて手軽に知れるという意味ではチェックしたいベスト盤です。

評価:★★★★

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2024年7月22日 (月)

前作とは対となる女性ボーカリストとのコラボ作

Title:放生会
Musician:椎名林檎

ベスト盤や、グッズ騒動で騒ぎとなった曰くつきのリミックスアルバムのリリースがありつつ、ニューアルバムとしては前作「三毒史」以来、約5年ぶり、久しぶりとなる椎名林檎の新作。今回、新作の発売が発表されたのはデビュー26周年の記念日で、リリース日のわずか2日前。まさにサプライズという状況でのリリースとなりました。

前作「三毒史」も仏教用語である「三毒」とから取られた作品なのですが、今回の「放生会」も、捕獲した生き物を野に放つという宗教儀式に基づいて命名されたタイトル。ただし、彼女の地元、博多の三大祭りの一つから命名されたそうで、一般的な読み方である「ほうじょうえ」ではなく、祭りの読み方である「ほうじょうや」と読むそうです。前作「三毒史」は「死」をテーマとしたアルバムになっていたのに対して、今回のアルバムは「あらゆるものを手放さないまま生きる人々」をテーマとしているアルバムに。また、前作は男性ボーカリストとのコラボとなりましたが、今回は女性ボーカリストとのコラボ曲と椎名林檎ソロ曲を交互に並べるアルバムになっており、いろいろな面で前作「三毒史」と対照的になる作品に仕上がっていました。

まず楽曲自体は非常によく出来ていると思います。いつもの椎名林檎と同様、ロックをベースとして、ジャズや歌謡曲、「私は猫の目」のようにストリングスを入れてきた里、「初KO勝ち」のようなファンクの要素を入れたり、「茫然も自失」のようなラテンの要素を入れてきたりと多彩。ただ一方で、どの曲も良くも悪くも椎名林檎らしい作品になっており、目新しさはありません。とはいえ、マンネリかと言われると、そこまで感じさせないのは楽曲のクオリティーが高水準で安定しているから、でしょうか。以前のような刺激的、挑戦的な作品はないものの、安心して楽しめる楽曲が並んでいました。

ただ、そんな楽曲にマンネリズムを感じさせなかった大きな要素としてはゲストの女性ボーカルの存在が大きいでしょう。まさにアルバムテーマに沿ったようなタイトルの「生者の行進」は、椎名林檎らしいジャジーでムーディーな作品なのですが、ゲストボーカルAIのパワフルなボーカルが強い印象に残る作品。以前、ベスト盤にも収録された椎名林檎と宇多田ヒカルという、日本女性ボーカリストの2大巨頭のコラボ「浪漫と算盤」も椎名林檎作詞作曲の作品ながらも、宇多田ヒカルボーカルが入ると、一気に宇多田の作品になってしまうあたり、宇多田ヒカルのボーカリストとしてのすごさを感じます。

個人的に予想以上によかったのが、新しい学校のリーダーズとのコラボ「ドラ1独走」。新しい学校のリーダーズのSUZUKAとのデゥオとなるのですが、ヘヴィーなギターロックの作品に、ドスの利いた力強さのあるSUZUKAのボーカルがピッタリとマッチ。パフォーマンスを軸に語られることの多い新しい学校のリーダーズですが、SUZUKAのボーカリストとしての力量を感じさせます。ラストの「ほぼ水の泡」も、こちらチャラン・ポ・ランタンのももとのボーカルがマッチ。ボーカリストとしての方向性は似たようなものを感じさせる両者ですが、最後はアルバムのテーマに沿った生への楽しさを歌ったこの曲ですが、ある意味、似たようなタイプの2人が和気あいあいと歌っているような楽曲となっており、逆にボーカルの類似性をよく生かした曲となっています。

ただ、前作「三毒史」は男性ゲスト陣に引っ張られる形で、ゲスト勢の個性が出し、ゲストのフィールドに椎名林檎が加わるような曲もあり、その結果、楽曲のバリエーションが加わったような印象を受けます。一方で今回のアルバムは、女性ボーカリストがそれぞれに個性を出していたのですが、あくまでも椎名林檎のフィールドの中でゲストボーカルが参加している作品になっていたように感じます。あえて言えb、自分のフィールドに引きずり込んだのは宇多田ヒカルくらいでしょうか。そのため、アルバム全体としても前述の通り「良くも悪くもいつもの椎名林檎」というイメージが強くなる出来になっていたように思います。

「三毒史」と対となるようなアルバムでしたが、出来としては前作「三毒史」には及ばなかったかも。とはいえ今回のアルバムも十分「傑作」の範疇に入るアルバムには間違いありません。ただ、良くも悪くもミュージシャンとして安定感を覚える作品。そろそろガラッと彼女のイメージを更新するような作品をリリースしてくるのか、はたして・・・。

評価:★★★★★

椎名林檎 過去の作品
私と放電
三文ゴシップ
蜜月抄
浮き名

逆輸入~港湾局~
日出処
逆輸入~航空局~
三毒史
ニュートンの林檎~初めてのベスト盤~
百薬の長


ほかに聴いたアルバム

BRIGHTNESS/Nothing’s Carved In Stone

Nothing's Carved In Stoneの約2年半ぶりとなる新作は、全7曲入りとなるEP盤。7曲入りという短さを考慮してか、全編メランコリックなメロディーラインと、シンセも入った分厚くダイナミックなサウンドで一気に押し切るような作品に仕上がっています。似たようなタイプの曲が並んでいる一方、実に彼ららしい作品が並ぶアルバムともとれる作品で、約30分というアルバムの短さもあって、テンションをあげたまま、一気に聴き切れるような作品に。いい意味で勢いのある作品となっていました。

評価:★★★★

Nothing's Carved In Stone 過去の作品
Strangers In Heaven
By Your Side
ANSWER

THE LAST ANTHEMS /HAWAIIAN6/dustbox/locofrank

HAWAIIAN6、dustbox、locofrankという、既にベテランの域に入る3バンドが、それぞれ新曲を持ち合って集結したスプリットアルバム。2013年に同じく3バンドが集まってリリースした「THE ANTHEMS」に続く第2弾となります。基本的に、どのバンドもメロディアスなパンクロックを奏でているのですが、その中でもHAWAIIAN6はより哀愁感の強いメロディーを聴かせる作品に、dustboxはよりポップ色が強く、locofrankはパワーポップの色合いが強いという、3バンドがそれぞれの持ち味を出している点が面白く、またアルバムにバリエーションを持たせています。おそらく3バンド共通して聴いているようなファンが多そうですが、3バンドの中のどれかのファンにとっては、別のバンドに出会う、ちょうどよいきっかけにもなりそう。

評価:★★★★

HAWAIIAN6 過去の作品
BONDS
The Grails
Where The Light Remains
Dancers In The Dark
Beyond The Reach
The Brightness In Rebirth

dustbox 過去の作品
Seeds of Rainbows
Blooming Harvest

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2024年7月21日 (日)

自主レーベル第1弾は彼女の実力を遺憾なく発揮した充実作

Title:Slash-&-Burn
Musician:Daoko

永井聖一たちとのバンド活動、QUBITとしての新作リリースはあったものの、個人名義のニューアルバムとしては約4年ぶりとなる新作。彼女はもともと中学3年生の時にニコニコ動画へのラップ動画の投稿で話題となり高校生でのインディーデビューが大きな話題となりました。その後、「打ち上げ花火」や「ステップアップLOVE」のヒットもあり、紅白への出演も果たしました。ただ、ヒットした曲はいずれも他のミュージシャンとのコラボ作。Daoko単独名義ではコラボ作ほどのヒットはリリースできず。現在は個人事務所「てふてふ」を設立し、本作は自主レーベル第1弾のアルバムとなるそうです。

デビュー時には大きな注目を集めたものの、現在は人気という側面では伸び悩んでいる感もある彼女。しかし、そんな中リリースされた新作は、むしろアルバムの出来栄えとしては最高傑作。彼女の音楽的な才能を遺憾なく発揮した作品に仕上がっています。まず軽快でリズミカルなエレクトロチューン「天使がいたよ」から、続いての「FTS」の展開が耳を惹きます。「FTS」はダウナーでドリーミーなサウンドが印象に残るナンバー。小袋成彬が編曲を手掛けるこの曲は、エレクトロサウンドにリズミカルなビートが加わるサウンド的には挑戦的な楽曲となっています。

その後もダークな雰囲気のナンバーがあるかと思えば、ポップでメロディアスな歌モノが展開されたりと、彼女の音楽性の広さを感じさせます。例えばミディアムファンクチューンの「BLUE GLOW」は、その後もちょっと怪しげなゴシック調の「GAMEOVER」へと展開したかと思えば、中盤の「捨てちゃってね」は暖かさと切なさを感じさせるフォーキーな歌モノに。さらに後半の「NovemberWeddingDay」はメロウでダンサナブルなポップと、様々な作風の曲を聴かせてくれます。

サウンド面でもユニークで挑戦的な楽曲が多く、ボカロPの羽生まゐごが編曲を手掛ける「好×2+嘘×2」はコミカルでトライバルなサウンドがインパクトの強い楽曲となっていますし、GuruConnect編曲の「ONNA」でも、ダウナーなサウンドに細かく刻むビートが印象的な作品。様々なメンバーをゲストに招いた本作は、非常に挑戦的なサウンドメイキングも特徴となっています。

さらに、Daoko本人の描く歌詞にも注目したいところ。内省的な歌詞の多い本作は、ところどころにドキッと来るようなフレーズが飛び出してきます。例えば

「ヒットソングも書けないけれど
勿体ないが仕方ない
やりたい放題やらせてよ ねえ」
(「SLUMP」より 作詞 Daoko)

と歌う「SLUMP」は、彼女の正直な感情を吐露しているようでドキっとします。ネットスラング的な単語もちりばめつつ、素直な感情を綴ったような楽曲が多いのも印象的な作品となっていました。

そしてなんといっても魅力的なのがDaokoのボーカル。ハイトーンで、ちょっとチャイルディッシュな雰囲気のあるキュートなボーカルが魅力的。楽曲にもピッタリとマッチしており、バラエティー富んだ今回の作品に統一感を持たせる大きな要素となっていました。

あらゆる面でDaokoの魅力を遺憾なく発揮した傑作アルバム。今年のベスト盤候補の1枚とも言える充実作に仕上がっていました。コラボ作しかヒットしなかった彼女ですが、これだけの作品を作れるのですから、Daoko単独名義でももっともっとヒットを飛ばしてもいいと思うんですけどね。あらためて彼女の実力を実感できた作品でした。

評価:★★★★★

DAOKO 過去の作品
DAOKO
THANK YOU BLUE
私的旅行
anima


ほかに聴いたアルバム

Slightly Better Than No Lie-Sense/No Lie-Sense

ご存じムーンライダーズの鈴木慶一と、劇作家としても活躍しているケラリーノ・サンドロヴィッチことKERAが結成したユニットによるベストアルバム。アバンギャルドな音をコミカルに聴かせる独特の世界観が非常にユニーク。はまる人にははまりそうですが、個人的には、ちょっとゴチャゴチャしたサウンドと、コミカルなサウンドがいまひとつ壺にはまらず。凝ったアルバムであることはわかるのですが、あまり好みではなかったかも。

評価:★★★★

No Lie-Sense 過去の作品
駄々録~Dadalogue

Lost In Love/MIYAVI

最近では(正直、微妙な評価となっている)YOSHIKI率いるTHE LAST ROCKSTARSの一員としても活躍しているギタリストMIYAVIの約3年ぶりとなるニューアルバム。最近はエレクトロ主体の作品が続いており、正直、ちょっと物足りなさを感じていたのですが、今回は久々にゴリゴリのギターサウンドを押し出した作品に。エレクトロの要素は強く、その点では最近の作品の流れは継いでいるものの、全体的にギターを取り入れてダイナミックな作風に回帰した彼らしい作品になっています。メランコリックなメロディーラインはいかにも今風で、ちょっと流行に乗ろうとする姿が露骨な感じもしたのですが、全体的に久々にMIYAVIを聴いたという満足感を覚えるアルバムでした。

評価:★★★★

MIYAVI 過去の作品
WHAT'S MY NAME?(雅-MIYAVI-)
SAMURAI SESSIONS vol.1(雅-MIYAVI-)
MIYAVI
THE OTHERS
FIRE BIRD
ALL TIME BEST "DAY2"
SAMURAI SESSION vol.2
SAMURAI SESSIONS vol.3- Worlds Collide -
NO SLEEP TILL TOKYO
Holy Nights
Imaginary

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2024年7月20日 (土)

人気ラッパーと人気プロデューサーのコラボ

Title:WE DON'T TRUST YOU
Musician:Future&Metro Boomin

Title:WE STILL DON'T TRUST YOU
Musician:Future&Metro Boomin

今やヒットシーンの中で代表的なジャンルとなったトラップの第一人者であるアメリカのラッパー、Futureと、数多くのラッパーと組んでヒット曲をリリースしてきたプロデューサー、Metro Boominがコラボを組んだアルバム。3月に「WE DON'T TRUST YOU」というアルバムをリリースしたかと思えば、4月にはその続編となる「WE STILL DON'T TRUST YOU」という、前作から呼応したユニークなタイトルのアルバムを2枚組というボリュームでリリースし話題となっています。

Futureはデビューから既に10年以上活躍し続ける中堅ラッパーで、毎作、ヒットを飛ばしていますが、今回のニューアルバムも2作とも難なくチャート1位を獲得。その人気のほどを見せつけています。それだけの人気を誇るラッパーなだけに今回のアルバムに関しても参加しているミュージシャンが超がつくほど豪華。「WE DON'T TRUST YOU」ではthe WeekndやTravis Scott、Kendrick Lamar、「WE STILL DON'T TRUST YOU」では同じくthe WeekndやJ. Cole、ASAP Rockyといった日本でもおなじみの有名ラッパーが名を連ねています。

その2作連続してリリースされた今回のアルバムですが、その両者の違いは明確。どちらもトラップらしいリズミカルな哀愁たっぷりのサウンドが流れるのですが、「WE DON'T TRUST YOU」は基本的にはラップのアルバム。一方、「WE STILL DON'T TRUST YOU」では歌モノがメインのアルバムとなっています。ただ、「WE DON'T~」でもラップとはいえ、歌心のあるメロディアスなフロウを聴かせてくれますし、「WE STILL~」でも比較的ダウナーで淡々とした歌も多いので、続けて聴いてひとつの作品と感じらえるような構成になっていました。

また、基本的にダウナーなメランコリックな作風の曲が続いており、全体として似たタイプの曲が多い印象も。そのような中で、「WE DON'T TRUST YOU」ではKendrick Lamarが参加している「Like That」のちょっと物悲しい感じの語るようなラップが印象的。Rick Rossが参加している「Everyday Hustle」のくすんだ雰囲気のラップとサウンドも耳を惹きます。一方、「WE STILL DON'T TRUST YOU」では、The Weekndが参加している「All to Myself」のメロウなソウルチューンが絶品。「Right 4 You」も、懐かしいBoyz Ⅱ Menの「End Of The Road」のワンフレーズが用いられているメロウなナンバーとなっています。

ある意味、目新しさや「これ」といった楽曲は正直ないのですが、良い意味で安心して聴けるアルバムだったと思います。似たようなタイプの曲が多いとはいえ、それなりにバリエーションも加え、「WE DON'T~」は1時間弱、「WE STILL~」は1時半弱、しっかりと聴き切れるボリュームになっていました。メロウでポップな要素も強いアルバムなので、HIP HOPリスナーだけではなく比較的幅広いリスナー層が楽しめそうな作品です。

評価:どちらも★★★★


ほかに聴いたアルバム

Lives Outgrown/Beth Gibbons

イギリスのロックバンド、Portisheadのボーカリストによる初のソロ作。基本的にはアコースティックなサウンド主体でメランコリックに、かつダウナーに聴かせる作風ですが、所々にヘヴィーなギターサウンドやバンドサウンドも加わり、ダイナミックさも感じる構成に。彼女の伸びやかな歌声も大きな魅力。全体的には落ち着いた雰囲気のアルバムですが、時折加わるダイナミックなサウンドにロックな要素も強く感じ、思わず聴き入ってしまうようなアルバムでした。

評価:★★★★★

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2024年7月19日 (金)

ヨーロッパ3部作を堪能

今回も最近読んだ音楽関連の書籍の紹介です。

「バハマ・ベルリン・パリ〜加藤和彦ヨーロッパ3部作」。ザ・フォーク・クルセイダーズやサディスティック・ミカ・バンドでの活躍でもおなじみの加藤和彦が1979年から1981年にかけてリリースされたアルバム「パパ・ヘミングウェイ」「うたかたのオペラ」「ベル・エキセントリック」の3枚。ベルリンやパリなどで録音が行われ、また音楽的にもヨーロッパの音楽に向き合ったアルバムとして「ヨーロッパ三部作」と呼ばれています。音楽的な評価もかなり高く、J-POP史上に残る名盤としてあげられることも多いこの3枚ですが、そのレコーディング風景を関係者の証言により綴られたのが本作。さらにはこのヨーロッパ三部作のCDも封入されています。もともと2014年に発売されていたものの、その後、絶版。ただ、先日も紹介した映画「トノバン 音楽家 加藤和彦とその時代」公開にあわせて再販され、私も手にとってみました。

書籍の方は、このヨーロッパ3部作の各々のアルバムについて、レコーディング時のエピソードが綴られており、さらには加藤和彦手書きによるコード譜や安井かずみの手書きの歌詞、当時の貴重な写真などもおさめられています。A4版サイズの大きめの書籍に、当時を物語る写真や貴重な資料が載っており、見ごたえは十分。ファンにはたまらない資料を楽しむことが出来ます。

ただ、書籍のメインとなるレコーディング風景を綴った本文の方はそんなにボリュームは多くありません。先日の映画でも語られていたエピソードも多く、ここだけを目当てとすると、若干、物足りない部分もあるかもしれません。とはいえ、それを差し引いても、レコーディング当時のエピソードが数多く語られており、こちらも資料的価値は十分。特に加藤和彦というと、かなりこだわりの多い天才肌のミュージシャンというイメージがあり、この証言でもそのエピソードが多く語られていますが、一方、歌詞の世界観については安井かずみが直接指示をしていたり、また加藤和彦の歌い方についても安井かずみが指導していたり、(映画でも語られていましたが)まだ決まっていないイントロ部分を坂本龍一に任せせたりと、天才肌というとよくありがちな、全部自分でやらないと気が済まない、というタイプではなく、音楽的なこだわりは強いけど、いろいろな人に適材適所に任すスタンスだったということを感じます。もともと、フォークルというバンド出身で、その後もミカバンドのようなバンドを結成していたので、そういったバンド気質を持っていたのでしょうか。

そして本作最大の魅力は、なんといってもヨーロッパ3部作がそのままCDで封入されている点でしょう。ストリーミングで聴けるようになった昨今では以前ほどの貴重性はないかもしれませんが、それでもボーナストラック付で3部作がそのまま収録されており、お値段5,500円というのはかなりのお得感があります。2014年の初版の時はプラスティックケースにおさめられてスタイルだったようですが、残念ながら復刻版では、本の裏表紙部分にポケットがついて、そこに収納されているスタイル。その点はちょっと残念とはいえ、レコーディングのエピソードを読みながらヨーロッパ3部作を聴けるというのは、かなり貴重な体験と言えるでしょう。そんな訳で、その名盤3枚を簡単にレビュー。

Title:パパ・ヘミングウェイ
Musician:加藤和彦

ヨーロッパ3部作の冒頭を飾る1枚であり、おそらく、J-POPの名盤ガイドではもっとも紹介されるケースの多い作品ではないでしょうか。この作品だけは、以前聴いたことがありました。バハマとマイアミで録音された本作はエキゾチックさ満載で、そんなレコーディングの場所も反映されたのでしょうか、3部作の中では南国の雰囲気を感じさせる空気感も漂う作品となっています。

ただ、ちょっと気になったのは加藤和彦自身のボーカル。彼自身、やはりこのスタイルに歌いなれていなかったのか、聴いていて若干チグハグな印象は否めません。正直言って、聴いていてちょっと気になってしまった部分でした。しかし、そのボーカルをおぎなってあまりあるかのようなサウンドの面が非常に魅力的。ドラムスに高橋幸宏、ピアノに坂本龍一というYMOのコンビに、ギターが大村憲司、ベースが小原礼という今となっては「レジェンド」が揃っているようなバンドメンバーが奏でるサウンドは、フレンチっぽさを感じつつも、バックにはどこかソウルミュージックにも通じるようなグルーヴ感もあり、聴けば聴くほどはまってしまうような魅力があります。

メロウな作風はAOR、さらには今で言えばおそらくシティポップに通じるようなサウンドと言えるでしょう。今聴いても全く時代遅れのようなものを感じない作品で、奥深いそのサウンドは何度聴いてもあらたな発見があるような作品。文句なしにJ-POP史上に残る名盤です。

評価:★★★★★

Title:うたかたのオペラ
Musician:加藤和彦

ヨーロッパ3部作2作目は(当時の)西ベルリンで作成された作品。バンドメンバーは相変わらず豪華で、坂本龍一が急病のためキャンセルとなったそうですが、代わりに矢野顕子が参加。さらには高橋幸宏に加えて細野晴臣が参加している他、清水信之や松武秀樹とまさに「レジェンド」たちが多く参加しているかなり豪華なラインナップとなっています。

全体的には前作よりもさらにエキゾチックさは増した感はあり、表題曲「うたかたのオペラ」は哀愁たっぷりのタンゴ。続く「ルムバ・アメリカン」はタイトル通りのルンバとエキゾチックな空気感ただよう作品に。そしてもうひとつ大きな特徴なのは、これが録音された西ベルリンという特殊な環境が与えている影響。先日の映画でも、本書の証言にも記載されているのですが、当時の西ベルリンは、共産国歌である東ドイツがまわりを囲んでいるという非常に特殊な環境で、壁をひとつ超えると、自由のない共産国歌という異質な環境が、どこかアルバム全体に影を落とすような、そんな雰囲気のアルバムに仕上がっているように感じました。

もちろん内容的には前作に引き続きJ-POPに残るような名盤であることは間違いありません。作風としては1作目と3作目の中間に立つような感じなのですが、3枚を通じて聴いてヨーロッパ3部作の移り変わりを感じられるという意味でも重要な作品だったと思います。

評価:★★★★★

Tilte:ベル・エキセントリック
Musician:加藤和彦

パリと東京で録音したヨーロッパ3部作の最終作。エキゾチックな雰囲気は3部作共通なのですが、パリという空気感を反映してか、もっともヨーロピアンな雰囲気の漂う作品となっています。

この3部作を通じて、その移り変わりとして大きな特徴と感じるのは、後ろの作品になるほど「歌」を重視した作風になってくるという点。「パパ・ヘミングウェイ」の感想でも書いたのですが、当初、加藤和彦のボーカルは正直、曲調からするとチグハグな感は否めません。しかし、2作目3作目に至るにつれて、徐々に歌い方も板についてきており、聴いているこちら側が彼の歌い方に慣れてきた、という点もあるのかもしれませんが、曲調と彼のボーカルの違和感が徐々になくなっていきました。その結果として、楽曲としてより「歌」をシフトするようなスタンスに。もちろん、「パパ・ヘミングウェイ」同様、手練れの実力派ミュージシャンによるサウンドも魅力的なのですが、それ以上に「歌」に強い魅力を感じる作品になってきていました。

そしてもう1つが、後期作になるほどシンセを取り入れた曲調が目立ってきたという点。この3部作はYMOのメンバーも制作に参加していますし、さらにはこの時期、ちょうどYMOがブレイクした時期と重なります。加藤和彦というと、常に時代の半歩先を行くような音楽性を取り込もうとするスタンスを映画でも語られていましたが、まさにこの当時、時代の半歩先を行くようなエレクトロのサウンドを、自らの楽曲にも積極的に取り込もうとしていたそのスタンスを強く感じます。

結果として、ヨーロッパ3部作の最終形とも言えるこのアルバム。一般的なJ-POPの名盤ガイドには1作目の「パパ・ヘミングウェイ」がよく取り上げられますが、個人的にはヨーロッパ3部作の完成形としての本作が、出来としてはもっともよかったように思います。間違いなくJ-POP史に残る傑作アルバム。加藤和彦のすごさを感じらえる作品でした。

評価:★★★★★

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2024年7月18日 (木)

1位2位はネット発のミュージシャン

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

1位2位は人気のネット発ミュージシャンがランクインしています。

まず1位を獲得したのはAdoのニューアルバム「残夢」。CD販売数及びダウンロード数共に1位獲得。カバーアルバムや、映画「ワンピース」の劇中歌を収録したアルバム「ウタの歌 ONE PIECE FILM RED」のリリースはあったものの、純粋なオリジナルアルバムとしては約2年半ぶり2枚目となるアルバムとなります。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上10万枚で1位初登場。前作「狂言」の初動14万2千枚(1位)からはダウンしています。

2位は動画サイトで活躍している男性4人組ユニット、浦島坂田船「Wedding」が初登場。オリコンでは初動売上4万8千枚で2位初登場。前作「Plusss」の初動5万1千枚(3位)からダウンしています。

3位は先週1位を獲得した韓国の男性アイドルグループRIIZE「RIIZING」が2ランクダウンながらもベスト3をキープしています。

続いて4位以下の初登場盤ですが、4位にスキマスイッチ「A museMentally」がランクイン。約2年8ヶ月ぶりとなるニューアルバム。5位には日本の男性アイドルグループIVVY「ARROWS」が初登場。7曲入りのEP盤。6位初登場はMyGO!!!!!/Ave Mujica「BanG Dream! Cover Collection Extra Volume」。メディアミックス作品「BanG Dream!」からの架空のバンドによるカバーアルバム。7位は瀬戸内地域を拠点に活動する秋元康系女性アイドルグループSTU48「懐かしい明日」が初登場。8位には山下達郎「ADD SOME MUSIC TO YOUR DAY」がランクイン。彼が1972年に自主制作でリリースしたアルバム。過去に既にLPやCDで再発されていましたが、このたび、最新リマスター版がLPでリリースされたものがランクインしています。そして最後は9位に女性声優斉藤朱夏「555」が初登場。女性声優ユニットAqoursのメンバーとしてデビューした彼女が、デビュー5周年でリリースした5曲入りのミニアルバムです。


今週のHeatseekers Songs

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=heat_seekers

今週のHeatseeekersは男性シンガーソングライター808「You」が先週に引き続き1位を獲得。これで通算5週目の1位獲得となりました。


今週のTikTok Weekly

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=tiktok

TikTok WeeklyはKOMOREBI「Giri Giri」が先週まで5週連続の1位をキープしてきましたが、今週は鹿乃子のこ (CV.潘めぐみ) & 虎視虎子 (CV.藤田 咲) & 虎視餡子 (CV.田辺留依) & 馬車芽めめ (CV.和泉風花)「シカ色デイズ」が1位獲得。アニメ「しかのこのこのここしたんたん」主題歌ですが、中毒性の高いリズムと歌詞が話題となり、ダンス動画がTikTok上で拡散され、ヒットにつながっています。

なお、今週のニコニコVOCALOID SONGSはニコニコ動画休止の影響で今週もチャートは発表されていません。

今週のHot Albums&各種チャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2024年7月17日 (水)

ついに1位獲得!

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

ベスト10初登場から13週目にして、ついに1位獲得です。

Lilac

今週、Mrs.GREEN APPLE「ライラック」がついに1位を獲得です。ランクインから14週目、ベスト10入りからは13週目にしての初の1位獲得。特にストリーミング数が今週で4週連続で1位を獲得。今週、動画再生回数も4位から3位、ダウンロード数は11位から6位と大きくアップし、初の1位獲得となりました。テレビ東京系アニメ「忘却バッテリー」オープニングテーマ。アニメの方は7月3日で最終回を迎えているので、純粋に楽曲の力での1位獲得といったところでしょうか。ベスト3ヒットは通算7週目。さらにMrs.GREEN APPLEは今週、「青と夏」が14位から10位にアップし、昨年9月6日付チャート以来のベスト10返り咲き。通算8週目のベスト10入りを決めています。さらにベスト20のうち、13位に「ケセラセラ」、14位に「コロンブス」、19位に「アポロドロス」と、同時に5曲ランクイン。「コロンブス」騒動でネガティブイメージを持たれてしまった感もあった彼らでしたが、それを物ともしない勢いを感じさせます。

2位には旧ジャニーズ系アイドルグループSixTONES「GONG」がランクイン。CD販売数1位。日テレ系ドラマ「ACMA:GAME アクマゲーム」挿入歌。オリコン週間シングルランキングでは初動売上42万6千枚で1位初登場。前作「音色」の初動52万3千枚(1位)よりダウンしています。

Creepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」は今週も3位をキープ。ストリーミング数は4週連続の2位、動画再生回数も2週連続の2位、ダウンロード数は9位から11位にダウン。これで26週連続のベスト10ヒット、通算24週目のベスト3ヒットとなります。

続いて4位以下の初登場曲ですが、まず4位に韓国の男性アイドルグループBOYNEXTDOOR「One and Only」がランクイン。CD販売数2位。オリコンでは同曲が収録された「AND,」が初動売上18万6千枚で2位初登場。本作が初のシングル作品となります。

8位にはGEMN「ファタール」が初登場。テレビアニメ「【推しの子】」オープニングテーマ。旧ジャニーズ系アイドルグループSexyZoneの元メンバー中島健人と「青のすみか」が大ヒットを記録したシンガーソングライターキタニタツヤによるユニット。ダウンロード数3位、ストリーミング数11位、動画再生回数4位。「【推しの子】」のオープニングといえば、YOASOBIの「アイドル」が大ヒットを記録しましたが、それに続く大ヒットとなるでしょうか。

また、今週は「青と夏」と、あと1曲ベスト10返り咲き曲が。tuki.「晩餐歌」が今週11位から9位にアップ。2週ぶりにベスト10に返り咲いています。これで通算31週目のベスト10ヒットとなります。

ロングヒット曲ではOmoinotake「幾億光年」が今週7位から5位にアップ。ストリーミング数は9週連続の3位。動画再生回数が12位から9位にアップ。これで22週連続のベスト10ヒットとなりました。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums&各種チャート!

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2024年7月16日 (火)

ブレイク後の狂乱ぶりとその後のマイペースな活動を描く

今回は最近読んだ音楽関連の書籍の紹介です。

「『たま』という船に乗っていた らんちう編」。1990年に「さよなら人類」が大ヒットを記録し、一世を風靡したバンド、たま。そのドラマーであり、「たまのランニング」という愛称でも知られる石川浩司がたまの活動を綴った自叙伝「『たま』という船に乗っていた」という本を以前、刊行していたのですが、本作は、同書をコミカライズしたもの。以前、同書の分冊版を紹介したことがあり、その後、前編は「さよなら人類編」として書籍化もされたのですが、本作はその後編となります。

本書を手掛けるのは漫画家の原田高夕己。もともとたまの熱烈なファンで、今回のコミカライズも彼自らの売り込みによるものだそうです。前回も書いたのですが、画風は完全に藤子不二雄Aのパロディー。時折、そのほか昭和の漫画家の画風が混じりつつ、全体的には徐々に自らの画風を確立させようとしている最中といった感じでしょうか。前にも書いたのですが、藤子不二雄ファンの私としてはA先生のフォロワーというのは素直にうれしくも感じます。

前作では彼らの結成にまつわるエピソードから、アンダーグラウンドで徐々に活動を活発にさせつつ、90年代に一世を風靡したバンドオーディション番組「いかすバンド天国」へ出演するまでのエピソードが描かれていました。今回のエピソードは、彼らが「イカ天キング」となりメジャーデビュー。さらには当時「たま現象」とまで呼ばれた大ブレイクの時期を経て、レコ大や紅白の出演。その後、徐々に人気が落ち着き、インディーズに舞台を移して、マイペースに活動。メンバー柳原幼一郎の脱退を経て、3人組となっての活動。そしてたまの解散に至るまでの物語を描いています。

やはり一番おもしろかったのは、大ブレイクしていた時期のたまをめぐる世間の狂乱ぶり。レコ大や紅白出演時のエピソードやかなり多忙だった時期のエピソード、強烈なファンのストーカーぶりやコンサートでのエピソードなど、人気に浮かれていたというよりも、メンバーの困惑ぶりが伝わるような内容になっています。ただ、今だからこそ思うのですが、彼らみたいなある意味「アングラ」むき出しのバンドが、その音楽性のまま、あれだけの人気ぶりを見せたのは、やはり異常だったと思うし、だからこそ「たま現象」など言葉も生み出されたのでしょう。

それは本人たちが一番よくわかっていたようで(漫画内のセリフで知久が「10人が10人自分たちの音楽が好きだったらおかしい」という発言をしていますし)、それだけにその後、人気が落ち着いてきた後も、そのこと自体に全く悲壮感などはありません。これは原書の方に書いてあったのですが、人気が落ち着いた後は、ライブ動員もCDの売上もほとんど変わらなかったそうで、また最後まで音楽だけで食べていける人気を保ち続けていたそうです。実際、漫画でも、最後の解散ライブまで一定以上の人気は確保していたことがうかがえ、それだけに人気面で気にしなくてもよいマイペースな活動ぶりは漫画からも伝わってきます。

さて今回のコミカライズに関しては、基本的に原書を元にしながらも、新たなエピソードなどを加えた他、原書のエピソードも上手く組み合わせてよりドラマ性を強調した構成になっていました。例えば、たまを大絶賛し、「『たま』の本」を遺作として記した評論家の竹中労とのエピソードも、原書ではただワンパラグラフだけで登場する話なのですが、漫画版では同じエピソードを上手く分解して、物語の中に上手く配することによって、竹中労とたまの出会いから最後に会ったエピソードまで、よりドラマチックに表現しています。たまの解散に関して、知久寿焼がたまを辞めると言い出したエピソードにしても、原書では比較的あっさり書いているのに対して、漫画版では大コマや絵を効果的に用いることによって、非常に心に来る表現となっており、読んでいて思わずジーンと感じるものがありました。全体的に物語の組み立てや、絵の効果的な表現の上手さを強く感じますし、まただからこそ画風はA先生のパロディーでも、違和感なく楽しむことが出来たのでしょう。

また、もうひとつ印象的だったのは、原書に比べて、原田高夕己の漫画となったことによって、これがあくまでも石川浩司によるたまのエピソードだ、というイメージが読んでいて強くなったように感じます。原書の方は、あくまでも石川浩司の一人称で物語が進んでいくだけに、これがあくまでも石川浩司によるたまのエピソードである、ということを逆に意識せずに読み進められたように思います。しかし、漫画版では原田高夕己によるコミカライズによって、客観性も加わることによって、逆にこれがあくまでも石川浩司視点での物語である、ということが強調されたように感じます。それだけに、他のメンバーは同じエピソードをどのように見ていたのか、興味を抱いてしまいました。

そして何より、この漫画が優れていたのは、読んでいてあらためてたまの音楽を聴いてみたいと感じさせてくれる力量があったという点でしょう。物語の中でも要所要所にたまの曲の歌詞が登場してきますし、ライブ風景も描かれていますが、あらためて、彼らの音楽を聴いてみたい、そう強く感じさせる物語でした。国民的ブレイクの後に、人気が落ち着いてしまうと、短期間で解散に至ってしまうバンドが大多数の中、たまというバンドは、アンダーグラウンドシーンに登場し、国民的ブレイクを経て、最後はマイペースな活動を長く続けてその活動を終えるという、ある意味、非常に稀有なバンドです。それだけに、彼らをめぐるエピソードは興味深く楽しむことが出来ました。たまというバンドが初耳の方や「さよなら人類」のブレイクしか知らない方にも、ひとつのバンドの物語としてお勧めしたい1冊です。あらためてたまというバンドのすばらしさを感じることが出来、かつ、純粋にバンドの物語を楽しむことが出来た1冊でした。

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2024年7月15日 (月)

グラミー賞受賞で知名度が一気にアップ

Title:Night Reign
Musician:Arooj Aftab

前作「Vulture Prince」が大きな話題を呼んだアメリカはニューヨーク・ブルックリンを拠点に活躍するパキスタン出身の女性シンガーソングライター。前作の時点で、日本では完全に無名のミュージシャンで、前作を聴いた当時はGoogle検索をかけても日本語のサイトは皆無という状況でした。しかし、前作が大きな評価を受け、グラミー賞ではなんと最優秀新人賞にノミネート。こちらは残念ながら受賞は逃したものの、最優秀グローバルミュージックパフォーマンス賞を受賞。それに伴い日本での知名度も一気に上がり、現時点でGoogle検索をかけるとレコード会社やCDショップ、音楽系メディアの彼女の日本語の紹介記事がズラリと並ぶ結果となっています。

前作では、彼女の美しい伸びやかな歌声とエキゾチックな雰囲気あふれるアコースティックなサウンドが見事に融合し、独特の幽玄的なサウンドを作り上げている傑作アルバムとなっていました。今回のアルバムに関しても基本的にその方向性は変わりありません。まさにアルバムの冒頭を飾る「Aey Nehin」は、まさに低音部を利かせ、ちょっと気だるさを感じさせつつも美しいボーカルと、エキゾチックなアコギの音色がピッタリとマッチ。

続く「Na Gul」はジャジーなピアノをバックに、美しくも伸びやかなボーカルを聴かせる楽曲。もともと本作は、マ・ラカ・バイというインドの詩人によるウルドゥー語の詩を中心に構成されたアルバムだそうで、この曲は、その詩人によるウルドゥー語の詩に曲をつけた1曲。ウルドゥー語の独特の1曲。さらに次の「Autumn Leaves」はスタンダードナンバーの1曲なのですが、トライバルなパーカッションも入り、独特のエキゾチックな雰囲気がムンムンあふれる1曲となっています。

この「Autumn Leaves」に続く「Bolo Na」も非常にダークな低音で聴かせる不気味さを感じる曲で、美しく清涼感あふれる前半からガラッと変わった中盤へ。さらにその後は再び清涼感のある明るいナンバーへとシフト。特に後半では「Reat Ki Rani」の哀愁あふれる歌が心に響きますし、「Whiskey」でも美しいアコースティックギターの音色をバックに歌い上げる彼女のボーカルの美しさに心を捉えられます。

最初にも書いたとおり、前作と同様、エキゾチックさを感じさせるアコースティックでジャズの要素も入ったサウンドに、ほどよくトライバルな要素も加わり、低音部を聴かせつつ、伸びやかで美しく聴かせる彼女のボーカルのバランスが実に素晴らしい傑作アルバム。前作も2021年の私的年間ベストアルバムの7位に本作を選びましたが、今回も間違いなく年間ベスト候補と言える傑作アルバムに仕上がっていました。前作以降、日本での知名度のグッと上がった彼女。これだけの傑作をリリースするだけに、まだまだその人気は高まりそうです。

評価:★★★★★

Arooj Aftab 過去の作品
Vulture Prince


ほかに聴いたアルバム

POST HUMAN: NeX GEn/BRING ME THE HORIZON

2020年にEPをリリースしつつも、オリジナルフルアルバムとしては約5年8ヶ月ぶりとなるイギリスのヘヴィーロックバンドの新作。メタルやハードコアの影響を受けつつ、メランコリックなメロディーラインと、打ち込みを入れつつ、これでもかというほど分厚くしたバンドサウンドが特徴的。日本で言えば、完全にONE OK ROCKやMY FIRST STORY、coldrainあたりがこのバンドの流れを組むようなサウンドを奏でていますが、新作はまさにBMTHらしさ全開のアルバムに。前述の日本のバンドが好きなら、まずは聴くべき1枚。

評価:★★★★

Silence Is Loud/Nina Archives

イギリスのブラッドフォード出身のシンガーソングライターによるフルアルバムとしてはデビュー作。UKのクラブ/ジャングルシーンの中心人物として注目を集めているそうですが、終始、軽快なジャングルのビートが鳴り響く中、キュートさも感じる彼女のボーカルでポップに歌い上げている作品。クラブシーンで注目を集めつつ、作品はいい意味でポップにまとまっていて、いい意味で広いリスナー層が楽しめそうなポップな内容に仕上がっていました。

評価:★★★★★

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2024年7月14日 (日)

60年代ポップのいいとこ取り

Title:A Drema Is All We Know
Muscian:The Lemon Twigs

ブライアン・ダダリオとマイケル・ダダリオの兄弟による、アメリカのロックデゥオ、The Lemon Twigsの、ちょうど1年ぶりとなるニューアルバム。ここ最近、立て続けに優れたポップなアルバムをリリースし、注目度や評価があがっている彼ら。評価の高かった前作からわずか1年でリリースされた本作もまた、注目高まる彼らへの期待にしっかりと応えたアルバムに仕上がっていました。

まずアルバムの感想を一言で言ってしまえば、これでもかというほど心地よいキュートなギターポップの並ぶ作品となっています。今回のアルバムに関して、彼ら自身「マービー・ビーチ」なる造語で表現しています。こちら音楽的にリバプールとローレル・キャニオン(=カリフォルニアにある60年代から70年代にかけて、数多くのミュージシャンたちが住んでいた地域)と表現しており、要するに、60年代のマージー・ビートと、ビーチ・ボーイズやママス&パパスのような60年代のアメリカ西海岸のポップソングを融合させたような音楽ということを表現したのでしょう。

そんなリバプールのサウンドもローレル・キャニオンのサウンドも、非常にキュートなメロディーラインを聴かせてくれるポップスという共通項がありますが、今回のアルバムはそんな両者の楽曲の良いとこ取りをしたポップスが並ぶ作品になっています。まず1曲目「My Golden Years」の最初のギターのストロークから、思わずガッツポーズをしてしまうようなポップスリスナーも多いのではないでしょうか。ポップでちょっぴり切ないキュートなギタポの本作。まさに「マービー・ビーチ」ということを実感させられる本作。個人的にはどこかラーズや、80年代のギタポの要素も感じます。

「They Don't Know How To Fall In Place」もギターのエフェクトがいかにも60年代的ですし、途中に入るハーモニーも、60年代フォークの影響を色濃く感じるキュートでポップな作品。タイトルチューンの「A Dream Is All I Know」も、ちょっぴり切ないメロディーが心地よいポップソング。イントロにテルミンを入れていたり、隠し味的に入っているサイケな楽曲に深みを与えています。

ミディアムチューンでドゥーワップの要素を入れた「In The Eyes Of The Girl」は、マージービートというよりもアメリカの色合いの強いポップス。軽快なバンドサウンドで楽しさと切なさを同居させたような「How Can I Love Her More?」も、いかにも60年代的なポップスで、耳を惹きます。

絶妙なハーモニーが実に美しく、暖かいメロディーを聴かせてくれる「Ember Days」も魅力的ですし、マイナーコードでちょっと怪しい雰囲気を醸し出す「Peppermint Roses」も、こちらはマージービートの色合いの強いナンバーで耳を惹きます。そしてラストを飾るのは「Rock On(Over and over)」で、タイトル通り、ノイジーなギターサウンドも耳を惹くロックンロールのナンバー。こちら懐かしい60年代的な雰囲気満載で、アルバムは幕を下ろします。

まさに前述した通り、英米の60年代ポップスのいいとこどりしたような、これでもかというほどキュートでポップなアルバム。もっと言えば、うっすら80年代ギタポの影響も感じられ、そういう意味では今から昔に至るまでのポップソングをいいとこどりした感じもあり、そりゃあ、これだけの傑作が生みだされるような、といった印象も受けます。もちろん、それはネガティブな意味ではなく、昔の曲のいいとこどりしつつも、これだけの優れたポップソングにまとめあげているのは彼らの実力。申し分ない傑作アルバム、それも今年を代表する1枚と言ってもいい作品に仕上がっていました。

ただ、残念ながらチャートアクションはあまり芳しくなく、スコットランドチャートでベスト10入りしているものの、アメリカビルボードでは圏外。イギリスでもダウンロードチャートで24位にランクインしている程度に留まっており、ブレイクにはまだほど遠い状況となっています。ただ日本では、ビルボードチャートで82位にランクイン。こちらもチャート下位とはいえ、洋楽が苦戦している日本の状況を考えると、英米でブレイクしていない彼らがチャートインしてくることがある意味快挙で、それだけ日本での注目度の高さを伺えます。いわば「ビッグ・イン・ジャパン」的な立ち位置になるのでしょうか?でも、これだけ優れたポップソングを書くバンドなだけに、いずれ英米でも人気は高まるはず。日本での人気の高さに日本人の先見性の高さを誇りたいところ。これからの活躍に期待です。

評価:★★★★★

The Lemon Twigs 過去の作品
Songs For The General Public
EVERYTHING HARMONY


ほかに聴いたアルバム

Blue Electric Light/Lenny Kravitz

ちょっと久しぶり、約6年ぶりとなるレニー・クラビッツのニューアルバム。今回のアルバムも実に彼らしさを感じるアルバムで、ほどよくヘヴィーでノイジーなテンポのよいギターサウンドが心地よく、いかにも「ロック然」とした楽曲が並んでいます。ギターサウンドの中にほどよくエレクトロサウンドを取り入れている点も、楽曲にダイナミズムを増してほどよいインパクトに。目新しさはありませんが、レニー・クラビッツを聴いた、ロックを聴いたという満足感を覚えるアルバムになっていました。

評価:★★★★

Lenny Kravitz 過去の作品
Black and White America
Strut
Raise Vibration

66/Paul Weller

66歳の誕生日の前日にリリースされた、ポール・ウェラー兄貴のニューアルバム。四捨五入して70歳という年に達しても、まだまだ現役感あふれる活動で元気いっぱいの兄貴。ただ、楽曲の円熟味は以前に増しているような感もあります。今回もムーディーな雰囲気の、いかにも「大人のロック」といった雰囲気の曲が並ぶアルバムに。卒はない、といった印象もありますが、完成度も高く、大ベテランの彼らしいアルバムに仕上がっていました。最近は70歳を過ぎても元気いっぱいなロックシンガーも少なくありませんが、彼もまだまだ元気にその活動を続けてくれそうです。

評価:★★★★

Paul Weller 過去の作品
22 DREAMS
Wake Up The Nation
Sonik Kicks
A Kind Revolution
True Meanings
In Anohter Room
Fat Pop
An Orchestrated Songbook

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2024年7月13日 (土)

スキマスイッチのポップミュージシャンとしての実力を改めて認識

Title:SUKIMASWITCH 20th Anniversary Tribute Album「みんなのスキマスイッチ」

2023年にデビュー20周年を迎えたスキマスイッチ。昨年には20周年記念のベスト盤をリリースしましたが、その20周年イヤーの最後に、初となるトリビュートアルバムがリリースされました。彼女自身、スキマスイッチからの影響を公言しているUruや、Aimerといった若手のミュージシャンから、いきものがかり、HYといったベテラン、さらには徳永英明のような大御所(?)まで、主にポップ系のミュージシャンを中心に様々なミュージシャンが参加。まさにタイトル通り、みんなに愛される「みんなのスキマスイッチ」を体現化するかのような構成となっています。

その中で、まずは耳を惹くのがアルバムの冒頭を飾るUruの「奏」。この曲を選曲した段階で勝ちは決まっているようなものなのですが、ちょっとかすれた感のあるボーカルが切なさを醸し出しており、曲との相性もバッチリ。もともとカバーには定評のある彼女ですが、聴きごたえのあるカバーに仕上がっています。

続くHY「ふれて未来を」も良カバー。沖縄民謡風のリズムを取り入れたカバーで、完全に彼らのフィールドに引き寄せています。SHISHAMOの「全力少年」も完全にSHISHAMOらしいギターロックの作品にまとめており、サビに向かって盛り上がる曲調がギターロックのアレンジともマッチしています。

ピアノとホーンセッションを入れて陽気にまとめているsumikaの「ガラナ」も完全に彼らの色に染め上げたカバーに。こういうアレンジが「ガラナ」に似合うというのもちょっと意外な感もあります。予想外の出来だったのが星街すいせいの「ゴールデンタイムラバー」で、VTuberによるカバー。正直、全く期待していなかったのですが、ちょっとドスを利かせたような力強いボーカルが、曲にマッチしている良カバーに仕上がっています。そして最後のtonun「デザイナーズマンション」も今風のメロウなシティポップ風のカバー。心地よいちょっとムーディーな雰囲気でアルバムは幕を下ろします。

今回のトリビュートアルバムであらためて感じたのは、スキマスイッチというミュージシャンは非常に優れたポップミュージシャンなんだな、という事実でした。楽曲はいい意味で非常に王道なポップソング。そのため、どんなタイプのミュージシャンでも卒なくカバーがこなすことができますし、メロディーラインの強度が非常に強いがために、どのようなタイプの楽曲にも染まりやすい感じがします。

そのため、基本的にどの楽曲についても、それぞれのミュージシャンの色が出ていてよく出来たカバーに仕上がっていたように思います。ネガティブな言い方をしてしまうと「卒がない」という印象を受けるのですが、卒なくカバーできてしまうあたりはやはりスキマスイッチの楽曲がよく出来たポップスである所以でしょう。個人的には参加しているミュージシャンたちは予想できてしまうポップフィールドのミュージシャンたちばかりだったので、もうちょっと意外なミュージシャンが参加していたり、ポップスがゆえにカバーの出来も予想できてしまうため、もっと楽曲をガラッと解体してしまうような奇抜なカバーを期待したいところだったのですが、その点はちょっと残念。ただ、そこらへんはあくまでも私の願望なので、それを差し引いても、スキマスイッチのファンも、参加ミュージシャンのファンも文句なしに楽しめるトリビュートアルバムに仕上がっていました。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

ARCHAIC SMILE/中田裕二

中田裕二約1年ぶりのニューアルバム。タイトルの「ARCHAIC SMILE」とは、もともと古代ギリシアのアルカイク美術の彫像に見られる表情で、日本の仏像でもよく見られる、慈悲深い優しいほほえみを指します。基本的にはいままでの彼の作品と同様、歌謡曲にも通じるような哀愁感たっぷりのメロディーラインで優しく歌い上げるスタイル。まさに「ARCHAIC SMILE」というタイトルにもピッタリくるような優しさを感じさせるアルバムになっていました。

評価:★★★★

中田裕二 過去の作品
ecole de romantisme
SONG COMPOSITE
BACK TO MELLOW
LIBERTY
thickness
NOBODY KNOWS
Sanctuary
DOUBLE STANDARD
PORTAS
TWILIGHT WANDERERS -BEST OF YUJI NAKADA 2011-2020 -
LITTLE CHANGES
MOONAGE

((ika))/Tempalay

フジロック出演などでも話題となった、最近人気上昇中のスリーピースロックバンド。シティポップ風のメランコリックなメロディーラインに、サイケな要素も詰め込んだサウンドをのせるスタイルがユニーク。ゴスペルやらギターロックやら歌謡曲やらHIP HOPやら、果てはソーラン節まで、様々な音楽性を詰め込んだ作風が非常にユニークに感じる一方、全体的にはちょっと詰め込みすぎといった印象も同時に受けてしまいます。注目の実力派バンドであることは間違いないとは思うのですが。

評価:★★★★

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2024年7月12日 (金)

ただただそのボーカルのすごみに立ち尽くしてしまいました。

Title:浅川マキ ゴールデン☆ベスト
Musician:浅川マキ

「アンダーグラウンドの女王」と呼ばれ、目立ったヒット曲こそないものの、一部では熱烈な支持を集めているシンガー、浅川マキ。2010年に67歳という若さでこの世を去ってから早14年。日本のみならず海外でも評価が高いようで、2015年にはイギリスでベスト盤もリリースされたようです。

ただし、今回紹介するのはレコード会社各社共同の廉価版ベスト企画「ゴールデン☆ベスト」の一環としてリリースされたベストアルバム。正直、この手の企画に似つかわしいかどうかかなり微妙な感もあります。しかし、実際に聴いてみるとそんな懸念は一掃されます。まさに「情念」とでも言うべき彼女のそのスモーキーでムーディー、感情たっぷりの歌声に心揺さぶられるベストアルバムとなっていました。

彼女の楽曲は、基本的にフォークやブルースの影響を強く感じさせる楽曲。そこにジャズやロック、さらには歌謡曲的な要素も強く感じます。いわゆるムード歌謡曲的な「日本のブルース」とも少々異なるのですが、かといってアメリカのブルースをそのままカバーしているのとも異なる、「和製ブルース」という表現が一番ピッタリくるかもしれません。

ただ、なによりそんな楽曲の中で際立っているのが彼女のボーカル。上にも書いた通り、その独特のボーカルには聴いていてゾクゾクさせられます。このベスト盤の冒頭を飾るのが「夜が明けたら」というメジャーデビュー作。感情こもった低音のボーカルも魅力的なのですが、なによりも曲の中での息づかいや間の取り方が実に絶妙。力強くも色っぽく、聴いていて一気に耳を惹かれます。事実上のデビュー作からこの完成度というのは、本当に驚かされます。

「赤い橋」もかなり印象に残る1曲。アコギアルペジオでフォーキーな作風で、非常に不気味さを感じさせる曲が特徴的なのですが、それを軽くビバーブをかけたボーカルで歌われると、幻想的で不気味な雰囲気が増幅されて非常に心に響いてきます。また、「朝日楼(朝日のあたる家)」も特筆すべき作品。ボブ・ディランやアニマルズのカバーでも知られるアメリカのフォークソングなのですが、娼婦に身を落とした女性の怨念を、これでもかというほど表現したボーカルで、これほど浅川マキの歌手としての方向性とマッチした曲はないのではないでしょうか。基本的にアコギ1本のシンプルなカバーなのですが、彼女のボーカルのすごみを嫌というほど感じさせるカバーに仕上がっています。

「ブルー・スピリット・ブルース」もそのボーカルが耳を惹きます。こちらもアメリカの楽曲のカバーなのですが、彼女にかかると、非常に女性の怨念を感じるくすんだ雰囲気の楽曲へと変貌を遂げます。女性の心情を力強く感情たっぷりに歌い上げるそのスタイルは、間違いなく心に響いてきます。「それはスポットライトではない」は、郷愁感あふれるナンバー。楽曲的には70年代フォークの色合いが強いのですが、彼女の力強いボーカルによって、しっかりと浅川マキの世界観を作り上げています。

女性の怨念、情熱、感情をこれでもかというほど込めたボーカルは、聴いていて思わず立ち尽くしてしまうようなすごみがあります。正直、ボーカリストとしての表現力という観点だけで言えば、間違いなく歴史的にも日本屈指のボーカリストであることは間違いないと思います。今回のアルバムも、聴き始めると、いわゆる「ながら聴き」が出来なくなり、彼女のボーカルにただただ聴き入るだけ、という状況になってしまいました。以前、一度ベスト盤は聴いたことはあったものの、あらためて浅川マキというボーカリストのすごさを実感できたベストアルバム。このベスト盤に限らなくてもいいのですが、一度は是非、彼女のボーカルにふれてほしい、そう強く感じます。

評価:★★★★★

浅川マキ 過去の作品
Long Good-bye


ほかに聴いたアルバム

SEX MACHINEGUNES ゴールデン☆ベスト/SEX MACHINEGUNS

各レコード会社共通の廉価版ベストシリーズ、ゴールデン☆ベストの、こちらはSEX MACHINEGUNS版。2008年まで所属した東芝EMI時代の曲を収録した作品で、要するに、彼らが今よりも人気のあった時期の作品を収録したベスト盤。代表曲は過不足なく収録されており、1枚のアルバムで収められていることから、入門盤としても最適な1枚。何度も聴いた代表曲ばかりですが、本格的なヘヴィーメタルなサウンドとコミカルな歌詞のギャップがおもしろく、何度聴いても思わずクスっと笑ってしまう部分も。一時期に比べると、すっかり人気の面で落ち込んでしまった彼らですが、昨年、はじめて足を運んだライブを見る限り、バンドとしての実力は全く衰えていません。今からでも遅くないので、マシンガンズ未経験者は是非ともチェックしてほしい1枚です。

評価:★★★★★

SEX MACHINEGUNS 過去の作品
キャメロン
SMG
LOVE GAMES
METAL MONSTER
マシンガンズにしやがれ!!
IRON SOUL
地獄の暴走列車

eyes/おいしくるメロンパン

3ピースバンド、おいしくるメロンパンの約1年ぶりの新作は5曲入りのミニアルバム。ポップ志向が強く、ヒットポテンシャルもあるメランコリックで爽やかなメロディーラインと、意外と骨太で分厚いバンドサウンドの対比が今回もユニーク。かなりロックなバンドサウンドには耳を惹かれます。ただ、ミニアルバムばかりでこれで8枚目。そろそろフルアルバムを聴きたいのですが。

評価:★★★★

おいしくるメロンパン 過去の作品
indoor
hameln
flask
theory
cubism
answer

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2024年7月11日 (木)

こちらも韓国勢が2枚ランクイン

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

上位は男性アイドル勢が並んでいます。

まず1位初登場は韓国の男性アイドルグループRIIZE「RIIZING」が獲得。CD販売数1位。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上6万枚で1位初登場。前作「Get A Guitar」の初動1万1千枚(12位)からアップしています。

2位初登場は黒崎蘭丸(鈴木達央) 「うたの☆プリンスさまっ♪ソロベストアルバム 黒崎蘭丸 MUSIC FOR LIFE」。女性向け恋愛ゲーム「うたの☆プリンスさまっ♪」に登場するキャラクターによるベストアルバム。CD販売数2位。オリコンでは初動売上1万8千枚で2位初登場。

3位はWayV「Give Me That」が先週の16位からランクアップし、2週目にしてベスト10入り。韓国の男性アイドルグループNCTより、中国系メンバーを集めたサブグループ。オリコンでは6月17日付チャートで2千枚を売り上げて22位に初登場し、今週、5週目にして8千枚をうりあげて5位にランクインしています。ちなみに前作「On My Youth」はこちらもランクイン3週目にして1万7千枚を売り上げて、同じく5位にランクインし、ベスト10に初登場しています。

続いて4位以下の初登場盤。4位に倉木麻衣「forever for YOU」が初登場。アニメ「名探偵コナン」主題歌を中心に収録した6曲入りのEP盤。5位は菅田将暉「SPIN」がランクイン。3枚目のアルバムとなります。6位はLDH所属の女性アイドルグループLucky2「こくご・さんすう・りか・恋愛」が初登場でランクイン。新曲3曲+同作のインスト版という、事実上のシングルを無理やりアルバム扱いしたもの。最後9位には、声優堀江由衣「文学少女の歌集III -文学少女と夜明けのバス停-」が初登場でランクインしています。


今週のHeatseekers Songs

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=heat_seekers

今週のHeatseeekersは男性シンガーソングライター808「You」が2週ぶりの1位返り咲き。4週目の1位獲得となりました。


今週のTikTok Weekly

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=tiktok

今週の1位もKOMOREBI「Giri Giri」が1位を獲得。これで5週連続の1位。ちなみに先週Heatseekersで1位を獲得したこっちのけんと「はいよろこんで」が2位にランクアップしており、こちらの動向も気になります。「はいよろこんで」は今週、動画再生回数で1位を獲得。総合チャートでも19位にランクインしています。


今週のニコニコVOCALOID SONGS

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=niconico

VOCALOIS SONGSですが、今週もニコニコ動画がサーバー攻撃のため休止中の影響のため、ランキングは発表されていません。ちなみにサツキ「メズマライザー」は動画再生回数が8位から14位にダウンしています。

今週のHot Albums&各種チャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2024年7月10日 (水)

日韓アイドルのコラボが1位獲得

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週1位を獲得したのは日韓の男性アイドルグループのコラボ作です。

Befirstattz

1位初登場は日本の男性アイドルグループBE:FIRSTと、韓国の男性アイドルグループATEEZとのコラボ作、BE:FIRST×ATEEZ名義による「Hush-Hush」が獲得です。配信限定シングルで、ダウンロード数、ラジオオンエア数及び動画再生回数で1位獲得。ストリーミング数で12位、総合順位で1位獲得となりました。

一方、2位も韓国の男性アイドルグループTOMORROW×TOGETHER「ひとつの誓い (We'll Never Change)」が獲得。CD販売数1位、ダウンロード数7位。オリコン週間シングルランキングでも同作を収録した「誓い(CHIKAI)」が初動売上35万8千枚で1位を獲得。前作「Good Boy Gone Bad」の初動36万7千枚(2位)から若干のダウンとなっています。

そして3位はCreepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」が先週と同順位をキープ。ストリーミング数は3週連続の2位、動画再生回数は1位から2位に再びダウン。ダウンロード数は5位から9位までダウン。これで25週連続のベスト10ヒット、通算23週目のベスト3ヒットとなりましたが、全体的に勢いは下降気味です。

次に4位以下の初登場曲ですが、まず6位に韓国の女性アイドルグループaespa「Hot Mess」が初登場でランクイン。CD販売数3位、その他は圏外。オリコンでは初動売上6万1千枚で2位初登場。本作がCD形態では初のシングルとなります。

10位初登場はYOASOBI「UNDEAD」。ダウンロード数2位、ストリーミング数17位、ラジオオンエア数15位。西尾維新によるライトノベルシリーズを元としたアニメ「〈物語〉シリーズ オフ&モンスターシーズン」主題歌。ストリーミング数含む、初動順位は低めですが、今後、上位に食い込んでくるのでしょうか。

また今週、ベスト10への返り咲き曲としてMY FIRST STORY×HYDE「夢幻」が先週の11位から8位にランクアップ。4週ぶりの1位返り咲きとなっています。特にストリーミング数が14位から6位に大きく増加。7月3日にフジテレビ系「2024FNS歌謡祭 夏」への出演の影響でしょうか。テレビアニメ「鬼滅の刃」柱稽古編という好タイアップがついていながら、売上は今一つな感は否めないのですが、これを機に、上位に食い込んでくるのでしょうか。

Omoinotake「幾億光年」は6位から7位にダウン。ストリーミング数は8週連続の3位。ただ動画再生回数が10位から12位にダウン。ダウンロード数も20位までダウンしており、全体的な勢いには欠ける感も。これで21週連続のベスト10ヒットとなりました。

さらに今週、tuki.「晩餐歌」は9位から11位にダウン。ベスト10ヒットは通算30週でストップ。ロングヒット曲は全体的に勢いがなく、次のヒット作が待たれます。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums&各種チャート!

一方、ロングヒット曲は、まずMrs.GREEN APPLE「ライラック」は5位から4位にアップ。ストリーミング数は3週連続の1位。また動画再生回数が9位から4位と一気にアップしています。これで12週連続のベスト10ヒットも。ちなみに先週まで2曲同時にランクインしていた「コロンブス」は今週12位にダウンしています。

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2024年7月 9日 (火)

世界的に「バズった」SSWのデビュー作

Title:凡才
Musician:imase

デビューアルバムである本作がHot Albumsでいきなり2位にランクイン。一気にブレイクを果たした男性シンガーソングライター。ただ、もちろん本作でいきなり出てきたシンガーではなく、もともと2022年にリリースされた「NIGHT DANCER」がTikTokを中心に話題となりヒットを記録。特に日本以上に海外で話題となり、韓国では最高位14位という日本以上のヒットを記録(日本では最高位38位)。むしろ東アジアや東南アジア方面で高い評判を得て話題となりました。

特に韓国ではK-POPのアイドルが、「NIGHT DANCER」を使用した「踊ってみた」動画が話題となり、ヒットの要因となったようです。それだけに、いかにも今時のTikTokで流行りそうなシンガーソングライター、といったイメージで構えて聴いてみたのですが・・・これが思ったよりもよく出来たポップスアルバムに仕上がっていたから驚きです。

この話題となった「NIGHT DANCER」もタイトル通り、リズミカルなダンスチューンなのですが、リズミカルなエレクトロビートをバックにメランコリックに聴かせる曲調は、ちょっと気だるさもあり、シティポップ風にまとめあげているダンスチューン。それに続く「Nagisa」は、今度は同じダンスチューンながらもホーンセッションやストリングスも入れた爽やかで鮮やかな曲調が特徴的な明るく楽しいポップチューン。かと思えば「でもね、たまには」ではファルセットボーカルにラップも入ったHIP HOP風のポップス。

他にも「ヒロイン」はちょっとジャズ風なサウンドにバンドサウンドを取り入れたポップスに仕上げていますし、「Shine Out」は完全にエレクトロ風なダンスチューン。最後を締めくくるデビューシングル「Have a nice day」はファルセットも入った爽やかでメランコリックなピアノポップ風にまとめています。

かなりバリエーションの富んだ曲調で、ほどよくソウル風、ジャズ風、ロック風な要素を取り入れて、全体的にはシティポップ風に聴かせる曲調が特徴的。あえて言えば、藤井風をもうちょっとポップにした感じといったところでしょうか。意外とバラエティー富んだ作風を楽しめる素直なポップスになっており、変に売りや今時を狙ったようなあざとさもありませんし、最近、よくありがちなとにかくマイナーコードのメランコリックな曲調を聴かせるようなメロディーラインもありません。

さらに驚きなのが彼、もともと2021年に「音楽経験0の素人がオリジナル曲を作ってみた」という動画投稿からその活動をスタートさせたようで、音楽活動を開始してから、まだわずか3年という経験しかないそうです。ただ、才能があれば、音楽経験が全くなくても、いきなり「名曲」を作れてしまうところが、大衆音楽のおもしろいところであり、怖いところであったりもします。音楽経験がほとんどない素人が、わずか3年でこれだけの曲を作れてしまうあたりが、かなりセンスの良さを感じました。

ただ一方で、やはり経験不足がマイナスに感じる部分もあり、それがさきほどから彼の音楽に対して「~~風」という表現をあえて使っている点。やはり聴いていて、あくまでも様々な音楽的な要素は「~~風」のような、風味を感じるだけであって、深い音楽的な素養という点では底の浅さは正直感じてしまいます。ここらへんは、良く出来たアルバムとはいえ彼のアキレス腱でもあり、このアルバムを傑作として大絶賛するにはちょっと躊躇してしまう、大きな要素だったりします。

もっとも、この「音楽的素養」なんてものは、いくらでも後付けで身に着けられるもの。まだ、デビューから3年という経験しかない彼ですが、今後、経験を積むことによって、どんどん音楽性は深化していく可能性も感じます。そういう意味では、まだまだ未熟さも感じるものの、末恐ろしい感じもするミュージシャン。音楽的なセンスは間違いなくあるだけに、これからのさらなる成長を期待したい、そう強く感じられるアルバムでした。

評価:★★★★


ほかに聴いたアルバム

アンジェラ・アキ sings「この世界の片隅に」/アンジェラ・アキ

2006年にリリースされたデビューアルバム「Home」が大ヒットを記録し、一躍人気ミュージシャンとなったシンガーソングライターのアンジェラ・アキ。紅白に6年連続出演するなど人気を博したものの、2014年にアメリカの音楽大学へ留学するために活動を休止しました。ただ、それから10年、久々の活動を再開。約12年ぶりとなるオリジナルアルバムが本作。ミュージカル「この世界の片隅に」に提供した曲を自ら歌ったアルバムとなります。

基本的にピアノの弾き語りでしんみりと聴かせるスタイル。太鼓を取り入れた曲があったり、ミュージカル俳優の海宝直人が参加した曲があったりと、ミュージカルでの使用を感じさせる曲もあったものの、ゆっくり力強いボーカルで歌い上げるスタイルは、かつてのアンジェラ・アキそのまま。いい意味で変わっていない彼女の姿を感じます。音楽大学の経験は、このアルバムを聴く限りだとあまり反映されていないのですが、ミュージカルへの楽曲提供など、今後は幅を広げて精力的に活動してくれそう。今後の彼女の活躍にも期待したいところです。

評価:★★★★

アンジェラ・アキ 過去の作品
ANSWER
LIFE
WHITE
SONGBOOK
BLUE
TAPESTRY OF SONGS-THE BEST OF ANGELA AKI

DON'T THINK,POP!!/及川光博

俳優としても精力的に活動を続けつつも、本業ミュージシャンとしてコンスタントにライブ活動と新作リリースを続けるミッチー。2年ぶりとなる新作は、よくモチーフとして取り上げられるブルース・リーの名セリフを元としたタイトルですが、タイトル通り、ミッチーらしいポップな曲が並ぶ作品。ただ、冒頭のタイトルチューン「DON'T THINK,POP!!」はGファンクを取り入れたようなかなりカッコいいファンクチューンになっており、続く「Amazing Love」も同じくファンキーにカッコよく聴かせてくれます。後半は、ちょっと平凡なJ-POP路線になってしまって尻つぼみ的な感じも否めませんが、全体的にはタイトル通り、考えるよりもポップなメロを楽しませてくれる楽曲に仕上がっています。久しぶりにライブにも行きたいなぁ。

評価:★★★★

及川光博 過去の作品
RAINBOW-MAN
美しき僕らの世界
喝采
銀河伝説
ファンタスティック城の怪人
さらば!!青春のファンタスティックス
男心DANCIN'
20 -TWENTY-
パンチドランク・ラヴ
FUNK A LA MODE
BEAT&ROSES
BE MY ONE
XXV
気まぐれサーカス

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2024年7月 8日 (月)

70年代ソウルを今に継承

Title:Ten Fold
Musician:Yaya Bey

Tenfoldyayabey

アメリカはニューヨーク、ブルックリン出身のシンガーソングライターでマルチアーティストとしても活躍するYaya Beyの約2年ぶりとなるニューアルバム。非常に高い評価を受けた前作「Remember Your North Star」ではじめて彼女のアルバムを聴き、そのオーガニックでメロウな作風に強く惹かれたのですが、今回のアルバムもまた、ムーディーでメロウなネオ・ソウルの楽曲に強く惹かれる傑作アルバムに仕上がっていました。

まず1曲目「crying through my teeth」のスタートから、思わず心の中でガッツポーズを取るソウルリスナーも多いのではないでしょうか。いきなりグルーヴィーなドラムとベースラインに彼女のファルセットボーカルからスタート。スモーキーでメロウな出だしは、まさにネオ・ソウルらしい作風。ハイトーンボーカルで包み込むように聴かせる彼女のボーカルに、まずは強く惹かれること間違いなしでしょう。

その後も軽快なリズムでダンサナブルな「sir princess bad bitch」や、ループするトラックが狂おしいほどメロウで美しい「chasing the bus」、グルーヴィーなドラムとベースとムーディーなボーカルの絡みが美しい「me and all my niggas」、ギターの音色がメロウに彩りを添える「career day」、ファンキーなギターにも耳がいく「carl thomas sliding down the wall」など、聴きどころたっぷりのネオ・ソウルの曲が続いていきます。全体的に、ドラムやベースラインなど重低音を重視したサウンドは、比較的音数も少なくシンプルにグルーヴ感を醸し出しており、そのサウンドに下支えされた、ファルセットを入れつつもメロウで、かつ力強さも感じるYaya Beyのボーカルも実に魅力的な作品に仕上がっています。

ダニー・ハザウェイなどを引き合いに出されることの多い彼女は、基本的に70年代あたりのソウルを継承しているスタイルが耳を惹くのですが、一方ではしっかりと今時のサウンドにもアップデートされており、基本的には「east coast mami」に代表されるような重低音を強調したサウンドメイキングは今風なサウンド。「all around los angeles」のように、リズムからラテンの影響を感じさせる軽快な曲もありますし、「so fantastic」では2022年に亡くなったラッパー、Grand Daddy I.U.も参加(なんと彼女の父親らしいです!)し、HIP HOPの要素も強い作品となっています。

このように適度に今風のサウンドにアップデートし、様々な曲調を取り入れつつも、ソウルミュージックをしっかりと継承し、そのボーカルを聴かせるという、ある意味、非常に理想的とも言える傑作アルバム。優しさと力強さを同居させる彼女のボーカルも実に魅力的で、ソウルミュージックが好きなら、是非とも聴いてほしいアルバムだと思います。今年を代表する傑作アルバムの1枚と言ってもいいかもしれません。そのグルーヴィーでメロウな楽曲に強く惹かれる作品でした。

評価:★★★★★

Yaya Bey 過去の作品
Remember Your North Star


ほかに聴いたアルバム

Almighty So 2/Chief Keef

Almightyso2

シカゴ・ドリルの代表的なラッパー、Chief Keefのニューアルバム。UKガラージや、ハウス系ミュージックにHIP HOPの要素を取り入れたグライムのサウンドを取り入れつつ、不穏な雰囲気で聴かせるトラックが特徴的だそうで、実際、全編、リズミカルなビートに不穏な雰囲気のサウンドやラップがのるスタイル。ダークな雰囲気が耳に残る1枚でした。

評価:★★★★

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2024年7月 7日 (日)

ダンサナブルな曲が目立つ

Title:ディスコの卵
Musician:ゲスの極み乙女

Disco_gesu

途中、ベスト盤のリリースも挟みつつ、オリジナルアルバムとしては約4年ぶりとちょっと久々となったゲスの極み乙女のニューアルバム。例の川谷絵音の騒動から、かなりの月日も経たため、良くも悪くもゲスとしての注目度も落ち着いた感もありますが、川谷絵音のワーカホリックぶりは相変わらず。ゲス以外にもindigoやジェニーハイ、さらには他にもいくつかのバンドの掛け持ちを続けており、その精力的な活動ぶりが目を見張ります。

ただ、このワーカホリックぶりの中で驚くべきことは、楽曲としてのクオリティーが全く落ちていないという点。バンドなどを掛け持ちしてワーカホリックな活動を行うミュージシャンは他にもいますが、ほぼ例外なく、やはり作品が乱発気味となり、全体のクオリティーが落ちてしまいます。

しかし、今回の新作を聴く限りだと、川谷絵音の楽曲のクオリティーは落ちるどころか、むしろ脂に乗っている感すら今回のアルバムでは感じることが出来ます。全14曲長さ48分の今回のアルバムは、2~4分という比較的短めな曲が並ぶ作品になっているのですが、それだけに次から次へと展開されるバリエーションある作風がユニークな構成に仕上がっていました。

今回のアルバムで特に特徴的なのが、「ディスコの卵」というタイトル通り、リズミカルなダンスチューンが目立つ点でしょう。ちょっとメランコリックなディスコチューン「Funky Night」からスタートし、ミディアムテンポからスタートし、サビでハイテンポなディスコチューンへと展開する「ゴーストディスコ」、ファンキーなベースラインが入ってダンサナブルな「DJ卵」、女性ボーカルを入れてメランコリックに聴かせるダンスチューン「ドーパミン」などなど、全体的にはダンサナブルな曲が多く、アルバムの大きなインパクトとなっています。

他にもジャジーな要素を加えたダンスチューン「悪魔のおまけ」や、ラップを取り入れた「晩春」、indigo la Endを彷彿とさせるような哀愁感たっぷりのメロディーが印象的な「ハードモード」など、バラエティー富んだ音楽性は本作ももちろん健在。アルバムの中でちょっとユニークなのが「作業用ディスコ」「作業用ローファイ」なるナンバー。YouTubeなどで「作業用~」として、ながら聴きが出来るような音源が配信されていたりするのですが、おそらくそれに倣ったものでしょう。シンプルなインスト気味の、インターリュードを兼ねたような曲になっているのですが、比較的音を絞ったタイトなサウンドがなにげに耳を惹くような楽曲になっており、タイトルとは裏腹に、これらの曲にもしっかりと力が入っていることを感じさせます。

毎作、オリジナルアルバムでは傑作を聴かせてくれる彼らですが、本作も文句なしにそんな傑作に名前を連ねるようなアルバムに仕上がっていたと思います。むしろ、いままでのゲスのアルバムの中でも指折りの出来かもしれません。性格面はともかく、川谷絵音の才能にはあらためて、舌を巻かされます。ゲスの勢いはまだまだ止まりそうにありません。

評価:★★★★★

ゲスの極み乙女 過去の作品
踊れないなら、ゲスになってしまえよ
みんなノーマル
魅力がすごいよ
両成敗
達磨林檎
好きなら問わない
ストリーミング、CD、レコード

Gesu Sped Up


ほかに聴いたアルバム

カネコアヤノ Billboard Live ワンマンショー 2023 - 12.15 Billboard Live OSAKA/カネコアヤノ

Kaneko_billboard

昨年12月15日にギタリストの林宏敏と2人のみで実施したBillboard Live OSAKAでのライブの模様を収録したライブアルバム。ギターのみをバックとしたシンプルなサウンドの中、力強く歌い上げるカネコアヤノの歌声が大きな魅力。シンプルだからこそ、彼女の歌の良さを引き出しているライブアルバムとなっています。

評価:★★★★★

カネコアヤノ 過去の作品
燦々
燦々 ひとりでに
よすが
タオルケットは穏やかな
カネコアヤノ 単独演奏会 2022 秋 - 9.26 関内ホール
タオルケットは穏やかな ひとりでに
よすが ひとりでに

The Crown/MY FIRST STORY

マイファスのニューアルバムは、今年1年かけて毎年リリースされた配信シングルをまとめて収録した企画盤的なアルバム。加えて、TikTokを機に大ヒットを記録した「I'm a mess」のリミックス版も収録されています。これでもかというほどダイナミックなアレンジに、これまた過剰なまでメランコリックなメロは、全体的に過剰感がありつつ、マイファスらしい曲が並ぶ印象。「I'm a mess」もヒットしたのだからオリジナルバージョンを入れればよかったのに、とも思ったのですが、同曲がカップリングとして収録されたCDシングル「告白」も未収録ですので、次のオリジナルアルバムに取ってあるということでしょうか。毎月リリースされたシングルを並べただけなので、ちょっと統一感は乏しいのですが、一方で、シングル曲ばかりなのでマイファスらしさは強く感じられるアルバムに仕上がっていました。

評価:★★★★

MY FIRST STORY 過去の作品
ANTITHESE
V
X

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2024年7月 6日 (土)

初期鬼束ちひろ作品を網羅

Title:UN AMNESIAC GIRL ~First Code (2000 - 2003)~
Musician:鬼束ちひろ

鬼束ちひろの東芝EMI在籍時にリリースした「インソムニア」「This Armor」「Sugar High」の3枚のアルバムのリマスター版に、初期の貴重な音源を収録した「スペシャル・トラック集」を加えた4枚組のCD BOX。2000年に「月光」がドラマ「トリック」の主題歌となりスマッシュヒットを記録。一躍注目を集めた彼女の、最も勢いのあった時期をまとめたBOXセットとなります。

今回、収録されているアルバムについては、リアルタイムに聴いているのですが、その当時、旧サイトに書いた感想をこちらに再掲します。今、以上に拙い文章になるのですが、ご容赦ください・・・。



インソムニア

昨年は「月光」がロングヒットを記録して、今年は「眩暈」がこれまた大ヒットし、ヒットチャートの常連の「仲間入り」をした感の強い鬼束ちひろですが、このたびようやく1stアルバムが発売されました。私は最初正直彼女にはあまり興味がなかったのですが、何度か彼女の歌声を聴くうちに、その力強さみ魅せられていきました。
 ただ、その期待をもって聴いた1stアルバム、確かにいいアルバムなことはいいアルバムだったとは思うのですが、思ったほどじゃなかったなぁ、という印象を抱きました。最初から最後まで非常に力強い彼女の歌が聴け、どの曲もそれなりのインパクトもあり、メロディーラインもしっかりしていたのですが、どうも最後まで似たような曲が多かったと思います。結局、「月光」でイメージ付けさせられた彼女のイメージに沿った形でつくられてしまったため、かなり制約の多いつくりの内容になってしまったのではないでしょうか。アルバムというのは必ずしもシングルの延長とは限らない以上、もっと自由なアルバムをつくってもよかったのではないでしょうか。さらにもう一点、全体的にアレンジが安っぽい印象を受けました。確かに、彼女のようなタイプのミュージシャンは、彼女の「歌」が重要である以上、あまりアレンジの部分が突き抜けているのもまた問題です。しかし、このアルバムに関して言えば、ちょっとアレンジが引っ込みすぎて、単なる「伴奏」に終わっていたため、結果、曲自体も安っぽく聴こえてしまいました。以上、2点のために、アルバム全体がシングルを聴いて期待するよりも、いまいちだったような気がします。レコード会社の圧倒的なバックアップのもとブレイクした彼女なだけに、いまだにレコード会社の操り人形状態ではないのか、と思ってしまいました。今後のシングル、及びアルバムにおける自由な曲づくりを期待したいところです。

 



This Armor

ここ最近、人気もすっかり定着した感のある鬼束ちひろですが、このたび、彼女の2ndアルバムがリリースされました。デビューアルバムでもある前作では、シングルなどの鬼束のイメージそのままの、思いっきり感情をこめて歌い上げるようなタイプばかりのナンバーで、ちょっと飽きてしまったのですが、今作も、基本的に前作と同じような路線、歌い上げてじっくりと聴かせるようなタイプの曲の多いアルバムになっていました。

 それにも関わらず、個人的には前作よりもこちらのアルバムが気に入りました。インタビューなどで、「前作をさらに深化させたアルバム」と語っていたのですが、その「深化」が成功したからでしょう。確かに似たようなタイプのナンバーが多いアルバムでしたが、アルバム全体として最後まで飽きさせることのない内容になっているのは、やはり曲の持っているパワーが大きかったからでしょう。そのため、前作と似たようなタイプのアルバムでありながら、マンネリを感じることなく聴くことができました。

 ただ、とはいえそろそろ彼女も前作や今作のような「感情的に歌い上げる」楽曲ばかりではいけない時期に来ていると思います。もっといろいろなタイプの曲を作り、歌い、さらに可能性を広げる時期に来ているのではないでしょうか。シングルをそのまま延長させただけのアルバムはこれが最後、ということを願っています。次回作では、私たちの知らない彼女のあたらしい魅力を見せてくれるアルバムを期待したいところです。



Sugar High

前作より、わずか9ヶ月というインターバルでリリースされたニューアルバム。ジャケットの写真にはちょいとびっくり。鬼束ちひろのイメージと違う・・・(^^;;最初、中澤裕子か小柳ユキかと思ったよ・・・。

 今回のアルバムは、サウンド的には、鬼束ちひろの原点に戻ったような内容だったと思います。基本的にピアノをベースとしたシンプルなサウンド。そのため、より鬼束ちひろの歌声や歌詞の世界がクリアになった作品が並んでいました。鬼束ちひろの、力強いボーカルには、同時に包容力も感じさせます。あくまでサウンドをシンプルにした今回の作品で、彼女は、より自分のボーカリストとしての側面を見つめなおすことができたのではないでしょうか。

 そして今回、私は、サウンドこそ原点に戻ったのですが、一方でアルバム全体の雰囲気は、いままでの鬼束ちひろと大きく異なるものを感じました。今回の作品でも、いままでの鬼束ちひろと同じく、「歌い上げる」ような作品が並んでいました。しかし、いままでの彼女の作品が、ともすれば内向きに感じられる楽曲が多かったのに対して、今回の新作では、より攻撃的に、外向きのベクトルを強く感じさせるような作品が多かったような印象を受けました。そのため、いままでと同じバラードであっても、決してマンネリを感じさせない、鬼束ちひろの世界をさらに一歩押し進めた内容に仕上がっていたと思います。

 前作、彼女は「作品を『深化』させた」と語っていましたが、私はむしろ今作で、その「深化」が実を結んだ印象を受けました。鬼束ちひろにとって、あらたな一歩を感じさせる作品だったと思います。まだまだ彼女の勢いは続いていきそう・・・今後の活躍が楽しみになってくるアルバムでした。

さて、この3枚のアルバムを続けて聴いてみてあらためて感じるのですが、「月光」のイメージが強すぎて、それと似たような曲ばかり最初から最後まで求められていたということを、あらためて強く感じました。結局、このBOXセットでは「スペシャル・トラック集」に収録されている「私とワルツを」を最後に、ユニバーサルに移籍し、移籍後初のシングルとなる「育つ雑草」はロック色の強い作品で、いままでの彼女のスタイルとガラッと変えたということで大きな話題となりましたが、確かに、初期の彼女のようなバラードナンバーばかりを歌わされていたら、こういう曲も歌いたくなるよな、ということは強く感じます。

また彼女、ご存じの通り、デビュー以来、いろいろなトラブルを起こして話題となることも少なくないのですが、このような似たようなバラード曲ばかりを歌わされ続けたのであれば、本人もストレスがたまるだろうな、ということは想像できてしまいます。もっとも、静かに歌い上げるバラード曲の出来が一番良いというのは間違いないので、「月光」のヒットがなかったとしても、結局、同じような道をたどる結果になったのかもしれませんが。

結局は、現状、オリジナル曲としては最新シングルとなる「スロウダンス」は初期のようにストリングスバックに聴かせるバラード曲となっているので、こういうタイプの曲が一番彼女に合っている、ということになってしまうのでしょうが、ただ、このBOXセットであらためて初期の曲を聴くと、ちょっとあまりにも似たような曲が多かったのではないか、ということをあらためて感じてしまいました。

最後の「スペシャル・トラック集」はアルバム未収録のシングルやカップリング曲、またライブ音源、さらにはチューリップの「青春の影」のカバーも収録。ちなみに「青春の影」は配信限定シングルとして、こちらだけはストリーミング配信もされています。こちらも基本的にはピアノやアコギをバックにしんみり聴かせる曲がメイン。このアルバムも含めて、似たような曲が多いという印象は否めない構成になっていました。

とはいえ、それでも名曲は多く、最後までしっかりと聴けてしまうあたりはさすがといった感じなのでしょうが。というか、一般的に知られる彼女の曲は、ほとんどこのBOXセットに収録されているんでしょうが。あらためて、初期鬼束ちひろの作品を網羅的に楽しめたBOXセットになっていました。久しぶりに彼女の魅力に触れたい方はお勧めの作品です。

評価:★★★★★

鬼束ちひろ 過去の作品
LAS VEGAS
DOROTHY
ONE OF PILLARS~BEST OF CHIHIRO ONITSUKA 2000-2010
剣と楓
FAMOUS MICROPHONE
GOOD BYE TRAIN~ALL TIME BEST 2000-2013
シンドローム
Tiny Screams
REQUIEM AND SILENCE
HYSTERIA


ほかに聴いたアルバム

URC銘曲集3 伊藤銀次セレクション ‐フォークとロックの出会い、そして自由への旅立ち

日本インディーレーベルの先駆けと言われるURC。その販売権が2023年にソニーミュージックに移り、URCの名盤がCD化されていますが、それと同時にURCの曲をテーマ別にセレクションしたコンピレーションCDがリリースされています。本作がタイトル通り、その第3弾。URCのセッションでギタリストデビューを果たした伊藤銀次によるセレクション。今回のセレクションはタイトル通り、一般的なフォークソングの枠組みに留まらないような曲が多く、ブルージーな曲、ギターを激しくかきならすようなロックテイストの曲、もっとコミカルな曲など、非常に個性的な曲が並びます。まさに自由への旅立ちの通り、従来のフォークソングに枠組みには飽き足らないミュージシャンたちの曲がセレクトされている印象。非常におもしろかったですし、またURCの奥深さ、当時のミュージシャンたちの勢いも感じさせるようなコンピ盤になっていました。

評価:★★★★★

URC銘曲集-1 戦争と平和
心に響くフォークソング -イムジン河 (URC銘曲集2)

EACH TIME 40th Anniversary Edition/大滝詠一

突然の逝去後、10年以上が立った今でも、次々とアルバムがリリースされる大滝詠一。本作は、1984年にリリースされた、結果として彼の最後のスタジオ・フルアルバムとなった「EACH TIME」の40周年記念盤。洋楽趣味あふれるアレンジで聴かせる爽やかで軽快なポップスは、いかにも大滝詠一らしさを感じます。この後、結果としてスタジオ・フルアルバムをリリースしなかったので、ある意味、大滝詠一サウンドの完成形と言えるのかもしれません。一方、おもしろかったのはDisc2で、本作のリリース直後に作曲家井上大輔のラジオ番組に出た時のトークがまるごと収録。本作に関する裏話や音楽に対する思いなども聴くことができる貴重な音源になっていました。ファンならずとも要チェックの企画盤です。

評価:★★★★★

大滝詠一 過去の作品
EACH TIME 30th Anniversary Edition
Best Always
NIAGARA MOON -40th Anniversary Edition-
DEBUT AGAIN
NIAGARA CONCERT '83
Happy Ending
A LONG VACATION 40th Anniversary Edition
大瀧詠一 乗合馬車 (Omnibus) 50th Anniversary Edition
大滝詠一 NOVELTY SONG BOOK/NIAGARA ONDO BOOK
暑さのせいEP

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2024年7月 5日 (金)

天才の生涯

今回は、音楽関連の映画の紹介です。先日、映画「トノバン 音楽家 加藤和彦とその時代」を見てきました。

タイトル通り、オリコンチャート史上で最初のミリオンセラーヒット「帰って来たヨッパライ」を歌ったザ・フォーク・クルセイダーズのメンバーであり、その後もサディスティック・ミカ・バンドとして海外で高い評価を得たり、「あの素晴らしい愛をもう一度」などのヒット曲を世に送り出した、日本ポップス史上を代表するミュージシャンのひとり、加藤和彦。2009年にわずか62歳をいう若さで自ら命を絶つという衝撃的な最期を迎るのですが、本作は、その彼の生涯を追ったドキュメンタリー映画となります。

基本的には、この手の音楽ドキュメンタリーによくありがちな、関係者の証言をバストアップのインタビュー映像でつないでいくスタイルの構成。ザ・フォーク・クルセイダーズの相棒である北山修をはじめ、フォークルやサディスティック・ミカ・バンド時代に共に活動をした作詞家の松山猛、ミカ・バンドのプロデューサーだったクリス・トーマスなど、数多くの関係者が登場し、加藤和彦について語っています。特に感涙モノなのが、高橋幸宏と坂本龍一も登場する点。高橋幸宏はおそらく昔のインタビュー映像の使いまわしと思われるのですが、坂本龍一は声だけの出演で、おそらく生前に、病床でのインタビューではないかと思われます。今となっては非常に貴重な証言となってしまいました・・・。

個人的に加藤和彦というと、もちろんフォークルやミカ・バンドとしての活躍は知っていましたし、それを含めて、日本のポップス史上に残るミュージシャンの一人ということはしっかりと認識していました。ただ、この映画であらためて、彼が実にすごい「天才」であったということを再認識させられました。常に新しい音楽性を追い求め、時代の半歩先を進もうとしていたその姿勢。さらには常に一流であることを追い求め、音楽はもちろん、ファッションや食に対しても強いこだわりを見せていたその姿。映画の中での写真の彼は、確かにすらりとした高身長にとてもおしゃれな衣装を身に着けており、そのセンスの良さは、時代を超えて今でもしっかり伝わってきます。

その中でこの映画で特徴的だったのは、まず1点目としてはあくまでも彼の音楽活動にスポットをあてた構成になっていた、という点でしょう。ファッションや食の話も登場してきますが、いずれもやはり彼の先駆的な音楽性を裏付けるためにすぎません。映画のスタートは「帰って来たヨッパライ」のヒットからスタートしますし、それ以前の彼の生い立ちについては全く触れられていません。私生活の話ではミカとの離婚の話題が取り上げられていた程度で、あくまでも彼の音楽活動にスポットがあてられた構成になっています。ただ、逆に彼はそれだけ私生活を表に出すのを嫌っていたのかもしれません。

そしてもう1点は、彼の自殺という最期についても、避けることなく、しっかりと取り上げていたという点でしょう。特に彼の自殺についての関係者の証言は、聴きづらかったでしょうし、答えづらかったでしょう。ただ、関係者それぞれ、しっかりと思うところを証言していたのが映画の中でも重いシーンではあったものの印象的。「あの時、ああしていれば・・・」という後悔を語る関係者も多く、このような後悔を友人たちに残してしまう点が自殺に重い罪だと認識させられました。また、精神科医でもある北山修の証言も重く、そして印象的。自殺の理由について、最終的には断言は避けていたものの、時代の半歩先を進んでいた彼が、半歩先を進めなくなった時に、死を選んだ、ある意味、最期の最期まで、彼は彼らしさを選び続けた、そんな印象を受ける証言となっていました。

映画の構成として、インタビューシーンが多く、例えば当時の貴重なライブ映像、などがあまりなかったのはちょっと残念。何点かライブ映像もはさまれていたのですが、何曲かはフルでライブ映像も見てみたかったな、というのもあります。時代が時代なのであまり残っていないのかもしれませんが・・・。その点はちょっと残念でした。

もう1点は、残念、という点ではないのですが、映画全体の構成として、完全な初心者にはわかりにくかったかもしれない、という点も特徴的と言えるかもしれません。この手のドキュメンタリー映画としては珍しく、ナレーションはなく、インタビューについての背景の説明もさほどなされません。もちろん、ある程度注意深く見て行けば、全くの初心者でも加藤和彦の音楽活動が理解できるようにはなっていましたが、詳しい説明が省略されていたため、彼について、この映画ではじめて知る、という方はちょっとわかりにくかったかもしれません。

そういう気になる点はあるものの、ミュージシャン加藤和彦の素晴らしさについて、しっかりと知ることの出来るよく出来たドキュメンタリー映画だったと思います。ラストは高野寛、高田漣、坂本美雨といった下の世代のミュージシャンも参加しての「あの素晴らしい愛をもう一度」のリメイク版の演奏風景で締めくくられているのも、加藤和彦の業績がしっかりと下の世代に伝えられていることが伝えられており、印象に残りました。加藤和彦というミュージシャンについて、リアルタイムに良く知っているファンはもちろん、フォークルやミカ・バンドなどの業績は知っているものの、詳しくは知らない、という方もお勧めでいるドキュメンタリー。あらためて、日本ポップス史上に残る天才の素晴らしさを感じることが出来る1本でした。

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2024年7月 4日 (木)

やはり強い

今週のHot Albums

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大人気ユニットからのソロ作が見事1位獲得です。

1位初登場はご存じB'zのボーカリスト、稲葉浩志のソロアルバム「只者」が1位獲得です。CD販売数1位、ダウンロード数2位。稲葉浩志ソロ名義だと2014年の「Singing Bird」以来、実に10年ぶりとなるアルバム。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上7万6千枚で1位初登場。そのソロ名義の前作「Singing Bird」の初動7万8千枚(1位)から若干のダウン。10年ぶりのアルバムと考えると、大健闘の結果でしょう。ちなみに直近作はギタリスト、スティーヴィー・サラスとのコラボ、INABA/SALAS名義の「Maximum Huavo」で、同作の初動5万9千枚(1位)からはアップしています。

2位には韓国の男性アイドルグループTWS「SUMMER BEAT!」が初登場。CD販売数2位。これが2作目となるミニアルバム。オリコンでは初動売上3万8千枚で2位初登場。前作「Sparkling Blue」の初動1万⑦千枚(3位)よりアップしています。

3位初登場はRYUJI IMAICHI「R」。三代目J SOUL BROTHERSのボーカリストによるソロ作。CD販売数及びダウンロード数3位。オリコンでは初動売上1万6千枚で3位初登場。前作「GOLD OLD FUTURE」の初動2万枚(2位)よりダウンしています。

以下、4位からの初登場盤です。4位はBuster Bros!!!「.Buster Bros!!!」。声優及びアニメキャラによるラッププロジェクト「ヒプノシスマイク」のグループによるアルバム。5位初登場はRoselia「Fur immer」。こちらもアニメ等のメディアミックス作品「BanG Dream!」に登場する架空のガールズバンドによるアルバム。9位にはいよわ「映画、陽だまり、卒業式」がランクイン。ボカロPによるアルバム。最後10位にはBAE「Before Anyone Lese」が初登場。こちらもHIP HOPのメディアミックスプロジェクト「Paradox Live」に登場する架空のHIP HOPグループによる新作です。

さらに今週、宇多田ヒカルのベストアルバム「SCIENCE FICTION」が先週のランク圏外から一気に6位にランクインし4週ぶりのベスト10返り咲き。これはアナログ盤のリリースがあった影響で、CD販売数がランク圏外から6位にランクアップしています。ただこれで通算8週目のベスト10ヒットとなりました。


今週のHeatseekers Songs

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=heat_seekers

今週のHeatseeekersは初登場。こっちのけんと「はいよろこんで」が1位獲得。TikiTokで火かついたシンガーソングライターによる作品。こっちのけんとはかの菅田将暉の実の弟という点でも話題になっています。特に、昭和30年代40年代風のアニメ動画で話題となっているかねひさ和哉による、昭和の大人漫画そのままのMVが大きな話題となり、YouTube再生回数で2位を獲得し、Heatseekersで一気に1位獲得となっています。今後、このMVがさらに話題を呼ぶのでしょうか。


今週のTikTok Weekly

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=tiktok

今週の1位もKOMOREBI「Giri Giri」が先週から引き続き1位を獲得。これで4週連続の1位獲得となりました。


今週のニコニコVOCALOID SONGS

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=niconico

今週もニコニコ動画がサーバー攻撃のため休止中の影響のため、VOCALOID SONGSのランキングは発表されていません。ちなみにサツキ「メズマライザー」はYouTube再生回数は8位から11位にダウン。ただ今週もボカロ系では最上位を維持しています。

今週のHot Albums&各種チャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2024年7月 3日 (水)

またアイドル系が上位に

今週のHot100

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Creepy Nutsが再び1位陥落です。

今週、1位に初登場したのはINI「LOUD」。韓国発のオーディション番組「PRODUCE 101 JAPAN SEASON2」出身の男性アイドルグループ。CD販売数、ダウンロード数1位、ストリーミング数9位、ラジオオンエア数2位、YouTube再生回数14位。オリコン週間シングルランキングでは同曲が収録されている「THE FRAME」が初動67万2千枚で1位初登場。前作「TAG ME」の初動30万6千枚(1位)からアップしています。

2位もアイドルグループ。櫻坂46「自業自得」が初登場。秋元康系女性アイドルグループ。CD販売数2位、ダウンロード数3位、ストリーミング数5位。オリコンでは初動売上65万6千枚で2位初登場。前作「何歳の頃に戻りたいのか?」の初動43万3千枚(1位)からアップしています。

そしてCreepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」は今週3位にダウン。ストリーミング数、カラオケ歌唱回数は先週から変わらず2位。ただYouTube再生回数は2位から1位にアップし、2週ぶりの1位返り咲きとなっています。これで24週連続ベスト10ヒット、通算22週目のベスト3ヒットとなりました。

最近、CDをグッズとしてリリースしているアイドル系のシングルがリリースされると、Creepy Nutsの順位が下がる傾向にあるのは、やはり一時期に比べて、「Bling-Bang-Bang-Born」の勢いが落ちている証拠でしょう。ただ一方、この曲に変わる強い曲がない影響で、なかなか上位は入れ替わらないチャートが続いています。「Bling-Bang-Bang-Born」に変わる新たな大ヒット曲誕生が待たれるところです。

さて、4位以下ですが、やはりアイドル系が初登場。4位にNCT  WISH「Songbird」がランクイン。韓国の男性アイドルグループNCTのサブユニットによるシングル。CD販売数3位、ラジオオンエア数4位。オリコンでは初動売上7万1千枚で3位初登場。CDシングルとしては本作が初となります。

8位初登場は男性アイドルグループDa-iCE「I wonder」。ダウンロード数7位、ストリーミング数8位、YouTube再生回数5位。TBS系ドラマ「くるり~誰が私と恋をした?~」主題歌。ドラマ主題歌を旧ジャニーズ系以外の男性アイドルグループが歌うのは珍しいなぁ、と思いつつ、一方、このドラマタイトルでなんで主題歌があのバンドじゃないの?とも思ってしまいますが(苦笑)。

一方、ロングヒット曲ですが、まずMrs.GREEN APPLE「ライラック」は今週5位にダウン。ストリーミング数は今週も1位を獲得していますが、ダウンロード数は9位から10位に、YouTube再生回数も6位から9位にダウン。「Bling-Bang-Bang-Born」の次を担うには、ちょっと勢い不足の感も。これで11週連続のベスト10ヒット。ちなみに「コロンブス」は今週10位にダウン。今週も2曲同時ランクインとなっていますが、こちらのロングヒットは難しそうです。

Omoinotake「幾億光年」は先週から変わらず6位。ストリーミング数は7週連続の1位。ただYouTube再生回数は7位から10位にダウン。これでベスト10ヒットは連続20週となりましたが、こちらもさらなる上位を目指すのは厳しい感じ。

tuki.「晩餐歌」は7位から9位にダウン。ストリーミング数は6位から7位、ダウンロード数は8位から12位、YouTube再生回数も5位から8位にダウン。これで通算30週目のベスト10ヒットとなっていますが、こちらはそろそろベスト10維持も厳しい状況になってきそう。

またILLIT「Magnetic」は今週14位にダウン。ベスト10ヒットは通算12週で一度ストップとなりました。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums&各種チャート!

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2024年7月 2日 (火)

あの「千と千尋」がモチーフの曲も話題に

Title:HIT ME HARD AND SOFT
Musician:Billie Eilish

ご存じデビューアルバム「WHEN WE ALL FALL ASLEEP,WHERE DO WE GO?」が大注目となり、グラミー賞も総なめ。一躍、スターの仲間入りとなったビリー・アイリッシュ。約3年ぶり、3作目となる待望のニューアルバムがリリースされました。衝撃的だったデビューアルバムから早5年。前々作、前作は世界各地でチャート1位という状況で、本作も・・・と思いきや、今回は残念ながらアメリカビルボードチャートは2位止まり。1位を拒んだのは誰だ?と思ったら、テイラー・スウィフトのようです。うん、まあ、しょうがないね。

そんな中、日本人にとっては間違いなく注目したいのは、本作にも収録されている「CHIHIRO」でしょう。ここで言う「CHIHIRO」とは、スタジオジブリ映画「千と千尋の神隠し」の「千尋」のこと。MVも本人が監督しており、中には「千と千尋の神隠し」をモチーフにした部分もあるということで話題となっています。

わかりやすいシーンを取り入れた訳じゃないようなので、ちょっと見ただけだと、どこの部分をモチーフにしたのかわからないのですが・・・。ただ、歌詞の一節

Saw your seat at the counter
When I looked away
Saw you turned around
But it wasn't your face

(訳 カウンターに座るあなたを見た。
私が目を離した時、振り向いた君の顔は
いつもの顔とは違っていた)

は、あきらかに映画冒頭の、千尋の両親が豚に変わるシーンをモチーフにしているのでしょうね。先日のKacey Musgravesも宮崎アニメに影響を受けた歌詞がありましたが、宮崎駿監督の全世界への影響力の強さをあらためて感じます。

さて、そんな日本人にとってもなじみのありそうな3作目。前作は1作目と比べて、グッとポップにまとまっていましたが、3作目となる本作は前作以上によりポップにまとまった作品になっていました。前述の「CHIHIRO」もリズミカルな打ち込みのリズムと、メランコリックでドリーミーな歌がポップにまとまっていて耳に残りますし、アルバム冒頭を飾る「SKINNY」も、ファルセットで美しく聴かせる歌声が、まずは耳を惹きつけらえるインパクトある楽曲に。さらにそこから2曲目の「LUNCH」では軽快なビートとギターを入れた、グッとロック寄りとなったナンバーにシフト。彼女の楽曲の幅の広さを感じさせます。

さらに中盤「WILDFLOWER」「THE GREATEST」はアコギでしんみりと聴かせるフォーキーなナンバーに。こちらも前半の曲とはまたちがった作風になっていますが、静かにしんみり聴かせる歌はメロディアスでインパクトも十分。かと思えば、後半「THE DINER」はダウナーなエレクトロチューンに。「BITTERSUITE」も気だるく聴かせるムーディーなエレクトロポップとこれまた新たな展開に。そしてラスト「BLUE」はメランコリックな歌をゆっくりと聴かせる楽曲で、こちらも切なさを感じさせるメロが耳に残ります。

バラエティーに富んだ作風と展開が楽しく、またメロはポップでいい意味で聴きやすく、確かに世界中でヒットとなることも納得の傑作アルバム。前述の通り、1、2作目よりも、いい意味でさらに聴きやすさが増したように思います。ただ、残念ながら「千と千尋」をモチーフにした曲がありながらも、日本ではビルボード最高位15位と、かなり残念な結果に・・・。欧米ポップスが偉いわけじゃないけど、今の日本のミュージックシーンはちょっと閉鎖的すぎるよなぁ。洋楽だからと忌避しないで、是非とも聴いてほしい1枚です。

評価:★★★★★

Billie Eilish 過去の作品
When We All Fall Asleep, Where Do We Go?
Happier Than Ever

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2024年7月 1日 (月)

あれから10年・・・。

Title:「まなざし」~羊毛とおはなトリビュート~

先日もTM NETWORKのトリビュートアルバムを紹介しましたが、本日もトリビュートアルバムの紹介です。羊毛とおはな。オリジナルアルバムは最高でのチャート100位にギリギリ入るか入らないか、といった感じでしたので決して一般的にメジャーなミュージシャンではありませんでした。千葉はなと市川和則の2人組のアコースティックデゥオでしたが、2012年にボーカルの千葉はなが、乳がんを発症。2015年に36歳という若さでこの世を去りました。そこから約10年、2024年は羊毛とおはなの結成20周年の記念すべき年となるのですが、それを記念し、市川和則が中心となり、数多くのミュージシャンたちが参加するトリビュートアルバムがリリースされました。

基本的にシンプルなアコースティックサウンドをベースとするフォーキーなユニット。それだけにシンプルに歌を聴かせる楽曲が並んでいるのですが、まずは参加メンバーもまた、そんな「歌」を聴かせるミュージシャンたちが並んでいます。個人的にはちょっと久々に聞く名前も・・・。1曲目のSalyuも一時期は人気を博していたミュージシャンですが、最近はさほどその名前を聞く機会もなくなり、久しぶりに彼女の名前を聞いたように思います。彼女がカバーした「ミグラトリー」は、ハイトーンボイスが魅力的なカバーに仕上がっています。

続く「大きな木と小さな鳥」をカバーしたアン・サリーも、個人的にかつてかなり注目していたシンガーソングライターだったのですが、最近では完全に自主製作版のみのリリースとなっていたみたいですね。静かに感情を込めた歌声は、久しぶりに聴いたのですがやはり逸品。もっと注目されてよいボーカリストだと思うのですが。鈴木惣一朗のソロプロジェクト、ワールドスタンダードも久しぶりにその名前を聞いたように思います。「冬のうた」はインストによるカバー。暖かさを感じさせるアコースティックな音色が魅力的な作風に仕上げています。

その他には安藤裕子や畠山美由紀など、女性シンガーソングライターが参加。ちょっと意外なところではYUIも参加しています。前述の通り、基本的にはアコースティックなアレンジにより、シンプルに歌を聴かせるカバーがメイン。一方、コトリンゴの「風に吹かれて」やアイナ・ジ・エンドの「輪」、安藤裕子の「エピソード」など、エレクトロアレンジを入れてきた曲もありますが、これらの曲も「歌」を聴かせるスタンスには大きな変化はありません。ただ、アコースティックベースのサウンドの中で、ちょうどよいスパイスのような役目を果たしています。

最後を飾る大橋トリオの「ずっとずっとずっと」はピアノアレンジで完全に大橋トリオの曲に仕上がっているのもまたユニーク。最後までしっかりと歌を聴かせてくれるカバーになっていましたし、その歌についても魅力的かつ個性的なボーカルが多く、それぞれがそれぞれの味付けをしていたカバーになっていました。羊毛とおはなの楽曲自体、決して派手さはないのですが、シンプルがゆえにしっかりと心に残るようなそんな楽曲が並ぶ本作。羊毛とおはなの曲を知らなくても、十分すぎるほど楽しめる傑作アルバムでした。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

街よ街よ/橋本絵莉子

元チャットモンチー橋本絵莉子のソロ2枚目となるアルバム。彼女のかわいらしいボーカルにもマッチするキュートでポップなメロが魅力的。そのキュートさと反比例するかのように、バンドサウンドは非常に骨太なのも印象的。ある意味、チャットモンチーに通じるスタイルではあるのですが、一方でチャットモンチーほどの派手さはありません。暖かさがあってほっこりとした気持ちで聴きたいアルバムといった感じ。ただ、ほっこりするにはちょっとバンドサウンドはヘヴィーすぎるのですが、それはそれで大きな魅力。

評価:★★★★★

橋本絵莉子 過去の作品
日記を燃やして

NOBODY/tofubeats

tofubeatsの最新EPは、全曲、ヴォーカルをAI歌声合成ソフト・Synthesizer Vで制作したという挑戦的なアルバム・・・ということを言われるまで、この歌声がAIによるものだと正直気が付きませんでした・・・。ボカロ系などを聴いても、以前よりもかなり不自然さがなくなってきた感も強いのですが、AI技術の進歩には舌を巻きます。楽曲自体はメロウなエレクトロポップといった感じで、tofubeatsらしいポピュラリティーは魅力的なものの、目新しさはあまり感じませんでしたが、今回はAIボーカルが大きな挑戦だったということなのでしょうか。非常におもしろい試みを感じるEPでした。

評価:★★★★

tofubeats 過去の作品
Don't Stop The Music
ディスコの神様
First Album
STAKEHOLDER
POSITIVE
POSITIVE instrumental

POSITIVE REMIXS
FANTASY CLUB
RUN
TBEP
RUN REMIXES
REFLECTION

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