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2024年6月16日 (日)

レトロなポップソング

Title:Here in the Pitch
Musician:Jessica Pratt

ロサンジェルスを拠点として活動する女性シンガーソングライターによる4枚目のアルバム。前作「Quiet Signs」も高い評価を受け、当サイトでも紹介したのですが、約5年ぶりのニューアルバムとなる本作も各種メディア等で高い評価を受け、まだまだ日本では無名の存在ですが、確実に注目のシンガーとなっている彼女。とはいえ、デビューが2012年なので、デビュー12年の、そろそろ中堅の域にいるシンガーなのですが。

その前作「Quiet Signs」は70年代的な懐かしさを感じるフォーキーな作風が魅力的な作品でした。今回の作品についても、懐かしい印象を強く受ける作風に仕上がっているのですが、もっと言えば70年代フォークというよりも、60年代以前のレトロなガールズポップの雰囲気を感じさせるポップスに仕上がっていました。

冒頭を飾る「Life Is」がまさにそれ。ミディアムチューンでバンドサウンドをバックにゆっくりと歌うナンバーなのですが、非常にくすんだ雰囲気のアレンジや、一発撮りを彷彿とさせる(あくまでも印象ね)ミックスといい、レトロな雰囲気をムンムンと醸し出しています。続く「Better Hate」も、基本的にアコースティックなナンバーなのですが、微妙にリバーブのかかったボーカルもあって、こちらもレトロな雰囲気のキュートなポップチューンとなっています。

その後もムーディーで雰囲気たっぷりの「Get Your Head Out」もムーディーに聴かせてくれる、これもまたレトロな懐かしさを感じさせるポップス。「By Hook or by Crook」もボッサなギターでムード感たっぷりのミディアムチューンに。こちらも懐かしさを感じさせるレトロ感満載のナンバーとなっています。

3曲目の「World on a String」やラストを飾る「The Last year」など、アコギで聴かせるフォーキーな作品もありましたが、全体的にレトロな作風が印象的。特に、微妙にリバーブをかけて、レコードでのちょっと古い音源を聴いているかのように感じさせるミックスが、このレトロと感じさせる曲調を強調していますし、また、彼女自身の、ちょっとくすんだ雰囲気がありつつ、キュートに聴かせてくれるボーカルがまた、60年代的な雰囲気を強調しています。前作も、同じような録音状況となっており、レトロな雰囲気は感じたのですが、今回はアレンジも60年代風のポップチューンとなっており、レトロな雰囲気がより強調されているように感じます。

9曲わずか30分弱という長さも昔ながら、といった感じがして、60年代というイメージにもマッチ。全体的にコンセプチュアルな統一感もあり、非常に優れたポップアルバムの傑作だと思います。これから日本でも徐々に注目度は高まりそうな予感も。おすすめの1枚です。

評価:★★★★★

Jessica Pratt 過去の作品
Quiet Signs


ほかに聴いたアルバム

Cold Visions/Bladee

Coldvisions

スウェーデン出身のラッパーによる約2年ぶりというアルバム。30曲入りというフルボリュームながらも、1時間3分という長さで、1曲あたり2分程度という長さでサクサクと進んでいく展開。トラップをベースとしたリズムながらも、ラップは軽快でサウンド的には爽やかなポップといった印象が。ドリーミーなポップの要素も感じられ、意外とHIP HOPリスナー以外も楽しめそうなポップな要素の強いアルバムになっていました。

評価:★★★★

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アルバムレビュー(洋楽)2024年」カテゴリの記事

コメント

1stアルバム(Birth 2012)からのファンです。
彼女のデビュー・アルバムを世に出すだけのためにレーベルを作ったというエピソードが泣かせます。

4thアルバムは 「LAのヒッピー時代の終焉」 にインスパイアされている。
ハッピーな 「夢のカリフォルニア」 にならなかったのは 「ダークサイドを象徴する人物に取り憑かれた」 結果だという。
「あなたが歌いたいと思っていること、それは知っている曲なのです」 というレナード・コーエンの言葉をインナーに引用しているように、どこかで聴いたことのあるような妖しく懐かしいメロディの 「催眠的フォーク」(hypnagogic folk)。
全9曲・27分、見開き紙ジャケ仕様。

タワレコで輸入CD(City Slang)を購入しました。

投稿: sknys | 2024年6月17日 (月) 12時15分

>sknysさん
>彼女のデビュー・アルバムを世に出すだけのためにレーベルを作ったというエピソードが泣かせます。

そうなんですか。はじめて聴きました。確かに、いいエピソードですね。このアルバムも非常に素晴らしい作品でした。

投稿: ゆういち | 2024年6月19日 (水) 01時39分

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