シンガーソングライターのデゥオが暖かく美しい歌を聴かせる
Title:Hovvdy
Musician:Hovvdy
アメリカ・オースティン出身のシンガーソングライターのデゥオ、Hovvdyのニューアルバム。名前にvが2つ並んだ奇妙な感じのミュージシャン名ですが、これで「Howdy」と読ませるようです。ちなみにここでも紹介したことがあるAlvvaysも同じくvを二つ並べてwと呼ばせているのですが、アメリカの方ではこのようなスラングがあるのでしょうか。ちなみに昨年は初来日も果たしているデゥオだそうですが、2021年にリリースされた前作「True Love」も話題に。前作ではBon IverやBig Thiefも手掛けるプロデューサーのAndrew Sarloがプロデュースを手掛け話題となったようですが、本作ではAndrewに加えて、同じくアメリカのインディーシーンで数多くのミュージシャンのプロデュースを手掛けるBennett Littlejohnが参加し、2人による共同プロデュースという形となっています。
さて、今回はじめてHovvdyのアルバムを聴いたのですが、一言で言ってしまえば、アルバムを聴いてその美しいメロディーラインに、一気に心をつかまされる作品でした。イントロを挟んで1曲目「Bubba」がまずは素晴らしい!静寂感のあるエレクトロのリズムとエレピをバックにゆっくり聴かせるそのメロディーの、暖かくメランコリックなメロディーラインが心に染み入るよう。一方、続く「Jean」は同じく美メロながらも、アコギを弾き語りつつ、フォーキーな作風に仕上げており、こちらも暖かさを感じるメロディーラインが心に残ります。
彼らがとてもユニークな点は、やはりシンガーソングライターのデゥオというところでしょう。Charlie MartinとWill Taylorの2人によるデゥオなのですが、この2人が手掛ける楽曲がほぼ交互に収録。その2人の楽曲の方向性が微妙に違う点が、このアルバムをより面白いものとしています。
前述の冒頭2曲がまさに2人のシンガーソングライターの方向性を如実にあらわしたもので、アルバムの最初にふさわしい、挨拶的な導入を意図したのかもしれません。Martinの曲は、事実上の1曲目の「Bubba」に代表されるように、分厚く暖かみのあるサウンドを取り入れたキュートなポップスがメイン。その後も「Forever」のような軽快ながらもキュートなメロが楽しめるポップスや「Make Ya Proud」のように、ちょっとサイケでドリーミーなサウンドを取り入れつつ、ビートルズの影も見え隠れするような、暖かい美メロの作品を聴かせてくれたりしています。
一方、Taylorの曲は、フォーキーな「Til Let You Know」や、分厚いバンドサウンドを聴かせつつ歌う「Meant」のように、美しいメロディーラインには変わりないものの、Martinの曲と比べると、もうちょっとアメリカーナ的な、ちょっと泥臭さも感じるポップチューンに仕上げています。ただ、彼の曲も暖かいメロディーラインが心を惹きつけるのは間違いなく、そういう意味では2人とも非常に相性のよいコンビと言えるのかもしれません。
個人的に、特にMartinの作品の方は、その暖かみのある美メロに、なんとなくTeenage Fanclubっぽさも感じてしまってかなり壺。そういえば、Hovvdyと言えば、TFCのアルバムに「Howdy!」という作品があるのですが、偶然でしょうか?ネットで調べても、両者のつながりは出てこなかったので、単なる偶然なのかもしれませんが・・・。
メロディーラインには決して派手さはありません。ただただ愚直に美しいメロディーを奏でているバンドです。しかし、シンプルで暖かい楽曲がゆえに、非常に心に残るアルバムに仕上がっていました。なにげに、エレクトロサウンドも取り入れた分厚いドリーミーなサウンドも、シューゲイザー系からのつながりも感じられて壺かも。個人的に年間ベスト候補の1枚とも言える傑作だったと思います。また来日したら、ライブに足を運びたいなぁ。ポップス好きならば、是非ともチェックしてほしい作品です。
評価:★★★★★
| 固定リンク
「アルバムレビュー(洋楽)2024年」カテゴリの記事
- 中年Tylerの想いを綴った新作(2024.12.24)
- 原点回帰を感じさせる高揚感ある楽曲も(2024.12.22)
- 期待のガールズロックバンドの2作目(2024.12.13)
- 90年代に一世を風靡したバンドのレア音源集(2024.12.09)
- 懐かしくも新しい2000年代にフォーカス(2024.12.07)
コメント