愚直にガレージロックに向き合った傑作
Title:POPCORN
Musician:THE BAWDIES
今年、結成20周年、そしてデビュー15周年を迎えた記念すべき年にリリースされる、THE BAWDIES約3年ぶりとなるニューアルバム。彼らに関しては、メジャーデビューアルバム「THIS IS MY STORY」ではじめて知り、ストレートなロックンロールで一気にはまってしまったのですが、それからもう15年も経つのか、と思うと驚かされてしまいます。ま、最近、そういうのばかりなんですが(苦笑)。
ご存じの通り、THE BAWDIESといえば60年代や70年代のロックンロールに愚直なまでに影響を受けたガレージロックバンド。メンバーの音楽的造詣も深く、ルーツ志向の音楽性が高い評価を受けています。ただ一方、このストレートなロックンロール路線は難しい部分もあり、正直、彼らの目指すガレージロックはやはり勢い重視の一本調子な部分は否めず。バンド活動が長くなるにつれ、一本調子かもしれないけど、ストレートで勢いのあるロックンロールを目指すのか、それともマンネリを回避するために音楽的な幅を広げるのか、特にここ最近のアルバムではいろいろと模索しているように感じます。
実際、ここ最近のアルバムで言っても、「Boys!」「NEW」は比較的新機軸を目指したアルバム、「Section#11」は原点回帰したストレートなロックンロール、さらに前作「BLAST OFF!」は再びいろいろな音楽性を模索したアルバムと、いろいろな模索の後が強く感じられます。彼らとしても、なかなかその方向性のかじ取りが難しいということなのでしょう。
そんな中で今回のアルバムは、まさにタイトルの通り彼らがはじけたかのように、これでもかというほどストレートなガレージロック路線を楽しめるアルバムに仕上がっていました。まず1曲目「DO THE BOP!」は、ROYのしゃがれ声でアップテンポに歌い上げる陽気な、いかにもTHE BAWDIESらしオールディーズなナンバーからスタート。続くタイトルチューンの「POPCORN」は、こちらもストレートなガレージロックなナンバー。タイトル通りの弾けるようなリズムが印象に残るナンバーになっています。
先行シングルにもなった「GET OUT OF MY WAY」は力強いギターリフとROYのシャウトが印象的な、これぞTHE BAWDIESといった感じのガレージロック。「STAND!」も力強いギターリフで60年代の雰囲気が強く漂ってくるナンバー。ラストの「ROCK'N'ROLL MAN」も疾走感のある、こちらも60年代ガレージロックをそのまま切り抜いてきたような楽曲と、最後の最後までストレートなガレージロック路線。わき目もふらず、まさにTHE BAWDIESの原点とも言うべきロックンロール路線を貫いたアルバムになっています。
今回はさらに、記念すべきアニバーサリーのアルバムということで、豪華なゲストの参加も特徴的。「SCREAM」ではGLIM SPANKYの松尾レミが参加。息の合ったデゥオの陽気なロックンロールを聴かせてくれますし、さらに「GIMME GIMME」ではOKAMOTO'Sのオカモトショウが参加。個人的にTHE BAWDIESとOKAMOTO'Sというとデビューした時期も近く、またどちらもルーツ志向のバンドということで、近い立ち位置のバンドと思っていただけに、こういった共演はうれしいところです。
THE BAWDIESは2022年に、EP盤「FREAKS IN THE GARAGE-EP」をリリースしました。彼らの原点のガレージロックに向き合った作品で、個人的にもかなりはまった傑作アルバムになっていました。今回のアルバムは、このEPをきっかけに作り始めたアルバムだそうで、それだけに今まで以上にガレージロックに向き合った作品となっています。また、そのEP盤はミックスもかなり荒々しく仕上げていたのですが、今回のアルバムも同様。音的には決してクリアなわかりやすい音ではないかもしれませんが、その分、かなり迫力のある音像に仕上がっていたように思います。
「FREAKS IN THE GARAGE-EP」は、その傑作ぶりに、この方向性でフルアルバムを1枚作ってほしい、と思っていたのですが、まさにその要望が叶った形の傑作アルバム。年間ベストクラスの傑作アルバムであり、THE BAWDIESの本領発揮とも言える作品だったと思います。もう、両手をあげてお勧めしたいガレージロックのアルバム。ロックンロールが好きなら絶対に聴くべき1枚です。
評価:★★★★★
THE BAWDIES 過去の作品
THIS IS MY STORY
THERE'S NO TURNING BACK
LIVE THE LIFE I LOVE
1-2-3
GOING BACK HOME
Boys!
「Boys!」TOUR 2014-2015 –FINAL- at 日本武道館
NEW
THIS IS THE BEST
Thank you for our Rock and Roll Tour 2004-2019 FINAL at 日本武道館
Section#11
BLAST OFF!
FREAKS IN THE GARAGE-EP
ほかに聴いたアルバム
Singles/中島みゆき
1987年にリリースした、中島みゆきの3枚組のベスト盤。このたび、リマスター盤がリリースされたのでチェックしてみました。もう37年も前のアルバム。そのため、90年代以降の彼女のヒット曲はもちろん収録されていません。やはり時代を感じさせるムード歌謡曲テイストの曲が多いのは特徴的。ただ一方、強烈な個性としての独特の歌詞の世界はもちろん既に確立されており、一般的なムード歌謡曲との確固たる違いを感じさせます。この歌詞の世界観もあり、今なお全く衰えることない魅力を感じさせてくれるベスト盤でした。
評価:★★★★★
中島みゆき 過去の作品
DRAMA!
真夜中の動物園
荒野より
常夜灯
十二単~Singles4~
問題集
組曲(Suite)
中島みゆき・21世紀ベストセレクション『前途』
中島みゆきConcert「一会」(いちえ)2015~2016-LIVE SELECTION-
相聞
中島みゆき ライブ リクエスト -歌旅・縁会・一会-
CONTRALTO
ここにいるよ
中島みゆき 2020 ラスト・ツアー「結果オーライ」
世界が違って見える日
SHISHAMO 8/SHISHAMO
タイトル通り、オリジナルアルバムとしては8枚目となるSHISHAMOのニューアルバム。直近の企画盤「ACOUSTIC SHISHAMO」では彼女たちの歌詞や歌自体の魅力を存分に感じれた1枚となりましたが、それに続くアルバムだからでしょうか、いつも以上に切ない彼女たちのラブソングの歌詞が、より前に出ているように感じたアルバムになっていたように感じます。彼女たちらしさが出ていた作品となっていました。
評価:★★★★
SHISHAMO 過去の作品
SHISHAMO 3
SHISHAMO 4
SHISHAMO 5
SHISHAMO BEST
SHISHAMO 6
SHISHAMO 7
ブーツを鳴らして-EP
恋を知っているすべてのあなたへ
ACOUSTIC SHISHAMO
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