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2024年6月29日 (土)

新たなサウンドも積極的に取り込む

Title:朝崎郁恵 ゴールデン☆ベスト
Musician:朝崎郁恵

レコード会社各社共通タイトルで発売されている廉価版のベスト盤シリーズ「ゴールデン☆ベスト」。3月からユニバーサルで一気に発売されたので面白そうなタイトルをチェックしてみました。廉価版とはいえ、様々なミュージシャンの代表曲がほどよいボリュームで収録されており、入門盤としてはバカに出来ない内容になっているのですが、今回、紹介するのは、奄美大島の民謡歌手、朝崎郁恵のベストアルバム。名前は以前から知っており、企画盤に収録された1曲として、何曲か聴いたことあり、また、以前、一度だけライブも見たことはあるのですが、今回、こういった形でまとめてベスト盤としてチェックしてみました。

彼女の経歴が非常にユニークなのは、民謡歌手として活動を開始したのが10代の頃なのですが、メジャーデビューはなんと2002年で、彼女が67歳の年。このアルバムは、そのメジャーデビュー以降の作品が収録されています。そのため、声としては、いわば年寄りの声であって、「若さ」のようなものはないのですが、ただ絶妙なビブラートと、それに基づく表現力に舌を巻かれる歌が印象的。ともすれば、このビブラートは年齢ゆえの不安定さに最初は感じてしまいがちなのですが、ただ聴き進めていくと、歌に不安定感はなく、この絶妙なビブラートもしっかりと彼女の歌の中に組み込まれたものということに気が付かされます。

さらに彼女がすごいのは、彼女が67歳という年齢でメジャーデビューし、それ以前に既に奄美民謡の歌手としてその地位を確立していながらも、メジャーデビュー後、様々な若手のミュージシャンとのコラボを行っている点でしょう。メジャーデビュー作ではゲストにUAが参加。さらにLUNA SEAのSUGIZOをゲストに迎えた曲もあります。本人の希望というよりも、メジャーデビュー後に売れるための周りのおぜん立てかもしれませんが、ともすれば、70歳近い年齢であり、既に奄美民謡の第一人者としてその地位を築いていながら、そういう若手ミュージシャンを素直に受け入れらる柔軟性、度量の広さに驚かされます。

実際、このベストアルバムに収録されている曲も、奄美民謡というジャンルに捉われず、特にアレンジについては、積極的に新しい音を取り入れる姿を感じます。例えば「上がる陽ぬ春加那節」ではメランコリックで美しいピアノの音色をバックにしていますし、UAをゲストに迎えた「徳之島節」も幻想的なピアノアレンジが魅力的。UAの力強い歌声も大きな魅力に。GONTITIのチチ松村をゲストに迎えた「ティクテングヮ」も、チチ松村の優しいアコギの音色をバックに伸びやかな歌声を聴かせてくれますし、さらに「ありがとサンキュ~」はイクエ&カケロマンズとしてハワイアンに挑戦。ベースとなるのは間違いなく奄美民謡なのですが、昔ながらのスタイルに捕らわれないその音楽に対する度量の広さには、頭が下がる思いすらします。

そういうこともあって、奄美民謡にあまりなじみのない方でも聴きやすいベストアルバムになっていました。一方で、「朝花」「芦花部一番」のような、いかにも民謡的なアレンジによる楽曲も収録されており、王道路線の民謡もしっかりと聴かせてくれています。奄美民謡の魅力もしっかりとパッケージされており、そういう意味でも実に魅力的なベストアルバムに仕上がっていました。

ちなみに彼女は現在88歳。今でもしっかり現役のミュージシャンで、東京などでもライブを行い、積極的な活動を続けているようです。そのアグレッシブさにはあらためて驚かされますが、いつまでもお元気で!でも、まだまだ新しい挑戦を続けそうだなぁ。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

HEY!WONDER/ザ・クロマニヨンズ

約1年1ヶ月ぶりとなる、ザ・クロマニヨンズとして17枚目のアルバム。基本的にシンプルなロックンロールというスタイルはいままでと同様。歌詞もいつも通り、非常にシンプルな内容が多いのですが、「くだらねえ」などはひたすら「くだらねえ」という歌詞を連呼する内容で、これはこれで、非常にパンクなものを感じます。大いなるマンネリと言えばその通りなのですが、これはこれでいかにもザ・クロマニヨンズらしいといった感じで。

評価:★★★★

ザ・クロマニヨンズ 過去の作品
CAVE PARTY
ファイヤーエイジ
MONDO ROCCIA
Oi! Um bobo
ACE ROCKER
YETI vs CROMAGNON
ザ・クロマニヨンズ ツアー2013 イエティ対クロマニヨン
13 PEBBLES~Single Collection~
20 FLAKES~Coupling Collection~
GUMBO INFERNO
JUNGLE9
BIMBOROLL
ラッキー&ヘブン
レインボーサンダー
PUNCH
ザ・クロマニヨンズ ツアー PUNCH 2019-2020
MUD SHAKES
SIX KICKS ROCK&ROLL
MOUNTAIN BANANA
ザ・クロマニヨンズ ツアー MOUNTAIN BANANA 2023

~35~/宮沢和史

元THE BOOMのボーカリスト、宮沢和史の音楽活動35周年を記念してリリースされたソロアルバム。様々なミュージシャンとのコラボが収録されており、「星のラブレター」は元プリプリ、岸谷香とがギターとコーラスで参加。新曲「恋をした時」はTRICERATOPSとのコラボ、さらに「遠影」は宮沢和史と同郷のレミオロメン藤巻亮太との共作と、様々なミュージシャンが参加しています。ただ、過去作のリメイクが目立ち、全体的にはパワー不足は否めません。「記念盤」なのにわずか7曲30分という短さなのも、若干彼の活動が停滞気味に感じてしまいました。

評価:★★★

宮沢和史 過去の作品
寄り道
MIYATORA(宮沢和史&TRICERATOPS)
MUSICK
留まらざること 川の如く
次世界

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