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2024年6月22日 (土)

「激しい」ジャズも聴かせる

Title:Fareless Movement
Musician:Kamasi Washington

映画版を当サイトでも紹介したことがあると思うのですが、最近、話題となっているジャズを題材とした漫画に「BLUE GIANT」という作品があります。同作品の中で主人公は、ジャズの魅力について「激しいところ」と語っていることが大きなポイントとなっています。ジャズっぽい=ジャジーというと、一般的にはしんみりと聴かせるタイプの音楽を指し、ジャズというとムーディーに聴かせるという音楽性を想像する方も多いのではないでしょうか。そんな中で、ジャズのことを「激しい」と表現する主人公。確かにジャズは決してムーディーに聴かせる音楽ではなく、ロックに負けない激しいプレイも魅力のひとつ。一般的なジャズのイメージと異なる、この「激しい」というキーワードが、ジャズの新たな魅力を提示しており、かつ、独自性を感じさせる作品性となっています。

今日紹介するアルバムは、現代のジャズシーンを代表するサックスプレイヤー、Kamasi Washingtonの約6年ぶりとなるニューアルバム。なんで冒頭に、漫画「BLUE GIANT」の話を持ってきたかというと、彼の新作、特に最後を締めくくる「Prologue」を聴いた時に、このジャズの魅力のひとつ、「激しい」というキーワードを思い起こしたからです。ラストを飾る本作は、バンドサウンドを主軸とした比較的オーソドックスなスタイルのジャズなのですが、疾走感あるサウンドが魅力的で、特に途中に聴かせてくれるカマシのアグレッシブなサックスプレイに耳を奪われます。ロックの激しさとは一風異なる、ジャズの激しさを表現したこの曲。まさに「BLUE GIANT」で主人公が言う「激しい」ジャズというのは、このような作品を指すのでは、と感じる内容になっています。

ただ、今回の彼のアルバムは、ただ単純に「激しいジャズ」のアルバムではありません。前作「HEAVEN&EARTH」では、比較的オーソドックスなフュージョン系のジャズを聴かせてくれた彼。今回のアルバムも、ベースとなるのは、比較的オーソドックスなスタイルのジャズに感じます。しかし、そんな中で、ジャズをベースとして様々な要素を取り入れてきているのが今回のアルバムの大きな魅力に感じました。

例えばThundercatも参加した「Asha The First」では、フュージョン系のナンバーながらも、こちらもアグレッシブさを感じさせるサックスのプレイが魅力的。同作にはラッパーも参加し、HIP HOPの要素も感じさせる楽曲になっていましたし、「Computer Love」もメロウな女性ボーカルがしんみりと歌い上げる作品に。ソウルの色合いの強い楽曲になっています。「Get Lit」ではジョージ・クリントンも参加。こちらもラップのパートもありつつ、ソウル的な要素も強いナンバーに仕上げています。

「Together」などは、まさにジャズのパブリックイメージそのままの、ムーディーで「ジャジー」なナンバー。一方では「The Garden Path」のリズミカルで疾走感あるバンドサウンドが魅力的。迫力のあるドラムプレイもあって、ロックリスナーでも楽しめそう。

もっとも、基本的には「Road to Self(KO)」のように、オーソドックスに聴かせるジャズのナンバーがメインとなっており、現代風のジャズとはいえ、「目新しさ」という要素は薄目かもしれません。ただ、バラエティーある作風に、アグレッシブな演奏、ソウルやHIP HOPの要素も取り入れた楽曲は、ジャズリスナーならずとも広いリスナー層が楽しめるアルバムに仕上がっていたと思います。

「激しい」ジャズから、ムーディーに聴かせる、いかにもなジャズまで、バリエーションのある作風の楽しめる傑作。現代を代表するジャズサックス奏者だけに、そのプレイにも魅了されるアルバムに仕上がっていました。ジャズ好きならずとも要チェックな1枚です。

評価:★★★★★

Kamasi Washington 過去の作品
HEAVEN&EARTH

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