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2024年6月

2024年6月30日 (日)

あの「ゲワイ」をB'zがカバーしたことでも話題に

Title:TM NETWORK TRIBUTE ALBUM-40th CELEBRATION-

今年、デビュー40周年を迎えたTM NETWORK。それに伴い、様々な企画が立ち上がっているのですが、その中でもっとも話題となっているのは間違いなくこのトリビュートアルバムでしょう。TM NETWORKの代表曲を様々なミュージシャンがカバーした企画盤。もっと言えば、その中でも特に話題となったのは、あのB'zが「Get Wild」をカバーした、ということ。ファンなら重々承知でしょうが、B'zの松本孝弘といえば、もともとTM NETWORKのサポートギタリストとして活動していた過去がありました。もっと言えば、デビュー当初のB'zは、明らかにTM NETWORKをパクっていた部分があり、その点でも縁のある2組。それがTMの中でももっとも知名度の高い「Get Wild」をカバーした、ということでかなりの話題となりました。

他にもCAPSULE、くるり、松任谷由実、ヒャダイン、西川貴教など、TM NETWORKとの関連性が容易に彷彿とさせるミュージシャンからちょっと意外なミュージシャンまで数多く参加。その豪華さも話題となりました。ただ、参加メンバーにはちょっと残念な部分も。個人的にはやはり渡辺美里には参加してほしかったな、というのと、浅倉大介が未参加なのも残念。また、小室系のミュージシャンにも参加してほしかったかも(参加したのはヒャダインと組みでDJ KOOが参加したくらい・・・)。あと、大人になった電気グルーヴとか参加していたら楽しかったのにな。

さて、そんな豪華なメンバーが参加したトリビュートアルバムなのですが、総じていえば、原曲に遠慮したのか、こう来たのか!という大胆な解釈はなく、その点はちょっと残念にも感じました。注目のB'z「Get Wild」ですが、あえてキーを高くすることにより、稲葉浩志のボーカルにマッチさせたのは上手いのですが、ちょっとシンセの音が強すぎるかも。最初期の(TMのパクリだった頃の)B'zに近いアレンジでしたが、個人的には、もうちょっとB'zらしいハードロックなアレンジの方がよかったかも。

個人的に注目していたのはくるりの「STILL LOVE HER(失われた風景)」。くるりがTMのトリビュートに参加というのも意外だったのですが、選曲も個人的にTM曲の中でもっとも好きな曲なだけに、うれしい選曲。ただ、こちらもあえてエレクトロアレンジにするなど、TMのイメージに引っ張られ過ぎな感じも。メロディーライン的にはフォーキーな曲だけに、もっとアコースティックなアレンジでも良かったような。

原曲に引っ張られ過ぎといえばCAPSULEの「Self Control(方舟に曳かれて)」もそうだったかもしれません。こちらはもともとエレクトロユニットだけに、エレクトロアレンジでも不自然さは全くないのですが、もうちょっと中田ヤスタカ色を出していた方がTM色との違いが際立って面白かったような気もします・・・。また、もっとも残念に感じたのは松任谷由実 with SKYE「Human System」で、アレンジが鈴木茂、小原礼、林立夫、そして松任谷正隆という大御所からなるSKYEによるものということで注目していたのですが、哀愁ただようメロと正反対のホーンのアレンジにすごく違和感。原曲のもつ繊細さが失われたようなアレンジになっており、個人的にはこのトリビュートの中のワーストだったように思います。

一方、良かったのは坂本美雨の「TIMEMACHINE」と満島ひかりの「ELECTRIC PROPHET(電気じかけの予言者)」。どちらもシンプルに歌を聴かせる構成となっており、TMの曲の良さが素直に出ていたと思います。ともすればTM NETWORKというと、エレクトロユニットというイメージなのか、「ELECTRIC PROPHET」のアレンジを手掛けたクラムボンmitoのコメントでも「TMなのでエレクトロを入れなくては」という意識があったようですが、逆にエレクトロ色にこだわりすぎたような楽曲が多かったようにも思います。

ある意味、なんとなく予想通りではあったのですが、その原曲のイメージにこだわりすぎて、全体的に無難なアレンジが多かった今回のトリビュートアルバム。TM=エレクトロユニットというイメージがあるのですが、一方、小室にしろ木根にしろ、意外なほどメロディアスなメロディーを書いているユニットでもあるだけに、そういうメロディーの側面により着目したカバーの方がよりよかったように思います。まあ、他にもいろいろとカバーしてほしかったミュージシャンもいるだけに、第2弾とかあったらうれしかったりするのですが・・・。参加しているミュージシャンのファンなら、損はないかな?それなりには楽しめた企画盤ではありました。

評価:★★★★


ほかに聴いたアルバム

liverally.ep/SAKANAMON

個人的に、現在、もっとも過小評価されているロックバンドのひとつと思っているSAKANAMONのニューEP。ライブをテーマに、リハから帰宅までを綴ったテーマ性あるアルバムなのですが、まずはマイクチェックからスタートする構成もユニークですし、ライブで盛り上がりそうな「すっぽんぽん」のようなコミカルな楽曲もユニーク。いずれも力強いギターロックのナンバーで、コミカルな曲や暖かさを感じさせるようなナンバーが並んでおり、短いながらも聴きごたえのあるアルバムになっていました。

評価:★★★★★

SAKANAMON 過去の作品
ARIKANASHIKA
あくたもくた
HOT ATE
OTSUMAMIX

・・・
HAKKOH

SUKIMASWITCH 20th Anniversary "POPMAN'S WORLD 2023 Premium"/スキマスイッチ

スキマスイッチおなじみのライブアルバム。彼らのデビュー20周年を迎えた2023年。その記念すべき年の最後に行われた「POPMAN’S WORLD 2023 Premium」のうち、2023年12月22日に日本武道館で行われたライブの模様を収録したライブアルバム。選曲はベスト的なセレクトとなっており、スキマスイッチの代表曲が次々と登場してくる内容になっています。ライブ盤的にも楽しめますし、スキマスイッチの魅力を存分に感じられるアルバムになっていました。

評価:★★★★★

スキマスイッチ 過去の作品
ARENA TOUR'07 "W-ARENA"
ナユタとフカシギ
TOUR2010 "LAGRANGIAN POINT"
musium
DOUBLES BEST
TOUR 2012 "musium"

POP MAN'S WORLD~All Time Best 2003-2013~
スキマスイッチ TOUR 2012-2013"DOUBLES ALL JAPAN"
スキマスイッチ 10th Anniversary Arena Tour 2013“POPMAN'S WORLD"
スキマスイッチ 10th Anniversary“Symphonic Sound of SukimaSwitch"
スキマスイッチ
TOUR 2015 "SUKIMASWITCH" SPECIAL
POPMAN'S ANOTHER WORLD
スキマスイッチTOUR2016"POPMAN'S CARNIVAL"
re:Action
新空間アルゴリズム
スキマノハナタバ~Love Song Selection~
SUKIMASWITCH TOUR 2018"ALGOrhythm"
SUKIMASWITCH 15th Anniversary Special at YOKOHAMA ARENA ~Reversible~
スキマスイッチ TOUR 2019-2020 POPMAN'S CARNIVAL vol.2
スキマノハナタバ ~Smile Song Selection〜
スキマスイッチ TOUR 2020-2021 Smoothie
Hot Milk
Bitter Coffee
スキマスイッチ TOUR 2022 "cafe au lait"
POPMAN'S WORLD -Second-

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2024年6月29日 (土)

新たなサウンドも積極的に取り込む

Title:朝崎郁恵 ゴールデン☆ベスト
Musician:朝崎郁恵

レコード会社各社共通タイトルで発売されている廉価版のベスト盤シリーズ「ゴールデン☆ベスト」。3月からユニバーサルで一気に発売されたので面白そうなタイトルをチェックしてみました。廉価版とはいえ、様々なミュージシャンの代表曲がほどよいボリュームで収録されており、入門盤としてはバカに出来ない内容になっているのですが、今回、紹介するのは、奄美大島の民謡歌手、朝崎郁恵のベストアルバム。名前は以前から知っており、企画盤に収録された1曲として、何曲か聴いたことあり、また、以前、一度だけライブも見たことはあるのですが、今回、こういった形でまとめてベスト盤としてチェックしてみました。

彼女の経歴が非常にユニークなのは、民謡歌手として活動を開始したのが10代の頃なのですが、メジャーデビューはなんと2002年で、彼女が67歳の年。このアルバムは、そのメジャーデビュー以降の作品が収録されています。そのため、声としては、いわば年寄りの声であって、「若さ」のようなものはないのですが、ただ絶妙なビブラートと、それに基づく表現力に舌を巻かれる歌が印象的。ともすれば、このビブラートは年齢ゆえの不安定さに最初は感じてしまいがちなのですが、ただ聴き進めていくと、歌に不安定感はなく、この絶妙なビブラートもしっかりと彼女の歌の中に組み込まれたものということに気が付かされます。

さらに彼女がすごいのは、彼女が67歳という年齢でメジャーデビューし、それ以前に既に奄美民謡の歌手としてその地位を確立していながらも、メジャーデビュー後、様々な若手のミュージシャンとのコラボを行っている点でしょう。メジャーデビュー作ではゲストにUAが参加。さらにLUNA SEAのSUGIZOをゲストに迎えた曲もあります。本人の希望というよりも、メジャーデビュー後に売れるための周りのおぜん立てかもしれませんが、ともすれば、70歳近い年齢であり、既に奄美民謡の第一人者としてその地位を築いていながら、そういう若手ミュージシャンを素直に受け入れらる柔軟性、度量の広さに驚かされます。

実際、このベストアルバムに収録されている曲も、奄美民謡というジャンルに捉われず、特にアレンジについては、積極的に新しい音を取り入れる姿を感じます。例えば「上がる陽ぬ春加那節」ではメランコリックで美しいピアノの音色をバックにしていますし、UAをゲストに迎えた「徳之島節」も幻想的なピアノアレンジが魅力的。UAの力強い歌声も大きな魅力に。GONTITIのチチ松村をゲストに迎えた「ティクテングヮ」も、チチ松村の優しいアコギの音色をバックに伸びやかな歌声を聴かせてくれますし、さらに「ありがとサンキュ~」はイクエ&カケロマンズとしてハワイアンに挑戦。ベースとなるのは間違いなく奄美民謡なのですが、昔ながらのスタイルに捕らわれないその音楽に対する度量の広さには、頭が下がる思いすらします。

そういうこともあって、奄美民謡にあまりなじみのない方でも聴きやすいベストアルバムになっていました。一方で、「朝花」「芦花部一番」のような、いかにも民謡的なアレンジによる楽曲も収録されており、王道路線の民謡もしっかりと聴かせてくれています。奄美民謡の魅力もしっかりとパッケージされており、そういう意味でも実に魅力的なベストアルバムに仕上がっていました。

ちなみに彼女は現在88歳。今でもしっかり現役のミュージシャンで、東京などでもライブを行い、積極的な活動を続けているようです。そのアグレッシブさにはあらためて驚かされますが、いつまでもお元気で!でも、まだまだ新しい挑戦を続けそうだなぁ。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

HEY!WONDER/ザ・クロマニヨンズ

約1年1ヶ月ぶりとなる、ザ・クロマニヨンズとして17枚目のアルバム。基本的にシンプルなロックンロールというスタイルはいままでと同様。歌詞もいつも通り、非常にシンプルな内容が多いのですが、「くだらねえ」などはひたすら「くだらねえ」という歌詞を連呼する内容で、これはこれで、非常にパンクなものを感じます。大いなるマンネリと言えばその通りなのですが、これはこれでいかにもザ・クロマニヨンズらしいといった感じで。

評価:★★★★

ザ・クロマニヨンズ 過去の作品
CAVE PARTY
ファイヤーエイジ
MONDO ROCCIA
Oi! Um bobo
ACE ROCKER
YETI vs CROMAGNON
ザ・クロマニヨンズ ツアー2013 イエティ対クロマニヨン
13 PEBBLES~Single Collection~
20 FLAKES~Coupling Collection~
GUMBO INFERNO
JUNGLE9
BIMBOROLL
ラッキー&ヘブン
レインボーサンダー
PUNCH
ザ・クロマニヨンズ ツアー PUNCH 2019-2020
MUD SHAKES
SIX KICKS ROCK&ROLL
MOUNTAIN BANANA
ザ・クロマニヨンズ ツアー MOUNTAIN BANANA 2023

~35~/宮沢和史

元THE BOOMのボーカリスト、宮沢和史の音楽活動35周年を記念してリリースされたソロアルバム。様々なミュージシャンとのコラボが収録されており、「星のラブレター」は元プリプリ、岸谷香とがギターとコーラスで参加。新曲「恋をした時」はTRICERATOPSとのコラボ、さらに「遠影」は宮沢和史と同郷のレミオロメン藤巻亮太との共作と、様々なミュージシャンが参加しています。ただ、過去作のリメイクが目立ち、全体的にはパワー不足は否めません。「記念盤」なのにわずか7曲30分という短さなのも、若干彼の活動が停滞気味に感じてしまいました。

評価:★★★

宮沢和史 過去の作品
寄り道
MIYATORA(宮沢和史&TRICERATOPS)
MUSICK
留まらざること 川の如く
次世界

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2024年6月28日 (金)

かなり意欲的な企画盤

Title:ブギウギの誕生 The Birth Of Boogie Woogie

昨年10月から今年の3月にかけて朝の連続テレビ小説で放映され話題となった「ブギウギ」。戦後の日本でブギの女王と言われた笠置シヅ子をモデルとしたドラマで、ドラマの中でも彼女の曲が数多く使用されました。平均視聴率は15.9%と、朝の連ドラとしては「そこそこ」といった程度で、正直、「大きな話題になった」か言えば微妙な感じなのですが、それでも音楽をテーマとしたドラマということもあり、ブギウギに関する多くの企画盤が登場し、また、本なども販売となり、その界隈では大きな盛り上がりを見せました。

当サイトでも、そのドラマ「ブギウギ」にのっかかった企画のアルバムや書籍などを何度か紹介してきましたが、ある意味、その企画の中でももっとも挑戦的と感じたのはこの企画盤。今回の「ブギウギ」にのっかかった企画のほどんとは、笠置シヅ子及び服部良一関連の音源や笠置シヅ子と関係のある戦前戦後の日本の歌謡曲を取り上げた企画だったのですが、本作は文字通り、本家本場のブギウギの曲を収録した企画盤。販売元がブルースを手掛けるレーベルであるP-Vineだからこそ販売できた企画だったのでしょうが、普通は、朝ドラを見ているような視聴者に対して、戦前戦後の本場アメリカのブギウギを売りこもうなんて発想は出てきません(誉め言葉)。

1曲目からいきなりPine Top Smithのヒット曲「Pine Top's Boogie Woogie」からスタート。この手のピアノブルースの「ブギウギ」というタイトルをつけた最初の曲らしく、確かに「ブギウギの誕生」の1曲目としてはふさわしいナンバーですが、朝の連ドラから「ブギウギ」に興味を持ったようなリスナーが、最初に聴く曲としてはディープすぎます。続いてもCow Cow Davenportの「Cow Cow Blues」へ。こちらも戦前のブギウギピアニストの代表的な存在で、「ブギウギの誕生」の選曲としては文句なしなのですが、入門盤として入れてくるには挑戦的すぎる感じも。ただ、ピアノで軽快に聴かせるインストナンバーは聴いていて時代を超えて楽しさを感じさせる1曲。朝の連ドラから入ってきたようなリスナーにもピンと来るような感もあるのではないでしょうか。

ある意味、マニアックな構成になっており、私のようにブルースもそれなりに聴いているものの、決してマニアというほど詳しくない身にとっても、初耳なミュージシャンがたくさん。ただ、本作の選曲・監修はブルースギタリストで日本のブルース評論家の第一人者、小出斉によるもの。本年1月に惜しまれつつこの世をさった彼の、おそらくは最後の仕事の1つだと思われます。そんな彼の仕事なだけに、楽曲は粒ぞろい。むしろ朝の連ドラの連動企画にかこつけて、普通にブルースリスナーたちに対して良質なブルースのオムニバスを企画しただけ、といった感もします。

個人的に印象的だったのは、まずRaymond Barrowの「Walking Blues」。ピアノのダンパーペダルを多用し、音にリバーブをかけ、ドリーミーに聴かせるスタイルが印象的。軽快な他のピアノとは一風変わった音が楽しめます。また、ピアノブルースの代表的な巨人、Leroy Carr「Sloopy Drunk Blues」も耳を惹きます。曲を聴くと一発で彼の曲とわかるあたり、巨匠らしい実力を感じます。またMeade Lux Lewisの「Honky Tonk Train Blues」も、その複雑なピアノのプレイに思わず聴き入ってしまいます。複雑に展開し、ピアノの音が絶妙なバランスで重なり合う演奏にはグイグイと耳を惹かれます。

他にも魅力的な曲の多いこの企画盤。さすがに朝の連ドラからいきなりこのアルバムに入ると戸惑う人も少なくないかとは思うのですが、ブルースが好きな方なら間違いなく気に入ると思いますし、朝の連ドラから興味を持って聴き始めても、ひょっとしたらその魅力に気が付く方は少なくないかも?本家本元のブギウギの楽しさを味わえる、魅力的なオムニバスでした。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

The Hassles/The Hassles

日本でも絶大な人気を誇るシンガーソングライターのビリー・ジョエルが、ミュージシャンとしての活動をスタートさせ、最初に在籍していたバンドThe Hassles。アルバム1枚をリリースしたのみで、鳴かず飛ばずで解散してしまったようですが、今回、アルバム未収録のシングル「I'm Thinking」を追加収録して再発売されました。

おそらく、本作を聴く方は100%、ビリー・ジョエルのファンだとは思うのですが、正直、このアルバムにビリー・ジョエルのSSWとしての萌芽を求めるとしたら、完全に肩透かしを食らわされます。楽曲は60年代らしいブルースロック、ハードロックなのですが、正直、平々凡々な内容。悪くはないですが、バンドとしての個性は皆無。メロディーラインに関しても特筆すべきものはなく、ビリー・ジョエルらしさは全く感じられません。熱心なビリー・ジョエルのファンが、彼に関する全てのアイテムを手に入れた後に、はじめてチェックするような作品。ストリーミングで聴くことが出来るので、それでチェックするのは悪くないかもしれませんが・・・。ビリー・ジョエルの熱心なファン以外は無視しても問題はない作品です。

評価:★★★

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2024年6月27日 (木)

旧ジャニ勢が1位2位

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週は旧ジャニ勢が1位2位に並びました。

まず1位初登場はtimelesz「timelesz」がランクイン。CD販売数1位。誰だ?と思ったのですが、旧ジャニーズ系SexyZoneが今年4月1日に改名したそうです。本作は改名後初となる7曲入りのEP盤。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上9万9千枚で1位初登場。SexyZone名義だった前作「ChapterⅡ」の初動15万枚からダウンしています。

2位も旧ジャニ系。先週1位のなにわ男子「+Alpha」がワンランクダウンでベスト3をキープしています。

3位はゲームを元としたミュージカル「刀剣乱舞」より、配信限定アルバム刀剣男士 formation of 花影「IGNITION」が獲得。ダウンロード数で1位にランクインし、総合チャートでもベスト3にランクインしました。

次に4位以下の初登場盤ですが、4位にNornis「Tensegrity」がランクイン。にじさんじ所属のVTuberグループ。6位にはFANTASY BOYS「MAKE A FANTASY」が初登場。韓国の男性アイドルグループ。7位初登場はAvril Lavigne「GREATEST HITS」。日本でも高い人気を誇るアメリカの女性シンガーソングライターによる、ちょっと意外にも初となるベスト盤。8位は小片リサ「montage」。元つばきファクトリーの女性アイドルによる、オリジナルとしてはデビューアルバム。そして10位にはKroi「Unspoiled」がランクイン。今年は初の日本武道館ワンマンをソールドアウトさせるなど、人気上昇中の5人組バンドで、ソウルやR&Bの影響の濃いサウンドが特徴的なグループ。


今週のHeatseekers Songs

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=heat_seekers

HeatseeekersはしばらくBABYMONSTERの1位が続いていましたが、今週は2位にダウン。代わりに1位には、男性シンガーソングライター808「You」が6週ぶりの1位返り咲きとなりました。


今週のTikTok Weekly

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=tiktok

今週の1位もKOMOREBI「Giri Giri」が先週から引き続き1位を獲得。これで3週連続の1位獲得となりました。


今週のニコニコVOCALOID SONGS

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=niconico

VOCALOIS SONGSですが、今週も引き続き、ニコニコ動画がサーバー攻撃のため休止中の影響のため、ランキングは発表されていません。ちなみにサツキ「メズマライザー」はYouTube再生回数が5位から8位にダウン。ただ今週もボカロ系では最上位を維持しています。

今週のHot Albums&各種チャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2024年6月26日 (水)

初登場はアイドル勢が目立つ

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週の初登場はアイドル勢が目立つチャートとなりました。

まず今週の1位はCreepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」が獲得。ただ今週、21週連続1位を獲得してきたストリーミング数は2位にダウン。YouTube再生回数も2位にダウン。14週連続1位を続けてきたカラオケ歌唱回数も2位にダウン。ダウンロード数こそ4位から2位にアップしていますが、全体的に息切れ気味なのは否めません。とはいえ総合順位では3週連続の1位を獲得。これで23週連続のベスト10ヒット、通算21週目のベスト3ヒット、通算19週目の1位獲得となりましたが、そろそろ1位キープは厳しそうな状況になっています。

2位初登場は女性アイドルグループIS:SUE「CONNECT」。韓国発のオーディション番組「PRODUCE 101 JAPAN THE GIRLS」から誕生したグループ。CD販売数及びラジオオンエア数で1位獲得。オリコン週間シングルランキングでも本作が収録された「1st IS:SUE」が初動売上11万6千枚で1位初登場。本作がデビュー作となります。

3位はこちらは韓国の男性アイドル。JEONGHAN X WONWOO「Last night (Guitar by Park Juwon)」がランクイン。韓国の男性アイドルグループSEVENTEENのメンバー2人によるユニット。CD販売数2位。オリコンでも本作が収録された「JEONGHAN X WONWOO 1st Single Album『THIS MAN』」が初動売上8万6千枚で2位にランクインしています。

そんな訳で今週は2位3位とアイドル勢が並びましたが、4位以下の初登場曲もアイドル勢が並びました。8位初登場は韓国の女性アイドルグループNewJeans「Supernatural」。CD販売数4位、ダウンロード数7位。昨年末の紅白出演でも話題になり、一部で高い支持を得ていることからNewJeansだけ応援している中高年を指して「NewJeansおじさん」なる造語も登場し、良くも悪くも話題となりました。本作はちょっと意外なことに日本でのデビューシングル。オリコンでは初動売上3万8千枚で4位初登場。前作の韓国盤シングル「How Sweet」の初動2万9千枚(6位)よりアップしています。売上枚数は、あの話題性の割には、といった印象も受けるのですが。

初登場はもう1曲。10位に男性アイドルグループカラフルダイヤモンド「まるごとJELLY BE∀NS」がランクイン。CD販売数3位。名古屋を拠点にするアイドルグループBOYS AND MENの弟分、ボイメンエリア研究生から誕生したグループ。オリコンでは初動売上5万8千枚で3位に初登場しています。

初登場組にはアイドル勢が目立った今週のチャート。一方、ロングヒット勢はまずMrs.GREEN APPLE「ライラック」は今週3位から4位にダウン。ただ今週、ストリーミング数で1位を獲得。ダウンロード数9位、YouTube再生回数6位は先週から変わらず。Creepy Nutsよりも、まだまだ強さを感じるため、来週以降の1位獲得もありえるかも。これで10週連続のベスト10ヒットになりました。ちなみに「コロンブス」は4位から5位にダウン。ストリーミング数は5位から4位にアップしていますので、炎上騒動関係なく、しっかりファンに聴かれているということなのでしょう。ただ、YouTube再生回数は圏外にダウン。一応、ジャケット写真の静止画が流れるだけとはいえ、YouTube配信は続いているため、先週のYouTube再生回数3位はやはり炎上騒動の影響が大きかったのでしょう。

Omoinotake「幾億光年」は5位から6位にダウン。ただ、ストリーミング数は6週連続の3位。YouTube再生回数も先週と変わらず7位。さらにカラオケ歌唱回数が6位から4位とじわりと順位を上げています。これで19週連続のベスト10ヒットとなりました。

tuki.「晩餐歌」は今週9位から7位に再びアップ。ストリーミング数は7位から6位に再びアップ。YouTube再生回数も8位から5位、ダウンロード数も18位から8位にアップ。ここに来て、再び上昇基調となりました。これで通算29週目のベスト10ヒットとなります。

さらにILLIT「Magnetic」は10位から9位とこちらも再びアップ。ただストリーミング数は4位から5位にダウンとなっています。これで通算12週目のベスト10ヒットとなりました。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums&各種チャート!

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2024年6月25日 (火)

このステージは18禁?

岡村和義 LIVE TOUR 2024 "OKAZ TIME"

会場 Zepp Nagoya 日時 2024年6月12日(水)19:00~

Okaztime 

まさかのコラボ!ということで話題となった岡村靖幸と斉藤和義のユニット、岡村和義。そのライブツアーに足を運んできました。どちらも大好きなミュージシャンで、岡村靖幸も斉藤和義も、そろそろライブに行きたいなぁ、と思っていただけに、その2人を同時に見れるというのはかなりお得な感じも(笑)。チケットを確保してZepp Nagoyaに足を運んできました。

この手のコラボというのは、通常、両者のファンがまとめて押し寄せる・・・というよりは、むしろ各々の単独ライブよりも客数は少なめ、というのはよくあるケースなのですが、これがちょっと意外なことにZepp Nagoyaはソールドアウトの満員。両者ほぼ同年代ながらも、特にブレイクした時期の世代はちょっと異なるのですが、意外と両者共通のファンも多いということなのでしょうか。

そんな超満員のZepp Nagoyaで熱気があがる中、ライブはスタート。最初は「I miss your fire」「愛スティル」と岡村和義として発表済のナンバーからスタート。ただ、岡村和義として発表済の曲だけでは、到底、ライブの尺は足りません。序盤から早速の新曲が登場で、まずは岡村靖幸メインでダンサナブルなナンバー。さらに「アップルパイ」と題された新曲は斉藤和義メイン。その後は「岡村靖幸です。」「斉藤和義です。」「2人合わせて岡村和義です。」というチャーミングな自己紹介をしてくれました。

岡村靖幸のライブでは、基本的に岡村ちゃんはMCをしない、というのが原則なのですが、ここでは岡村和義として普通にMCタイムを挟み、また新曲「内緒だよ」へ。ここで一度せっちゃんはバックに下がって、岡村靖幸ソロで斉藤和義のナンバー「夢の果てまで」に。「名古屋、一緒に歌って!」と煽っていたのですが、さすがにアルバム曲で知る人ぞ知る的な曲なので、反応はいまひとつだったような・・・。そして続いては斉藤和義ソロで「イケナイコトカイ」をしんみりと聴かせます。

お互いのカバーの後は「イケナイコトカイ」のドリーミーな雰囲気そのままに再び岡村和義の「サメと人魚」へ。そして再びMCではギターを爪弾きながら、この日のバンドメンバーの紹介。さらにはアンケートコーナーで「2人ともビートルズに影響を受けていますが、ビートルズの影響を受けて瞑想に行ったのはどちらでしょう?」という客席アンケート。圧倒的にせっちゃんが多かったのですが、答えは示されず(笑)そのまま次の曲へと突入していきました。

ここはカバーコーナーで安全地帯の「じれったい」、井上陽水と安全地帯の「夏の終わりのハーモニー」となぜか安全地帯が続き、さらにはYMOの「TECHNOPOLIS」のカバー。ご存じテクノポップのナンバーなのですが、この日は2人でアコギの弾き語りでカバーするという、かなりユニークなアレンジでの演奏を聴かせてくれます。アコギの演奏にも意外とマッチしていたのが意外でした。

さらにここではブルージーなギターの即興プレイでのコーナー。途中ではトーク気味の歌も入るのですが、岡村ちゃん、せっちゃんらしいエロネタ入り混じ手の歌がかなりユニーク、というのはかなり際どい感も(笑)。どちらかというと、せっちゃんの方が際どいことを言っていたような。ちなみに毎回、ご当地に因んだ即興の曲タイトルがつくのですが、この日のタイトルは「ひつまぶし」に因んで「私のおひつ」だそうです。

その後、アコギ弾き語りの新曲を挟み、岡村和義の名曲「あの娘ぼくがロングシュート決めたらどんな顔するだろう」、さらには斉藤和義の名曲「ずっと好きだった」を岡村和義として披露。この名曲2連発に会場はもちろん大盛り上がり。また、どちらも「青春」をテーマとして曲で、聴いていて盛り上がりつつ、思わず胸がキュンとしてしまいます。個人的にはこの日一番、テンションがあがった選曲でした。そしてその勢いそのままにラストは岡村和義の「カモンベイビ―」。「カモンベイビ―」の途中をエロ歌詞に入れ替えての18禁なステージに。さらには最後に斉藤和義がダンスを披露!ぎこちないながらもセクシーに決める(?)せっちゃんらしからぬダンスシーンに会場も大盛り上がりでした。

もちろんその後はアンコールへ。最初はいきなり斉藤和義の力強いドラムソロからスタート。その後、せっちゃんもギターに持ち替えて「春、白濁」、そしてラストは明るく「少年ジャンボリー」で盛り上がり、ライブは終了となりました。約2時間10分。正直、オリジナル曲もさほど多くないため、さっぱり終わるかな、とも思っていたのですが、予想以上にボリューミーなライブを見せてくれました。

もともと曲名もそうですし、今回のツアータイトル「OKAZ TIME」もそうですが、全体的にエロネタの多いステージ。「大人」なパフォーマンスを見せてくれました。ただ、セクシーなダンスを繰り広げる岡村ちゃんに対して、ドギツイエロネタが多かったのはせっちゃんの方だったかも(笑)。ファンキーで、この日もセクシーなダンスを繰り広げてくれた岡村ちゃんに対して、ギターの弾き語りがメインのせっちゃんは、タイプ的にはちょっと違う方向性なのかもしれませんが、ただ、こうやってコラボとなると意外と相性がピッタリ。非常に楽しめたステージでした。

ただ、岡村靖幸や斉藤和義のライブにそろそろまた行きたいなぁ、と思って出かけたこの日のライブでしたが、やはり岡村靖幸や斉藤和義のそれぞれの単独ライブに行きたくなってしまった(笑)。それだけこの日のパフォーマンスも素晴らしかった、ということなんですけどね。大満足のライブ。岡村和義としても今後もコンスタントに活動を続けるのでしょうか。こちらももちろん、これからの活動も楽しみです!

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2024年6月24日 (月)

ライブの楽しさを感じさせる高揚感あふれる作品

Title:Funeral for Justice
Musician:Mdou Moctar

今回紹介するのは、前作も紹介したアフリカはニジェール共和国出身の4人組バンド、Mdou Moctar(エムドゥ・モクター)の最新作。前作「Afrique Victime」が世界的なヒットを記録(イギリスのナショナルチャートでなんと最高位36位を記録!)し大きな話題となり、その後、世界ツアーを実施。そのツアーの締めくくりとして作成したのが今回のアルバムとなるそうです。

彼らはいわゆる「砂漠のブルース」の流れを組みバンドの一組。Tinariwenなどに代表する、アフリカのサハラ砂漠周辺に居住するトゥアレグ族の奏でる音楽で、ブルースと似たような音を奏でることから、そのような呼ばれ方をしているそうです。前作では、「砂漠のジミヘン」などという呼ばれ方をしているという話や、エディ・ヴァン・ヘイレンのギターをルーツとしている、ということを書きました。本作も、同作のツアー後に制作されたということもあり、基本的には前作と同じような流れを組むような作風。ハードロックにルーツを感じるようなヘヴィーなギターサウンド、砂漠のブルースを彷彿とさせる哀愁感あふれる歌、そしてトライバルなコールアンドレスポンスという構成が大きな特徴となっています。

アルバムの1曲目に配されたタイトルチューン「Funeral for Justice」などがまさにその典型例と言えるかもしれません。アルバムを聴き始めると、いきなりガツンと来るヘヴィーなギターのリフからスタート。全編、ハードロックをルーツとするようなヘヴィーなギターリフが鳴り響く中、哀愁感漂う歌とコールアンドレスポンスという構成。Tinariwenに代表される砂漠のブルースの音楽にハードロックの要素を加え、よりダイナミックとした楽曲を聴かせてくれます。

続く「Imouhar」も最初はトライバルな雰囲気漂う合唱からスタートするのですが、途中に入る「ギュイーーン!」というギターのソロからスタートし、一気にハードロックなバンドサウンドを聴かせる構成に。ここらへんのギターサウンドはハードロックが好きならかなり壺に入りそう。3曲目の「Takoba」は静かにしんみり聴かせるナンバーで、ちょっと中休み的な展開となるのですが、「Sousoume Tamacheq」は再びヘヴィーなギターリフが展開されるハードロック的な楽曲。いかにもハードロックなギターソロなども入り、こちらもヘヴィーな演奏が楽しめます。

途中、「Imajighen」のようなダウナーなナンバーも入りつつ、全体的にはダイナミックなバンドサウンドで力強く聴かせる曲がメイン。ラスト前「Oh France」は、まさにこのアルバムの締めくくりといってもよい迫力のあるサウンドが特徴的で、中盤で聴かせてくれる高揚感は、ライブで聴くと、軽くトリップできそう。ライブツアーの締めくくりとして完成したという作成の経緯があるからでしょうか、ライブではかなり盛り上がりそうな高揚感のあるアルバムとなっていました。

前作と同様、ワールドミュージックというカテゴリーですが、ロックリスナーにも楽しめそうな、いや、ロックリスナーにこそお勧めしたい傑作アルバムだったと思います。トライバルな要素もライブの高揚感をちょうどよく演出している感もありますし、とにかく気持ちよいアルバムでした。ライブも一度体験したいなぁ。

評価:★★★★★

Mdou Moctar 過去の作品
Afrique Victime


ほかに聴いたアルバム

The Dooper/Sam Gendel&Sam Wilkes

気が付いたら新作をリリースしている状態のワーカホリックぶりが目立つSam Gendelの新作は、ベーシストSam Wikesとのデゥオ。基本的に哀愁感たっぷりのSam Gendelのサックスがメインとなっているアルバムで、ベースラインについて特段目立つような作風ではないのですが、バックで静かになっているSam Wikesのベースが何ともいえない味わいを生み出している、そんな作品でした。ちなみに2024年はデゥオ・アルバムをリリースしているそうで、以前もFabiano do Nascimentoとのデゥオアルバムを紹介しましたが、本作が第3弾・・・第3弾?いつのまに、第2弾をリリースしていたの??まだ今年も半分終わっていないのに、もう3枚目ですか・・・相変わらずのワーカホリックぶり。ここまで来ると、全アルバムをチェックしたくなるなぁ(笑)。

評価:★★★★

Sam Gendel 過去の作品
Satin Doll
AE-30
Superstore
blueblueblue
AUDIOBOOK
The Room(Fabiano do Nascimento&Sam Gendel)

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2024年6月23日 (日)

今回も安定感のある傑作

Title:Can We Please Have Fun
Musician:KINGS OF LEON

本作が9枚目のオリジナルアルバムとなるアメリカのロックバンド、KINGS OF LEONのニューアルバム。毎作、非常に骨太なロックチューンを聴かせてくれる彼ら。ある意味、正統派なロックバンドといった感じで、「実験的」な要素がないからでしょうか、日本での知名度はいまひとつな感は否めません。ただ、約3年ぶりとなる本作でも、魅力的なロックを聴かせてくれています。

アルバムの冒頭から、彼ららしいちょっと泥臭さも感じさせる正統派なロックからスタート。「Ballerina Radio」は、ボーカルにちょっとエフェクトをかけつつ、ストリングスも入った分厚くも、スケール感のあるサウンドが魅力的。哀愁たっぷりのメロを聴かせてくれる「Nowhere To Run」も最初は静かにスタートしつつ、サビに向かって盛り上がるという、ある意味、ベタな展開ではあるのですが、そのベタさも大きな魅力に感じます。

先行シングルにもなっている「Mustang」も、ヘヴィーなギターサウンドをバックに、オルタナ色も強い勢いのあるナンバー。同じく先行シングルともなっている「Split Screen」もミディアムテンポでスケール感を持って歌い上げる楽曲に。前半は比較的、スケール感のある楽曲が並んでいる印象を受けます。

一方後半、「Nothing To Do」はシャウト気味のボーカルにヘヴィーなギターサウンドが加わるパンキッシュな楽曲。「M Television」も同じくギターノイズを前面に押し出した作品に。さらに「Hesitation Gen」もミディアムテンポな楽曲ながらも、シャウト気味なボーカルでパンキッシュな楽曲とヘヴィーな楽曲が続きます。

前半は比較的スケール感のある楽曲で、彼らのスタジアムバンド的な側面を見せた楽曲が並び、一方後半は、よりヘヴィーなナンバーを並べることにより、彼らのよりロックでパンキッシュな側面を前に押し出した曲が並びます。そういう意味ではKINGS OF LEONのバンドとしての様々な側面を提示したアルバムと言えるかもしれません。

ただ、どちらの側面から彼らを捉えたとしても、基本的にはオーソドックスなロックである点は間違いありません。そういう意味では決して目新しさはないかもしれませんが、一方で、いい意味で安心して聴けるバンドであることは間違いないでしょう。メロディーラインについても、決して派手さはないものの、メランコリックでどこか暖かさも感じられ、聴いているうちに徐々に惹かれていく楽曲を聴かせてくれています。今回も非常に満足度の高い傑作アルバムだったと思います。ロックが好きな方なら、まずは聴いてほしいアルバムです。

評価:★★★★★

KINGS OF LEON 過去の作品
Only By The Night
COME AROUND SUNDOWN
WALLS
When You See Yourself

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2024年6月22日 (土)

「激しい」ジャズも聴かせる

Title:Fareless Movement
Musician:Kamasi Washington

映画版を当サイトでも紹介したことがあると思うのですが、最近、話題となっているジャズを題材とした漫画に「BLUE GIANT」という作品があります。同作品の中で主人公は、ジャズの魅力について「激しいところ」と語っていることが大きなポイントとなっています。ジャズっぽい=ジャジーというと、一般的にはしんみりと聴かせるタイプの音楽を指し、ジャズというとムーディーに聴かせるという音楽性を想像する方も多いのではないでしょうか。そんな中で、ジャズのことを「激しい」と表現する主人公。確かにジャズは決してムーディーに聴かせる音楽ではなく、ロックに負けない激しいプレイも魅力のひとつ。一般的なジャズのイメージと異なる、この「激しい」というキーワードが、ジャズの新たな魅力を提示しており、かつ、独自性を感じさせる作品性となっています。

今日紹介するアルバムは、現代のジャズシーンを代表するサックスプレイヤー、Kamasi Washingtonの約6年ぶりとなるニューアルバム。なんで冒頭に、漫画「BLUE GIANT」の話を持ってきたかというと、彼の新作、特に最後を締めくくる「Prologue」を聴いた時に、このジャズの魅力のひとつ、「激しい」というキーワードを思い起こしたからです。ラストを飾る本作は、バンドサウンドを主軸とした比較的オーソドックスなスタイルのジャズなのですが、疾走感あるサウンドが魅力的で、特に途中に聴かせてくれるカマシのアグレッシブなサックスプレイに耳を奪われます。ロックの激しさとは一風異なる、ジャズの激しさを表現したこの曲。まさに「BLUE GIANT」で主人公が言う「激しい」ジャズというのは、このような作品を指すのでは、と感じる内容になっています。

ただ、今回の彼のアルバムは、ただ単純に「激しいジャズ」のアルバムではありません。前作「HEAVEN&EARTH」では、比較的オーソドックスなフュージョン系のジャズを聴かせてくれた彼。今回のアルバムも、ベースとなるのは、比較的オーソドックスなスタイルのジャズに感じます。しかし、そんな中で、ジャズをベースとして様々な要素を取り入れてきているのが今回のアルバムの大きな魅力に感じました。

例えばThundercatも参加した「Asha The First」では、フュージョン系のナンバーながらも、こちらもアグレッシブさを感じさせるサックスのプレイが魅力的。同作にはラッパーも参加し、HIP HOPの要素も感じさせる楽曲になっていましたし、「Computer Love」もメロウな女性ボーカルがしんみりと歌い上げる作品に。ソウルの色合いの強い楽曲になっています。「Get Lit」ではジョージ・クリントンも参加。こちらもラップのパートもありつつ、ソウル的な要素も強いナンバーに仕上げています。

「Together」などは、まさにジャズのパブリックイメージそのままの、ムーディーで「ジャジー」なナンバー。一方では「The Garden Path」のリズミカルで疾走感あるバンドサウンドが魅力的。迫力のあるドラムプレイもあって、ロックリスナーでも楽しめそう。

もっとも、基本的には「Road to Self(KO)」のように、オーソドックスに聴かせるジャズのナンバーがメインとなっており、現代風のジャズとはいえ、「目新しさ」という要素は薄目かもしれません。ただ、バラエティーある作風に、アグレッシブな演奏、ソウルやHIP HOPの要素も取り入れた楽曲は、ジャズリスナーならずとも広いリスナー層が楽しめるアルバムに仕上がっていたと思います。

「激しい」ジャズから、ムーディーに聴かせる、いかにもなジャズまで、バリエーションのある作風の楽しめる傑作。現代を代表するジャズサックス奏者だけに、そのプレイにも魅了されるアルバムに仕上がっていました。ジャズ好きならずとも要チェックな1枚です。

評価:★★★★★

Kamasi Washington 過去の作品
HEAVEN&EARTH

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2024年6月21日 (金)

豪華なゲストの参加でちょっとオルタナ色も

Title:Ohio Players
Musician:THE BLACK KEYS

毎作、昔ながらのロックンロールサウンドを奏でるアルバムを聴かせ、ルーツ志向のロックンロールファンを大喜びさせてくれるTHE BLACK KEYS。ここ最近は、1、2年に1作というハイペースでのアルバムリリースが続いていましたが、本作も前作から約2年というインターバルでのニューアルバムとなっています。ちなみに今回のアルバムタイトルの由来は、言わずと知れたファンクバンドの名前から取られたもの。同じオハイオ州出身の彼らにとっては尊敬すべき大先輩といった感じでしょうか。ここらへんも彼ららしさを感じます。

今回のアルバムの大きな特徴は、なんといっても豪華なゲスト陣でしょう。まずはBeck。14曲中実に7曲に参加しており、特に「Paper Crown」ではフューチャリングとして名を連ねています。本作ではコーラスのほか、オルガンやギターでも参加。楽曲自体はブラック・キーズらしいガレージのサウンドを聴かせてくれるのですが、ラッパーのJuicy Jが参加している他、スクラッチ音などを入れてきたり、全体的にはオルタナティブ系の匂いを感じさせてくれる楽曲で、ルーツ志向のブラック・キーズとはちょっと方向性が異なるだけに大きなインパクトとなっています。

さらに話題のゲスト陣といえば、かのノエル・ギャラガーも参加。「On the Game」ではギターやバックボーカルに名前を連ねている他、作曲としても参加。ミディアムテンポのグルーヴィーなロックナンバーは、どこかノエル・ギャラガーらしさを彷彿とさせる楽曲に。こちらも、ルーツ志向のブラック・キーズのナンバーとは微妙に異なる方向性が楽しく、アルバムの中でのインパクトとなっています。

とはいえ、アルバム全体としてはいつものブラック・キーズと同様、力強いギターサウンドを軸としたオールドスタイルのロックンロールを聴かせてくれます。軽快なギターロックナンバー「Beautiful People(Stay High)」、強いギターリフでグルーヴィーに聴かせるハードロック風の「Live Till I Die」など、ロックンロールなナンバーが続き、最後は力強いミディアムチューン「Everytime You Leave」で締めくくられます。

ファルセットボーカルも入ってメロウな「Don't Let Me Go」やトライバルなビートが印象的な「Please Me(Till I'm Satisfied)」など、楽曲にはバラエティーも感じさせますが、レトロな雰囲気のポップチューン「You'll Pay」や同じくレトロでムーディーなギターロックナンバー「Fever Tree」なども含め、全体的にオールドスタイルのロックンロールナンバーという点ではアルバム全体、しっかりと統一感のある内容に仕上がっています。

Beckやノエル・ギャラガーの参加により、サウンドとしては若干、オルタナティブロック色も感じさせる部分もあり、オールドスタイルのブラック・キーズの音の、ちょうどよい隠し味的な要素ともなっています。そこが新機軸と言えるほどの内容にはなってはいないものの、ただ一方でいつもながらもブラック・キーズという印象もあり、いい意味で安心して聴けるアルバムになっていたようにも感じました。ロック好きにとっては、無条件で安心して楽しめる傑作。心地よいロックンロールを楽しめる1枚でした。

評価:★★★★★

The Black Keys 過去の作品
EL CAMINO
"Let's Rock"
Delta Kream
Dropout Boogie


ほかに聴いたアルバム

New Strategies For Modern Crime Volume 1/Prefuse 73

Prefuse_newstrategies1

アメリカのエレクトロニカミュージシャン、スコット・ヘレンのソロプロジェクト、Prefuse 73の約6年ぶりとなるニューアルバム。全体的にゆっくり、メランコリックな作風の曲調が特徴的で、曲によっては不穏さを感じたり、またムーディーさを感じたりとバリエーションが。また全体的にジャジーなアレンジの曲も多く、全体的に「大人な雰囲気」という印象を受ける作品になっていました。

評価:★★★★

Prefuse73 過去の作品
Everything She Touched Turned Ampexian
The Only She Chapters

Reasonable Woman/SIA

オーストラリア出身の女性ポップスシンガーSIAの約3年ぶりとなるニューアルバム。相変わらずユーモラスなジャケットが目を惹きます。エレクトロのアレンジで分厚いサウンドを聴かせるスタイルもポップで心地よいのですが、メロディーラインは、このユーモラスなジャケットとは異なり、比較的メランコリックなもの。そのためワクワクなポップというよりも、哀愁感漂わせる感じになっています。このジャケと分厚いエレクトロサウンドなので、もうちょっとワクワクするようなポップソングの方が・・・とは思ってしまうのですが。

評価:★★★★

SIA 過去の作品
Music – Songs from and Inspired by the Motion Picture

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2024年6月20日 (木)

今週もアイドル系が上位に

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

Hot Albumsは今週もアイドル系が上位に並んでいます。

まず1位は元ジャニーズ系男性アイドルグループなにわ男子「+Alpha」が獲得。CD販売数1位。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上35万7千枚で1位初登場。前作「POPMALL」の初動43万8千枚(1位)からダウンしています。

2位は秋元康系。瀬戸内地域を拠点に活動するSTU48「懐かしい明日」がランクイン。CD販売数2位。これが初のアルバムとなります。オリコンでは初動売上6万6千枚で2位初登場。

3位には「ミュージカル刀剣乱舞 本丸花暦」が初登場。ゲーム「刀剣乱舞」を元としたミュージカルより、ファンクラブ会員限定コンテンツで配信した音声ドラマをまとめたもの。会員サイトでの通販限定販売のため、オリコンではランクインしていません。

続いて4位以下の初登場盤です。5位にはYUKIのニューアルバム「SLITS」がランクイン。6位は動画サイトで歌唱動画を投稿している、いわゆる「歌い手」のグループ、いれいすによる「六鬼喝賽」が初登場。7位には吉本興業所属のアイドルグループENJIN「Inception」が初登場でランクイン。8位初登場は吉田拓郎「Another Side Of Takuro 25」。本人選曲によるセカンドベスト的なセレクションアルバム。音楽活動から引退した彼ですが、今後もこういう形でアイテムはリリースされ続けそう。10位にはRAISE A SUILEN「SAVAGE」がランクイン。メディアミックス作品「BanG Dream!」に登場した架空のバンドによるアルバム。また、ベスト10返り咲き組として韓国の男性アイドルグループTREASURE「Reboot」が12位から9位にランクアップ。3月20日付チャート以来のベスト10返り咲き。通算19週目のベスト10ヒットとなっています。


今週のHeatseekers Songs

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=heat_seekers

今週もBABYMONSTER「SHEESH」が1位を獲得。これで6週連続、Heatseekers Songsでの1位獲得となりました。


今週のTikTok Weekly

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=tiktok

今週の1位もKOMOREBI「Giri Giri」が先週から引き続き1位を獲得。2週連続の1位獲得となりました。


今週のニコニコVOCALOID SONGS

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=niconico

VOCALOIS SONGSですが、ニコニコ動画がサーバー攻撃のため休止中の影響のため、ランキングは発表されていません。ちなみにサツキ「メズマライザー」がYouTube再生回数で5位にランクインし、ボカロ系では最上位にランクインしています。このニコニコ動画休止がいつまで続くかわかりませんが、今後のボカロシーンにも影響があるのでしょうか?

今週のHot Albums&各種チャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2024年6月19日 (水)

あの「大炎上曲」がランクイン

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週のHot100でおそらく最も話題なのが、先週、「大炎上」したあの曲がランクインしてきたことでしょう。Mrs.GREEN APPLE「コロンブス」が今週、初登場で4位にランクイン。ダウンロード数2位、ストリーミング数5位、YouTube再生回数3位。もうご存じでしょうが、この曲のミュージックビデオが、コロンブスをはじめとする白人の先住民族への侵略・迫害を彷彿させるとして大炎上。MVも公開停止となる騒ぎになりました。

今回のMVに関しては、いわゆるポリコレに対してアンチ的な声も少なくないネット上でも擁護している方がほとんどいないほどの大炎上の状況となり、これほど否定的な意見が大半を占める事態というのは珍しいかもしれません。しかし、ミュージシャン本人はともかく、周りのスタッフ全員が止められなかった、という状況が異常な感じがします。ちょっと前に起こった椎名林檎のグッズの件もそうですが、こういうチェック体制が、レコード会社内に組織的に構築されていないということ自体も大きな問題に感じます。

今回の炎上騒ぎがチャートに与えた影響は不明ですが、ただ、YouTube再生回数が上位にランクインしている点などは、おそらく炎上騒ぎでMVをチェックしてみた人が多かったのではないでしょうか。来週以降の動向も気にかかるところです。

ちなみに彼らは「ライラック」も先週と変わらず今週3位にランクイン。こちらはこれで9週連続のベスト10ヒット、ベスト3ヒットも通算6週目となりました。なお、ストリーミング数は今週で5週連続2位をキープしています。Mrs.GREEN APPLEは今週、2曲同時ランクインとなりました。

ただ、1位は先週と同様、Creepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」が2週連続の1位を獲得。ストリーミング数は21週連続の1位を獲得。YouTube再生回数も2位から1位にアップ。ただし、ダウンロード数は3位から4位にダウンしています。これで22週連続のベスト10ヒット、通算20週目のベスト3ヒット、通算18週目、2週連続の1位獲得となっています。

2位初登場は旧ジャニーズ系男性アイドルグループTravis Japan「Sweetest Tune」が初登場でランクイン。テレビ東京系ドラマ「東京タワー」挿入歌。配信限定シングルで、ダウンロード数で1位を獲得。YouTube再生回数20位、総合順位で2位初登場となりました。

続いて4位以下の初登場曲ですが、まず6位に指原莉乃プロデュースによる代々木アニメーション学院とのコラボによる声優アイドルグループ≒JOY「体育館ディスコ」がランクイン。CD販売数1位、その他はすべて圏外という結果に。オリコン週間シングルランキングでは初動売上10万4千枚で1位初登場。本作がシングルとしてはデビュー作となります。

7位はハロプロ系女性アイドルグループアンジュルム「美々たる一撃」がランクイン。CD販売数2位、ダウンロード数13位、ラジオオンエア数10位。オリコンでは初動売上4万5千枚で2位初登場。前作「RED LINE」の初動4万3千枚(2位)から若干のアップ。

そして8位には吉本興業所属の男性アイドルグループOWV「LOVE BANDITZ」が初登場でランクイン。CD販売数及びラジオオンエア数3位。オリコンでは初動売上2万2千枚で4位初登場。前作「BREMEN」の初動2万1千枚(1位)から、こちらも若干のアップとなっています。

続いてロングヒット曲ですが、まずOmoinotake「幾億光年」。今週は4位から5位にダウン。ストリーミング数は5週連続3位。ただYouTube再生回数は6位から7位、ダウンロード数は10位から16位に大幅ダウン。一方、カラオケ歌唱回数が7位から6位と最高位を記録。じわじわと順位を上げています。これで18週連続のベスト10ヒット。

次にtuki.「晩餐歌」。今週は6位から9位にダウン。ストリーミング数は6位から7位、YouTube再生回数も7位から8位にダウン。ダウンロード数のみ10位から9位にアップしています。これで通算28週目のベスト10ヒットとなりました。

そしてILLIT「Magnetic」は今週10位までダウン。ただストリーミング数は7週連続の4位。ラジオオンエア数も先週のランク圏外から19位にランクアップしています。これで通算11週目のベスト10ヒットとなりました。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums&各種チャート!

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2024年6月18日 (火)

日本の民謡の魅力を伝える

Title:Sparrow's Arrows Fly so High
Musician:すずめのティアーズ

最近、注目を集めている女性2人組ユニット、すずめのティアーズ。宣伝文句をそのまま用いると、「ビートルマニアのシンガーソングライターでガットギターの名手、あがさと、ブルガリア音楽と舞踊に傾倒する佐藤みゆき」によるユニット。「日本の民謡ポリフォニー・ユニット」という紹介のされ方もしているようですが、ポリフォニーとは、複数の独立した声部からなる音楽のこと。要するに、ギターやドラムスなど現代楽器を用いつつ、2人のハーモニーを効果的に聴かせて日本の民謡を歌うユニット。民謡の新しい解釈ということでも注目を集めています。

例えば今回のアルバムの1曲目「かわいがらんせ」は、日本各地を渡り歩いた盲目の歌い手、瞽女の歌なのですが、この曲を2人のハーモニーで美しくはもりつつ、ドラムスのリズムを入れてグルーヴィーに聴かせます。続く「ザラ板節」は、戦後の横浜港における洗濯女たちの労働歌だそうですが、こちらも美しいハーモニーとギターのアルペジオをバックに軽快に歌いあがています。

越中五箇山の民謡「といちんさ」はバンドサウンドを入れてテンポよく聴かせてくれますし、秋田民謡の「秋田大黒舞」ではジャジーなバンドサウンドが楽曲にもピッタリマッチ。「ポリフォニー江州音頭」ではタイトル通り、江州音頭を息の合ったポリフォニーで聴かせてくれる曲。どの曲も彼女たちならではの解釈で民謡を、現代楽器をバックに歌い上げています。

この民謡を独自の解釈で現代風に歌うというスタイルは、例えば最近では民謡クルセイダーズも近いスタンスを感じます。ただ、民謡クルセイダーズは民謡をラテン風に大きくアレンジすることにより、楽曲の雰囲気も大きく変わります。一方、彼女たちに関しては、基本的にバンドサウンドを入れたり、ポリフォニーのアレンジにするという形での楽曲の変化はあるのですが、民謡自体を大きく変えることはありません。

例えば宮崎県民謡の「椎葉駄賃付け節」なども、ギターのフレーズを静かに入れているのですが、途中に入る男性の合いの手を含めて(これを機に、YouTubeのオリジナルな歌唱映像を見てみたのですが)原曲の雰囲気を大きく変えていません。「ポリフォニー江州音頭」も同様で、ポリフォニーのアレンジを加えた点以外は、江州音頭そのままの楽曲となっています。

彼女たちは、日本の民謡がもともと持っていたグルーヴ感を、ポリフォニーやバンドサウンドをちょっと添えることによって、ロックや西洋ポップスに慣れ親しんだ私たちの耳にもわかりやすく届けてくれるユニット、といった印象を受けました。民謡を現代音楽に融合する時に、ともすれば無理にロック風にアレンジしたりするケースもあるのですが、彼女たちの場合、そのアレンジ方法が非常に自然。ほとんど民謡のコアな部分に手を加えることなく、見事に「現代の音楽」として蘇らせています。

これから徐々に注目を集めていきそうなユニット。特に、ライブで聴くと気持ちよさそうだな、ということを感じます。「ポリフォニー江州音頭」などは、思わず身体が踊りだしそう。日本の民謡が本来持っている魅力にあらためて気が付かせてくれる、そんなユニットのアルバムでした。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

地球出禁にしていいよ~ディスコあかり~/町あかり

町あかりのちょっと久々となる新作は、ディスコ歌謡をテーマとしたEP盤。全8曲入りで、4曲が新曲+残り4曲はそのカラオケバージョンという構成となっています。彼女らしい歌謡曲をディスコチューンに仕立て上げたナンバーがユニーク。2曲目の「常盤ディスコ港町」は、まさに民謡ディスコとも言うべきユニークな作風に仕上がっています。表題曲「地球出禁にしていいよ」も同じく、哀愁たっぷりに聴かせる楽曲・・・なのですが、ただ問題は、この非常にインパクトのある曲名と反して、「なんで地球が出禁になるのか」が歌詞の中で説明されていない点がかなり難点・・・以前から、時々彼女の楽曲って「曲名のインパクトだけで歌詞がついてきていない」曲が見受けられるのですが、その典型例になってしまっている感も。曲名のインパクト、ワンアイディア勝負といった感じがするのですが、この点、ちょっと残念な印象を受けてしまいました。

評価:★★★★

町あかり 過去の作品
ア、町あかり
あかりの恩返し
EXPO町あかり
収穫祭!(町あかり&池尻ジャンクション)
あかりおねえさんの ニコニコへんなうた
それゆけ!電撃流行歌
別冊!電撃流行歌
総天然色痛快音楽

E-SIDE 3/YOASOBI

Yoasobi__eside_3

YOASOBIの曲の英語版を集めた企画盤の第3弾。相変わらず日本語詞を空耳するような英語のフレーズを取り入れてきているのはユニーク。楽曲的には聴きなじみある曲が並び、アレンジも大きくは変化していないが、曲のインパクトというか強度のようなものは、最近の曲になればなるほど増しているような印象も。

評価:★★★★

YOASOBI 過去の作品
THE BOOK
E-SIDE
THE BOOK 2
E-SIDE 2
THE BOOK 3

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2024年6月17日 (月)

日本のアニメに影響を受けた曲も

Title:Deeper Well
Musician:Kacey Musgraves

Deeprwell

アメリカのカントリーミュージシャン、ケイシー・マスグレイヴスの約3年ぶりとなるニューアルバム。前々作「Golden Hour」が各種メディアで2018年のベストアルバムに選ばれるなど大きな評価を受けました。そのアルバムではじめて彼女の作品を聴いたのですが、続く前作「Star-Crossed」も同じく高い評価を受けたのですがノーチェック・・・で、今回、2作ぶりに彼女のアルバムを聴いてみました。

その前回聴いた「Golden Hour」。カントリーのアルバムで、メロディーラインの美しさが印象的だったものの、正直、大ハマリするほどではありませんでした。それなので前作「Star-Crossed」はチェックしなかった訳ですが。ただ2作ぶりに聴いた本作、非常にシンプルなサウンドでフォーキーに聴かせるアコースティックなアルバムなのですが、その美しいメロディーラインに、あらためて強く惹かれる作品となっていました。

まず1曲目「Cardinal」が素晴らしい内容。アコギにバンドサウンドも加わったアルバムなのですが、マイナーコードのメランコリックなメロディーラインを美しいコーラスラインを重ねたサビに、まずはギュッと胸をつかまれました。続くタイトルナンバー「Deeper Well」も素晴らしい。アコギアルペジオでシンプルに聴かせるフォーキーな楽曲なのですが、切ないメロディーラインが実に美しい楽曲に仕上がっています。

その後もテンポよく、伸びやかにスケール感も覚える「Sway」、ピアノとアコギで暖かく切ないメロが印象的な「Dinner with Friends」、アコギのアルペジオが爽やかな「The Architect」に、ムーディーな雰囲気の「Lonely Millionaire」と、それなりのバリエーションはありつつ、基本的にアコースティックな楽器でシンプルな歌を聴かせる、フォーク/カントリーの楽曲が並びます。ただ、どの曲のメロもシンプルなだけに非常に美しくメランコリック。彼女の清涼感ある歌声もあり、非常に心に響いてくる楽曲が並んでいます。

ジャンル的にはカントリーにカテゴライズされるアルバムで、カントリーのアルバムというと通常、アメリカ以外ではヒットしないのですが、本作はイギリスのナショナルチャートでも3位を獲得するなどヒットを記録。なによりも美メロとも言うべきメロディーが、アメリカのみならず、様々な国の人の心をとらえたのでしょう。

そして日本人にとっても注目したいのが、「Anime Eyes」という曲が収録されている点でしょう。実は彼女、ジブリ映画の大ファンだそうで、本作は、アニメを歌詞の中に取り入れた曲。歌詞の中に、なんとMiyazakiという言葉まで登場してきます。とても暖かさを感じさせる楽曲ですので、日本人ならば間違いなく要チェックの1曲でしょう。

その美しいメロディーラインと歌を楽しめる文句なしの傑作アルバム。普遍的な魅力を持った作品なだけに幅広いリスナー層にお勧めできる作品です。「Anime Eyes」のような曲もあるので、日本でも徐々に知名度が高まっていくかも。いまのうちに要チェックです。

評価:★★★★★

Kacey Musgraves 過去の作品
Golden Hour

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2024年6月16日 (日)

レトロなポップソング

Title:Here in the Pitch
Musician:Jessica Pratt

ロサンジェルスを拠点として活動する女性シンガーソングライターによる4枚目のアルバム。前作「Quiet Signs」も高い評価を受け、当サイトでも紹介したのですが、約5年ぶりのニューアルバムとなる本作も各種メディア等で高い評価を受け、まだまだ日本では無名の存在ですが、確実に注目のシンガーとなっている彼女。とはいえ、デビューが2012年なので、デビュー12年の、そろそろ中堅の域にいるシンガーなのですが。

その前作「Quiet Signs」は70年代的な懐かしさを感じるフォーキーな作風が魅力的な作品でした。今回の作品についても、懐かしい印象を強く受ける作風に仕上がっているのですが、もっと言えば70年代フォークというよりも、60年代以前のレトロなガールズポップの雰囲気を感じさせるポップスに仕上がっていました。

冒頭を飾る「Life Is」がまさにそれ。ミディアムチューンでバンドサウンドをバックにゆっくりと歌うナンバーなのですが、非常にくすんだ雰囲気のアレンジや、一発撮りを彷彿とさせる(あくまでも印象ね)ミックスといい、レトロな雰囲気をムンムンと醸し出しています。続く「Better Hate」も、基本的にアコースティックなナンバーなのですが、微妙にリバーブのかかったボーカルもあって、こちらもレトロな雰囲気のキュートなポップチューンとなっています。

その後もムーディーで雰囲気たっぷりの「Get Your Head Out」もムーディーに聴かせてくれる、これもまたレトロな懐かしさを感じさせるポップス。「By Hook or by Crook」もボッサなギターでムード感たっぷりのミディアムチューンに。こちらも懐かしさを感じさせるレトロ感満載のナンバーとなっています。

3曲目の「World on a String」やラストを飾る「The Last year」など、アコギで聴かせるフォーキーな作品もありましたが、全体的にレトロな作風が印象的。特に、微妙にリバーブをかけて、レコードでのちょっと古い音源を聴いているかのように感じさせるミックスが、このレトロと感じさせる曲調を強調していますし、また、彼女自身の、ちょっとくすんだ雰囲気がありつつ、キュートに聴かせてくれるボーカルがまた、60年代的な雰囲気を強調しています。前作も、同じような録音状況となっており、レトロな雰囲気は感じたのですが、今回はアレンジも60年代風のポップチューンとなっており、レトロな雰囲気がより強調されているように感じます。

9曲わずか30分弱という長さも昔ながら、といった感じがして、60年代というイメージにもマッチ。全体的にコンセプチュアルな統一感もあり、非常に優れたポップアルバムの傑作だと思います。これから日本でも徐々に注目度は高まりそうな予感も。おすすめの1枚です。

評価:★★★★★

Jessica Pratt 過去の作品
Quiet Signs


ほかに聴いたアルバム

Cold Visions/Bladee

Coldvisions

スウェーデン出身のラッパーによる約2年ぶりというアルバム。30曲入りというフルボリュームながらも、1時間3分という長さで、1曲あたり2分程度という長さでサクサクと進んでいく展開。トラップをベースとしたリズムながらも、ラップは軽快でサウンド的には爽やかなポップといった印象が。ドリーミーなポップの要素も感じられ、意外とHIP HOPリスナー以外も楽しめそうなポップな要素の強いアルバムになっていました。

評価:★★★★

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2024年6月15日 (土)

シンガーソングライターのデゥオが暖かく美しい歌を聴かせる

Title:Hovvdy
Musician:Hovvdy

アメリカ・オースティン出身のシンガーソングライターのデゥオ、Hovvdyのニューアルバム。名前にvが2つ並んだ奇妙な感じのミュージシャン名ですが、これで「Howdy」と読ませるようです。ちなみにここでも紹介したことがあるAlvvaysも同じくvを二つ並べてwと呼ばせているのですが、アメリカの方ではこのようなスラングがあるのでしょうか。ちなみに昨年は初来日も果たしているデゥオだそうですが、2021年にリリースされた前作「True Love」も話題に。前作ではBon IverやBig Thiefも手掛けるプロデューサーのAndrew Sarloがプロデュースを手掛け話題となったようですが、本作ではAndrewに加えて、同じくアメリカのインディーシーンで数多くのミュージシャンのプロデュースを手掛けるBennett Littlejohnが参加し、2人による共同プロデュースという形となっています。

さて、今回はじめてHovvdyのアルバムを聴いたのですが、一言で言ってしまえば、アルバムを聴いてその美しいメロディーラインに、一気に心をつかまされる作品でした。イントロを挟んで1曲目「Bubba」がまずは素晴らしい!静寂感のあるエレクトロのリズムとエレピをバックにゆっくり聴かせるそのメロディーの、暖かくメランコリックなメロディーラインが心に染み入るよう。一方、続く「Jean」は同じく美メロながらも、アコギを弾き語りつつ、フォーキーな作風に仕上げており、こちらも暖かさを感じるメロディーラインが心に残ります。

彼らがとてもユニークな点は、やはりシンガーソングライターのデゥオというところでしょう。Charlie MartinとWill Taylorの2人によるデゥオなのですが、この2人が手掛ける楽曲がほぼ交互に収録。その2人の楽曲の方向性が微妙に違う点が、このアルバムをより面白いものとしています。

前述の冒頭2曲がまさに2人のシンガーソングライターの方向性を如実にあらわしたもので、アルバムの最初にふさわしい、挨拶的な導入を意図したのかもしれません。Martinの曲は、事実上の1曲目の「Bubba」に代表されるように、分厚く暖かみのあるサウンドを取り入れたキュートなポップスがメイン。その後も「Forever」のような軽快ながらもキュートなメロが楽しめるポップスや「Make Ya Proud」のように、ちょっとサイケでドリーミーなサウンドを取り入れつつ、ビートルズの影も見え隠れするような、暖かい美メロの作品を聴かせてくれたりしています。

一方、Taylorの曲は、フォーキーな「Til Let You Know」や、分厚いバンドサウンドを聴かせつつ歌う「Meant」のように、美しいメロディーラインには変わりないものの、Martinの曲と比べると、もうちょっとアメリカーナ的な、ちょっと泥臭さも感じるポップチューンに仕上げています。ただ、彼の曲も暖かいメロディーラインが心を惹きつけるのは間違いなく、そういう意味では2人とも非常に相性のよいコンビと言えるのかもしれません。

個人的に、特にMartinの作品の方は、その暖かみのある美メロに、なんとなくTeenage Fanclubっぽさも感じてしまってかなり壺。そういえば、Hovvdyと言えば、TFCのアルバムに「Howdy!」という作品があるのですが、偶然でしょうか?ネットで調べても、両者のつながりは出てこなかったので、単なる偶然なのかもしれませんが・・・。

メロディーラインには決して派手さはありません。ただただ愚直に美しいメロディーを奏でているバンドです。しかし、シンプルで暖かい楽曲がゆえに、非常に心に残るアルバムに仕上がっていました。なにげに、エレクトロサウンドも取り入れた分厚いドリーミーなサウンドも、シューゲイザー系からのつながりも感じられて壺かも。個人的に年間ベスト候補の1枚とも言える傑作だったと思います。また来日したら、ライブに足を運びたいなぁ。ポップス好きならば、是非ともチェックしてほしい作品です。

評価:★★★★★

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2024年6月14日 (金)

かなりレアな音源も収録

日本を代表するロックンローラー、忌野清志郎が58歳という若さでこの世を去ってから、早くも15年。いまだに彼の影響は日本のロックシーンに色濃く残っており、また、混沌としているこの時代に、彼の不在による穴の大きなを感じざるを得ません。彼の逝去後も忌野清志郎のソロ、もしくはRCサクセション名義で様々な企画盤がリリースされていますが、今回もまた、そんなアルバムがリリースされました。

Title:ロックン・ロール~Beat, Groove and Alternate~
Musician:RCサクセション

Title:ロックン・ロール~Beat, Groove and Alternate~
Musician:忌野清志郎

「ロックン・ロール~Beat,Groove and Alternate~」と題された企画盤。ロックン・ロールをテーマとして、RCサクセション時代の曲と忌野清志郎時代の曲を収録した企画盤で、この2組を合わせて聴くと、忌野清志郎のオールタイムベスト的な構成となっています。特に忌野清志郎名義のアルバムは、タイマーズやLOVE JETS時代の曲も収録されており、まさに彼のソロ活動を網羅した選曲です。

ただ、このアルバムで注目なのは、今となってはかなり入手困難なレア音源が多く収録されている点でしょう。まずRCサクセションでは1986年にリリースされたEPで、EP単位では未CD化の「NAUGHTY BOY」からの楽曲を収録。特にこのうち「サマー・ロマンス」は今回、初CD化。ムーディーに聴かせるジャジーなナンバーはロックンロールという枠組みからはちょっと離れているのですが、これはこれで魅力的な楽曲。「もっと何とかならないの?」は雑誌ロック画報2002年第10号の付録CDに収録されていた、1970年のライブ音源。初期の作品らしく、ロックというよりもフォーク色の強い作品なのですが、清志郎の個性的な歌い方は既にあらわれており、どこか皮肉めいてユーモラスな歌詞も既に清志郎らしさを感じる楽曲になっています。さらに代表曲「トランジスタ・ラジオ」はロングバージョンで収録。こちらは1995年のベストアルバム「SOULMATES THE RC SUCCESSION '76-'81&'88」に収録されており、現在でも入手可能なアルバムですが、ただ貴重な音源であることには変わりがないでしょう。

さらにもっとレア音源が満載だったのが忌野清志郎名義の方。「非常ベルなビル」は元ゴールデンカップスの加部正義のオリジナルアルバム「COMPOUND」に加部正義 feat.忌野清志郎名義で収録されている曲。バンドアレンジは清志郎の曲とはかなり異なる雰囲気ですが、清志郎がボーカルを取り、作詞作曲も忌野清志郎だったようで(作曲は加部正義との合作名義)完全に清志郎の曲に。コアなファンでもここまでチェックしている方は珍しいので?「フリーター・ソング」は彼のエッセイ「瀕死の双六問屋」に付属してきたCDに収録されていた曲。当サイトでもかつて紹介していたように、私も初耳の曲ではないのですが、こちらも既に絶版になっているようで、入手困難な作品に。さらに「ジャングルジム」は2019年に、日比谷公会堂で行われた、忌野清志郎ゆかりのミュージシャンが集まり、彼の曲を歌ったライブイベント「忌野清志郎ロックン・ロール・ショーLove & Peace」のパンフレットに付属してたCDに収録されていた曲で、もともと間寛平に提供した楽曲のセリフカバー。いきなり「アメリカからの電話で/軍隊をつくれと言ってきた」とかなりストレートな社会派の歌詞からスタートするナンバーで、これ、よく間寛平が歌ったな・・・と思ってしまうのですが、完全に忌野清志郎の曲となっているロックンロールナンバー。こちらはもう入手困難で、かなりレア度の高い音源と言えるでしょう。

一方、ベスト盤らしく、もちろんRCサクセション盤の方は「キモチE」「雨あがりの夜空に」などの代表曲も収録。ただ、「スローバラード」は未収録なのは、全体的にロックン・ロールという方向性を意識したからでしょうか。アップテンポなロックンロールな楽曲が多かったように思います。忌野清志郎盤の方も「JUMP」からスタートし、THE TIMERS名義の「デイ・ドリーム・ビリーバー」、さらにはリリース当時、物議をかもした「君が代」も収録。こちらも全体的にロックンロールな楽曲が多い構成となっていました。

そんな訳で、代表曲を多く収録されているため入門盤としても、またレア音源が多いために熱烈なファンにとってもチェックしておきたい企画盤に。手を変え品を変えの様々な企画盤が清志郎の逝去後にリリースされましたが、まだこの手があったか!とも思ってしまった作品でした。レア音源も、全く他の曲に勝るとも劣らない出来の良さで、忌野清志郎の魅力をあらめて感じさせてくれる良企画。文句なしにお勧めの企画盤です。

評価:どちらも★★★★★

RCサクセション 過去の作品
悲しいことばっかり
シングル・マン+4
SUMMER TOUR '83 渋谷公会堂~KING OF LIVE COMPLETE~
COMPLETE EPLP~ALL TIME SINGLE COLLECTION~
RHAPSODY NAKED Deluxe Edition

忌野清志郎 過去の作品
入門編
忌野清志郎 青山ロックン・ロール・ショー2009.5.9 オリジナルサウンドトラック
Baby#1
sings soul ballads
ベストヒット清志郎
COMPILED EPLP ~ALL TIME SINGLE COLLECTION~
KING Deluxe Edition
GOD Deluxe Edition


ほかに聴いたアルバム

CIRCUS/Novelbright

現在、人気上昇中のロックバンドNovelbrightによる、約2年ぶりのニューアルバム。全体的に、メランコリックで切なさを感じるメロディーラインを爽やかに奏でるバンドといった印象で、若干哀愁感漂うメロの一本調子な部分も感じられるものの、「サクリファイス」のようなAOR色の強い作品や「Empire」のようにラップも入ってダイナミックに聴かせるナンバーなど、バラエティーを持たせようとする試みも。いい意味で万人受け志向のポピュラリティーのあるバンドなので、人気上昇はまだ続くかも。

評価:★★★★

Novelbright 過去の作品
WONDERLAND
開幕宣言
Assort

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2024年6月13日 (木)

3様の男性アイドルがベスト3入り

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

ベスト3は、今どきの様々な形態のアイドルが獲得です。

まず1位はK-POP。ATEEZ「GOLDEN HOUR:Part.1」が獲得。CD販売数1位。6曲入りのミニアルバム。オリコン週間アルバムランキングでも初動売上4万2千枚で1位初登場。直近作のフルアルバム「THE WORLD EP.FIN:WILL」の初動売上8万7千枚(3位)からダウン。

2位はVTuber。VTuberグループ、にじさんじ所属のユニット、VΔLZ「三華の樂」が2位初登場。CD販売数2位、ダウンロード数8位。本作が初となる7曲入りのミニアルバム。オリコンでは初動売上2万7千枚で2位初登場。

そして3位はゲームからのアニメキャラ。寿嶺二(森久保祥太郎)「うたの☆プリンスさまっ♪ソロベストアルバム 寿嶺二 Drown in」。CD販売数3位。女性向け恋愛アドベンチャーゲーム「うたの☆プリンスさまっ♪」のキャラによるアルバム。オリコンでは初動売上1万9千枚で3位初登場。同シリーズの前作「うたの☆プリンスさまっ♪Dramatic Masterpiece Show『ファウスト ラストカンタータ』」の初動8千枚(4位)からアップしています。

続いて4位以下の初登場盤です。4位は元V6のメンバーで現在はTOBE所属の三宅健初のフルアルバム「THE iDOL」がランクイン。最近、どんどん旧ジャニーズをやめているので、誰が残って誰がやめたのかわからなくなってきています。5位は日本でも高い人気を誇るアメリカのロックバンド、BON JOVI「Forever」がランクイン。6位はワルキューレ「W encore」。テレビアニメ「マクロスΔ」から誕生したユニットによるライブアルバム。9位にはEXILE THE SECOND「THE FAR EAST COWBOYZ」が初登場。そして10位にはももいろクローバーZの玉井詩織による初のソロアルバム「colorS」がランクインしています。

また今週、ベスト10圏外からの返り咲きとして韓国の男性アイドルグループStray Kids「SKZ2020」が7位にランクイン。2020年3月25日付チャート以来のランクイン。イベント開催による会場販売分が加味されたようです。


今週のHeatseekers Songs

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=heat_seekers

今週もBABYMONSTER「SHEESH」が1位を獲得。これで5週連続、Heatseekers Songsでの1位獲得となりました。


今週のTikTok Weekly

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=tiktok

今週の1位はKOMOREBI「Giri Giri」が獲得。4MC&1DJによるHIP HOPユニット。もともとそれぞれがモデルとして活躍していたメンバーが結成されているようで、アイドル要素も強い感じもしますが、本作はヘヴィーなビートが耳に残るリズミカルな作品。本作を元とした「#ギリハピダンス」が話題となり、TkiTok Weeklyの1位にランクインしてきたようです。良くも悪くも週替わりで流行が入れ替わっている感じ。


今週のニコニコVOCALOID SONGS

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=niconico

逆にロングヒットとなっているのがVOCALOID SONGS1位のサツキ「メズマライザー」でこれで6週連続の1位となっています。YouTube再生回数は今週も4位、Heatseekersチャートも6位にランクイン。同じダンスチューンがヒットで目立つものの、TikTokと歌詞的にも対照的なのがユニークなところです。

今週のHot Albums&各種チャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2024年6月12日 (水)

ロングヒット組が再ランクアップ

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

先週はまさかのベスト3陥落となったCreepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」でしたが、今週は3週ぶりの1位返り咲きとなりました。

ストリーミング数は今週、20週目の1位獲得。カラオケ歌唱回数も13週連続の1位。ダウンロード数も5位から3位にアップ。ただし、YouTube再生回数は、長らく続けていた1位から先週2位にダウン。今週も2位となっています。これで21週連続のベスト10ヒット、通算19週目のベスト3ヒット、通算17週目の1位獲得となっています。

2位初登場は韓国の男性アイドルグループNCT DREAM「Moonlight」が初登場。CD販売数2位、ダウンロード数4位。オリコン週間シングルランキングでは初動売上13万3千枚で2位初登場。前作「Best Friend Ever」の初動18万2千枚(1位)からダウンしています。

そして3位には先週5位だったMrs.GREEN APPLE「ライラック」が2ランクアップで2週ぶりのベスト3返り咲きで、8週連続のベスト10ヒットとなりました。テレビ東京系アニメ「忘却バッテリー」主題歌。特にストリーミング数は4週連続で2位をキープ。ベスト3ヒットも通算5週目となります。

続いて4位以下の初登場曲ですが、まず5位に動画サイトを中心に活動を行っている男性アイドルグループ、すとぷり「誓いの花束を~With You~」がランクイン。CD販売数1位。本作がCD形態では初のシングルとなります。オリコンでは本作を収録した「はじまりの物語」が初動売上22万3千枚で1位を獲得しています。

10位には秋元康系女性アイドルグループ櫻坂46「自業自得」がランクイン。6月26日リリース予定のシングルの先行配信。ダウンロード数14位、ストリーミング数5位、YouTube再生回数9位で、総合順位はこの位置に。

一方、ベスト10圏外からの返り咲きも目立ちました。まずはtuki「晩餐歌」。先週の11位から6位に再度のランクアップで2週ぶりのベスト10返り咲き。ただ、ストリーミング数は5位から6位にランクダウンしており、全体的には下落傾向。これで通算27週目のベスト10ヒットとなりました。

韓国の女性アイドルグループILLIT「Magnetic」も先週の12位から7位にランクアップし、こちらも2週ぶりのベスト10返り咲き。こちらはストリーミング数以外、すべてチャート圏外となっていますが、ストリーミング数は6週連続で4位を獲得。これでベスト10ヒットは通算10週目となりました。

また、MY FIRST STORY×HYDE「夢幻」がCD販売数が加味された影響により3週ぶりにベスト10返り咲き。ただ、テレビアニメ「鬼滅の刃」主題歌というタイアップの良さにも関わらずストリーミング数は圏外ですし、全体的に伸び悩んでいる感じ。オリコンでは初動売上1万5千枚で6位初登場。MY FIRST STORYの前作「告白」の初動3千枚(22位)からもHYDEの前作「FINAL PIECE」の初動1万1千枚(8位)からも大きくアップしているものの、以前の「鬼滅の刃」関連の曲と比べると、少々淋しいチャートアクションとなっています。

そしてロングヒット曲ではOmoinotake「幾億光年」が先週の9位から4位に再度ランクアップ。ストリーミング数は4週連続の3位をキープしているほか、ダウンロード数は16位から10位、YouTube再生回数も10位から6位にアップしています。これで17週連続のベスト10ヒットとなります。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums&各種チャート!

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2024年6月11日 (火)

美しいメロが魅力的なポップスアルバム

Title:Nonetheless
Musician:PET SHOP BOYS

途中、ベスト盤のリリースなどを挟みつつ、約4年ぶりとなるPET SHOP BOYSのニューアルバム。今回、2012年の「Elysium」以来となるParlophoneからのリリース。また、プロデューサーとして新たに、ゴリラズなども手掛けるジェームズ・フォードを起用し、ある意味、新たな一歩となるアルバムとも言えるかもしれません。

・・・が、新たなとはいってもPET SHOP BOYSとしてのスタイルは今回のアルバムでも全く変わっていません。先行シングルにもなったメランコリックでリズミカルなエレクトロチューン「Loneliness」からスタート。爽快さを感じるエレクトロポップチューン「Feel」、PET SHOP BOYSらしい祝祭色も感じるダンスチューン「Why Am I Dancing?」へと続いていきます。

率直に言って、良くも悪くもいつも通りのPET SHOP BOYS。新鮮味という意味ではほとんどありませんが、一方では安心して楽しむことが出来ます。大いなるマンネリとも言えるのかもしれませんが、それでも聴いていて古臭さのようなものを感じず、毎回、十分に「傑作」と言えるアルバムを楽しむことが出来るのは、1にも2にも彼らの書くメロディーラインが非常に優れてポップだからでしょう。

その上で言うと、今回のアルバム、最初に聴いた時はここ最近のアルバムの中では今一つではないか、と感じました。これと言って核になるようなフックの効いたメロディーがなく、全体的に地味に感じられたためです。しかし、もう一度このアルバムを聴くと、やはりPET SHOP BOYSらしい珠玉のメロディーラインを楽しめる傑作アルバムであることに気が付きました。

例えば中盤の「Dancing Star」も、哀愁感あるメロディーが実に美しく胸をうつエレクトロダンスナンバーになっていますし、「A New Bohemia」もエレクトロアレンジながらも暖かみを感じさせるメロディーラインが実に魅力的。「The Schlager Hit Parade」も軽快で明るいメロディーラインが耳を惹きます。

終盤も悲しげでムーディーなメロが耳を惹く楽曲が並びます。ラストを飾る「Love Is The Law」も、まさに哀しみたっぷりのメロディーが印象的なナンバー。アルバムの最後にほどよい余韻を残しながらアルバムは幕を下ろします。

最初は地味さを感じ、ピンとこなかったアルバムですが、やはり2度3度聴くと、PET SHOP BOYSらしい美しいメロディーラインを聴くことが出来る魅力たっぷりのアルバムだと感じました。ちなみにCDでは2枚組でDisc2は「Futuremore」というタイトルで、過去作のリメイクが収録。こちらはエレクトロアレンジがグッと今の音にアップデートされており、2024年の楽曲としてよみがえっています。こちらも要チェックでしょう。

そんな訳で、目新しさは正直感じません。ただ、そのマイナス点をはるかに上回る魅力的な歌を聴くことが出来るポップスの傑作だったと思います。大ベテランの彼らですが、いまだにその実力に衰えを感じさせません。彼らのその才能にあらためて舌を巻くアルバムでした。

評価:★★★★★

PET SHOP BOYS 過去の作品
Yes
ULTIMATE PET SHOP BOYS(邦題:究極のペットショップボーイズ)
The Most Incredible Thing
Elysium(邦題 エリシオン~理想郷~)
ELECTRIC
SUPER
Agenda
Hotspot
Monkey business
My Beautiful Laundrette
SMASH~The Singles 1985-2020


ほかに聴いたアルバム

Hyperdrama/Justice

オリジナルアルバムとしては約8年ぶりとなるフランスのエレクトロデゥオ、Justiceのニューアルバム。時にはスペーシーに、時にはファンキーに聴かせるエレクトロのビートが魅力的。メロディーラインはメランコリックに聴かせる曲が多く、フレンチらしい洒落たポップにまとめあげているのも魅力的。いつもながら、といった感じもするものの、Justiceらしいエレクトロポップを聴かせてくれる作品でした。

評価:★★★★

JUSTICE 過去の作品
CROSS
Woman
Woman Worldwide

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2024年6月10日 (月)

ヘヴィーなギターリフもカッコいいロックな新作

Title:All Born Screaming
Musician:St.Vincent

アルバムをリリースするごとに高い評価を得て、ここ最近では日本でも注目を集めるようになってきたアメリカのシンガーソングライター、St.VIncent。本作は、その彼女の約3年ぶりとなるニューアルバムとなります。

前作のレビューでも書いたのですが、彼女はアルバム毎にその作風を大きく変化させるのがひとつの特徴となっていました。2014年にリリースした「St.Vincent」ではギターサウンドを押し出したロックな作風に。前々作「MASSEDUCTION」ではエレクトロ色が強い作品に、そして前作「Daddy's Home」では古き良きアメリカのポップソングを体現化したような作風が印象的でした。

そして今回のアルバムは、オルタナ系のギターロックにグッと寄ったロックな作風になっているのが大きな特徴。1曲目「Hell Is Near」こそ、伸びやかな彼女の歌声を聴かせるドリーミーなポップからスタートするのですが、まず印象的なのが3曲目の「Broken Man」。彼女自身による非常に力強いギターリフをよるヘヴィーなロックチューン。「Flea」もメロディアスでキュートとも言える歌が特徴的ながらも、ヘヴィーでノイジーなバンドサウンドが流れますし、「Big Time Nothing」もエレクトロビートを入れつつ、ヘヴィーでファンキーなロックナンバーに。特に中盤、ロッキンなナンバーが並び、アルバムの中で大きなインパクトとなっています。

後半は、「The Power's Out」のように、感情たっぷりにメランコリックに歌い上げるナンバーもありつつ、「Sweetest Fruit」「So Many Planets」もバンドサウンドで聴かせてくれますし、さらにラストのタイトル曲「All Born Screaming」も軽快なギターロックを聴かせてくれるポップなナンバー。後半は、軽快なポップ色が強くなりますが、やはりオルタナ系のギターロックからの影響の強い作品が並びます。

今回、このロック志向が顕著なのはゲストミュージシャンにも出ていて、なんとフー・ファイターズのデイヴ・クロールとジョシュ・フリーズが参加。デイヴ・クロールはドラムでの参加となっており、前述の「Broken Man」「Flea」で力強いドラムを聴かせてくれます。特に「Broken Man」でのSt.Vincent自身によるヘヴィーなギターリフとの絡みは、本作の聴きどころの1つと言えるでしょう。

個人的には純粋なアルバムの出来としては、前作や前々作の方がよかったかな、とは思うのですが、一方では彼女のロック趣味が前面に出た作品となっており、これはこれで十二分に楽しめる傑作アルバムだったと思います。アルバム毎に様々な姿を見せてくれる彼女。そのどれもが傑作に仕上げてくるというのは驚きです。さて、次回作はどんな彼女の出会えるのでしょうか。それもまた、今から楽しみです。

評価:★★★★★

St.Vincent 過去の作品
St.Vincent
MASSEDUCTION
MassEducation
Daddy's Home


ほかに聴いたアルバム

Dark Matter/Pearl Jam

ご存じ90年代グランジロックの代表格的なミュージシャン、パール・ジャムの約4年ぶりとなるニューアルバム。大ベテランの彼らですが、正直、ニューアルバムには目新しさはなく、彼ららしい力強いバンドサウンドの作品が並びます。一方、タイトル曲の「Dark Matter」をはじめ、力強くダイナミックに聴かせてくれるギターリフは健在で、迫力のある楽曲はバリバリの現役感を覚えます。いい意味でロックのダイナミズムを楽しめ、安心して聴ける王道のロックアルバムになっていました。

評価:★★★★

Pearl Jam 過去の作品
Backspacer
Lightning Bolt
Gigaton
MTV Unplugged

Best of Bruce Springsteen/Bruce Springsteen

ロック史に残る名盤「Born In The U.S.A.」。そのリリースから40年の年を記念しリリースされたボスのベストアルバム。力強く骨太のロックチューンが並んでいますが、あらためて聴くと、意外とメロディーラインはメランコリックで人なつっこいポップとなっており、その強い人気の理由もよくわかります。代表曲がほどよくまとめられており、入門盤としても最適な1枚。

評価:★★★★★

BRUCE SPRINGSTEEN 過去の作品
Working On A Dream
WRECKING BALL
High Hopes
1980/11/05 Tempe,AZ
Western Stars
Letter to You
Only The Strong Survive

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2024年6月 9日 (日)

愚直にガレージロックに向き合った傑作

Title:POPCORN
Musician:THE BAWDIES

今年、結成20周年、そしてデビュー15周年を迎えた記念すべき年にリリースされる、THE BAWDIES約3年ぶりとなるニューアルバム。彼らに関しては、メジャーデビューアルバム「THIS IS MY STORY」ではじめて知り、ストレートなロックンロールで一気にはまってしまったのですが、それからもう15年も経つのか、と思うと驚かされてしまいます。ま、最近、そういうのばかりなんですが(苦笑)。

ご存じの通り、THE BAWDIESといえば60年代や70年代のロックンロールに愚直なまでに影響を受けたガレージロックバンド。メンバーの音楽的造詣も深く、ルーツ志向の音楽性が高い評価を受けています。ただ一方、このストレートなロックンロール路線は難しい部分もあり、正直、彼らの目指すガレージロックはやはり勢い重視の一本調子な部分は否めず。バンド活動が長くなるにつれ、一本調子かもしれないけど、ストレートで勢いのあるロックンロールを目指すのか、それともマンネリを回避するために音楽的な幅を広げるのか、特にここ最近のアルバムではいろいろと模索しているように感じます。

実際、ここ最近のアルバムで言っても、「Boys!」「NEW」は比較的新機軸を目指したアルバム、「Section#11」は原点回帰したストレートなロックンロール、さらに前作「BLAST OFF!」は再びいろいろな音楽性を模索したアルバムと、いろいろな模索の後が強く感じられます。彼らとしても、なかなかその方向性のかじ取りが難しいということなのでしょう。

そんな中で今回のアルバムは、まさにタイトルの通り彼らがはじけたかのように、これでもかというほどストレートなガレージロック路線を楽しめるアルバムに仕上がっていました。まず1曲目「DO THE BOP!」は、ROYのしゃがれ声でアップテンポに歌い上げる陽気な、いかにもTHE BAWDIESらしオールディーズなナンバーからスタート。続くタイトルチューンの「POPCORN」は、こちらもストレートなガレージロックなナンバー。タイトル通りの弾けるようなリズムが印象に残るナンバーになっています。

先行シングルにもなった「GET OUT OF MY WAY」は力強いギターリフとROYのシャウトが印象的な、これぞTHE BAWDIESといった感じのガレージロック。「STAND!」も力強いギターリフで60年代の雰囲気が強く漂ってくるナンバー。ラストの「ROCK'N'ROLL MAN」も疾走感のある、こちらも60年代ガレージロックをそのまま切り抜いてきたような楽曲と、最後の最後までストレートなガレージロック路線。わき目もふらず、まさにTHE BAWDIESの原点とも言うべきロックンロール路線を貫いたアルバムになっています。

今回はさらに、記念すべきアニバーサリーのアルバムということで、豪華なゲストの参加も特徴的。「SCREAM」ではGLIM SPANKYの松尾レミが参加。息の合ったデゥオの陽気なロックンロールを聴かせてくれますし、さらに「GIMME GIMME」ではOKAMOTO'Sのオカモトショウが参加。個人的にTHE BAWDIESとOKAMOTO'Sというとデビューした時期も近く、またどちらもルーツ志向のバンドということで、近い立ち位置のバンドと思っていただけに、こういった共演はうれしいところです。

THE BAWDIESは2022年に、EP盤「FREAKS IN THE GARAGE-EP」をリリースしました。彼らの原点のガレージロックに向き合った作品で、個人的にもかなりはまった傑作アルバムになっていました。今回のアルバムは、このEPをきっかけに作り始めたアルバムだそうで、それだけに今まで以上にガレージロックに向き合った作品となっています。また、そのEP盤はミックスもかなり荒々しく仕上げていたのですが、今回のアルバムも同様。音的には決してクリアなわかりやすい音ではないかもしれませんが、その分、かなり迫力のある音像に仕上がっていたように思います。

「FREAKS IN THE GARAGE-EP」は、その傑作ぶりに、この方向性でフルアルバムを1枚作ってほしい、と思っていたのですが、まさにその要望が叶った形の傑作アルバム。年間ベストクラスの傑作アルバムであり、THE BAWDIESの本領発揮とも言える作品だったと思います。もう、両手をあげてお勧めしたいガレージロックのアルバム。ロックンロールが好きなら絶対に聴くべき1枚です。

評価:★★★★★

THE BAWDIES 過去の作品
THIS IS MY STORY
THERE'S NO TURNING BACK
LIVE THE LIFE I LOVE
1-2-3
GOING BACK HOME
Boys!
「Boys!」TOUR 2014-2015 –FINAL- at 日本武道館
NEW
THIS IS THE BEST
Thank you for our Rock and Roll Tour 2004-2019 FINAL at 日本武道館
Section#11
BLAST OFF!
FREAKS IN THE GARAGE-EP


ほかに聴いたアルバム

Singles/中島みゆき

1987年にリリースした、中島みゆきの3枚組のベスト盤。このたび、リマスター盤がリリースされたのでチェックしてみました。もう37年も前のアルバム。そのため、90年代以降の彼女のヒット曲はもちろん収録されていません。やはり時代を感じさせるムード歌謡曲テイストの曲が多いのは特徴的。ただ一方、強烈な個性としての独特の歌詞の世界はもちろん既に確立されており、一般的なムード歌謡曲との確固たる違いを感じさせます。この歌詞の世界観もあり、今なお全く衰えることない魅力を感じさせてくれるベスト盤でした。

評価:★★★★★

中島みゆき 過去の作品
DRAMA!
真夜中の動物園
荒野より
常夜灯
十二単~Singles4~
問題集
組曲(Suite)

中島みゆき・21世紀ベストセレクション『前途』
中島みゆきConcert「一会」(いちえ)2015~2016-LIVE SELECTION-

相聞
中島みゆき ライブ リクエスト -歌旅・縁会・一会-
CONTRALTO
ここにいるよ
中島みゆき 2020 ラスト・ツアー「結果オーライ」
世界が違って見える日

SHISHAMO 8/SHISHAMO

タイトル通り、オリジナルアルバムとしては8枚目となるSHISHAMOのニューアルバム。直近の企画盤「ACOUSTIC SHISHAMO」では彼女たちの歌詞や歌自体の魅力を存分に感じれた1枚となりましたが、それに続くアルバムだからでしょうか、いつも以上に切ない彼女たちのラブソングの歌詞が、より前に出ているように感じたアルバムになっていたように感じます。彼女たちらしさが出ていた作品となっていました。

評価:★★★★

SHISHAMO 過去の作品
SHISHAMO 3
SHISHAMO 4
SHISHAMO 5
SHISHAMO BEST
SHISHAMO 6
SHISHAMO 7
ブーツを鳴らして-EP
恋を知っているすべてのあなたへ
ACOUSTIC SHISHAMO

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2024年6月 8日 (土)

ストレートな歌詞がインパクト

Title:日々愛々
Musician:コレサワ

Hibiaiai

「れ子」と呼ばれる熊のキャラクターを前面に押し出した活動もユニークな、女性シンガーソングライター、コレサワの配信限定での最新ミニアルバム。今回のジャケットでは、その「れ子」の後ろに、アニメとはいえ本人も登場するジャケット写真となっています。ひょっとしたら今後は、アニメキャラであれば、本人も登場してくる、ということなのでしょうか?

コレサワと言えば、大きな特徴なのはその歌詞。女性心理をあまりにストレートで、さらに時にはドギツク描写する歌詞が大きな魅力的。ふわっとしたぬいぐるみのような「れ子」のイメージとのギャップがまたおもしろいシンガーです。今回のアルバム、アニメ「じいさんばあさん若返る」の主題歌にも起用されている、1曲目の「君がおじいちゃんわたしがおばあちゃん」はタイトル通り、年を取るまで一緒にいようという、かわいらしいラブソングですが、続く「Fコード」は、片想いの相手との上手くいかないもどかしさを、ギターコードのFに例えているスタイルがなかなかユニーク。そして彼女らしさを感じるのが3曲目の「ライブ終わりに」で、売れないバンドマンとのもどかしい関係に、ストレートに「ライブ終わりに抱いて」と訴えかける歌詞。この彼女の方も、そんなバンドマンとの関係を抱かれることによってごまかそうとするスタンスが非常に痛々しく、かつストレートな感情が男性の私にも伝わってきます。

続く「君のタトゥー」も、いきなり「少し肌を 見せ合うような関係」とエロチックな表現がまた彼女らしい感じで、かなりストレートな表現が耳に残ります。かと思えば、「デートの前の夜に」では、デートの前の日、明日の準備をする女の子の心境をかわいらしく描いており、これまた、女の子の感情をストレートに描いています。

ここらへんのストレートな女性心理を、時にはエロチックな表現もふくめてドギツク、時にはかわいらしく綴った歌詞が大きな魅力。ここらへん、ただちょっとインパクトのある、ハッとするようなフレーズがちょっと少ない・・・という印象は以前のアルバムに感じられました。ただ今回のアルバムに関しては、前述の「ライブ終わりに抱いて」「少し肌を見せ合うような関係」というドキリとするようなフレーズが多く登場してきます。以前のアルバムに比べると、歌詞の表現について、徐々に進歩してきたように感じます。

一方、サウンドについてはシンプルなギターロックがメイン。ここらへんは歌詞を生かすということを考えると、変に凝ったものではない方がよいかもしれません。メロディーラインについても比較的シンプルなポップがメイン。こちらもそれなりにインパクトのあるフレーズは書いてくるのですが、メロディーだけで勝負するにはちょっと物足りなさも感じてしまう印象が。ここらへん、あれだけの歌詞を書きながらも、いまひとつブレイクしきれない理由ようにも感じます。

個人的には是非ともお勧めしたい注目のシンガーソングライター。そのため、このような形で積極的に紹介しています。ただ、無条件でおすすめできるタイプかと言われると、特にメロディーの面では物足りなさを感じてしまう面も否定できません。もっともっと頑張ってほしいのですが・・・。ただ、女性シンガーソングライター好きには文句なしにお勧めできるアルバム。そのストレートな女性心理は女性はもちろんのこと、男性にも響いてくるものがあります。

評価:★★★★

コレサワ 過去の作品
コレでしょ
失恋スクラップ
純愛クローゼット


ほかに聴いたアルバム

KAZUYOSHI SAITO 30th Anniversary Live 1993-2023 30<31~これからもヨロチクビーム~Live at 東京国際フォーラム 2023.09.22/斉藤和義

恒例の斉藤和義のベスト盤。30周年記念ツアーのファイナル、東京国際フォーラムでの模様を収録したベスト盤。斉藤和義は、毎回ツアー毎にライブアルバムをリリースしているのですが、毎回、MCの部分がカットされています。以前はライブの雰囲気を伝えるためにMC部分も収録してくれればよいのに・・・と思っていたのですが、以前、足を運んだ斉藤和義のライブで、MC部分のエロネタ全開を聴いて「あ、確かにこれはCDには収録できないや・・・」と思いなおしました。が、今回のライブアルバム、後半「君の顔が好きだ」では、途中、替え歌になり、放送禁止のエロ用語を連発(苦笑)。これ、そのまま収録しちゃっていいの??と思ったのですが、さすがに曲の部分ではカットできなかったようで、かなりドギツイ、まあ、ある意味、せっちゃんらしい替え歌が収録されており、本作の聴きどころとなっています(笑)。

ただ、その部分を除いても(?)、今回のライブアルバム、30周年記念ツアーということで選曲がベスト盤的な選曲。彼の代表曲が網羅された選曲になっており、ラストはおなじみ「歩いて帰ろう」で締めくくり。このセットリストのライブ、行きたかったなぁ~と強く感じさせるパフォーマンスになっています。ベスト盤的にも、せっちゃんらしさを感じさせる替え歌を聴くためにも、お勧めできるライブ盤です。

評価:★★★★★

斉藤和義 過去の作品
I (LOVE) ME
歌うたい15 SINGLES BEST 1993~2007
Collection "B" 1993~2007
月が昇れば
斉藤“弾き語り”和義 ライブツアー2009≫2010 十二月 in 大阪城ホール ~月が昇れば 弾き語る~
ARE YOU READY?
45 STONES
ONE NIGHT ACOUSTIC RECORDING SESSION at NHK CR-509 Studio
斉藤
和義

Kazuyoshi Saito 20th Anniversary Live 1993-2013 “20<21" ~これからもヨロチクビ~ at 神戸ワールド記念ホール2013.8.25
KAZUYOSHI SAITO LIVE TOUR 2014"RUMBLE HORSES"Live at ZEPP TOKYO 2014.12.12
風の果てまで
KAZUYOSHI SAITO LIVE TOUR 2015-2016“風の果てまで” Live at 日本武道館 2016.5.22
斉藤和義 弾き語りツアー2017 雨に歌えば Live at 中野サンプラザ 2017.06.21
Toys Blood Music
歌うたい25 SINGLES BEST 2008~2017
Kazuyoshi Saito LIVE TOUR 2018 Toys Blood Music Live at 山梨コラニー文化ホール2018.06.02
KAZUYOSHI SAITO 25th Anniversary Live 1993-2018 25<26 〜これからもヨロチクビーチク〜 Live at 日本武道館 2018.09.07
小さな夜~映画「アイネクライネナハトムジーク」オリジナルサウンドトラック~
弾き語りツアー2019 "Time in the Garage" Live at 中野サンプラザ 2019.06.13
202020
55 STONES
KAZUYOSHI SAITO LIVE TOUR 2020 "202020" 幻のセットリストで2日間開催!~万事休すも起死回生~ Live at 中野サンプラザホール 2021.4.28
KAZUYOSHI SAITO LIVE TOUR 2021 “202020 & 55 STONES” Live at 東京国際フォーラム 2021.10.31
PINEAPPLE
ROCK’N ROLL Recording Session at Victor Studio 301
斉藤和義 弾き語りツアー「十二月~2022」Live at 日本武道館 2022.12.21
KAZUYOSHI SAITO LIVE TOUR 2023 “PINEAPPLE EXPRESS” ~明日大好きなロックンロールバンドがこの街にやってくるんだ~

THIS IS ICE/ICE

90年代に渋谷系の代表格ユニットのひとつとして活躍した男女デゥオ、ICE。昨年、デビュー30周年の記念イヤーとしてシングル集と初期ベストがリリースされましたが、30周年の締めくくりとしてリリースされたのが本作。アルバム収録曲と未発表曲からセレクトされたベストアルバム。シングルだけでは収録しきれないICEの魅力をおさめたアルバムで、ロックやファンク、メロウなソウル、ジャジー、ボッサなど、ICEの様々な音楽的要素を感じさせてくれる選曲になっています。まさに「これぞICE」というタイトルにふさわしい、シングル集と合わせることでICEの全貌が見えてくるようなベスト盤になっていました。

評価:★★★★★

ICE 過去の作品
ICE Complete Singles
ICE Early Years[1990-1992]

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2024年6月 7日 (金)

緊張と弛緩のステージ

MOROHA VS 芸人ツアー 無敵のダブルスツアー2024

会場 名古屋ReNY Limited 日時 2024年5月31日(金) 19:00~

Morohavsgeinin

はじめてMOROHAのライブに足を運んできました。もともと、以前、一度MOROHAのワンマンライブのチケットを確保していたのですが、MCのアフロに体調不良によりライブ中止。そして、そのリベンジ(?)として今回のライブツアーに足を運びました。今回のライブツアーはタイトル通り、お笑い芸人との対バンというちょっと異色のスタイル。名古屋公演での対バン芸人はななまがりで、個人的には完全に初耳の芸人。そのため、最初はどうしようかちょっと躊躇したのですが、やはりMOROHAのライブを見てみたいという理由が半分。逆に、普段、あまり見ることのないお笑い芸人のライブもちょっと見てみたいという気持ちも半分。ライブに足を運ぶことにしました。

会場の名古屋ReNY limitedも今回、はじめて足を運ぶライブハウス。松坂屋の地下というちょっと意外なロケーション(でも考えてみればクワトロもパルコの中か・・・)。非常にきれいなライブハウスだったのですが、ただ入口から会場までの動線が無駄に長く、その点はちょっとマイナスかなぁ。

さて、19時をちょっとまわったところで最初はお笑い芸人、ななまがりのステージがスタート。比較的小柄な森下と、大柄で声が大きいのが特徴という初瀬という2人の芸人によるコンビ。寄席に行った時に色物の漫才のステージは何度も見たことがあるのですが、お笑い芸人のコントをステージで見るのははじめてかも。最初は漫才からスタートし、その後はショートコント気味の短めのコント2本と、通常の長さのコント1本の計4本。最後のコントはエロネタ満載の、テレビでは見れないような、ライブならではのコントで、思いっきり笑わせてもらいました。

大体、コントが30分くらい。その後は待望のMOROHAのステージのスタート。ステージは向かって右手に台がセットされ、その上にUKがあぐらの姿勢でアコギをかけて演奏しつつ、左手にマイク片手のアフロが力強いラップを聴かせてくれるスタイルでのパフォーマンスとなっていました。

ステージは「チャンプロード」からスタート。ある意味、ライブ、特にこの対バンライブにもピッタリの曲からの幕開けとなります。そのまま「それゆけ!フライヤーマン」「革命」と続きます。途中、ながまがりのコントのネタも入れて、若干の笑いも取りつつも、基本的にはUKのアコギのみをバックに、アフロの力強いラップが会場に響く、緊迫感のあるステージとなっていました。

ここでMCに入ります。どのようなMCになるのか、ラップと同じく、いろいろと熱く語るMCになるのか、注目していたのですが、MC自体はアフロとUKがそれなりに笑いを取りつつ、会話するような「普通の」MC。緊迫感ある曲に対しての弛緩のようなパートとなっており、MCがライブの中でちょうどよいバランスになっていたと思います。このMCでは、芸人と組んだこのライブイベントの意義として「生きることについてばかり歌ってきた自分たちのスタイルを破るため」といった趣旨の発言をしており、確かに緊迫感あるMOROHAのステージに、対極にある「笑い」というお笑い芸人のコントというバランスの妙が非常にユニークに感じました。

続いては、最初「森下さんの元彼女からの手紙です」という今回の対バンに合わせた小ボケをかましながら「拝啓、MCアフロ様」へ。さらに「命の不始末」「Salad Bowl」と熱いパフォーマンスが続いていきます。その後は再びMCを挟み、終盤は新曲。「やめるなら今だ」と名付けられた曲は、タイトルとは逆に、アフロの音楽活動への熱い思いを語った、MOROHAらしい曲。最後は「愛してる」というかなりストレートなタイトルの、これまた彼らしいラブソング。約1時間程度のパフォーマンスとなり、幕を閉じました。

今回、はじめて彼らのステージを見たのですが、その緊迫感あふれるステージは、ある意味予想通り。ただ一方、予想以上に耳を惹かれたのが、UKのギターの方。ステージ上にセットされた台の上で、静かにギターをつむぐそのスタイルは、かなりストイックに感じましたし、何よりもそのテクニカルな演奏に、思わず見入ってしまいました。

そしてステージ上はふたたびななまがりが登場。再び短めのコント3本、途中、森下の着替えに時間がかかるということで初瀬の「なんでも断定する男」というネタで場をつないだ後、ラストにコント1本を披露してくれました。この最後のネタは、メンバーの2人が別の世界線でコントを行うというスタイルが独特でかなりユニーク。こちらもかなり笑わせてもらいました。

最後はMOROHAの2人とななまがりの2人がステージに集まり、トークショー。さらには最後はアフロが出したMOROHAに関した質問に対して、UKとななまがり2人がユニークな回答を返すという「大喜利」を行いました。UKもがんばって回答していましたが、ななまがりの2人の回答はユニークで、ここはさすが芸人の底力といった感じでしょうか。最後4人でのコーナーが約45分程度。ステージが終わったのは10時ちょっと前でした。

そんな訳で、ななまがりのライブが計1時間程度、MOROHAのライブが1時間程度、最後の4人でのトークで1時間弱の計3時間弱というボリュームたっぷりのライブイベントとなっていました。ななまがりのライブもなかなかおもしろかったですし、なによりもMOROHAのその緊迫感あふれるステージが素晴らしかったです。アフロのMCももちろんですが、今回のライブではじめて、UKのギタープレイのすばらしさにも気が付かされました。正直、3時間のステージならば、もうちょっとMOROHAのパートを長く聴きたかったなぁ、というのはありましたが、ななまがりの笑いと、MOROHAのラップのバランスが前にも書いた通りに絶妙で、非常におもしろいイベントになっていたように感じます。

また、MOROHAのライブには是非とも足を運びたいです。次はワンマンで、もうちょっとたっぷり見てみたいかも。緊迫感あり、笑いありの非常に楽しいイベントでした。

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2024年6月 6日 (木)

TOBEのアイドルグループが1位2位を独占

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

Hot100では2位に甘んじたNumber_iでしたが、アルバムチャートでは1位を獲得しました。

Noo

そんな訳でジャニーズ事務所を脱退し、滝沢秀明の事務所、TOBEへ移籍した元King&PrinceのメンバーによるアイドルグループNumber_iのミニアルバム「No.O-ring-」が1位獲得。CD販売数及びダウンロード数共に1位となっています。ちなみにCDはTOBE ONLINE STORE限定なのですが、いろいろとサイトを見ても、その旨を書かれているサイトが皆無。ファンには周知の事実なので、あらためて記載はしないということなのでしょうか。ただ、最近、特にK-POPやいわゆるメディアミックスのゲーム・アニメ系コンテンツに顕著なのですが、最低限の基本情報が公式サイトやニュースサイトなどにほとんど記載されず、ファンにとっては知ってて当たり前の情報を、外部の第三者が入手しにくい、というケースが目立つように感じます。一部の固定ファン以外は最初から商売の相手ではない、ということなのでしょうか。ただ、こういう一見さんお断りの方針は、長い目で見れば業界を委縮させてしまいかねないので非常に気にかかります。

また今回、オリコンではなぜかCD販売数は集計されておらず、オリコン週間アルバムランキングでは対象外となっています(合算ランキングでは1位獲得)。ビルボードはCD販売数を集計しているだけに、CD販売数未公表ではないはず。普段、AKB系やK-POPの通販販売分は不自然なほど集計しているにも関わらず、この扱いの違いが気にかかります。旧ジャニーズ系や秋元康系コンテンツに、これでもかというほどしっぽを振って従順に従っているオリコンなだけに、この扱いは元ジャニーズ事務所への忖度ではないか、と疑わざるを得ません。

2位も同様。ジャニーズでIMPACTorsとして活動していたメンバーが全員、TOBEに移籍したグループ、IMP.「DEPARTURE」が初登場。CD販売数2位、ダウンロード数3位。こちらもオリコンでは圏外。こちらは合算チャートは32位という結果となっています。

そして3位にはTHE YELLOW MONKEY「SparkleX」が初登場でランクイン。約5年ぶり、活動再開後は2作目となるオリジナルアルバム。CD販売数3位、ダウンロード数4位。オリコンでは本作が初動3万7千枚で1位初登場。ただ、前作「9999」の初動8万1千枚(3位)からは大きくダウンしてしまっています。

続いて4位以下の初登場盤ですが、まず4位に椎名林檎「放生会」がランクイン。ベスト3入り出来なかったのか・・・という印象もあるのですが、アルバムのリリースを発表したのが発売日の2日前というサプライズリリースだったのも要因でしょうか。5位には男性シンガーソングライターNOA「Primary Colors」が初登場。6位初登場は「Disney Twisted-Wonderland Original Soundtrack」がランクイン。ツイステでの略称でも知られる男性キャラ育成モバイルゲームのサントラ盤。7位にはBAD HOP「BAD HOP FOREVER(ALL TIME BEST)」がランクイン。今年2月の東京ドームツアーを最後に解散したHIP HOPグループのベスト盤。8位は「~SUKIMASWITCH 20th Anniversary Tribute Album~ みんなのスキマスイッチ」。タイトル通り、デビュー20周年を迎えたスキマスイッチの楽曲を様々なミュージシャンがカバーしたトリビュートアルバム。最後10位にはmiwa「7th」がランクイン。CD販売数8位。

また今週、宇多田ヒカル「SCIENCE FICTION」が先週の11位から9位にアップ。2週ぶりのベスト10返り咲きとなっています。


今週のHeatseekers Songs

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=heat_seekers

今週はBABYMONSTER「SHEESH」が先週に引き続き1位を獲得。これで4週目のHeatseekers Songsの1位獲得となりました。


今週のTikTok Weekly

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=tiktok

今週の1位は舟津真翔「一目惚れ」が獲得。現在22歳の島根県松江市出身の男性シンガーソングライター。ハイトーンボイスが印象的な切ないミディアムチューン。楽曲自体が注目されている他、本作を使用した「一目惚れ予測エフェクト」が話題となっているようです。


今週のニコニコVOCALOID SONGS

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=niconico

VOCALOID SONGSは今週も1位はサツキ「メズマライザー」。これで5週連続の1位となっています。ちなみに同曲はYouTube再生回数は今週4位、Heatseekersチャートも4位と、いずれも先週からワンランクのダウンとなっています。

今週のHot Albums&各種チャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2024年6月 5日 (水)

なんと、ベスト3から陥落

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

先週、2位にダウンしたCreepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」。今週は1位返り咲きか、と思いきや、今週はなんと4位にダウンしてしまいました。

代わって1位を確保したのは男性アイドルグループJO1「Love seeker」。韓国の人気オーディション番組「PRODUCE 101」の日本版「PRODUCE 101 JAPAN」から誕生した和製K-POPアイドル的なグループ。CD販売数1位、ダウンロード数3位、ラジオオンエア数5位。オリコン週間シングルランキングでは本作を収録した「HITCHHIKER」が初動売上50万5千枚で1位初登場。前作「TROPICAL NIGHT」の初動30万4千枚(1位)からアップしています。

続く2位は同じく男性アイドルグループNumber_i「BON」がランクイン。滝沢秀明の事務所、TOB所属の、元King&Princeのメンバーによるグループ。ダウンロード数、ラジオオンエア数及びYouTube再生回数1位、ストリーミング数13位。

3位は5人組YouTuberのグループ、コムドット「拝啓、俺たちへ」が初登場。CD販売数2位、ストリーミング数16位、ラジオオンエア数6位。オリコンでは初動売上11万7千枚で3位初登場となっています。

そして、これに続く4位にCreepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」。ストリーミング数及びカラオケ歌唱回数は1位をキープしているものの、YouTube再生回数は2位にダウン。ベスト10ヒットは20週連続となったものの、先週まで18週連続で続けていたベスト3ヒットは途切れる結果となりました。来週は巻き返しがあるのでしょうか?

続いて4位以下の初登場曲。まず6位に米津玄師「毎日」がランクイン。日本コカ・コーラ「ジョージア」CMソング。ダウンロード数2位、ストリーミング数18位、ラジオオンエア数4位、YouTube再生回数6位。初登場の順位はちょっと低め。ストリーミング数の順位の低さも気になるところですが、来週以降、アップしていくのでしょうか。

7位にはハロプロ系女性アイドルグループBEYOOOOONDS「灰toダイヤモンド」が初登場。CD販売数3位、ダウンロード数10位、ラジオオンエア数16位。オリコンでは初動売上6万8千枚で3位初登場。前作「求めよ…運命の旅人算」の7万3千枚(3位)からダウンしています。

初登場もう1曲は10位にスターダストプロモーション所属の女性アイドルグループ超ときめき♡宣伝部「最上級にかわいいの!」がランクイン。CD販売数4位、その他はランキング圏外。オリコンでは初動売上4万9千枚で4位初登場。前作「かわいいメモリアル」の初動3万3千枚(3位)からアップしています。

今週はこのように初登場曲が多かったため、Creepy Nuts含め、ロングヒット曲は厳しい傾向に。長くベスト10ヒットを続けてきたtuki.「晩餐歌」は今週ついに11位にダウン。連続ベスト10ヒットは26週でストップ。また、先週で9週連続ベスト10ヒットとなったILLIT「Magnetic」も12位にダウンしています。

そんな中でなんとかベスト10をキープしたのがOmoinotake「幾億光年」。今週、7位から9位に2ランクダウンながらもベスト10をキープ。ただこちらも、ストリーミング数は3位をキープしたのですが、YouTube再生回数は7位から10位にダウンという結果となっています。これで16週連続のベスト10ヒットとなりました。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums&各種チャート!

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2024年6月 4日 (火)

THEシティポップ

Title:Peppermint Time ~20th Anniversary Best~
Musician:土岐麻子

もともと、私が土岐麻子の名前を知ったのはCymbalsの時でした。1998年にデビューした3人組バンドのCymbalsは、当時、どちらかというと「ネオアコ系のギターポップバンド」で、当時は他に、advantage Lucyや、後にfeaturing Nino名義でスマッシュヒットを出すRound Table、また、後に俳優として活躍する金剛地武志が所属していたyes,mama ok?あたりと並んでネオ渋谷系的な扱いで、その中でも特に注目を集めたバンドのひとつでした。

しかしCymbalsは2004年に解散。そして同年に彼女は、父親であるサックス奏者の土岐英史との共同プロデュースによるソロアルバム「STANDARDS〜土岐麻子ジャズを歌う〜」でデビュー。それから20年。ソロデビュー20周年としてリリースされたオールタイムベストが本作です。上にも書いた通り、Cymbalsとして活動していた頃から知っている身としては、もう、あれから20年か、自分も歳をとったな・・・としみじみと感じてしまいます(ということは先日の宇多田ヒカルのベスト盤でも感じたのですが・・・)。

今回、2枚組となっているベストアルバムですが、それぞれDisc1は「Pepperサイド」、Disc2は「Mintサイド」となっているそうです。Disc1は比較的アップテンポな曲が、Disc2はミディアムテンポでメロウに聴かせる曲が並んでいます。基本的に爽快なポップソングがメインながらも、その中に様々な音楽性を加えているのが彼女の特徴。エレクトロサウンドで軽快な「トーキョー・ドライブ」、ラップも入った「Ice Cream Talk」、ボッサの要素の入った「mellow yellow」、ジャジーな「都会」などなど。今回のベストアルバムでも様々なゲスト陣が参加した曲が並んでいるのですが、そのようなゲスト陣の音楽性も反映させつつ、彼女自身も幅広い音楽的な素養を感じさせるベスト盤となっています。

そんな彼女の音楽を一言で言うならば、まさに「シティポップ」の一言が最適でしょう。最近ではすっかりそのジャンルが定着し、ともすれば海外でも評価の高いこのシティポップという分野。ジャズやAORの要素の強い大人のポップスというイメージで、例えば山下達郎や角松敏生などがその代表格的なミュージシャンとみなされています。純粋に音楽性の問題で言えば、ジャズやAORの要素は彼女の楽曲にも色濃く見られるのですが、前述のミュージシャンたちの音楽と土岐麻子の楽曲はちょっと異なるかもしれません。ただ、「シティポップ」を都会の「街の」音楽と定義づけた時に、まさに彼女の音楽はピッタリマッチ。「トーキョー・ドライブ」「BOYフロム世田谷」など、まさに東京の「街」をテーマとした歌詞の曲も目立ちますし、クールでスタイリッシュ、どこか冷めたような雰囲気もある作風もまた、都会的なイメージにピッタリ。彼女の楽曲こそ、まさに「シティポップ」というイメージにピッタリ来る楽曲と言えるでしょう。

ただソロデビューから20年、Cymbalsの時代から25年以上活動を続けていますが、正直なところ、彼女自身、Cymbals自体を含めて大きなヒット曲を持っていません。あえて言えば、本作にも収録されている「Gift~あなたはマドンナ~」が資生堂のCMソングに起用され、スマッシュヒットを記録した程度。アルバムはチャートで20位から30位程度を記録し、一定以上の人気は確保しているのですが、残念ながら大ブレイクには至っていません。

確かに過去のベスト盤の感想でも書いたのですが、彼女の楽曲は残念ながらインパクトという面では若干物足りなさを感じる側面もある点は否定できません。それでも20年以上の期間にわたり第一線で彼女が活動を続けているというのは、やはり清涼感あふれるキュートな彼女のボーカルも大きな魅力。さらに、やはり都会的なスタイリッシュな作風もまた、彼女のボーカルに非常にマッチしているという点も大きいのではないでしょうか。あらためてオールタイムベストを聴いて、土岐麻子というミュージシャンの魅力を強く感じました。

彼女はCMソングもいろいろと歌っていたり、他のミュージシャンの曲にゲスト参加しているケースも多いので、彼女の歌は知らなくても、その歌声は聴いたことある、という方も多いかも。2枚組でちょっとボリューミーではあるものの、土岐麻子の最初のアルバムとしては最適なベスト盤。個人的にはオールタイムベストならば、Cymbals時代の曲も入れてほしかったかも、という気もしないでもなかったのですが・・・それを差し引いても、彼女の魅力を存分に味わえるお勧めのベスト盤でした。

評価:★★★★★

土岐麻子 過去のアルバム
TALKIN'
Summerin'
TOUCH
VOICE~WORKS BEST~
乱反射ガール
BEST! 2004-2011
CASSETTEFUL DAYS~Japanese Pops Covers~
HEARTBREAKIN'
STANDARDS in a sentimental mood ~土岐麻子ジャズを歌う~
Bittersweet
PINK
HIGHLIGHT-The Very Best of Toki Asako-
SAFARI
TOKI CHIC REMIX
PASSION BLUE
HOME TOWN~Cover Songs~
Twilight


ほかに聴いたアルバム

The Best of Tohoku Youth Orchestra 2013~2023/東北ユースオーケストラと坂本龍一

2013年に宮城県松島町で行われた音楽祭「Lucerne Festival ARK NOVA 松島 2013」をきっかけに企画・編成されたオーケストラ、東北ユースオーケストラ。地元の小・中・高・大学生を中心に結成され、かの坂本龍一が代表・音楽監督をつとめたことでも知られています。本作は、同オーケストラの初となる作品集。ピアノは坂本龍一の演奏によるものであることに加えて、彼の代表作「Behind The Mask」「The Last Emperor」を演奏しているほか、坂本龍一が楽団のために書き下ろした「いま時間が傾いて」も収録されています。

基本的に本格的な交響楽は収録されていないので、イージーリスニング的な要素が強いのですが、その分、交響楽になじみがなくても楽しむことが出来る作品。吉永小百合やのんによる朗読作品も収録されているのですが、こちらも秀逸。坂本龍一によるピアノはもちろん、楽団による演奏も素晴らしく、坂本龍一に対する思い入れ等を抜きにしても素直に楽しめるアルバムでした。もちろん、坂本龍一の最期の1枚としても聴くべき作品なのは間違いないでしょう。

評価:★★★★

坂本龍一 過去の作品
out of noise
UTAU(大貫妙子&坂本龍一)
flumina(fennesz+sakamoto)
playing the piano usa 2010/korea 2011-ustream viewers selection-
THREE
Playing The Orchestra 2013
Year Book 2005-2014
The Best of 'Playing the Orchestra 2014'
Year Book 1971-1979
async
Year Book 1980-1984

ASYNC-REMODELS
Year Book 1985-1989
「天命の城」オリジナル・サウンドトラック
BTTB-20th Anniversary Edition-
BLACK MIRROR : SMITHEREENS ORIGINAL SOUND TRACK
Ryuichi Sakamoto: Playing the Piano 12122020
12
サウンドトラック「怪物」
TRAVESIA RYUICHI SAKAMOTO CURATED BY INARRITU

NAKED~TOUR 2023~/家入レオ

昨年リリースしたアルバム「Naked」を引き下げる形でのライブツアー「家入レオTOUR 2023~NAKED~」から、昨年11月11日にKT Zepp Yokohamaで行われた公演の模様を収めてライブアルバム。もともと、家入レオの楽曲自体、90年代のガールズポップを彷彿とさせる部分があって、個人的にはちょっと壺な部分もあるのですが、ライブに関しても、いかにも昔ながらのJ-POPのノリをそのまま体現したような盛り上げ方で、ある種の懐かしさすら感じられました。意外と楽しそうな雰囲気を感じられるライブ盤。一度見に行ってみてもいいかも・・・。

評価:★★★★

家入レオ 過去の作品
LEO
a boy
20
WE
5th Anniversary Best
TIME
DUO
Answer
10th Anniversary Best
Naked

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2024年6月 3日 (月)

デビュー25周年の初のオールタイムベスト

Title:SCIENCE FICTION
Musician:宇多田ヒカル

彼女のデビュー25周年を記念してリリースされた、宇多田ヒカル初となるオールタイムベスト。いままでシングルコレクションや本人が直接関与していないUtada名義でのベスト盤のリリースはありましたが、純然たるオールタイムベストとしては本作が初となります。ただ、宇多田ヒカルのあの「Automatic」がリリースされ、衝撃が走ってからもう25年も経つのか・・・というのは、時の流れの速さをつくづくと感じてしまいます。

そんな彼女の代表曲を収録したベスト盤ですが、その多くが「2022 Mix」「2024 Mix」としてリミックスがほどこされているほか、「Addicted To You」「traveling」「光」ではRe-Recordingとして今回は新録バージョンが収録されています。「Addicted To You」はサウンドがよりタイトとなり、「travling」ではエレクトロサウンドの音が今風にアップデート。原曲とはかなり違った雰囲気になっている点に、単なるベスト盤にはとどまらせない彼女のこだわりを感じます。

ただ一方、今回、「Automatic」「First Love」のようなデビュー間もない時期の作品をあらためて聴いたのですが、今から聴いてみても、その完成度の高さに驚かされます。「First Love」なんで、あのムード感たっぷりの雰囲気、まさか10代の女の子がつくって歌っていたなんて、今聴いても信じられません。

しかし、彼女がすさまじいのは既にデビュー当初において楽曲を完成させていたにも関わらず、その後、25年かけて今なお進化を続けているという点でしょう。デビュー当初のスタイルに留まることなく、しっかりと今どきのポップスに楽曲をアップデートしています。今回、新曲「Electricity」を収録しているのですが、打ち込みベースのサウンドを含め、楽曲としてしっかり今の時代のトップを走るような作風となっており、現役感を感じられるどころか、25年目のベテランにして、全く若手に負けていないトップランナーとしての姿を感じさせます。

また、デビュー当初は、「本場アメリカのR&Bばりの楽曲を聴かせてくれる『本物』」のような売り文句でしたり、確かにデビュー当初の作品は洋楽に引け劣らない本格的なR&Bの作風が魅力的でしたが、今から聴くと、彼女は決して「本場のR&B」なんていう枠組みにはおさまらず、ポピュラーミュージックとして非常に優れたメロディー、そしてウィットに富んだ優れた歌詞を書く、最高級のポップスミュージシャンとしての実力を持っていることを再認識させられます。特にメロディーラインに関しては、いまさらながら、本格的なR&Bという以上に、日本人の琴線に触れるようなムーディーなメロディーも多く、むしろいい意味で非常に日本人的な部分を感じさせます。

また歌詞にしても

「別に会う必要なんて無い
しなきゃいけないこと沢山あるし
毎日話す必要なんて無い
電話代かさんで迷惑してるんだ」
(「Addiccted To You」より 作詞 宇多田ヒカル)

なんていうラブソングらしからぬ歌詞からスタートしたり、

「初めてのルーブルは
なんてことなかったわ
私だけのモナリザ
もうとっくに出会ってたから」
(「One Last Kiss」より 作詞 宇多田ヒカル)

みたいな、かなりインパクトあるフレーズが登場してきたり、ウィットに富みつつ、どこかユーモアセンスも感じさせる歌詞が実に魅力的。サウンドの面でもメロディーの面でも歌詞の面でも、その実力を存分に感じることが出来ます。日本の女性シンガーソングライターと言えば、松任谷由実や中島みゆきがシーンのトップとして人気、実力ともに君臨していますが、既に宇多田ヒカルはそんなレジェンドたちと比べて、勝るとも劣らないレベルに既に到達しているように感じます。

いまさらながら彼女を聴いてみたいと思っている方はもちろん、新しいミックスや再録があるだけに、彼女のアルバムをすべて聴いているような方もお勧めしたい作品です。宇多田ヒカルの魅力を存分に感じさせるベスト盤でした。

評価:★★★★★

宇多田ヒカル 過去の作品
HEAT STATION
This Is The One(Utada)
Utada Hikaru SINGLE COLLECTION VOL.2
Fantome
初恋
One Last Kiss
BADモード
Hikaru Utada Live Sessions from Air Studios


ほかに聴いたアルバム

UNLOCK!/Little Glee Monster

彼女たち7枚目となるオリジナルアルバム。随所にソウル志向的な要素は感じつつも、基本的には爽やかなJ-POP路線を聴かせる彼女たち。ファン層的にやはり本格志向は難しいのでしょうか。ただ、徐々に大人に成長していこうとする長期的なスタンスを楽曲の合間からのぞかせたりして、今後に注目したいところ。通常版は2枚組で、Disc2はいままでの彼女たちの代表曲を、今のメンバーで歌いなおしたバージョンが収録。新メンバーとしての体制がしっかり固まりつつあるということでしょうか。こちらの側面からもこれからの活躍に期待したいところです。

評価:★★★★

Little Glee Monster 過去の作品
Joyful Monster
juice
FLAVA
I Feel The Light
BRIGHT NEW WORLD
GRADTI∞N
Journey
Fanfare

ETERNAL/清春

TBS系バラエティー「水曜日のダウンタウン」で、「清春の新曲 歌詞を書き起こせるまで脱出できない生活」なる企画がオンエアされ、話題となりました。私自身はこの番組は見ていないのですが、ここで久しぶりに清春の名前を聞き、そういえばどうしているんだろうなぁ、と調べたところ、ニューアルバムのリリースを知った次第で・・・ま、この番組自体、このアルバムの宣伝を兼ねていたのでしょうが・・・約4年ぶりとなる新作なのですが、個人的に黒夢やSADSのアルバムは聴いてきたのですが、清春名義の作品を聴くのはこれがはじめて。基本的にロックバンドの黒夢、SADSと比べると、こちらは清春の趣味性、というか耽美的な部分がこれでもかというほど出ている曲が並び、哀愁たっぷりのメロディーラインを、あの独特な節回しで歌い上げる曲が並びます。特にラテンの要素が強かったのが印象的かつちょっと意外な印象も。癖が強いだけに好き嫌いはわかれそうですが、あの清春のキャラクター的な部分が好きなら間違いなく気に入りそうな1枚です。

評価:★★★★

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2024年6月 2日 (日)

絶妙なバランスの3ピースバンド

Title:If I don't make it,I love u
Musician:Still house Plants

Stillhouseplants

イギリスはグラスゴーの3人組ロックバンドによる3枚目のアルバム。音を聴くのもはじめてなら、バンド名を聞くのも本作がはじめて。現時点においてバンドの英語版のWikiページもないほど、まだまだ知る人ぞ知る的なバンドのようですが、この3作目は各種メディアで高い評価を受けているようで、一気に注目を集めるバンドとなっているようです。

確かに聴いていて非常におもしろいバンドであることは間違いありません。ジャンル的には「アヴァン・ロック」という紹介のされ方をされているサイトもありました。アヴァン・ロックというジャンルもいまひとつ耳慣れないジャンルではあるのですが、日本ではエクスペリメンタル・ロックという呼び方もするようで、Wikipediaでは「一般的な作曲と演奏のテクニックの限界を押し広げたり、ジャンルの基本的な要素を元に実験を行ったりするものである。」という紹介のされ方をしていました。

楽曲の特徴として、まず耳を惹くのがそのボーカル。女性ボーカルなのですが、ちょっとドスを利かせたような力強い声を聴かせたかと思えば、非常に伸びのある歌声でメロウに歌い上げる歌も。そのボーカルはソウルの要素を感じさせる一方、どこか冷めたような、淡々としたようなボーカルを聴かせる部分もあり、この、熱量があるように感じさせつつも、一方ではどこか突き放したようなクールな雰囲気も同時に秘めたような独特なボーカルが魅力的に感じます。

そして、さらに魅力的だったのが、このボーカルと共に耳に飛び込んでくるバンドサウンドでしょう。ベースレスのサウンドなのですが、プログレッシブ・ロックの影響を強く感じさせるかなり複雑に構成されたギターやドラムの音が強く印象に残ります。変拍子を取り入れた複雑なドラムのリズムに、独特のフレーズを奏でるギターの音色が魅力的。決してポップではないのですが、その複雑なサウンドが間違いなく強く耳に残ります。

このバンドサウンドで面白いのが、ループするサウンドにミニマル的な要素を強く感じた点でした。「Silver grit passes thru my teeth」「Headlight」あたりが特徴的なのですが、ボーカルも含めて楽曲がループする構成となっており、ミニマル的なサウンドが独自のグルーヴ感を醸し出しています。このテンポよいループ感はある意味、ポストロック的であり、かつてのプログレッシブ・ロックとは一線を画する独自性のように感じます。

また、もうひとつユニークなのが、このギターとドラムス、そしてボーカルがそれぞれ主張し合って、微妙にかみ合うようなかみ合わないような、絶妙なバランスを保っている点でした。ギターのフレーズは微妙にボーカルの歌とはリンクしていませんし、複雑な変拍子のリズムはまたギターやボーカルとは別の主張を繰り広げています。ただ、それにも関わらず結果として曲としてはちゃんと成立しており、この微妙なバランスゆえの緊張感もまた、大きな魅力となっています。

正直、決してポップなメロディーを楽しめるようなバンドではないですし、万人向けといった感じではないかもしれません。ただ、独自性のあるサウンドはいい意味で癖があって、強く惹かれるバンドであることは間違いないと思います。プログレッシブ・ロックやポストロックが好きなら間違いなくはまりそうなバンド。このアルバムで一気に注目を集めたので今後の活躍にも期待できそうです。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

A LA SALA/Khruangbin

アメリカ・テキサス出身のスリーピースバンド。前作「MORDECHAI」は「タイ式ファンクグループ」と紹介されるなど、エキゾチックな作風で独特なグルーヴ感が非常に魅力的な作品でした。今回も期待して聴いたのですが・・・今回のアルバムも前作同様にメランコリックな作風ではあったものの、エキゾチックな要素はほとんどなく、独特なグルーヴ感もゼロ。単なるメランコリックでムーディーな楽曲を聴かせるバンドといった感じになってしまって、一気に平凡になってしまった感が・・・。前作がかなり良かっただけに落差が激しいのですが、どうしちゃったんでしょうか?非常に残念です。

評価:★★★

Khruangbin 過去の作品
MORDECHAI

THE TORTURED POETS DEPARTMENT:THE ANTHOLOGY/Taylor Swift

日本でも高い人気を誇り、おそらく現在、世界で一番人気のある女性シンガーといえるテイラー・スウィフトの新作。「THE TORTURED POETS DEPARTMENT」リリース日に、同作に15曲が追加された「完全版」が突然リリース。当初のバージョンでアルバムを予約して購入したファンからは批判が起こるなど、その売り方には若干の物議も醸し出しています。ここ最近、インディー系のミュージシャンと組んで、インディーポップ寄りの作品をリリースしてきた彼女でしたが、今回のアルバムは、比較的初期の彼女を彷彿とさせるような正統派のアメリカンポップといった印象のポップチューンが並びます。1曲1曲は天性のメロディーセンスを感じさせるポップなナンバーが並んでいます。ただ、比較的似たようなタイプの曲が多く、さすがに31曲2時間強のフルボリュームのアルバムになると、徐々に聴いていて飽きが来てしまいました・・・。1時間程度の内容ならば傑作だったと思うのですが、ちょっとトゥーマッチだったかなぁ。過ぎたるは及ばざるがごとしといった感じかも。

評価:★★★★

TAYLOR SWIFT 過去の作品
FEARLESS
RED
1989
REPUTATION
Lover
folklore
evermore
Fearless (Taylor's Version)
RED(Taylor's Version)
Midnights
Speak Now(Taylor's Version)
1989(Taylor's Version)

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2024年6月 1日 (土)

おそらく今年1番の問題作

Title:VULTURES 1
Musician:¥$

Vultures1

おそらく、今、世界において最大のお騒がせミュージシャン、イェことカニエ・ウェスト。一時期は、アメリカを代表するセレブとして脚光を浴びる立場だったものの、2022年あたりから、反ユダヤ的な発言や白人至上主義的な発言を繰り返し行うようになり非常に問題視され、また、アメリカの保守系にすり寄るような立場も目立つようになりました。そんな中、長年、彼とコラボを行ってきたアディダスが契約を打ち切り大きな話題と呼び、その後も所属事務所やレコード会社との契約も切られるなど、事実上、その差別的な言動により、シーンから追い出されるような形となりました。

そんな中、リリースされたのが今回のアルバム。カニエ・ウェストと同じくラッパーのタイ・ダラー・サインが組んだユニット¥$名義でのアルバムとなっていますが、事実上、カニエのニューアルバムとして注目されています。リリース形態も完全インディペンデント。大手レコード会社や事務所を通すことなくリリースされた作品なのですが、様々なメディアが本作をどう取り扱ってよいか、かなり迷っているようにも感じました。

というのも、純粋に本作を(歌詞の内容を考えずに)聴くと、ヒットメイカーとしてアメリカのシーンに君臨した、カニエ・ウェストの実力を感じることが出来る作品となっているからです。正直、サウンド的には目新しさは感じられません。そういう意味で、過去のカニエの作品の中で上位に入るかどうかは微妙な部分があります。しかし、荘厳さを感じつつ、メランコリックでほどよくリズミカルなトラック、軽快で、メロディアスさを感じさせるラップに、ほどよいタイミングで入ってくる歌。全16曲1時間弱の内容。HIP HOPの熱心なリスナーではない私でも、聴き込んでしまう魅力は間違いなく感じられます。

ただし、前述のカニエをめぐる言動の酷さもさることながら、今回のアルバムに関しても、そのような言動を反省するでもなく、むしろ煽り立てる部分もある内容もあり、正直なところ、カニエの昨今の言動と本作を切り離すことはかなり困難ではないか、と思われます。

特に酷いリリックとしては「PROBLEMATIC」の中に"I'm not racist.It's a preference"(自分は差別主義者ではない。単なる好みの問題だ)と、ある意味、差別する人にとってはお決まりのような言い草も登場します。他にも、反ユダヤ的な言説を肯定するかのようなリリックなども登場してくるようです。幸か不幸か、英語話者ではない私たちにとっては、このアルバムのリリックをそのまま理解することは困難です。「登場してくるようです」というのは、このアルバムに関するレビュー記事などを読んで知った部分が多いから。そういう意味では、歌詞の内容を知らずに聴ける私たち日本人にとっては、彼の言動関係なく素直に楽しめるアルバムと言えるのかもしれませんが・・・ただ、やはり彼の過去の言動や、このアルバムのリリックから考えると、このアルバムの評価はかなり微妙なものと言わざるを得ません。

ただ、このような言説や完全インディペンデントという発売形態にも関わらず、結果として本作はビルボードチャートで1位を獲得するなど、その根強い人気を感じさせる結果となっています。残念ながら、彼の言説に賛同的な考えを示す人もいるのでしょう。また、私自身、結果としてストリーミングで聴いている以上、売上に少なからず貢献してしまっていることは否めませんが・・・。

評価:★★

KANYE WEST 過去の作品
GRADUATION
808s&Heartbreak
MY BEAUTIFUL DARK TWISTED FANTASY
YEEZUS
The Life Of Pablo
Ye
Jesus Is King
Donda


ほかに聴いたアルバム

Papercuts:Singles Collection(2000-2023)/Linkin Park

本国アメリカはもちろん、日本でも高い評価を誇るロックバンド、リンキン・パーク。2017年にボーカルのチェスター・ベニントンが自殺という衝撃的なニュースが飛び込んできました。ただ、2025年には新ボーカルを加えての再結成というニュースも入ってきており、チェスターの死を乗り越えて、新たな一歩を踏み出そうとする彼ら。そんな彼らのいままでの活動を総括するようにリリースされたのが、この初となるシングルベストとなります。最後に収録されている「Friendly Fire」は亡きチェスターがボーカルを取る未発表曲となっており、まさに感涙モノの作品となっています。

そんなこのシングルベスト。あらためて彼らの曲を聴いたのですが、メランコリックなメロディーラインとダイナミックなバンドサウンドは、良くも悪くもベタ。ただ、このわかりやすさが、彼らの人気の元であり、そして大きな魅力のようにも感じました。ちょっとウェット感もあるメロディーラインは日本人の好みにもピッタリマッチしそうで、この点も日本でも大きな人気のある理由かもしれません。今後、おそらく新ボーカルを迎えて活動を再開するであろう彼ら。亡きチェスターのためにも、今後踏み出す新たな一歩に期待したいところでしょう。

評価:★★★★

LINKIN PARK 過去の作品
A THOUSAND SUNS
LIVING THINGS
The Hunting Party
One More Light

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