ジャズに捕らわれない音楽性が魅力的
Tilte:Speak To Me
Musician:Julian Lage
今回紹介するのは、ジャズの名門、Blue Noteレーベルから作品をCDをリリースしているジャズギタリスト、Julian Lageのニューアルバム。過去、3回のグラミー賞ノミネート経験も持つ注目のジャズギタリストで、一部では現代最高峰のジャズギタリストなどという呼び声もあるとか。間違いなく、現在、もっとも注目を集めているギタリストの一人と言えるでしょう。
そんな注目のギタリストのソロ名義アルバムを今回はじめて聴いたのですが、非常に面白かったのは、ジャズギタリストという肩書きに捕らわれない、実に幅広い音楽性でギターを表現しているという点でした。アルバム冒頭の「Hymnal」で、郷愁感あるギターの調べをまずは聴かせてくれますが、ジャズというよりもトラッドのイメージの強い演奏にしんみり聴き入ります。続く「Northern Shuffle」はいきなりノイジーなギターのストロークからスタートし、ジャズというよりもむしろロックギタリストなのでは?という演奏を聴かせてくれます。「Omission」もメロディアスなギターインストで、あまりジャズテイストの強くないポップなインスト曲に仕上げています。
個人的におもしろさを感じたのは中盤の「Myself Around You」で、どこかミニマル的な要素を感じさせるリズムがユニーク。続く「South Mountain」も後半に、いきなりフリーキーなサウンドが飛び込んでくるなど、中盤は実験的な作風の曲が並びます。この中盤までは、あまりジャズ的な要素を強く感じない構成になっており、Julian Lageの幅広い音楽性と挑戦心を感じさせる構成になっていました。
後半のタイトル曲「Speak To Me」は、ノイジーで、ともすればガレージ色すら感じさせるギターの音色はロック調でありつつも、サックスの音色でジャズの要素も感じさせる楽曲に。ここからは比較的、ムーディーな雰囲気を楽曲から感じさせる、ジャズの方向性にシフトした作品が並びます。ただ、ラスト前「76」もかき鳴らされるギターの音色はロッキンで、さらにフリーキーなピアノの音も。最後の最後まで、ひとつの音楽性に捕らわれないような楽曲が魅力的なアルバムになっていました。
正直、「現代最高峰」なのかどかはわかりませんが、ジャズにとらわれず様々なジャンルを行き来しながら、表現力あるギターをしっかり聴かせるそのスタイルは非常に魅力的。ジャズというイメージはあまり強くないため、むしろロックやポップリスナーでも楽しめる作品になっていました。幅広いリスナーの方にお勧めしたい傑作です。
評価:★★★★★
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