名前がとにかくインパクト有!
Title:離婚伝説
Musician:離婚伝説
今回も、最近、注目されている若手ミュージシャンのアルバムの紹介。離婚伝説。本作がデビュー作となるボーカルの松田歩と、ギターの別府純の2人組によるユニット。まずその名前に、あまりにも大きなインパクトがあります。離婚伝説、おそらくこの奇妙な名前、一度聴いたら忘れられないのではないでしょうか。とにかく、音楽よりも先に、そのミュージシャン名が一度聞いたら忘れられない、そんなインパクトの強さがあります。
さらにこの名前にはもうひとつ大きな意味もあります。おそらく、ある程度ソウルミュージックを好んで聴く人ならば、この名前の元ネタはご存じでしょう。この「離婚伝説」という奇妙な名前は、ソウルミュージックの巨匠、マーヴィン・ゲイが1978年にリリースしたアルバム「Here My Dear」の邦題がこの「離婚伝説」。もともと、元妻への慰謝料の支払いのためにこのアルバムを作ったという逸話を持つ作品で、そのため「離婚伝説」という邦題がつけられています。
そのため、ソウルミュージックが好きな方にとっては、「離婚伝説」というと、まずマーヴィン・ゲイのアルバムを思い出すことは間違いありません。だからこそ、この名前を自らのユニットと名前として用いた点で、特にソウルミュージックのリスナーにとっては、自然にマーヴィン・ゲイと比較してしまうでしょう。それだけに、あえてこの離婚伝説という名前を自らの名前として用いるだけで大きな覚悟を感じます。
ただ、本作を聴くと、彼ら自身、かなり自覚的に、自らを売り込むためにこの名前を用いているような印象を受けました。というのも、アルバムを聴いて感じるのは、特に最近話題となっているシティポップ的な要素をわかりやすい形で意識的に取りこみ、楽曲自体も「売れること」を意識したような作風を感じたからです。
実際、このアルバムの1曲目を飾るのも「愛が一層メロウ」という、タイトルからしてかなりわかりやすいメロウなフィリーポップのナンバー。ほどよくファンキーなリズム感に、ファルセットボーカルも上手く用いたポップなメロディーラインがインパクトがありつつ、わかりやすく、ヒットポテンシャルも感じさせる作品。2曲目の先行シングル「あらわれないで」もハイトーンボイスをメロウに聴かせつつ、メランコリックでポップなメロが印象に残る、インパクトのある楽曲となっているなど、かなり売れることにも自覚的な、ヒットポテンシャルのある楽曲が目立ちます。
ただ、この売れることに自覚的な方向性が、楽曲によっては少々ベタすぎるような印象も受けてしまいました。例えば「萌」などは、ミディアムチューンでしんみり聴かせるバラードナンバーですが、いかにも90年代のJ-POP的なメロディーとアレンジは懐かしさも感じる一方、悪い意味でのベタさも感じます。また、基本的にファルセット気味のボーカルでメロウに聴かせるポップな楽曲という方向性の一本やりな部分もあり、最初は心地よく聴いていたものの、アルバムを最後まで聴くと、ちょっと飽きてきてしまったというのも正直な印象となってしまいます。
アルバムとして決して悪くはありません。楽曲もよく出来ているのも間違いないでしょう。ただ、一方でこの似たような方向性を考えるのなら、メロウなソウルミュージックの方向性で例えばキリンジや、よりポップや売れ線路線で言えばKing Gnuなどに比べるとまだ一歩二歩、物足りなさもあったかな、という感じがします。まだまだこれからのミュージシャンといった感じでしょうか。ただ、いいものを持っていることは感じるミュージシャンなだけに、今後の成長に期待したいところです。
評価:★★★★
ほかに聴いたアルバム
「今、何処」東京国際フォーラム 2023 (LIVE)/佐野元春&THE COYOTE BAND
2022年7月にリリースされたアルバム「今、何処」リリースに続いて行われた全国ツアー「今、何処TOUR2023」より、昨年9月3日に行われた東京国際フォーラムでのライブの模様を収録したライブ盤。Disc1は、そのアルバム「今、何処」が曲順もそのままにライブで再現。Disc2は、その直前にリリースされたアルバム「ENTERTAINMENT!」からの曲と過去の代表曲。2022年にリリースされた2枚のアルバムがどちらも傑作だっただけに、ライブも、今なお現役感あふれ若々しい、佐野元春のステージを堪能できる内容。特にDisc2の後半、「約束の橋」以降、代表曲が続くクライマックスとなっており、ライブCDを聴いていても、こちらのテンションも一気にあがります。佐野元春も、一度、ワンマンライブに行きたいなぁ。
評価:★★★★★
佐野元春 過去の作品
ベリー・ベスト・オブ・佐野元春 ソウルボーイへの伝言
月と専制君主
ZOOEY
BLOOD MOON
MANIJU
自由の岸辺(佐野元春&THE HOBO KING BAND)
或る秋の日
MOTOHARU SANO GREATEST SONGS COLLECTION 1980-2004
THE ESSENTIAL TRACKS MOTOHARU SANO & THE COYOTE BAND 2005 - 2020(佐野元春&THE COYOTE BAND)
ENTERTAINMENT!(佐野元春&THE COYOTE BAND)
今、何処(佐野元春&THE COYOTE BAND)
2022 LIVE AT SENDAI,FUKUOKA,OSAKA(佐野元春&THE COYOTE BAND)
ALL SEASONS BEST/コブクロ
結成25周年企画として、2023年に配信リリースした「四季」をテーマとしたコンピレーションアルバム「Seasons Selection」。本作は、そこでリリースされた4組の作品をひとまとめとしたアルバム。全4枚組というフルボリュームの作品で、コブクロというと良くも悪くもJ-POPのミュージシャンで、少々くどさを感じる部分もあったため、全4枚組というボリュームを聴くのは辛いかな・・・と思っていたのですが、実際に聴き始めると、耳なじんだヒット曲の連続で、フックも効いたポップなメロも心地よく、熱心なファンではない私も、一気に聴いて楽しめるアルバムになっていました。例のメンバーの浮気問題から、最近は人気も失速気味の彼らですが、なんだかんだいってもヒットポテンシャルのある魅力的なポップスを書くバンドなんだな、と彼らの実力を再認識したアルバムになっていました。あ、ちなみに曰くつきの「永遠にともに」は未収録でした。
評価:★★★★
コブクロ 過去の作品
5296
CALLING
ALL COVERS BEST
ALL SINGLES BEST2
One Song From Two Hearts
TIMELESS WORLD
ALL TIME BEST 1998-2018
Star Made
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