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2024年5月 5日 (日)

ストリーミングはなし!

Title:Dostrotime
Musician:Squarepusher

以前は、Squarepusher名義以外にもバンドShobaleader One名義でもアルバムをリリースしていたりとワーカホリックぶりが目立ったSquarepusher。ただ、ここ最近はちょっとスピード感が落ちたのか、ちょっと久々のリリースとなりました。約4年ぶりとなるSquarepusherのニューアルバム。本作がユニークなのがそのリリース形態で、レコード、CD、そしてダウンロードのみの販売。要するに、スクリーミングでのリリースは一切なし。Spotifyでも、他のアルバムは普通に配信されているのに、このアルバムだけはリリースされていません。

しかし、確かにストリーミングでのリリースを禁止する理由もわかるような作品になっていたと思います。つまり、アルバム全体を通して聴くことを前提とした作品になっていたということ。プレイリストという形でアルバムの一部をつまみ食いされて聴いては、このアルバムの本質がわからない・・・というよりも、誤解されそうなおそれのある作品だったように思います。

具体的に言うと、1曲目「Arkteon 1」は、いきなりギターのアルペジオでしんみり聴かせるフォーキーな作品に。いきなり雰囲気の違う曲調に、どんなアルバムがはじまったんだ!と驚かされるかもしれません。続く「Enbounce」も最初、荘厳な雰囲気からスタートして、1曲から続き、抑えた雰囲気でのスタートとなります。ただ、途中から疾走感あるエレクトロビートがスタート。メランコリックで荘厳なシンセのメロが流れる中、徐々にSquarepusherらしさが発揮されていく展開となっています。

ここまでがある意味、導入部の「準備体操」といった感じ。ここからは、いかにもSquarepusherらしいエレクトロサウンドが続いていきます。続く「Wendorlan」はリズミカルなエレクトロチューン。ちょっと90年代的な雰囲気を感じつつ、先行シングルにもなっているように、Squarepusherの中では比較的耳なじみやすいリズムが展開されており、こちらは「準備体操」が終わり、Squarepusherの入口、「挨拶代わり」の1曲といった感じになるのでしょうか。

そして中盤あたりからSquarepusherの本領発揮といった感じでしょう。「Duneray」はまさに彼らしい複雑怪奇なエレクトロビートが耳に飛び込んでくるドリルンベースなナンバー。「Kronmec」も不穏な雰囲気のエレクトロサウンドが意外とメランコリックでメロディアスなのが耳を惹きます。続く「Arkteon 2」は1曲目と同様、ギターでフォーキーな作品ながらも、メロディアスな1曲目と異なり、メロが微妙に歪んでいるのがユニークなところ。エレクトロチューンの中の箸休め的なインターリュード・・・ですが、微妙に不気味な雰囲気がこのアルバムの展開の中の妙なバランサーとして機能しています。

その後も後半にかけては強烈なエレクトロビートを前に押し出した楽曲が並んでいます。ある意味、Squarepusherらしい曲が並んでいるといった感じで、彼の本領発揮といった感じでしょうか。そんな中でも「Holorform」「Domelash」のような、複雑で強烈なエレクトロビートの中にメランコリックさを感じさせるメロがしっかりと流れているのも彼らしいといった感じ。実験的とも言えるエレクトロビートの中で以外と聴きやすさを感じる要素がここにあったりします。

そしてこの雰囲気がガラッと変わるのが終盤。「Heliobat」はミディアムテンポのエレクトロサウンドでしんみり聴かせるアンビエントチューン。最後に三度あらわれた「Arkteon 3」は、今度は非常にゆっくりとギターをつま弾く楽曲になっており、こちらもアンビエントの要素の強い作品。最後にしっかりとチルアウトして終わる、まさにアルバムを通じてSquarepusherのステージを体感しているような構成になっていました。

ちなみにこれだけアルバムの構成にこだわりながらも、日本盤では最後にボーナストラック「Heliobat (Tokyo Nightfall)」が収録されていますが、こちらも「Arkteon 3」から自然に続くアンビエントのナンバー。違和感なくアルバムは終了しますので、ボーナストラックを含んでしっかりと構成を考えられたアルバムと言えるのでしょう。

アルバム全体で一体として構成された、アルバムらしいアルバムですし、また、ストリーミングでのリリースを行わないという彼の方針も納得が出来る作品。もちろん出来としてもSquarepusherの魅力にあふれた傑作になっていました。ともすればここ最近、視聴形態がストリーミングにシフトし、ともすればアルバムが単なるシングルの寄せ集めのプレイリスト的になりがちな中、アルバムというフォーマットの魅力を再認識させてくれる作品とも言えるでしょう。是非、通して聴きたい作品です。

評価:★★★★★

SQUAREPUSHER 過去の作品
Just a Souvenir
SHOBALEADER ONE-d'DEMONSTRATOR
UFABULUM
Music for Robots(Squarepusher x Z-Machines)
Damogen Furies
Be Up A Hello
Lamental EP


ほかに聴いたアルバム

Everything I Thought It Was/Justin Timberlake

実に約6年ぶりとなるJustin Timberlakeの最新アルバム。楽曲はメランコリックに聴かせる歌モノがメイン。全体的には明るいポップソングが多かった本作の印象。さらにほどよく今どきのHIP HOPのトラックを取り入れたり、ギターサウンドをヘヴィーに聴かせる楽曲もあったりと、バラエティーを感じさせる構成も魅力的。リズミカルな曲が目立つのもアルバムにインパクトを与えています。良い意味で今風の良質なポップソングという方向性は相変わらず。ただ、それだけに素直に楽しめるアルバムになっていました。

評価:★★★★★

JUSTIN TIMBERLAKE 過去の作品
THE 20/20 EXPERIENCE
THE 20/20 EXPERIENCE-2 of 2
MAN OF THE WOODS

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