日本ロック至上に燦然と輝く伝説のロックバンド
本日紹介するのは、日本のポピュラーミュージック史に燦然とその名を遺すロックバンド、はっぴいえんどの作品。活動期間は事実上、1969年から1972年のわずか3年。アルバムもオリジナルアルバムわずか3枚と、非常に短い活動期間にも関わらず、日本語ロックの創始者として、後の世代にも大きな影響を与え、さらには4人のメンバーがいずれも、その後の日本のポピュラーミュージック史に高い功績を残しているという、伝説のバンド。そのバンドの3枚のアルバムが2023年リマスター版として再リリース。さらに各アルバムに未発表の音源がボーナストラックとして収録されている点も大きな話題となっています。
Title:はっぴいえんど
Musician:はっぴいえんど
そのジャケット写真から「ゆでめん」の愛称でも知られる、1970年にリリースした彼らのデビューアルバム。ボーナストラックとして「かくれんぼ」の「歌入れ最終ダビングTake1」と、「12月の雨の日」の「最終ダビングTake2」が収録されています。
Title:風街ろまん
Musician:はっぴいえんど
メンバー4人の顔写真というアートワークも特徴的な1971年にリリースされた2枚目。はっぴいえんどの曲の中で、おそらく一番著名な「風をあつめて」が収録されていることもあってか、はっぴいえんどの代表作として紹介されることが一番多いように思います。ボーナストラックとして「はいからはくち」の「完パケTake1」と「颱風」のFull Sizeバージョンが収録。「颱風」のフルサイズでは、アルバム収録版よりも3分も長いバージョンとなっています。
Title:HAPPY END
Musician:はっぴいえんど
そして、はっぴいえんど解散後の1973年にリリースされた、彼らの3枚目にしてラストとなるオリジナルアルバム。こちらはボーナストラックとして「風来坊」と「田舎道」の吉野金次MIXが収録されています。3枚のうち、他2枚は、以前にも聴いたことがあったのですが、このアルバムは今回のリマスターではじめてアルバムを聴きました。
はっぴいえんどと言えば、日本語でロックを演奏した嚆矢的なバンドとして取り上げられることの多いバンドです。ただ一方で、彼らの代表曲として知られる「風をあつめて」はフォーク的な色合いの強い曲ですし、フォークソング的な色合いも強いバンドというイメージも抱いていました。
ただ今回、あらためてこの3枚のアルバムを通して聴くと、やはりフォークという文脈で語られるバンドというよりも、彼らは列記としたロックバンドであるこということをあらためて実感しました。特にそこで奏でられるバンドサウンドは、明確に洋楽のロック、彼らが明確に影響を受けていたバッファロー・スプリングフィールドやその界隈のカントリーロックからの影響が顕著。洋楽からの影響はかなり強いのですが、今聴いても、この時代にこれだけ完成度の高いロックを奏でていたことに、あらためて、その実力の高さを感じさせます。
それと同時にあらためて感じたのが、彼らがかなり自覚的に日本のロックということを意識した曲作りをしていたという点でした。歌詞はあくまでも日本語に拘っているのみならず、かなり「和」をあえて意識したかのような言葉選びを行っていることに気が付かされます。日本のロックであるということの強い意識を彼らが持っていたことを、3枚のアルバムを通して聴くとあらためて感じられます。
当時は、「日本語ロック論争」が巻き起こるなど、一部では日本語でロックを奏でること自体に対する否定的な考え方も根強かったそうです。そんな中、あえて日本語でロックを奏でた彼らですが、ただ、日本のロックを意識している一方で、楽曲自体は実に自然体に日本語を取り入れており、バックに流れる洋楽的なサウンドからは違和感がありません。今の耳で聴くと、彼らの奏でる日本語ロックは別に不思議でも何でもないのですが、おそらく当時の感覚からすると、これだけ自然体に日本語でロックを奏でるというのは驚きだったのではないでしょうか。
ともすれば、いまから50年以上前のアルバムであるものの、今の耳から聴いても十分に魅力的に感じられる名盤3枚。あらためてはっぴいえんどというバンドの実力の高さを感じさせます。日本のロックの歴史のお勉強・・・という観点ではなく、素直にロックのアルバムの傑作として、今の世代でも十分すぎるほどお勧めできる作品でした。
評価:いずれも★★★★★
| 固定リンク
「アルバムレビュー(邦楽)2024年」カテゴリの記事
- 「アニソン」の歴史も感じる、充実の12枚組ボックスセット(2024.12.29)
- 沖縄独自の結婚式文化を楽しめるコンピレーション(2024.12.28)
- 「ライブアルバム」というよりは・・・(2024.12.23)
- ロック志向、ルーツ志向の強い35年目のアルバム(2024.12.20)
- オリジナルとは全く異なる魅力を感じる傑作(2024.12.17)
コメント