あの名盤を、ボリューミーな内容で
Title:Piano Man 50th Anniversary Deluxe Edition
Musician:Billy Joel
今年、実に約16年ぶりとなる来日公演を行い、大きな話題となったBilly Joel。その彼の出世作となったのが1973年にリリースされたアルバム「Piano Man」。そのアルバムリリースから2023年は50年目となる節目の年になるのですが、50周年を記念して記念盤がリリースされました。
Billy Joelの代表作となってもよいアルバムであり、かつ、ポップス史に残る名盤ともされることの多い同作。ただ、今回の50周年記念盤は日本独自企画だそうで、それだけ日本での人気の高さをうかがわせます。Disc1はSACDマルチ・ハイブリッド盤で収録。Disc2には初CD化作品を含む、貴重なデモ音源やライブ音源を収録。さらにはDVDもついてきており、こちらにはこれまた初DVD化となるような貴重なMVやライブ映像が収録されています。
なんとなくイメージ的にBilly Joelというと本作の表題曲である「Piano Man」でいきなりブレイクし、その直後の作品ということで、本作がデビューアルバム・・・というイメージもあるのですが、本作の2年前にはアルバム「コールド・スプリング・ハーバー〜ピアノの詩人」をリリースしており、こちらがソロデビュー作。さらにその前にはザ・ハッスルズ、アッティラという2つのバンドの一員としてもアルバムをリリースしています。ちなみに、ちょうど先日、そのザ・ハッスルズのアルバムも再発されたそうで、こちらも気になるところです。
とはいえ、Billy Joelというミュージシャンの名前が本作ではじめて世に広まったというのは間違いありません。もちろん、本作を聴くのはこれがはじめてではありませんが、あらためて本作を聴くと、デビュー間もない作品でありながらも、非常に完成度が高い作品であることを感じます。表題曲でヒットを記録した「Piano Man」だけではなく、全曲捨て曲なし、といったくらいのインパクトの強い名曲揃い。カントリーロック風の「Travelin' Prayer」や、軽快なピアノを聴かせる「Ain't No Crime」もその後シングルカットされ、ヒットチャートにランクインしたそうですし、オーケストラアレンジを取り入れたダイナミックなアレンジが特徴的な「The Ballad Of Billy The Kid」も、物語性ある歌詞も含めて、個人的にも好きなナンバー。そのほかにも切ないメロが耳を惹く「Stop In Nevada」や、7分にも及ぶ大曲である「Captain Jack」など、名曲が並ぶアルバム。ロックやジャズ、カントリーやオーケストラまで取り入れつつ、いい意味で聴きやすいポップにまとめ上げているその楽曲の完成度には、実に驚かされます。
Disc2はデモ音源やライブ音源などが収録されているのですが、基本的にデモ音源の段階でかなり完成形に近いスタイル。テンポなど微妙に違ったり、「Piano Man」のデモ音源にはボーカルにリバーブがかかっていたりもするのですが、大きな違いはない反面、原曲との聴き比べも楽しい感じ。Disc3は、今回、DVD初収録となった「Piano Man」のオリジナルMVをはじめ、ある意味、80年代的な懐かしさを感じさせるMVやライブ映像など、なかなか見ごたえのある内容となっています。
ちなみにCDのジャケットは、当時リリースされたレコード盤を模した内容になっており、当時の歌詞カードなどもそのまま入っているなど(この手の再発企画盤ではありがちなのですが)非常に凝った出来栄えに仕上がっています。リアルタイムで本作にふれた方にとっては懐かしく、また、オリジナルを知らない人も当時を思い起こすことが出来るのではないでしょうか。ストリーミング全盛の現在において、こういう物理的な物量でアルバムの存在感をアピールする方法も悪くありません(お値段はちょっと高めになりますが・・・)。
なかなかボリューミーな内容なので、ビリー初心者が手軽に手を出せる内容ではないとは思うのですが、ただ、ビリーの最初の1枚としては間違いなくお勧めの名盤。そういう意味で、ちょっとボリューミーですが、これを機に、本作からビリーの魅力に触れてほしいかも。彼の魅力を大いに楽しめたボリューミーな企画盤でした。
評価:★★★★★
BILLY JOEL 過去の作品
LIVE AT SHEA STADIUM
She's Always a Woman to Me:Lovesongs
A Matter of Trust: The Bridge to Russia
Live Through the Years
JAPANSESE SINGLES COLLECTION-GREATEST HITS-
Live At Yankee Stadium
Live Through The Years -Japan Edition-(ビリー・ザ・ベスト:ライヴ!)
ほかに聴いたアルバム
GUTS(spilled)/Olivia Rodorigo
アメリカのポップミュージシャン、オリヴィア・ロドリゴが昨年リリースし、大ヒットしたアルバム「GUTS」に、5曲を追加してリリースしたデラックスバージョン。あらためて聴くと、ロック調の曲やポップな楽曲、ドリーミーな作品やアコースティックな作品までバラエティー富んだポップが魅力的。新たに加わった5曲についても、基本的に他の曲の延長線上にあるような軽快なポップソングがメイン。あらためて彼女の魅力を認識させられました。
評価:★★★★★
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