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2024年5月11日 (土)

中島みゆきへのリスペクトを込めて

Title:「歌縁」(うたえにし)‐中島みゆき RESPECT LIVE 2023-

2023年の2月11日、12日に、東京と大阪で行われた、様々なミュージシャンたちが中島みゆきの楽曲をカバーするライブイベント「中島みゆき RESPECT LIVE 2023 歌縁」の模様を収録したライブアルバム。このイベント、もともと2007年に、FM802/FM COCOLOプロデューサーの岩尾知明発案により、「FM802 SPECIAL REVUE 生きて泳げ 涙は後ろへ流せ」という中島みゆきの楽曲を様々なミュージシャンたちが歌うイベントライブの開催がきっかけ。その後、2015年には「中島みゆき RESPECT LIVE 「歌縁」(うたえにし)」が開催され、その模様を収録したライブアルバム「「歌縁」(うたえにし)―中島みゆき RESPECT LIVE 2015―」がリリース。当サイトでも紹介しました。

本作は、その第2弾とも言えるライブアルバム。今回も様々なミュージシャンたちが中島みゆきの楽曲をカバー。前作に引き続き、様々なミュージシャンたちがそれぞれのスタイルで中島みゆきの楽曲を歌い上げているのですが、前作と同様、非常に魅力的なカバーアルバムに仕上がっていました。

まず耳に行くのが半崎美子の「ホームにて」で、落ち着いた感じの声量あるボーカルで、感情たっぷりに歌い上げるカバーになっており、ボーカリストとしての力量の高さを感じさせます。HYの仲宗根泉による「あした」も素晴らしい出来栄え。沖縄民謡からの影響を強く受けたこぶしを利かせたボーカルとなるのですが、これが中島みゆきの楽曲ともしっかりとマッチしています。今回のアルバムの中では、この2曲がベストだったように思います。

ちょっとユニークながらも自らのスタイルを貫いていたのが曽我部恵一の「永遠の嘘をついてくれ」で、飄々としたボーカルスタイルはいつもの曽我部恵一。意外と彼のボーカルと中島みゆきの曲がマッチしており、ともすれば曽我部恵一の曲かと聴き間違えるような内容。中島みゆきのボーカルスタイルとはちょっと異なる方向性ながらも、これはこれでおもしろいカバーに仕上がっていました。

徳永英明の「時代」は、卒なくこなしている感じ。VOCALISTシリーズでカバーしまくった彼だけに、ちょっとスタイルが様式立ってしまっている感じもするのですが、これはこれで魅力的なナンバー。冒頭を飾る山本彩「たかが愛」は歌い方はいかにもJ-POP的な感じがして、相川七瀬とか家入レオあたりを彷彿とさせるのですが、最近の女性シンガーとしては低音部をしっかりと聴かせたボーカルスタイルは好印象。ハンバートハンバートの「流浪の詩」もフォーキーなアレンジがユニークな感じ。斉藤由貴や増田恵子はベテランらしい、しっかりと歌を聴かせる卒ないカバーを聴かせてくれています。

唯一、ちょっと疑問に感じてしまったのが一青窈の「ファイト!」で、朗読のスタイルを入れて、これでもかというほど感情を込めた歌い方をするのですが、正直、ちょっと感情過多な印象が・・・。前作でも満島ひかりが「ファイト!」を感情込めた朗読を取り入れてカバーしており、それに追随した形なのかもしれませんが・・・演技力という面では、一青窈はかなり辛かったように感じます。

ただ、全体的にはやはり聴きごたえのある名カバーが並んでおり、中島みゆきへのリスペストをしっかりと感じつつ、参加したボーカリストたちの実力を感じさせるカバーアルバムだったと思います。アイドル勢からJ-POP勢、実力派ミュージシャンから、ともすれば曽我部恵一のようなサブカル勢まで幅広いセレクトながらも、ちゃんとしっかりと歌を歌える人たちを集めている点も好印象。非常にしっかりとした企画のように感じます。第3弾もあるのかなぁ。前回に引き続き、中島みゆきのファンも大納得のカバーだったと思います。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Nautilus/SEKAI NO OWARI

2022年にリリースしたシングル「Habit」がTikiTokなどから話題となり、大ヒットを記録。その時のレコ大を受賞し、紅白出演も果たすなど、大きな話題となったセカオワ。本作はその「Habit」も収録した約2年半ぶりのニューアルバム。「Habit」もある意味、彼ららしい非常に理屈っぽい歌詞が特徴的でしたが、今回のアルバムも全体的にいかにもSEKAI NO OWARIらしい楽曲が並ぶ作品に。ただ、全体的に明るい雰囲気ながらも、前作に引き続き、いままでの彼らの大きな特徴だったファンタジックな要素は薄れた印象も。良くも悪くも、徐々に「大人」のバンドになってきているという感じでしょうか。ただ、彼らもそろそろアラフォー世代に差し掛かっているだけに当たり前といえば当たり前なのですが・・・。

評価:★★★★

SEKAI NO OWARI 過去の作品
EARTH
ENTERTAINMENT
Tree
Lip
Eye
Chameleon(End of the World)
SEKAI NO OWARI 2010-2019
scent of memory

MARBLES/THE ORAL CIGARETTES

Marbles

THE ORAL CIGARETTEの新作、5曲入りのEPは、全曲、コロナ禍の中で制作されたコンセプトアルバム。タイトルは「MARBLES」=ビー玉、もしくは「Lose my marbles」=気がおかしくなるという慣用句から取られた言葉だそうで、様々な色が閉じ込められているビー玉にコロナ禍の状態を重ね合わせているそうです。2020年から2021年にかけて、あれだけコロナ禍に合わせたアルバムがリリースされたのに、なぜ今さら??という感じは否めないのですが、そんなコロナ禍の状況をあらわしてか、いつもの彼らに増して、これでもかというほどの哀愁たっぷりのメロディーに、コロナ禍の現状にもがくようなダイナミックなバンドサウンドが特徴的。ただ、もう2年くらい前に聴きたかったかも。

評価:★★★★

THE ORAL CIGARETTES 過去の作品
FIXION
UNOFFICIAL
Kisses and Kills
Before It's Too Late
SUCK MY WORLD

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