バラエティー富んだエレクトロポップが楽しい
Title:For Your Consideration
Musician:Empress Of
今回紹介するのは、Empress Of名義で活動しているアメリカはロサンジェルスを拠点に活動している女性シンガーソングライター、Lorely Rodriguezの約4年ぶりとなる4枚目のアルバム。エレクトロサウンドをベースに軽快なポップチューンを聴かせてくれる彼女。まだまだ知る人ぞ知る的なミュージシャンである彼女ですが、今後にヒットポテンシャルを感じられる魅力的なアルバムになっていました。
まず今回のアルバム、全11曲入りという内容ながらも、アルバム全体でわずか31分という短さも、ポピュラーミュージックという観点からすると大きな魅力と言えるでしょう。1曲あたり3分弱という内容。ある意味、ダレることなく、一気にアルバムを楽しめる構成。アルバムを聴く入り口としても、非常に聴きやすい内容である、と言えるかと思います。
そしてもう1点、本作が魅力的だったのは、彼女の楽曲、一言で言ってしまうと「エレクトロポップ」ということになるのですが、そう一言でまとめきれないバラエティー富んだ展開が楽しめる点でした。
アルバムはタイトルチューン「For Your Consideration」からスタートするのですが、彼女の吐息混じりのリズムトラックと清涼感あって伸びやかなボーカルが特徴的な、幻想的な楽曲。続く「Lorelei」は軽快なエレクトロのビートが前面に押し出されたテンポよくダンサナブルなナンバーで、ある意味、今時のポップといった印象を受けます。かと思えば「Preciosa」は哀愁感たっぷりのメロディーラインが印象的。トライバル感のあるエレクトロビートも大きな特徴となっています。
アルバムのひとつの核となっているのが4曲目の「Kiss Me」で、あのRina Sawayamaが参加したR&Bの楽曲。メランコリックに聴かせるメロウなボーカルも印象的で、ある意味、一番の「売れ線」といった感じのポップチューンに仕上がっています。
その後も軽快なエレクトロトラックでリズミカルな「What Type Of Girl Am I?」や、アコギの音色からスタートし、ギターサウンドを前面に出しつつ、メランコリックにまとめる「Baby Boy」、そしてスペーシーなサウンドでスケール感もって歌い上げるラストチューン「What's Love」まで、バラエティー富んだ楽曲が続いていきます。
そしておそらく彼女のもうひとつの特徴なのが、彼女が中南米のホンジュラスにその出自を持つシンガーであるという点でしょう。正直言って、ラテンという要素はあまり強くありませんが、楽曲によってはトライバルなリズムが垣間見れたり、また、非常に哀愁感漂うメロディーラインを書いてくるあたりは、ラテン系の影響と言えるのかもしれません。また楽曲によってはスペイン語も入っていたりして、エキゾチックな雰囲気を作り出しています。この全面的に取り入れているのではなく、ほんのりラテンなフレーバーを醸し出しているバランスもまた、彼女の楽曲の大きな魅力なのかもしれません。
アルバムでは、特に後半「Cure」「Facil」などエレクトロのビートを押し出したリズミカルなナンバーもありますし、エレクトロ系が好みの方から、R&B系が好きな方まで幅広く楽しめるポップアルバムだったと思います。今後は徐々にその知名度も高くなってくるのではないでしょうか。広い層にお勧めしたい、ポップな傑作でした。
評価:★★★★★
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