バラエティー富んだ内容ながらもVampire Weekendらしさも
Title:ONLY GOD WAS ABOVE US
Musician:Vampire Weekend
Vampire Weekend約5年ぶりとなるニューアルバム。今回のアルバムタイトルはジャケット写真にうつっている新聞記事から取られていますが、こちらは実際の1988年5月1日付のニューヨーク・デイリー・ニュース紙の記事で、航空機の屋根が剥がれるという事故を起こした、アロハ航空243便航空気事故の模様を報じたもので、この言葉は、事故の生存者による言葉をそのまま採用したものだそうです。
さて、Vampire Weekendの前作「Father of the Bride」は、いままでの彼らのスタイルから、ちょっと外れた感のある作品でした。いままでの彼らの作品の特徴であったアフロ・ポップの要素は後ろに下がり、メロディーラインを前に押し出した歌モノがメインとなった作品に。軽快なポップチューンが楽しめる反面、彼らの持ち味はちょっと後ろに下がってしまった感のある、正直、評価に迷うような1枚でした。
今回のアルバムも、1曲目「Ice Cream Piano」も最初、ミディアムチューンで聴かせるようなスタートとなっているだけに、前作の続きか?と訝しむ人も多かったのではないでしょうか。ただ、途中から分厚いギターサウンドも入って、ハイテンポでパンキッシュな作風に変化します。リズミカルなサウンドは、彼らの持ち味であるアフロ・ポップの影響を感じられ、まずはVampire Weekendらしさを感じさせるスタートだったのではないでしょうか。
続く「Classical」も賑やかなサウンドがアバンギャルドさも感じつつ、軽快なリズムは彼ららしいアフロ・ポップの要素も楽しめる軽快で楽しい楽曲。冒頭、まずはVampire Weekendらしい作品から並ぶ作品になっており、ファンとしてはほっと胸をなでおろした方も多いのではないでしょうか。中盤の「Prep-School Gangsters」などもトライバルなリズムを軽快に聴かせつつ、メランコリックさのあふれるキュートでポップなメロディーラインは彼ららしい感じ。個人的にもかなり壺に入るギターロックのナンバーになっていました。
このように、以前のVampire Weekendらしさを感じさせる一方で、アルバム全体としてはむしろ前作に続き、バラエティーのあるポップなメロを聴かせる作風になっていた作品になっていました。例えば「The Surfer」はエレピとストリングスで伸びやかに聴かせるメランコリックなナンバーで、アフロ・ポップ的な要素もパンキッシュな要素もありません。「Mary Boone」では、聖歌隊のコーラスも入り、厳かな雰囲気の楽曲になっていますし、「Hope」もしんみり郷愁感あふれるナンバー。「Broken Washing Machine」も軽快でトライバルなリズムも入りつつ、メランコリックでフレンチポップ風な雰囲気も。バラエティーにあふれる展開にポップなメロが魅力的な構成になっています。
要所要所にトライバルなリズムを聴かせてくれており、アルバム全体としては以前のVampire Weekendらしさは感じられるのですが、バラエティーに富んだポップな作風という意味では前作に続く形での作品と言えるのかもしれません。そういう意味では、前作「Father of the Bride」の方向性を生かしつつ、前作で物足りなさを感じたVampire Weekendらしい要素をしっかりと加味したアルバムと言えるのかもしれません。前作は評価に迷った1作でしたが、今回は文句なしに傑作と言える1枚。前作の評価が微妙だった影響か、前作まで3作連続続いていたビルボードチャート1位が途切れてしまい、本作はベスト10ヒットすら逃してしまう結果となってしまいましたが・・・これだけのアルバムをリリースすれば、また人気は再燃しそう。おすすめの傑作です。
評価:★★★★★
VAMPIRE WEEKEND 過去の作品
VAMPIRE WEEKEND
CONTRA
Modern Vampire Of The City
This Life/Unbearably White
Father of the Bride
40:42
ほかに聴いたアルバム
All Quiet On The Eastern Esplanade(邦題:東部遊歩道異常なし)/The Libertines
2000年代初頭のガレージロック・リヴァイバルの代表的なバンドとして一躍注目を集めるも、ボーカルのピート・ドハーティの薬物中毒により、2004年に解散、といういかにもロックバンドらしい活動も話題となったバンド、The Libertines。その後、再結成し、2015年にはアルバムをリリース。さらに9年ぶりとなるニューアルバムがリリースされました。
ガレージロックらしい緊迫感あるサウンドで勢いのあったデビュー時とは異なり、2015年の再結成盤は大人しい雰囲気の内容となったのですが、今回のアルバムをそのスタイルを踏襲した作風に。メランコリックな歌モノが多く、アコギやピアノなどを用いたような作品もある一方、メロディーラインの良さに関しては、彼らのメロディーメイカーとしての才も感じさせます。ただ、前作でも感じたのですが、ちょっとおとなしすぎるような感じもしてしまうのですが・・・。
評価:★★★★
The Libertines 過去の作品
Anthems For Doomed Youth(リバティーンズ再臨)
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