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2024年5月

2024年5月31日 (金)

バラエティー富んだ内容ながらもVampire Weekendらしさも

Title:ONLY GOD WAS ABOVE US
Musician:Vampire Weekend

Vampire Weekend約5年ぶりとなるニューアルバム。今回のアルバムタイトルはジャケット写真にうつっている新聞記事から取られていますが、こちらは実際の1988年5月1日付のニューヨーク・デイリー・ニュース紙の記事で、航空機の屋根が剥がれるという事故を起こした、アロハ航空243便航空気事故の模様を報じたもので、この言葉は、事故の生存者による言葉をそのまま採用したものだそうです。

さて、Vampire Weekendの前作「Father of the Bride」は、いままでの彼らのスタイルから、ちょっと外れた感のある作品でした。いままでの彼らの作品の特徴であったアフロ・ポップの要素は後ろに下がり、メロディーラインを前に押し出した歌モノがメインとなった作品に。軽快なポップチューンが楽しめる反面、彼らの持ち味はちょっと後ろに下がってしまった感のある、正直、評価に迷うような1枚でした。

今回のアルバムも、1曲目「Ice Cream Piano」も最初、ミディアムチューンで聴かせるようなスタートとなっているだけに、前作の続きか?と訝しむ人も多かったのではないでしょうか。ただ、途中から分厚いギターサウンドも入って、ハイテンポでパンキッシュな作風に変化します。リズミカルなサウンドは、彼らの持ち味であるアフロ・ポップの影響を感じられ、まずはVampire Weekendらしさを感じさせるスタートだったのではないでしょうか。

続く「Classical」も賑やかなサウンドがアバンギャルドさも感じつつ、軽快なリズムは彼ららしいアフロ・ポップの要素も楽しめる軽快で楽しい楽曲。冒頭、まずはVampire Weekendらしい作品から並ぶ作品になっており、ファンとしてはほっと胸をなでおろした方も多いのではないでしょうか。中盤の「Prep-School Gangsters」などもトライバルなリズムを軽快に聴かせつつ、メランコリックさのあふれるキュートでポップなメロディーラインは彼ららしい感じ。個人的にもかなり壺に入るギターロックのナンバーになっていました。

このように、以前のVampire Weekendらしさを感じさせる一方で、アルバム全体としてはむしろ前作に続き、バラエティーのあるポップなメロを聴かせる作風になっていた作品になっていました。例えば「The Surfer」はエレピとストリングスで伸びやかに聴かせるメランコリックなナンバーで、アフロ・ポップ的な要素もパンキッシュな要素もありません。「Mary Boone」では、聖歌隊のコーラスも入り、厳かな雰囲気の楽曲になっていますし、「Hope」もしんみり郷愁感あふれるナンバー。「Broken Washing Machine」も軽快でトライバルなリズムも入りつつ、メランコリックでフレンチポップ風な雰囲気も。バラエティーにあふれる展開にポップなメロが魅力的な構成になっています。

要所要所にトライバルなリズムを聴かせてくれており、アルバム全体としては以前のVampire Weekendらしさは感じられるのですが、バラエティーに富んだポップな作風という意味では前作に続く形での作品と言えるのかもしれません。そういう意味では、前作「Father of the Bride」の方向性を生かしつつ、前作で物足りなさを感じたVampire Weekendらしい要素をしっかりと加味したアルバムと言えるのかもしれません。前作は評価に迷った1作でしたが、今回は文句なしに傑作と言える1枚。前作の評価が微妙だった影響か、前作まで3作連続続いていたビルボードチャート1位が途切れてしまい、本作はベスト10ヒットすら逃してしまう結果となってしまいましたが・・・これだけのアルバムをリリースすれば、また人気は再燃しそう。おすすめの傑作です。

評価:★★★★★

VAMPIRE WEEKEND 過去の作品
VAMPIRE WEEKEND
CONTRA
Modern Vampire Of The City
This Life/Unbearably White
Father of the Bride
40:42


ほかに聴いたアルバム

All Quiet On The Eastern Esplanade(邦題:東部遊歩道異常なし)/The Libertines

2000年代初頭のガレージロック・リヴァイバルの代表的なバンドとして一躍注目を集めるも、ボーカルのピート・ドハーティの薬物中毒により、2004年に解散、といういかにもロックバンドらしい活動も話題となったバンド、The Libertines。その後、再結成し、2015年にはアルバムをリリース。さらに9年ぶりとなるニューアルバムがリリースされました。

ガレージロックらしい緊迫感あるサウンドで勢いのあったデビュー時とは異なり、2015年の再結成盤は大人しい雰囲気の内容となったのですが、今回のアルバムをそのスタイルを踏襲した作風に。メランコリックな歌モノが多く、アコギやピアノなどを用いたような作品もある一方、メロディーラインの良さに関しては、彼らのメロディーメイカーとしての才も感じさせます。ただ、前作でも感じたのですが、ちょっとおとなしすぎるような感じもしてしまうのですが・・・。

評価:★★★★

The Libertines 過去の作品
Anthems For Doomed Youth(リバティーンズ再臨)

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2024年5月30日 (木)

1位はゲーム系のアルバム

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週はゲーム系のアルバムが1位獲得。

今週1位はKnights「あんさんぶるスターズ!!アルバムシリーズ 『TRIP』」が獲得。男性アイドル育成ゲーム「あんさんぶるスターズ!!」のキャラクターソングCD。CD販売数1位、ダウンロード数9位。オリコン週間アルバムランキングでも初動売上5万枚で1位初登場。同シリーズの直近作はEden名義による「あんさんぶるスターズ!!アルバムシリーズ 『TRIP』」で、同作の初動3万4千枚(4位)からアップ。また、Knightsによるアルバム前作は「あんさんぶるスターズ!!アルバムシリーズ Kinghts」で、同作の初動4万6千枚(4位)からもアップしています。

2位は韓国の人気アイドルグループBTSのメンバー、RMのソロアルバム「Right Place, Wrong Person」がランクイン。CD販売数2位、ダウンロード数1位。オリコンでは初動売上2万3千枚で2位初登場。前作「Indigo」の初動2万5千枚(4位)から若干のダウン。

3位にも韓国の男性アイドルグループENHYPEN「MEMORABILIA」がランクイン。CD販売数2位、ダウンロード数15位。オリコンでは発売日の都合上、今週、2週目にして2万2千枚を売り上げて3位にランクイン(先週は売上枚数1千枚で30位に初登場)。前作「ORANGE BLOOD」の初動18万7千枚(1位)からダウンしています。

次に4位以下の初登場盤。4位に長渕剛「BLOOD」。約7年ぶりの新作。若林志穂が訴えた性加害疑惑がうやむやになっている感があるのに非常にモヤモヤします。ある意味、松本人志案件以上に悪質だと思うのですが。5位は韓国のアイドルグループNCTのメンバーDOYONG「YOUTH」が初登場。6位はハロプロ系女性アイドルグループJuice=Juiceの元メンバー、宮本佳林「Spancall」がランクイン。8位には女性アイドルグループZero Project「Seize a Chance!」が初登場でランクイン。9位には女性アイドルデゥオ、Claris「Iris」が初登場。そして10位にはLDH系男性アイドルグループPSYCHIC FEVER from EXILE TRIBE「PSYCHIC FILE II」が初登場でランクインしています。


今週のHeatseekers Songs

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=heat_seekers

今週1位を獲得したのはBABYMONSTER「SHEESH」が4週ぶりの1位返り咲き。これで3週目のHeatseekers Songsの1位獲得となりました。


今週のTikTok Weekly

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=tiktok

1位を獲得したのはSEO EVE「Malatanghulu」。若干12歳の韓国人ミュージシャンで、リズミカルで中毒性の強いこのダンスチューンがTikTokで話題。この曲に合わせて「踊ってみた」という動画が急増。今週のTikTok Weeklyで見事1位を獲得しました。まだ、Hot100ではランクインしてきていないのですが、この手の中毒性の高いダンスミュージックは一気に拡散する可能性も高いため、今後のランクインも十分にありえそうです。


今週のニコニコVOCALOID SONGS

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=niconico

VOCALOID SONGS1位もサツキ「メズマライザー」が4週連続の1位を獲得。ちなみに同曲はYouTube再生回数は今週3位、Heatseekersチャートでも3位にランクアップしています。

今週のHot Albums&各種チャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2024年5月29日 (水)

アイドルの新譜が目立つチャートに

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週は、CDリリースされたアイドルの新譜が目立つチャートとなっています。

まず1位を獲得したのは元ジャニーズ系アイドルグループKing&Prince「halfmoon」。テレビ朝日系ドラマ「東京タワー」主題歌。CD販売数、ダウンロード数及びラジオオンエア数で1位獲得。総合順位でも1位となりました。オリコン週間シングルランキングでも初動売上30万5千枚で1位初登場。前作「愛し生きること」の初動34万8千枚からはダウンしています。

そしてCreepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」は今週2位にダウン。ただストリーミング数は16週連続、カラオケ歌唱回数は11週連続、YouTube再生回数も3週連続の1位は継続中。ダウンロード数のみ3位から7位にダウンしています。これでベスト10は19週連続、ベスト3は18週連続に。おそらく、まだ十分1位返り咲きはありそう。

3位はMrs.GREEN APPLE「ライラック」が先週と同順位をキープしています。YouTube再生回数は3位から4位にダウンしたものの、ストリーミング数は2位をキープ。これでベスト10は6週目となり、今後もロングヒットとなるのでしょうか。さらに今週、Mrs.GREEN APPLEは「Dear」が8位に初登場。ダウンロード数3位、ストリーミング数8位、ラジオオンエア数13位、YouTube再生回数5位。6月14日公開予定の映画「ディア・ファミリー」主題歌。これで今週、2曲同時のランクインとなっています。

続いて4位以下の初登場曲ですが、前述の「Dear」以外の初登場は3曲。いずれもアイドル系で、かつCD販売がヒット要因となっているアルバムとなっています。

まず4位にはスターダストプロモーション所属の男性アイドルグループM!LK「ブルーシャワー」が初登場。CD販売数3位、その他は圏外となっています。オリコンでは初動売上5万5千枚で3位初登場。前作「Kiss Plan」の初動4万8千枚(2位)からダウンしています。

5位初登場はXG「WOKE UP」。全員日本人ながらも韓国を拠点に活動している女性アイドルグループ。出稼ぎみたいで、ちょっと複雑な気になってしまうのですが・・・。CD販売数5位、ダウンロード数14位、ラジオオンエア数3位、YouTube再生回数20位。オリコンでは初動売上3万2千枚で5位初登場。

6位にはAKB系女性アイドルグループNMB48「これが愛なのか?」がランクイン。CD販売数2位、その他はランク圏外で総合順位はこの位置。おなじみM!LKはCD販売数3位のみで4位と順位は逆転していますが、これはランク圏外とはいえM!LKではストリーミング数やYouTube再生回数が加算されている影響のようです。まあ、いつまでたっても秋元康が幅を利かせているのがトップアイドルなら、確かに韓国に出稼ぎしたくなるよなぁ。オリコンでは初動売上20万3千枚で2位初登場。前作「渚サイコー!」の20万5千枚(1位)から若干のダウン。

一方、ロングヒット組は今週軒並みダウン。まずOmoinotake「幾億光年」が4位から7位にダウン。YouTube再生回数は6位から7位、ダウンロード数も14位から17位にダウン。ただし、ストリーミング数は先週から変わらず3位をキープしています。これで15週連続のベスト10ヒットに。

tuki.「晩餐歌」は5位から9位に再び大きくダウン。ストリーミング数及びYouTube再生回数は5位から6位、ダウンロード数はなんと7位からランク圏外に一気にダウン。カラオケ歌唱回数だけ今週も3位をキープしています。これで26週連続のベスト10ヒットとなりました。

先週、8週目のベスト10ヒットを記録したILLIT「Magnetic」は今週10位にダウン。ストリーミング数は4週連続4位をキープしていますが、その他はすべてランク圏外という結果に。

また、先週10位に返り咲いたVaundy「タイムパラドックス」は12位にダウン。ベスト10返り咲きは1週で終わりました。

新譜が多く、一方、ロングヒット曲が軒並みダウンした今週のチャート。ただし、新曲はいずれも来週にはダウンし、ロングヒット曲が再び巻き返しそう。とはいえ、Creepy Nutsを除いてロングヒット曲は、いずれも下落傾向なだけに、そろそろロングヒット曲もガラリと入れ替わりそうな予感もします。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums&各種チャート。

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2024年5月28日 (火)

彼女が本当に演りたかった1枚

Title:wood mood
Musician:藤原さくら

シンガーソングライターの約11カ月ぶりとなるニューアルバム。Amazonなどのレビューを見ると、いままでの作品からかなり変わった作品ということで、賛否両論なアルバムになっているようです。

ただ、これは以前の彼女のCD評でも書いたのですが、彼女ほど、売り出す時のイメージと、本人が実際に演りたい音楽性の差が大きいミュージシャンも昨今では珍しいように感じます。彼女はフジテレビ系の月9ドラマのヒロイン役でブレイク。かつ、同ドラマへの提供曲「Soup」が大ヒットを記録しています。ただ、その後リリースされてアルバムを聴いて驚きました。彼女の音楽性は、ドラマ主題歌でいきなりブレイクするようなJ-POPの王道系ではなく、むしろJ-POPの王道に反するような、洋楽志向の強いオーガニックな作風がメインだったからです。

今回のアルバムではジャズドラマーの石若駿がトータルプロデュースを担当。さらに演奏に参加したのはジャズミュージシャンという、ジャズ志向の強いアルバムに仕上がっています。実際、ジャジーな曲はアルバムの中に目立ち、例えば「巡」はジャジーなサウンドをベースにファンタジックな作風の曲になっていますし、これに続く「Close your eyes」も同じくジャジーでムーディーに聴かせる作品に。「daybreak」も同様、ジャジーなサウンドでしんみり聴かせるナンバーとなっています。

ただ、アルバム全体としてはジャジーな作風よりも、アコースティックベースのオーガニックな作風の曲が目立ちます。イントロに続く、事実上、1曲目の曲となる「my dear boy」も静かなピアノを中心としたバンドサウンドに、しんみり暖かく聴かせるオーガニックテイストの作品。前半のジャジーな曲の並びに続いてあらわれる「sunshine」も、アコースティックギターで聴かせるフォーキーなナンバー。「星屑のひかり」も、ピアノでしんみり聴かせつつ、鳥の声も収録されており、星空の下で聴いているかのように感じられる暖かくオーガニックな作風が特徴的。全体的にはアコースティックなサウンドをベースに、彼女の暖かい歌声でしんみりと聴かせるオーガニックテイストの強い作品の並ぶアルバムとなっています。

このオーガニック志向に関しては、正直、いままでの彼女の楽曲でも色濃く見られた方向性であり、いままでの彼女の楽曲のベクトルと大きな違いはありません。あえて言えば、今回のアルバムがいままでと異なるのは、アコースティックベースでも爽快で明るい系統の曲がほとんどない、という点。ラスト前の「i Wish I Knew How It Would Feel to Be Free」ではようやく比較的軽快なポップになっているものの、この曲も基本的には、まずは歌声を聴かせるタイプの曲調。そういう意味では、爽やかなポップソングを彼女に求めている方にとっては物足りなさを感じ、結果、賛否のわかれる結果になったのかもしれません。

ただ、全体的にはポップソングとして非常によく出来たアルバムであることは間違いないと思います。オーガニックなサウンドで抑え気味のメロディーラインとはいえ、しっかり印象に残るポップス。ほどよく音数を絞って、楽曲にグルーヴ感を与えているサウンド。彼女のちょっと渋みも感じられる暖かい歌声。日本の女性シンガーソングライターとして、どれも指折りのクオリティーなのは間違いないでしょう。

藤原さくらの実力をしっかりと感じさせてくれる傑作アルバム。本作から、発売先を自主レーベルに移してのリリースということで、本当に演りたいことを演った1枚と言えるのかもしれません。それだけこれからも彼女の本領が発揮されたアルバムリリースが続きそう。楽しみです。

評価:★★★★★

藤原さくら 過去の作品
PLAY
green
red
SUPERMARKET
AIRPORT


ほかに聴いたアルバム

BAD HOP(THE FINAL Edition)/BAD HOP

Badhop

今年、東京ドームでのワンマンライブを最後に解散したHIP HOPグループBAD HOP。本作はもともと2月に8曲入りのアルバムとしてリリースしたものが、その後、メンバーソロ曲を収録した「BHG Edition」、フューチャリング曲を収録した「Deluxe Edition」を経て、それらの曲をすべて収録し、さらに追加曲も収録した、この「THE FINAL Edition」へと進化。最終的には全33曲入りという膨大なアルバムに成長しました。

まあ、こういうリリーススタイル、基本的に配信で聴くからこそ成り立つ訳で、とはいえ最初のバージョンから25曲も増えるというのは驚き。それだけやはり最後に発表しておきたい曲があった、ということでしょうか。ただ、アルバム全体としては最初の8曲入りの時と印象としては大きく変わらず。最後を迎えるにあたっての決意を感じさせる曲もチラホラ。かなりボリューミーな内容だけども最後までちゃんと一気に聴けるインパクトのある曲もそろっています。これで最後というのは残念ですが、まさにやり切った感のあるアルバムでした。

評価:★★★★★

BAD HOP 過去の作品
BAD HOP 1DAY
Mobb Life
BAD HOP HOUSE
BAD HOP ALLDAY vol.2
BAD HOP WORLD
BAD HOP HOUSE 2
BAD HOP

Recent Report I/後藤正文

Masahumigoto

ご存じアジカンのボーカリスト。いままで愛称のGotch名義では何枚かアルバムをリリースしてきたものの、本名、後藤正文名義では初となるソロアルバム。全編アンビエントのインストアルバムで、アジカンともGotch名義のアルバムとも、かなり雰囲気の異なったアルバムとなっています。ある意味、挑戦的・実験的とも言える作品なのですが、おそらく聴き始めてすぐ気が付くのですが、わかりやすくストレートに坂本龍一の影響を受けています。そうするとやはり、どうしても「勝負あった」となるのは間違いなくて・・・。なんとなく、彼自身、坂本龍一のようなポジションにあこがれたんだろうなぁ、というのは手に取るようにわかる作品。ここに来てアンビエントに挑戦する心意気は買いたいのですが。

評価:★★★

Gotch/後藤正文 過去の作品
Lives By The Sea

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2024年5月27日 (月)

ジャズに捕らわれない音楽性が魅力的

Tilte:Speak To Me
Musician:Julian Lage

今回紹介するのは、ジャズの名門、Blue Noteレーベルから作品をCDをリリースしているジャズギタリスト、Julian Lageのニューアルバム。過去、3回のグラミー賞ノミネート経験も持つ注目のジャズギタリストで、一部では現代最高峰のジャズギタリストなどという呼び声もあるとか。間違いなく、現在、もっとも注目を集めているギタリストの一人と言えるでしょう。

そんな注目のギタリストのソロ名義アルバムを今回はじめて聴いたのですが、非常に面白かったのは、ジャズギタリストという肩書きに捕らわれない、実に幅広い音楽性でギターを表現しているという点でした。アルバム冒頭の「Hymnal」で、郷愁感あるギターの調べをまずは聴かせてくれますが、ジャズというよりもトラッドのイメージの強い演奏にしんみり聴き入ります。続く「Northern Shuffle」はいきなりノイジーなギターのストロークからスタートし、ジャズというよりもむしろロックギタリストなのでは?という演奏を聴かせてくれます。「Omission」もメロディアスなギターインストで、あまりジャズテイストの強くないポップなインスト曲に仕上げています。

個人的におもしろさを感じたのは中盤の「Myself Around You」で、どこかミニマル的な要素を感じさせるリズムがユニーク。続く「South Mountain」も後半に、いきなりフリーキーなサウンドが飛び込んでくるなど、中盤は実験的な作風の曲が並びます。この中盤までは、あまりジャズ的な要素を強く感じない構成になっており、Julian Lageの幅広い音楽性と挑戦心を感じさせる構成になっていました。

後半のタイトル曲「Speak To Me」は、ノイジーで、ともすればガレージ色すら感じさせるギターの音色はロック調でありつつも、サックスの音色でジャズの要素も感じさせる楽曲に。ここからは比較的、ムーディーな雰囲気を楽曲から感じさせる、ジャズの方向性にシフトした作品が並びます。ただ、ラスト前「76」もかき鳴らされるギターの音色はロッキンで、さらにフリーキーなピアノの音も。最後の最後まで、ひとつの音楽性に捕らわれないような楽曲が魅力的なアルバムになっていました。

正直、「現代最高峰」なのかどかはわかりませんが、ジャズにとらわれず様々なジャンルを行き来しながら、表現力あるギターをしっかり聴かせるそのスタイルは非常に魅力的。ジャズというイメージはあまり強くないため、むしろロックやポップリスナーでも楽しめる作品になっていました。幅広いリスナーの方にお勧めしたい傑作です。

評価:★★★★★

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2024年5月26日 (日)

売れっ子プロデューサーのソロ作

Title:BLEACHERS
Musician:Bleachers

グラミー賞8度の受賞経験を持つアメリカの男性シンガーソングライター、ジャック・アントロノフによるソロプロジェクト、BLEACHERSの約3年ぶりとなるニューアルバム。今回紹介するアルバムについて、「宣伝文」通りに紹介するのならば、このような紹介になります。ジャック・アントロノフというと、主にテイラー・スウィフトのプロデューサーとしても知られ、他にもセイント・ヴィンセントやThe1975のプロデュースなども手掛ける、まさに「売れっ子」のプロデューサーなのですが、今回、このアルバム評を書くにあたって、彼がどういうミュージシャンなのか調べている中で、はじめて知ったことがあります。彼、もともとミュージシャンとしてのキャリアのスタートは、ロックバンド、fun.のメンバーだったんですね。いたなぁ、fun.!懐かしい!

もともとfun.は2008年に結成された3人組ロックバンド。2枚目のアルバム「Some Nights」がビルボードチャートで1位を獲得するなど大ヒットを記録。グラミー賞の最優秀新人賞を取るなど、かなり話題となりました。過去ログをあさっていたら、当サイトでもリアルタイムに取り上げていました。当時は輸入盤がわずか1,000円で発売していたのですね。おそらく、CDからダウンロードへの過渡期で、CDの売上を少しでも伸ばすため、話題のミュージシャンのCDを安く販売していたのでしょう。ただ、歴史的円安となった今では、この価格設定はもはや考えられません・・・。

当時の感想を読んでみると、ポップなメロディーラインをそれなりにはまりつつも、ちょっと一本調子なメロに飽きが来てしまっていたようです。fun.は結局、このアルバムを最後に活動を休止。ある意味、「一発屋」なバンドになってしまったのですが、そのメンバーがいつの間にか、これだけ活躍していたとは・・・。日本でも、大石昌良や江口亮のような、元のバンドがいつの間にか活動休止していても、そのメンバーがプロデューサー的にブレイクするケースは少なくないので、彼もそんなケースの一人ということなのでしょうね。

そう考えると、全体的に楽しいポップなメロディーラインを聴かせてくれる本作は、fun.からの流れ、と言ってもいいかもしれません。「Tiny Moves」のような、分厚いサウンドにキュートでちょっとメランコリックなメロなどは、まさにfun.の時代を彷彿とさせるような。アルバム冒頭を飾る「I Am Right On Time」もギターサウンドでテンポよく、ポップでキュートなメロが魅力的。「Modern Girl」も軽快なギターロックナンバーが心地よいポップス。ギターのサウンドや途中に入るサックスなど、80年代のポップスを彷彿とさせてメロディーのインパクトも十分。かなり明るくワクワクするようなポップに仕上がっています。

ただ、前述のように、fun.を聴いた時の感想はちょっと一本調子で飽きが来てしまう、という印象を受けていました。それから12年。もちろん、今回のアルバムはそのfun.とは大きく異なります。サックスも入ってムーディーなAOR調の「Me Before You」、爽やかなアコギでフォーキーに聴かせる「Woke Up Today」、ファルセットボーカルも入ってニューウェーヴ風の「Call Me After Midnight」など、楽曲のバリエーションはかなり豊富。最後までリスナーの耳を惹きつけて飽きさせません。

もちろん、これらの曲を含めて、キュートでポップなメロディーラインという魅力は変らず、このメロがアルバム全体に統一感を与えています。fun.での大ブレイクから20年。すっかり売れっ子プロデューサーとなったジャック・アントロノフですが、若々しさを感じたfun.の時代を比べて、すっかりベテラン。いい意味で大御所的な余裕も感じさせるアルバムで、彼の魅力を存分に引き出しているアルバムに仕上がっていました。

個人的には年間ベスト候補とも言えるポップでキュートな傑作アルバムだったと思います。ロックやポップス好き、80年代的な懐かしさも感じさせるためアラフォー、アラフィフ世代まで、文句なしに楽しめる作品です。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Rampen (apm: alien pop music)/Einstürzende Neubauten

ドイツを代表するインダストリアル・ミュージックのバンドによる約4年ぶりのニューアルバム。もともと、電気グルーヴが影響を受けたバンドとして取り上げていて、彼らのことをはじめて知り、今回、ニューアルバムがリリースされたということでチェックしてみました。全体的にダークでダウナーな作風で統一された作品。静かな雰囲気の中に、メタリックなサウンドが加わり、不気味な雰囲気が醸し出しています。正直、電気グルーヴとの共通点は少ないので、電気のファンにお勧め、といった感じではないのですが、好きな人にははまりそうな音かも。

評価:★★★★

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2024年5月25日 (土)

本人朗読によるエッセイにドキドキ

今回は最近読んだ音楽関連の書籍の紹介です。

シンガーソングライターの柴田聡子によるエッセイ集「きれぎれのダイアリー 2017~2023」。もともと、文芸春秋社の文芸誌「文學界」に、足掛け7年にわたって連載されたエッセイ「きれぎれのハミング」をまとめた単行本です。

もともとこの書籍自体は、昨年10月に販売されたもの。今回、ちょっと遅ればせながらチェックしてみた理由というのは、こちらのオーディオブック版がリリースされたのですが、このオーディオブック版は、なんと柴田聡子本人の朗読によるもの。柴田聡子の日記形態のエッセイを、本人朗読により聴くことが出来る、これってなかなかのドキドキ体験じゃないですか?

このエッセイ集は、基本的に各月毎に、柴田聡子が日々の生活で感じたことを綴った作品。いわば日記形式のような作品になっています。内容的にはミュージシャンとしての日々、のようなエッセイもあるのですが、それは全体のほんの一部。ほとんどが彼女の日常生活を綴ったエッセイとなっています。

そんな彼女の日常を、彼女自ら読み聞かせてくれる訳ですから、なんか彼女のプライベイトをいろいろと教えてもらっているようで、聴いていてなんかドキドキしちゃいます。失礼ながら彼女の朗読自体は決してうまいものではないのですが、彼女自身にエッセイを読んでもらえる、それだけでオーディオブック版を聴く価値があるようにも感じます。

ちなみに肝心のエッセイの内容の方ですが、意外といったら大変失礼なのですが、柴田聡子の文才を感じさせる文章が非常に魅力的。視点もなかなか独特な部分もありつつ、文体もなかなかユニーク。今回はオーディオブック版なのであくまでも耳から入ってきた情報なので、実際に読んでみるとまた印象が異なるのかもしれませんが、そのユニークな表現は読み手を惹きつけるものを感じます。

特に最後に行けばいくほど、こなれてくる印象があり、表現のユーモアさが増した印象も。後半の「なぜ引越しの手伝いに呼ばれないのか」で、引越しの手伝いに呼ばれない自分を嘆きつつの自己アピールはかなりユニークでおもわず笑ってしまいましたし、「からだが夏になる」も、タイトルから想像できるような、T.M.Revolutionの歌詞に合わせたエッセイの内容が非常にユニークでした。

また、個人的に彼女の熱心なファンではなかったので、このエッセイではじめて知ったのですが、彼女、学生時代はバスケ部に所属していたのですね・・・。正直、風貌的に、あまりスポーツウーマンというイメージが全くなかったので、意外や意外、体育会系女子だったのはかなり意外でした。さらに、彼女、結構、ミーハーだったのが意外な印象。安室奈美恵やビヨンセ、BTSまで登場してくるのは、ちょっと意外な印象も受け、柴田聡子の意外な一面を感じることが出来るエッセイ。このエッセイを聴いて、あらためて彼女の曲を聴いてみたくなりましたし、やはり一度ライブに行ってみたくもなりました。

さて最後に。彼女の本とは直接関係ない話。今回、はじめてオーディオブックというものを体験してみました。率直に言ってしまえば、個人的には今後、積極的にはオーディオブックを聴いてみることはないかな、という印象。自分のペースで読み進めたり、戻ったり、流し読みしたりすることが出来ない(出来ないことはないけど面倒くさい)し、あとから読み返すのも難しいし、聴いている間、ずっと集中していないと、気を抜くと読み飛ばしちゃうし。少なくとも、紙媒体で販売している本の朗読版は、こういう特殊ケース以外は、もう手を出さないかな。個人的にはオーディオブックについては、いまひとつはまりませんでした。

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2024年5月24日 (金)

そろそろブレイクしていいと思うのですが。

Title:ミーンミーンミーン☆ゾーンゾーンゾーン
Musician:マハラージャン

スーツ姿にターバンとかなりインパクトのあるいで立ちに、その名前が、一度聴いたら忘れられないようなインパクトのある男性シンガーソングライター、マハラージャン。ただ、その楽曲は、コミカルさを含みつつ、ファンクやソウル、シティーポップの要素を取り入れた音楽性が魅力的。かなり強いフックの効いたメロディーラインもあって、楽曲自体も、彼自身のインパクトに負けないくらいのインパクトのあるミュージシャンで、個人的には、今、もっとも注目しているミュージシャンの一人。今回紹介するのは、そんなマハラージャンの、4枚目となるフルアルバムとなります。

今回のアルバムも、そんなユニークさがありつつ、インパクトのあるポップチューンが並ぶ作品に仕上がっています。1曲目「蝉ダンスフロア」は、長く土の中で過ごす蝉への讃歌を、ディスコのリズムで歌った曲。続く「ラジオネーム オフトゥン大好き」も、タイトル通りの布団の気持ちよさを歌ったナンバーなのですが、この曲は水曜日のカンパネラのケンモチヒデフミが参加したエレクトロダンスチューン。作詞作曲はマハラージャンとケンモチヒデフミの共作なのですが、途中の言葉の使い方とか、まさに水曜日のカンパネラを彷彿とさせるような部分もあったりするのが楽しいところです。

「波際のハチ公」も、軽快でリズミカルなシティポップの楽曲。ストレートな表現ではないのですが、あのハチ公が海に出かけるストーリー・・・なのでしょうか。アルバムのタイトルチューン的なナンバーなのが中盤の「ゾーンに入ってます。」で、「ゾーンに入る」という今どきの言葉を用いつつ、メランコリックで力強いピアノロック調の楽曲なのが特徴的。アニメタイアップのついた「くらえ!テレパシー」はいい意味でタイアップ曲らしい、爽やかで疾走感のあるポップチューン。エレクトロサウンドやピアノ、バンドサウンドも取り入れた賑やかなサウンドも楽しい楽曲に仕上がっています。

そして毎回、彼のアルバムのラストはカバー曲で締めくくっているのですが、今回のカバー曲はブラックビスケッツの1998年の楽曲「タイミング」。テレビのバラエティー番組から誕生した楽曲なのですが、今から聴くと、かなりファンクの色合いも強い楽曲で、マハラージャンの楽曲にもピッタリとマッチするようなカバーになっています。アラフィフ世代にとっては、懐かしさを感じつつ楽しめるカバーになっていました。

楽曲にインパクトもあるし、音楽性としてもソウルやファンクを取り入れた楽曲にはミュージシャンとしての実力を感じさせますし、ユーモアセンスも楽曲の音楽性を邪魔しない範囲で、ほどよいインパクトを与えていますし、いい意味でヒットポテンシャルのあるミュージシャンだと思います。確かに注目されているミュージシャンではあるのですが、もっともっと売れてもいいと思うのですが・・・。その名前やいで立ちがインパクトありすぎて、変なコミックミュージシャンだと思われて、逆に邪魔をしているのかなぁ。うーん。今回も文句なしに年間ベストクラスの傑作。是非とも聴いてみてください!お勧めです!!

評価:★★★★★

マハラージャン 過去の作品
僕のスピ☆なムン太郎
正気じゃいられない


ほかに聴いたアルバム

不器用な私だから/ヤングスキニー

本作にも収録されている「ベランダ feat. 戦慄かなの」がTikiTokチャートで1位を獲得するなど、人気上昇中の4人組バンドのEP盤。その大ヒットした「ベランダ」は、最近、よくありがちなミディアムテンポのラブバラードナンバーで、ちょっと保守的すぎる傾向は気になるところ。そのくせ、本作に収録している「精神ロック」ではやけに自分たちのロックなスタンスを前に押し出しているので、そこのギャップに違和感も覚えます。後半はロック色が強い作品が並ぶだけに、バンドとしてはもうちょっとロックな方向性に行きたいのでしょうか。メロにもそれなりにインパクトあるし、悪いバンドではないとは思うのですが、最近、この手のバンドはよくありがちだな、とも思ってしまった部分も。

評価:★★★★

CANDLE SONGS/a flood of circle

全5曲入りのミニアルバム。表題曲でもある「キャンドルソング」は、アジカンの後藤正文プロデュースということでも話題に。a flood of circleのアルバムは、ポップとヘヴィーの差が激しく、ポップ路線の時は駄作が多い、というイメージがあります。しかし、今回のアルバムは全体にポップ寄りの作品になっていたのですが、ベタなJ-POP的なメロディーに陥っているような違和感もなく、ヘヴィーなロックと同じ延長線上で楽しめるような、ロックだけどポップなアルバムに仕上がっていました。

評価:★★★★

a flood of circle 過去の作品
泥水のメロディー
BUFFALO SOUL
PARADOX PARADE
ZOOMANITY
LOVE IS LIKE A ROCK'N'ROLL
FUCK FOREVER
I'M FREE
GOLDEN TIME
ベストライド
"THE BLUE"-AFOC 2006-2015-
NEW TRIBE
a flood of circle
CENTER OF THE EARTH
HEART
2020
GIFT ROCKS
伝説の夜を君と
花降る空に不滅の歌を

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2024年5月23日 (木)

話題のトリビュートアルバムが1位獲得!

今週のHot Albums

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話題のトリビュートアルバムが見事1位獲得です。

なんと今週1位は「TM NETWORK TRIBUTE ALBUM -40TH CELEBRATION-」がCD販売数及びダウンロード数いずれも1位を獲得し、総合順位でも1位獲得。タイトル通り、宇都宮隆、小室哲哉、木根尚登のメンバーで、特に80年代から90年代にかけて一世を風靡した3人組ユニットTM NETWORK。1994年の「プロジェクト終了」後、散発的に再結成を繰り返し、2024年は結成40周年を迎えています。その彼らの代表曲を様々なミュージシャンがカバーしたトリビュートアルバム。特にB'zが「Get Wild」をカバーしたということで大きな話題となっています。

直近のオリジナルアルバム「DEVOTION」でもビルボードで最高位5位。2020年にリリースしたベストアルバムでもビルボードではベスト10入りを果たしていない中、トリビュートアルバムが1位獲得というのは、Disc2は本人たち歌唱の「ベストアルバム」的な構成とはいえ、ちょっと複雑な気持ちにはなります。特に「Get Wild」はちょっとネットミーム的に騒がれ過ぎな感もあるので・・・。オリコン週間アルバムランキングでも初動売上2万7千枚で2位初登場となっています。

2位にはimase「凡才」が初登場。CD販売数及びダウンロード数3位。主にTikTokにおいて動画が話題となっている男性シンガーソングライターで、本作がデビューアルバム。Hot100では「NIGHT DANCER」の38位が最高位のようですが、TikTokで話題となった楽曲をあつめたこのアルバムではいきなり2位と上位にランクインしてきました。オリコンでも初動売上1万1千枚で3位に初登場しています。

3位は韓国の男性アイドルグループSEVENTEEN「17 IS RIGHT HERE」が先週と同順位をキープしています。

続いて4位以下ですが、4位には角松敏生「MAGIC HOUR ~Lovers at Dusk~」が初登場。ベテランの根強い人気を感じます。7位は韓国の男性アイドルDOYOUNG「YOUTH」がベスト10初登場。韓国の男性アイドルグループNCTのメンバーによるソロ作。8位初登場はモーニング娘。'23「モーニング娘。'23 コンサートツアー秋『Neverending Shine Show ~聖域~』譜久村聖 卒業スペシャル」。配信限定のライブアルバム。9位には「THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS STARLIGHT MASTER COLLABORATION! ジュビリー」がランクインしています。


今週のHeatseekers Songs

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Heatseeekers1位はKERENMI「世界 feat. Moto from Chilli Beans. & Who-ya Extended」が獲得。YUKIやSuperflyへの楽曲提供や数多くのミュージシャンへのプロデュースワークでもおなじみの蔦谷好位置の変名プロジェクト。同作は「NEW VEZEL Honda SUV」のCMソングにも起用され、今週のラジオオンエア数で1位を獲得。Heatseekersチャートでも見事1位獲得となりました。


今週のTikTok Weekly

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TikTok Weeklyは今週も韓国の女性アイドルグループILLIT「Magnetic」が1位を獲得。これで5週連続の1位となっています。TikTok Weeklyで今、話題となっているのが今週3位にランクインしているandymori「すごい速さ」。andymoriは2007年に活動を開始し、2014年には解散した3人組バンド。叙情感のある楽曲は音楽リスナーの高い評価を集めたのですが、当時はアルバム1枚がベスト10ヒットを記録した程度で、大ブレイクとまでは至りませんでした。ただ、なぜかここに来て、TikTokで、この曲に合わせて身体を回転させるダンス動画が流行し、TikTokチャートで上位にランクインしてきています。andymoriは私もとても良いバンドだと思っていただけに、このような形でも広く若い層にまで聴かれるというのはうれしいニュースです。これを機に、もっともっと注目されてほしいなぁ。


今週のニコニコVOCALOID SONGS

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VOCALOID SONGS1位もサツキ「メズマライザー」が先週から変わらず3週連続の1位を獲得。ちなみに同曲はYouTube再生回数で2位、Heatseekersチャートでも8位にランクインしています。

今週のHot Albums&各種チャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2024年5月22日 (水)

今週も圧倒の1位

今週のHot100

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再び1位で独走中です。

今週もCreepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」が1位を獲得。ストリーミング数は15週、カラオケ歌唱回数は10週、YouTube再生回数も2週連続の1位獲得。ダウンロード数は1位から3位にダウンしたものの、これでベスト10は18週連続、ベスト3は17週連続、1位は3週連続通算16週目の1位となっています。

2位はSTARTO ENTERTAINMENT(旧ジャニーズ事務所)所属の男性アイドルグループAぇ!groupのデビュー作「<<A>>BEGINNING」がランクイン。CD販売数1位、ラジオオンエア数3位。オリコン週間シングルランキングでは初動売上62万5千枚で1位初登場となっています。

3位はMrs.GREEN APPLE「ライラック」が先週の4位からランクアップし、2週ぶりのベスト3返り咲き。特に今週、ストリーミング数が3位から2位にアップ。YouTube再生回数も4位から3位にアップしています。テレビ東京系アニメ「忘却バッテリー」オープニングテーマ。アニソンであることもそうですが、ただMrs.GREEN APPLEの人気も上昇しており、今後のロングヒットにつながりそうです。

続いて4位以下の初登場曲ですが、まず7位にハロプロ系女性アイドルグループJuice=Juice「トウキョウ・ブラー」がランクイン。CD販売数2位、ダウンロード数13位、ラジオオンエア数17位。オリコンでは初動売上4万7千枚で2位初登場。前作「プライド・ブライド」の初動4万6千枚(2位)から若干のアップ。

初登場はもう1曲。9位にMY FIRST STORY×HYDE「夢幻」がランクイン。若者層を中心に高い人気を誇るロックバンドMY FIRST STORYと、L'Arc~en~CielのHYDEのコラボという異色の組み合わせの本作は、フジテレビ系アニメ「『鬼滅の刃』柱稽古編」のオープニングテーマに起用されています。今週、Creepy Nutsから奪い取る形でダウンロード数1位を獲得。ダウンロード数以外はランクインしていませんが、ストリーミング配信はされているようですので、今後、ランクインしてきそう。また6月5日にはCDリリースも予定しています。以前の「鬼滅の刃」の楽曲同様、ロングヒットとなるのでしょうか。

またベスト10返り咲き曲も。Vaundy「タイムパラドックス」が先週の12位からランクアップし、2週ぶりのベスト10返り咲き。通算11週目のベスト10ヒットとなっています。

他のロングヒット組は、まずOmoinotake「幾億光年」が5位から4位にアップ。これでベスト10ヒットは連続14週に。ただし、YouTube再生回数こそ7位から6位にアップしたものの、ストリーミング数は2位から3位、ダウンロード数も12位から14位にダウンしています。

tuki.「晩餐歌」も9位から5位に再びアップ。これで25週連続のベスト10入り。ダウンロード数は10位から7位、ストリーミング数は6位から5位、YouTube再生回数も6位から5位と全体的に再び上昇傾向となっています。

また今週、韓国の女性アイドルグループILLIT「Magnetic」が6位にランクインし、8週連続のベスト10ヒットを記録しています。TikTok Weeklyでは1位を走り続けている同曲ですが、Hot100でもロングヒットを記録。ストリーミング数は3週連続の4位を記録しており、今後のヒットも予想されます。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums&各種チャート!

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2024年5月21日 (火)

エレクトロサウンドを取り入れつつ、基本的にはいつものジザメリ

Title:GLASGOW EYES
Musician:The Jesus And Mary Chain

先日はRIDEのニューアルバムを紹介しましたが、まさか2020年代になって、RIDEにジザメリが普通にアルバムをリリースしてくる時代が来るとは・・・。80年代インディーギターロックの雄で、特にデビュー作「Psychocandy」はその後のシューゲイザーバンドにも多大な影響を与えたThe Jesus And Mary Chain。2007年に再結成を果たし、2017年には実に19年ぶりとなるニューアルバムをリリース。その後、しばらく新作のリリースはなかったのですが、ここに来て、約7年ぶりとなるニューアルバムがリリースされました。

先日紹介したRIDEは、ほどよく新しいサウンドを取り入れつつ、基本的には昔ながらのRIDEらしさもしっかり維持しているスタイルが特徴的でしたが、ジザメリに関しても同じような傾向を感じます。特に特徴的だったのが中盤の「Jamcod」で、メタリックなエレクトロビートにシンセのサウンドが前面に押し出されたサウンドなのですが、淡々としたローファイなボーカルにグルーヴィーなバンドサウンドはいかにもジザメリらしい作品。途中、しっかりとギターのノイズが楽曲を埋め尽くすような展開も聴かせてくれます。

同曲に続く「Discotheque」も同様。タイトルそのままのディスコ調のエレクトロビートながらも、ローファイでグルーヴィーなバンドサウンドが重なるスタイルで、こちらもいわばジザメリ流のディスコサウンドと言えるかもしれません。「Silver Strings」も同様で、リズミカルな打ち込みのサウンドにローファイなボーカルが特徴的。エレクトロサウンドを取り入れつつも、マンチェサウンドっぽい作風は、そのままジザメリっぽさとも言えるでしょう。

今回のアルバムはこのように、シンセのサウンドを取り入れたエレクトロ寄りの作風にまとめつつも、全体的には私たちがイメージするジザメリの音といったスタイルの作品となっています。アルバムの冒頭「Venal Joy」も、シンセの音を入れつつ、疾走感あるグルーヴィーなギターサウンドに、いかにもジザメリらしさを感じますし、「American Born」も楽曲を埋め尽くすヘヴィーなギターノイズでグルーヴ感のある彼ららしいナンバー。「Chemical Animal」もローファイな出だしからして、いかにもジザメリらしい楽曲に仕上がっており、しっかりとファンの壺をついた作品が続いていきます。

なかなかユニークなのが「The Eagles And The Beatles」で、タイトル通り、イーグルスとビートルズの融合的な曲調を目指したのでしょうか?確かに、かなり露骨にビートルズっぽい作風を感じさせる内容に。歌詞にもボブ・ディランやらローリングストーンズやらビーチボーイズやらも登場。偉大なるロックの先人たちへのメッセージ的な歌詞も特徴的でした。

前述の通り、エレクトロサウンドを取り入れつつも、基本的にはジザメリらしい作品に。思えば80年代の活動時も、アルバム毎に様々なスタイルを取り入れきた彼らですが、そこから30年以上が経った今でも、そのスタンスは変わらない、といった感じなのでしょうか。楽曲の出来としても往年と変わらない出来栄えですし、かつて彼らを聴いていたような方も是非ともチェックしてほしい作品。なんだかんだ言っても、かつて自分がはまったバンドが、再度、これだけ積極的に活動して新作もリリースしてくれるというのは、やはりうれしいですね。

評価:★★★★★

The Jesus and Mary Chain 過去の作品
Damage&Joy
Sunset 666 (live At Hollywood Palladium)


ほかに聴いたアルバム

Ten Total/1010benja

Tentotal

アメリカはカンザスを中心に、プロデューサーとしても活動しているHIP HOPミュージシャン。今風のトラップ的なサウンドを取り入れつつ、一方ではR&Bやソウルの要素の強い、メロウでメロディアスな歌モノの要素も強い作品。メランコリックなメロディーラインは耳に残りますし、いい意味でHIP HOPリスナー以外へのアピール要素も強い感じ。ソウルのアルバムとしても十分楽しめそう。

評価:★★★★★

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2024年5月20日 (月)

バラエティー富んだエレクトロポップが楽しい

Title:For Your Consideration
Musician:Empress Of

今回紹介するのは、Empress Of名義で活動しているアメリカはロサンジェルスを拠点に活動している女性シンガーソングライター、Lorely Rodriguezの約4年ぶりとなる4枚目のアルバム。エレクトロサウンドをベースに軽快なポップチューンを聴かせてくれる彼女。まだまだ知る人ぞ知る的なミュージシャンである彼女ですが、今後にヒットポテンシャルを感じられる魅力的なアルバムになっていました。

まず今回のアルバム、全11曲入りという内容ながらも、アルバム全体でわずか31分という短さも、ポピュラーミュージックという観点からすると大きな魅力と言えるでしょう。1曲あたり3分弱という内容。ある意味、ダレることなく、一気にアルバムを楽しめる構成。アルバムを聴く入り口としても、非常に聴きやすい内容である、と言えるかと思います。

そしてもう1点、本作が魅力的だったのは、彼女の楽曲、一言で言ってしまうと「エレクトロポップ」ということになるのですが、そう一言でまとめきれないバラエティー富んだ展開が楽しめる点でした。

アルバムはタイトルチューン「For Your Consideration」からスタートするのですが、彼女の吐息混じりのリズムトラックと清涼感あって伸びやかなボーカルが特徴的な、幻想的な楽曲。続く「Lorelei」は軽快なエレクトロのビートが前面に押し出されたテンポよくダンサナブルなナンバーで、ある意味、今時のポップといった印象を受けます。かと思えば「Preciosa」は哀愁感たっぷりのメロディーラインが印象的。トライバル感のあるエレクトロビートも大きな特徴となっています。

アルバムのひとつの核となっているのが4曲目の「Kiss Me」で、あのRina Sawayamaが参加したR&Bの楽曲。メランコリックに聴かせるメロウなボーカルも印象的で、ある意味、一番の「売れ線」といった感じのポップチューンに仕上がっています。

その後も軽快なエレクトロトラックでリズミカルな「What Type Of Girl Am I?」や、アコギの音色からスタートし、ギターサウンドを前面に出しつつ、メランコリックにまとめる「Baby Boy」、そしてスペーシーなサウンドでスケール感もって歌い上げるラストチューン「What's Love」まで、バラエティー富んだ楽曲が続いていきます。

そしておそらく彼女のもうひとつの特徴なのが、彼女が中南米のホンジュラスにその出自を持つシンガーであるという点でしょう。正直言って、ラテンという要素はあまり強くありませんが、楽曲によってはトライバルなリズムが垣間見れたり、また、非常に哀愁感漂うメロディーラインを書いてくるあたりは、ラテン系の影響と言えるのかもしれません。また楽曲によってはスペイン語も入っていたりして、エキゾチックな雰囲気を作り出しています。この全面的に取り入れているのではなく、ほんのりラテンなフレーバーを醸し出しているバランスもまた、彼女の楽曲の大きな魅力なのかもしれません。

アルバムでは、特に後半「Cure」「Facil」などエレクトロのビートを押し出したリズミカルなナンバーもありますし、エレクトロ系が好みの方から、R&B系が好きな方まで幅広く楽しめるポップアルバムだったと思います。今後は徐々にその知名度も高くなってくるのではないでしょうか。広い層にお勧めしたい、ポップな傑作でした。

評価:★★★★★

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2024年5月19日 (日)

しっかりと現役感のある傑作

Title:Interplay
Musician:RIDE

シューゲイザー御三家と呼ばれ(まあ、そもそも「御三家」という呼ばれ方をするのは日本だけでしょうが)、90年代のギターロックシーンで絶大な人気を得たロックバンドRIDE。2015年の再結成後は比較的、コンスタントに活動を続け、本作は約3年半ぶりとなるニューアルバム。再結成後のアルバムも、本国イギリスのチャートでもヒットを飛ばしており、本作も全英チャート8位と、変わらないその人気ぶりを伺える結果となっています。

さて、前作「THIS IS NOT A SAFE PLACE」では、バンドとして新たな方向性を模索しつつも、一方ではRIDEらしさをしっかり残した、ある意味、バランスの取れたアルバムになっていました。その観点からすると、今回のアルバムも新たな方向性を模索しつつも、RIDEらしさはしっかりと残したアルバムに仕上がっていました。

例えば1曲目「Peace Sign」は、かなり軽快で明るいポップなアレンジが施されており、爽やかでポップなロックバンドという、ちょっとRIDEのイメージとは違うような、そんな作品に仕上がっていますし、続く「Last Frontier」もかなり明るい雰囲気のサウンドに仕上げられています。先行シングルとなった「Monaco」も、打ち込みのリズムマシーンを入れつつ、サウンド的には明るさを感じさせますし、より明るいポップ志向を感じさせます。

ただ、全体的には前作よりは、もうちょっとシューゲイザーらしいホワイトノイズとグルーヴィーなサウンドを志向した、RIDEらしいと感じさえせる楽曲が多かったようにも思います。前述の作品も、基本的にはノイジーなギターとグルーヴィーなリズムはしっかりと楽曲の中に流れていましたし、特に後半の「Midnight Rider」では、ヘヴィーさを感じさせつつ、うねるように聴かせるバンドサウンドとダウナーなメロディーラインはいかにもRIDEらしさを感じます。

もっとも、ラストに流れる「Yesterday is Just a Song」の重いこと重いこと・・・。シンセも取り入れて荘厳さを感じさせるヘヴィーなサウンドを、これでもかというほど重ね、重厚に音を塗りたくるようなサウンドに、その重厚さに合わせたような重々しく聴かせる歌が特徴的。非常に重厚な印象を抱きつつ、アルバムは幕を下ろします。

基本的にはRIDEらしさをしっかりと主軸に置きつつ、ポップなメロディーラインでより聴きやすさは増した感じのするアルバム。復活後もアルバムをヒットさせ続ける彼らですが、彼らの勢いにも納得できる、しっかりと現役感のある傑作だったと思います。昔のRIDEが好きだった方はもちろん、最近知ったという方にも文句なしにお勧めできる作品です。

評価:★★★★★

RIDE 過去の作品
OX4 -the best of RIDE
Weather Diaries
Tomorrow's Shore
THIS IS NOT A SAFE PLACE

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2024年5月18日 (土)

Beyonceのアルバム

Title:Cowboy Carter
Musician:Beyonce

Cowboycarter

約1年8ヶ月ぶりとなるBeyonceのニューアルバム。前作「Renaissance」に続く3部作の2作目となるアルバムということで、今回は特にカントリー音楽に向き合ったアルバムになっているそうです。

アメリカは特に人種によって聴く音楽があるそうで、特に保守的な白人層が聴くカントリーミュージックの分野にとっては、黒人でリベラルな考え方を持つBeyonceの音楽は拒絶される傾向にあるそうです。もともとはBeyonce自身、祖父の影響で幼い頃からカントリーを聴いて育っていたそうですが、今回、カントリーのアルバムを作るきっかけとなったのは2016年に行われた第50回カントリーミュージックアワードに出演し、カントリーバンドのThe Chicksと共に、アルバム「Lemonade」収録曲の「Daddy Lessons」を歌ったことがきっかけ。批評家を中心に大絶賛を受けた一方、一部のカントリーミュージックのファンからは大バッシングを受け、さらにはグラミー賞の主催者であるザ・レコーディング・アカデミーでは、同曲をカントリーミュージックとして考慮するのを否定する声明を出すなど、大きな波紋を呼びました。

今回はそのような経験に基づいてリリースされたアルバム。まず先行シングルとしてリリースされた「TEXUS HOLD'EM」は、バンジョーとフィドルというカントリーを代表する楽器によってかき鳴らされる、いかにもカントリーなナンバー。ビルボードチャートで1位を獲得するなど大きな話題となった一方、一部のカントリーラジオ局では、放送を拒否し、炎上騒ぎになるなど、あらためて音楽をめぐるアメリカの分裂状況を示唆するような出来事も発生しています。

そしてリリースされた今回のアルバムは確かにカントリーの色合いも強い作品に仕上がっています。ビートルズのカバーである「BLACKBIRD」ではバックにカントリーのミュージシャンたちを起用し、カントリー色の強いカバーとなっていますし、中盤にはカントリーのスタンダードナンバー的な「JOLENE」のカバーも収録。その後も、「ALLIIGATOR TEARS」や、カントリー歌手のウィリー・ジョーンズを迎えた「JUST FOT FUN」や、マイリー・サイラスをゲストに迎えた「II MOST WANTED」など、カントリーの色合いの強い曲の並ぶアルバムとなっています。

また、今回のアルバムのタイトルやジャケット写真も非常に示唆的。アルバムタイトルは、古き良きアメリカ文化の象徴であるカウボーイと、彼女の本名を組み合わせたタイトルですし、ジャケット写真も、大きなアメリカの国旗を持った彼女が、白い衣装を身にまとい、白い馬に乗る姿は、黒人女性であることを理由にカントリーから締め出そうとする保守的な白人層に対しての挑戦と捉えることも出来ます。

ただし、このアルバムは単純に彼女がカントリーに挑戦したアルバム、という訳ではありません。アルバム発表に際して彼女が発表したコメントでは「これはカントリー・アルバムではありません。これはBeyonceのアルバムです。」と語っています。実際、アルバム全体としてカントリー以外の要素も多く、そもそも1曲目「AMERIICAN REQUIEM」から、荘厳なゴスペル的な雰囲気からスタート。「SPAGHETTII」はHIP HOPですし、「YA YA」も彼女のパワフルなボーカルが耳を惹くソウルな楽曲。最後を締めくくる「AMEN」もゴスペル風に荘厳に歌い上げる楽曲で、おそらく1曲目とリンクしているのではないでしょうか。

本作をカントリー・アルバムではなくBeyonceのアルバムであると語った彼女。確かに彼女のアルバムを単純に「カントリー」とひとつのジャンルに規定してしまうのもまた、彼女が黒人女性だからという理由でカントリーから除外した保守白人層と同じ、ひとつの枠組みに当てはめようとする考え方なのかもしれません。そう考えると本作は、カントリーでもソウルでもなく、まさにBeyonceのアルバム。カントリーに限らず、様々なアメリカの音楽を詰め込んでいるあたり、そういう主張を感じますし、また、分断されるアメリカ社会へのアンチを突き付ける、強いメッセージ性も感じるアルバムとも感じました。

今年秋に予定されているアメリカ大統領選挙。アメリカの分断を引き起こしている、もしくはそれを利用しているトランプが大統領に返り咲く可能性が言われています。万が一、彼が大統領に返り咲いた場合に、アメリカや世界の分断が進むであろうことが予想され、暗澹とした気持ちにさせられますが、そんな2024年に、Beyonceがこのようなアルバムをリリースした意義は非常に大きいと思います。まさに本年を代表する傑作の1枚。全体的にはしっかりと歌を聴かせるアルバムが多かっただけに、非常にポップにまとまっていた印象を受ける本作。Beyonceのすごさをあらためて感じた傑作アルバムですし、日本人にとってもそのメッセージはしっかりと伝わってきます。このような世界の分裂が、少しでも音楽の力で埋まっていけばよいのですが。

評価:★★★★★

BEYONCE 過去の作品
I Am...Sasha Fierce

I AM...WORLD TOUR
Beyonce
Lemonade
HOMECOMING:THE LIVE ALBUM
The Lion King:The Gift
RENAISSANCE

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2024年5月17日 (金)

ブラジルの音楽シーンの奥深さを知る

今回は最近読んだ音楽関連の書籍の紹介です。

「ブラジリアン・ミュージック200」。タイトル通り、ブラジルの楽曲を200曲紹介し、ブラジリアン・ミュージックの世界を紹介している1冊。著者の中原仁はJ-WAVEの人気番組「サウダージ!サウダージ」を永年手掛け、ブラジル音楽と文化を精力的に発信していることでも知られる音楽プロデューサー。山下洋輔やスカパラのブラジル公演制作にも従事したそうです。

ブラジルを代表する楽曲200曲を集めている、その情報量にまずは圧倒。1899年のブラジルのポピュラーソング第1号と言われる「オ・アブリ・アラス」という曲からスタートし、時代別に羅列。そのどの曲もオリジナル曲にカバー曲の音源まで紹介。ラストは2008年の「アイ・シ・エウ・チ・ペゴ」まで、100年以上の期間にわたる楽曲を紹介しています。

そのどの曲に関しても、概ね400文字程度の比較的短い紹介文が付されています。ここでも様々な曲にまつわるエピソードや関連するような情報を紹介。また、その曲紹介の合間にはコラムとして、200曲におさまりきらないその他の楽曲なども紹介。1曲あたりの情報量は比較的短めながらも、全体をまとめると、その情報の多さに、著者のブラジル音楽に対する深い造詣を感じます。

また、本書の大きな特徴として、同書で紹介している200曲のプレイリストがApple MusicとSpotifyで紹介されていること。基本的には、同書についてくるQRコードを読み取る必要があるようで、通常の検索では出てこないようです。このプレイリストで本書に紹介されている名曲たちを楽しみながら、この本を読み進めることが出来る構成となっています。

そしてこの200曲をプレイリストで聴きながら感じるのは、一言でブラジリアン・ミュージックと言っても、その音楽性の広さと奥深さを感じます。一般的にブラジル音楽というとサンバやボサ・ノヴァといったジャンルが思い起されると思います。本書でももちろん、数多くのサンバやボサ・ノヴァの名曲たちが紹介されています。ただ、本書の大きな特徴なのは、ここで紹介されているのはいわゆる「ブラジル音楽」ではなく「ブラジルの音楽」。要するに、サンバやボサ・ノヴァ以外の音楽もしっかりとフォローされています。

楽曲によっては、アフリカ音楽の影響を受けているようなトライバルな曲があったり、ロックやサイケ、時代によってはフォークソングもあれば、もちろんラップもあったり。さらにジルベルト・ジルの「Palco」という楽曲は、完全にビートルズのサージェントペッパーの影響を強く受けていますし、さらに「ホーザ・ヂ・ヒロシマ(広島のバラ)」といった、原爆をテーマとした反戦歌のような、日本人にとってはチェックしておきたい曲などもあっちります。個人的にはいろいろと聴く中で、ブラジル音楽のレジェンドで、私でもその名を知っているジルベルト・ジルの楽曲は、ブラジル音楽のみならず、ロックやソウルなど様々な音楽性を取り入れた独自の作風がとてもユニーク。非常に惹かれるものがありました。

そのように、特にプレイリストを聴きながら楽しむと、ブラジルの音楽の奥深い世界を楽しめる1冊。一言でブラジルの音楽といっても、多種多様な音楽性に強く惹かれる内容となっていました。

ただ、その上であえて言わせてもらうと・・・一方で本書、正直なところブラジル音楽の初心者に対しては、少々厳しい部分も感じました。

正直、本書の中では数多くの固有名詞が登場します。ただし、その固有名詞に対しての注釈等が本書にはありません。最後に曲名や人物名の索引が登場しますが、固有名詞がほとんど詳しい説明もなくいきなり登場するような箇所も多々ありますし、そもそも聴きなれない固有名詞が続くような文章も多く、読んでいてかなり辛い部分も。ある程度、ブラジルの音楽シーンについて知っていることを前提とするような書き方も目立ち、初心者に対してはかなり厳しい内容になっていたと思います。

実際、私自身もブラジル音楽に関しては完全な初心者。プレイリストを聴きながら読み進めたため、それなりに楽しめたのですが、もしプレイリストがなかったら、読んでいてかなり辛かっただろうなぁ、ということを感じてしまいます。この本でブラジルの音楽シーンについて体系的に知れたか、と言われるとかなり微妙なところ。著者の意図として、やはり最低限のブラジルの音楽シーンについての知識がある人をターゲットとしているのでしょうか。もし、初心者をターゲットとしているのならば、正直、紹介する曲を100くらいに絞った上で、もっと体系的に理解できるように丁寧な説明が必要だったように思うのですが。

そういう意味で、ブラジルの音楽シーンを体系的に知ろう、とするのであれば、最初の1冊としてはあまりお勧めは出来ません。ただ、プレイリストを聴きながら、ただブラジルの音楽をたくさん聴きたい、という方にとっては、非常によく出来た1冊だったと思います。また、他の書籍でブラジルの音楽について最低限の知識を仕入れた後の1冊としても最適だったかも。それはともかく、圧倒的な情報量で、ブラジルの音楽シーンの奥深さを知れた1冊でした。

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2024年5月16日 (木)

またアイドル系が上位に

今週のHot Albums

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今週はアイドル系が上位に並びました。

まず今週の1位は元ジャニーズ系アイドルグループKis-My-Ft2「Synopsis」が獲得。CD販売数1位。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上12万5千枚で1位初登場。直近作はベスト盤「BEST of Kis-My-Ft2」で、同作の初動24万7千枚(1位)からダウン。オリジナルアルバムとしての前作「To-y2」の初動19万1千枚(1位)からもダウンしています。

2位は韓国の女性アイドルグループKep1er「<Kep1going>」がランクイン。CD販売数2位、ダウンロード数7位。フルアルバムとしては本作が1枚目。オリコンでは初動売上6万5千枚で3位初登場。直近のミニアルバム「Magic Hour」の初動1万3千枚(7位)よりアップしています。

3位は先週1位を獲得した韓国の男性アイドルグループSEVENTEEN「17 IS RIGHT HERE」が2ランクダウンながらもベスト3をキープしています。

続いて4位以下初登場ですが、4位はEden「あんさんぶるスターズ!!アルバムシリーズ『TRIP』」。男性アイドル育成ゲーム「あんさんぶるスターズ!!」のキャラクターソングCD。5位は女性アイドルグループももいろクローバーZ「イドラ」が初登場。7位は「A3!INNOCENT SUMMER EP」がランクイン。女性用イケメン役者養成ゲームのサントラ。そして10位にはロックバンドMY FIRST STORY「The Crown」がランクイン。ボーカルHiroはONE OK ROCKのTakaの弟=森進一、昌子の子供のバンドですね。


今週のHeatseekers Songs

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Heatseeekers1位は808「You」が2週連続で1位を獲得。まだ各種チャートではランク圏外ですが、徐々に上位にも食い込んでくるでしょうか。


今週のTikTok Weekly

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TikTok Weeklyも先週と変わらず。韓国の女性アイドルグループILLIT「Magnetic」が4週連続の1位を獲得。Hot100では今週6位から7位にダウン。ただ、Hot100は7週連続のベスト10ヒットを記録しています。


今週のニコニコVOCALOID SONGS

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VOCALOID SONGS1位もサツキ「メズマライザー」が先週から変わらず2週連続の1位を獲得。結果、今週はHeatseekers、TikTok、VOCALOIDいずれも先週から1位が変わらないという結果となっています。

今週のHot Albums&各種チャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2024年5月15日 (水)

再度、1位独走中

今週のHot100

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再び1位で独走中です。

今週もCreepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」が1位をキープ。ストリーミング数は14週連続、カラオケ歌唱回数も9週連続1位となっているほか、YouTube再生回数も先週に引き続き1位。さらに今週、ダウンロード数も5週ぶりの1位返り咲きとなり、ランクインしている全チャートについては1位獲得となりました。もっとも、当初から対象外のCD販売数とともかく、ラジオオンエア数だけは伸び悩んで、今週は圏外となっているのですが。これでベスト10は17週連続、ベスト3は16週連続、1位は通算15週目の獲得となります。

2位は男性アイドルグループ&TEAM「五月雨(Samidare)」が獲得。韓国の芸能事務所、HYBE傘下の日本法人HYBE LABELS JAPAN所属のグループで、本作がシングルとしては初の作品となります。CD販売数2位、ダウンロード数7位。オリコン週間シングルランキングでは初動売上27万6千枚で2位初登場。

3位は秋元康系の女性アイドルグループ日向坂46「君はハニーデユー」が初登場。CD販売数1位、ラジオオンエア数15位。オリコンでは初動売上44万8千枚で1位初登場。前作「Am I ready?」から初動売上は横バイ(1位)となっています。

続いて4位以下の初登場曲ですが、今週は1曲のみ。LDH系男性アイドルグループTHE RAMPAGE from EXILE TRIBE「CyberHelix」が6位にランクイン。CD販売数3位、それ以外のチャートはランク圏外となっています。オリコンでは初動売上6万7千枚で3位初登場。前作「片隅」の初動3万9千枚(2位)からアップしています。

ロングヒット組では、まずOmoinotake「幾億光年」は4位から5位にダウン。ただし、ストリーミング数は2位をキープし、YouTube再生回数も10位から7位にアップ。ダウンロード数は7位から12位にダウンしてしまいましたが、まだまだ根強い人気を感じさせます。これで13週連続のベスト10ヒットとなります。

tuki.「晩餐歌」は今週、9位にダウン。ダウンロード数は9位から10位、YouTube再生回数も5位から6位にダウン。ただし、ストリーミング数は4週連続の6位をキープしており、まだまだ巻き返しの可能性も?これで24週連続のベスト10ヒットとなりました。

一方、Vaundy「タイムパラドックス」は今週12位にダウン。粘り強い人気を見せていましたが、ベスト10ヒットは10週連続でストップとなりました。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums&各種チャート!

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2024年5月14日 (火)

名前がとにかくインパクト有!

Title:離婚伝説
Musician:離婚伝説

今回も、最近、注目されている若手ミュージシャンのアルバムの紹介。離婚伝説。本作がデビュー作となるボーカルの松田歩と、ギターの別府純の2人組によるユニット。まずその名前に、あまりにも大きなインパクトがあります。離婚伝説、おそらくこの奇妙な名前、一度聴いたら忘れられないのではないでしょうか。とにかく、音楽よりも先に、そのミュージシャン名が一度聞いたら忘れられない、そんなインパクトの強さがあります。

さらにこの名前にはもうひとつ大きな意味もあります。おそらく、ある程度ソウルミュージックを好んで聴く人ならば、この名前の元ネタはご存じでしょう。この「離婚伝説」という奇妙な名前は、ソウルミュージックの巨匠、マーヴィン・ゲイが1978年にリリースしたアルバム「Here My Dear」の邦題がこの「離婚伝説」。もともと、元妻への慰謝料の支払いのためにこのアルバムを作ったという逸話を持つ作品で、そのため「離婚伝説」という邦題がつけられています。

そのため、ソウルミュージックが好きな方にとっては、「離婚伝説」というと、まずマーヴィン・ゲイのアルバムを思い出すことは間違いありません。だからこそ、この名前を自らのユニットと名前として用いた点で、特にソウルミュージックのリスナーにとっては、自然にマーヴィン・ゲイと比較してしまうでしょう。それだけに、あえてこの離婚伝説という名前を自らの名前として用いるだけで大きな覚悟を感じます。

ただ、本作を聴くと、彼ら自身、かなり自覚的に、自らを売り込むためにこの名前を用いているような印象を受けました。というのも、アルバムを聴いて感じるのは、特に最近話題となっているシティポップ的な要素をわかりやすい形で意識的に取りこみ、楽曲自体も「売れること」を意識したような作風を感じたからです。

実際、このアルバムの1曲目を飾るのも「愛が一層メロウ」という、タイトルからしてかなりわかりやすいメロウなフィリーポップのナンバー。ほどよくファンキーなリズム感に、ファルセットボーカルも上手く用いたポップなメロディーラインがインパクトがありつつ、わかりやすく、ヒットポテンシャルも感じさせる作品。2曲目の先行シングル「あらわれないで」もハイトーンボイスをメロウに聴かせつつ、メランコリックでポップなメロが印象に残る、インパクトのある楽曲となっているなど、かなり売れることにも自覚的な、ヒットポテンシャルのある楽曲が目立ちます。

ただ、この売れることに自覚的な方向性が、楽曲によっては少々ベタすぎるような印象も受けてしまいました。例えば「萌」などは、ミディアムチューンでしんみり聴かせるバラードナンバーですが、いかにも90年代のJ-POP的なメロディーとアレンジは懐かしさも感じる一方、悪い意味でのベタさも感じます。また、基本的にファルセット気味のボーカルでメロウに聴かせるポップな楽曲という方向性の一本やりな部分もあり、最初は心地よく聴いていたものの、アルバムを最後まで聴くと、ちょっと飽きてきてしまったというのも正直な印象となってしまいます。

アルバムとして決して悪くはありません。楽曲もよく出来ているのも間違いないでしょう。ただ、一方でこの似たような方向性を考えるのなら、メロウなソウルミュージックの方向性で例えばキリンジや、よりポップや売れ線路線で言えばKing Gnuなどに比べるとまだ一歩二歩、物足りなさもあったかな、という感じがします。まだまだこれからのミュージシャンといった感じでしょうか。ただ、いいものを持っていることは感じるミュージシャンなだけに、今後の成長に期待したいところです。

評価:★★★★


ほかに聴いたアルバム

「今、何処」東京国際フォーラム 2023 (LIVE)/佐野元春&THE COYOTE BAND

Imadokolive

2022年7月にリリースされたアルバム「今、何処」リリースに続いて行われた全国ツアー「今、何処TOUR2023」より、昨年9月3日に行われた東京国際フォーラムでのライブの模様を収録したライブ盤。Disc1は、そのアルバム「今、何処」が曲順もそのままにライブで再現。Disc2は、その直前にリリースされたアルバム「ENTERTAINMENT!」からの曲と過去の代表曲。2022年にリリースされた2枚のアルバムがどちらも傑作だっただけに、ライブも、今なお現役感あふれ若々しい、佐野元春のステージを堪能できる内容。特にDisc2の後半、「約束の橋」以降、代表曲が続くクライマックスとなっており、ライブCDを聴いていても、こちらのテンションも一気にあがります。佐野元春も、一度、ワンマンライブに行きたいなぁ。

評価:★★★★★

佐野元春 過去の作品
ベリー・ベスト・オブ・佐野元春 ソウルボーイへの伝言
月と専制君主
ZOOEY
BLOOD MOON
MANIJU
自由の岸辺(佐野元春&THE HOBO KING BAND)
或る秋の日
MOTOHARU SANO GREATEST SONGS COLLECTION 1980-2004
THE ESSENTIAL TRACKS MOTOHARU SANO & THE COYOTE BAND 2005 - 2020(佐野元春&THE COYOTE BAND)
ENTERTAINMENT!(佐野元春&THE COYOTE BAND)
今、何処(佐野元春&THE COYOTE BAND)
2022 LIVE AT SENDAI,FUKUOKA,OSAKA(佐野元春&THE COYOTE BAND)

ALL SEASONS BEST/コブクロ

結成25周年企画として、2023年に配信リリースした「四季」をテーマとしたコンピレーションアルバム「Seasons Selection」。本作は、そこでリリースされた4組の作品をひとまとめとしたアルバム。全4枚組というフルボリュームの作品で、コブクロというと良くも悪くもJ-POPのミュージシャンで、少々くどさを感じる部分もあったため、全4枚組というボリュームを聴くのは辛いかな・・・と思っていたのですが、実際に聴き始めると、耳なじんだヒット曲の連続で、フックも効いたポップなメロも心地よく、熱心なファンではない私も、一気に聴いて楽しめるアルバムになっていました。例のメンバーの浮気問題から、最近は人気も失速気味の彼らですが、なんだかんだいってもヒットポテンシャルのある魅力的なポップスを書くバンドなんだな、と彼らの実力を再認識したアルバムになっていました。あ、ちなみに曰くつきの「永遠にともに」は未収録でした。

評価:★★★★

コブクロ 過去の作品
5296
CALLING
ALL COVERS BEST
ALL SINGLES BEST2
One Song From Two Hearts
TIMELESS WORLD
ALL TIME BEST 1998-2018
Star Made

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2024年5月13日 (月)

あの名盤を、ボリューミーな内容で

Title:Piano Man 50th Anniversary Deluxe Edition
Musician:Billy Joel

今年、実に約16年ぶりとなる来日公演を行い、大きな話題となったBilly Joel。その彼の出世作となったのが1973年にリリースされたアルバム「Piano Man」。そのアルバムリリースから2023年は50年目となる節目の年になるのですが、50周年を記念して記念盤がリリースされました。

Billy Joelの代表作となってもよいアルバムであり、かつ、ポップス史に残る名盤ともされることの多い同作。ただ、今回の50周年記念盤は日本独自企画だそうで、それだけ日本での人気の高さをうかがわせます。Disc1はSACDマルチ・ハイブリッド盤で収録。Disc2には初CD化作品を含む、貴重なデモ音源やライブ音源を収録。さらにはDVDもついてきており、こちらにはこれまた初DVD化となるような貴重なMVやライブ映像が収録されています。

なんとなくイメージ的にBilly Joelというと本作の表題曲である「Piano Man」でいきなりブレイクし、その直後の作品ということで、本作がデビューアルバム・・・というイメージもあるのですが、本作の2年前にはアルバム「コールド・スプリング・ハーバー〜ピアノの詩人」をリリースしており、こちらがソロデビュー作。さらにその前にはザ・ハッスルズ、アッティラという2つのバンドの一員としてもアルバムをリリースしています。ちなみに、ちょうど先日、そのザ・ハッスルズのアルバムも再発されたそうで、こちらも気になるところです。

とはいえ、Billy Joelというミュージシャンの名前が本作ではじめて世に広まったというのは間違いありません。もちろん、本作を聴くのはこれがはじめてではありませんが、あらためて本作を聴くと、デビュー間もない作品でありながらも、非常に完成度が高い作品であることを感じます。表題曲でヒットを記録した「Piano Man」だけではなく、全曲捨て曲なし、といったくらいのインパクトの強い名曲揃い。カントリーロック風の「Travelin' Prayer」や、軽快なピアノを聴かせる「Ain't No Crime」もその後シングルカットされ、ヒットチャートにランクインしたそうですし、オーケストラアレンジを取り入れたダイナミックなアレンジが特徴的な「The Ballad Of Billy The Kid」も、物語性ある歌詞も含めて、個人的にも好きなナンバー。そのほかにも切ないメロが耳を惹く「Stop In Nevada」や、7分にも及ぶ大曲である「Captain Jack」など、名曲が並ぶアルバム。ロックやジャズ、カントリーやオーケストラまで取り入れつつ、いい意味で聴きやすいポップにまとめ上げているその楽曲の完成度には、実に驚かされます。

Disc2はデモ音源やライブ音源などが収録されているのですが、基本的にデモ音源の段階でかなり完成形に近いスタイル。テンポなど微妙に違ったり、「Piano Man」のデモ音源にはボーカルにリバーブがかかっていたりもするのですが、大きな違いはない反面、原曲との聴き比べも楽しい感じ。Disc3は、今回、DVD初収録となった「Piano Man」のオリジナルMVをはじめ、ある意味、80年代的な懐かしさを感じさせるMVやライブ映像など、なかなか見ごたえのある内容となっています。

ちなみにCDのジャケットは、当時リリースされたレコード盤を模した内容になっており、当時の歌詞カードなどもそのまま入っているなど(この手の再発企画盤ではありがちなのですが)非常に凝った出来栄えに仕上がっています。リアルタイムで本作にふれた方にとっては懐かしく、また、オリジナルを知らない人も当時を思い起こすことが出来るのではないでしょうか。ストリーミング全盛の現在において、こういう物理的な物量でアルバムの存在感をアピールする方法も悪くありません(お値段はちょっと高めになりますが・・・)。

なかなかボリューミーな内容なので、ビリー初心者が手軽に手を出せる内容ではないとは思うのですが、ただ、ビリーの最初の1枚としては間違いなくお勧めの名盤。そういう意味で、ちょっとボリューミーですが、これを機に、本作からビリーの魅力に触れてほしいかも。彼の魅力を大いに楽しめたボリューミーな企画盤でした。

評価:★★★★★

BILLY JOEL 過去の作品
LIVE AT SHEA STADIUM
She's Always a Woman to Me:Lovesongs
A Matter of Trust: The Bridge to Russia
Live Through the Years
JAPANSESE SINGLES COLLECTION-GREATEST HITS-
Live At Yankee Stadium
Live Through The Years -Japan Edition-(ビリー・ザ・ベスト:ライヴ!)


ほかに聴いたアルバム

GUTS(spilled)/Olivia Rodorigo

Spilled

アメリカのポップミュージシャン、オリヴィア・ロドリゴが昨年リリースし、大ヒットしたアルバム「GUTS」に、5曲を追加してリリースしたデラックスバージョン。あらためて聴くと、ロック調の曲やポップな楽曲、ドリーミーな作品やアコースティックな作品までバラエティー富んだポップが魅力的。新たに加わった5曲についても、基本的に他の曲の延長線上にあるような軽快なポップソングがメイン。あらためて彼女の魅力を認識させられました。

評価:★★★★★

Olivia Rodorigo 過去の作品
SOUR
GUTS

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2024年5月12日 (日)

ブラックミュージックに新たな視点を

今回は、最近読んだ音楽関連の書籍の紹介です。

自らを「暗黒批評家」と名乗るライター、後藤護による著書「黒人音楽史 奇想な宇宙」。「ゴシック・カルチャー入門」などの著者である彼が、ゴスやホラー的なサブカル視点からブラックミュージックを分析した1冊となっています。

ここで注意が必要なのは同書、「黒人音楽史」と、ある意味「黒人音楽入門」的な印象を受けるタイトルとなっていますが、内容的には決して入門書という本ではありません。むしろ、本書が取り上げているのはオーバーグラウンドなブラックミュージックではあまり語られることのないアンダーグラウンド的なブラックミュージックの世界。しかし、アメリカの黒人の精神的な部分を考えると、むしろブラックミュージックの本質はこちらにあるのではないか、とすら感じてしまうような視点から、黒人音楽の歴史を取り上げています。

本書では、著者はひとつの言葉をキーワードとしています。「アフロ・マニエリスム」。著者の造語というこの言葉、本書の中で明確な定義はありませんが、ここで「マニエリスム」とは美術用語だそうで、ルネサンス期からバロック期への移行期に興った、社会的な混乱による精神的危機を反映した作風が特徴的だとか。アメリカにおける黒人の精神性から特筆すべき、特に著者が得意とするゴシック的なアンダーグラウンドの世界を取り上げることにより、黒人音楽に横たわる精神性を読み解く試みがなされています。

そのため、ここで取り上げられる音楽は、通常のブラックミュージックの歴史ではあまり取り上げられることのない音楽、ミュージシャンたち。第1章でいきなり大きく取り上げられているM・ラマ―というミュージシャンは、私も寡聞にして初耳のミュージシャンですし、第3章のジャズでは、フリージャズのアルバート・アイラー、第4章ではサン・ラーが取り上げられているほか、第6章ではヒップホップのサブジャンルであるホラーコアが取り上げられています。いずれも名前くらいは聴いたことあるミュージシャン、ジャンルですが、通常の「ブラックミュージックの歴史」では大きくは取り上げられないミュージシャンやジャンルばかりです。

アメリカの黒人の精神性から、その文化を切り取るという試みはなかなか興味深く、いままで私が見聞きしてきたブラックミュージックに新たな視点を与えてくれる1冊だったと思います。ブラックミュージックを知るための最初の1冊としてはお勧めしにくい本ではあると思うのですが、ソウルミュージックやHIP HOPについて、ある程度の知識がある方にとっては、非常に興味深く読める本ではないでしょうか。

ただ、一方、マイナス点も・・・本書の特徴として非常に様々な書籍から引用されています。そんなこともまで引用する必要あるの??というようなものまで徹底されており、後ろに記載されている参考書籍もかなりのボリュームとなっています。ただ、全体的に言いまわしが非常に難しい。不必要に難しくこねくり回している感もあり、正直、もっと平易な表現で書いた方がわかるやすく、ここまで難解な表現を用いるのは著者の自己満足では??とすら感じる部分もありました。

また、その引用された書籍もサブカルチャー界隈の本がほとんどで、個人的にはもうちょっと哲学や文化人類学の学術的な書籍にまで突っ込んで分析してほしかったかも、という印象も受けました。読んでいて、若干、論理的に飛躍していないか?という部分も無きにしも非ずだったので・・・。そこらへん、癖のある部分もあり、そういう意味でも万人向けではないのかもしれませんが、ブラックミュージック好きなら興味深く読める1冊だと思います。

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2024年5月11日 (土)

中島みゆきへのリスペクトを込めて

Title:「歌縁」(うたえにし)‐中島みゆき RESPECT LIVE 2023-

2023年の2月11日、12日に、東京と大阪で行われた、様々なミュージシャンたちが中島みゆきの楽曲をカバーするライブイベント「中島みゆき RESPECT LIVE 2023 歌縁」の模様を収録したライブアルバム。このイベント、もともと2007年に、FM802/FM COCOLOプロデューサーの岩尾知明発案により、「FM802 SPECIAL REVUE 生きて泳げ 涙は後ろへ流せ」という中島みゆきの楽曲を様々なミュージシャンたちが歌うイベントライブの開催がきっかけ。その後、2015年には「中島みゆき RESPECT LIVE 「歌縁」(うたえにし)」が開催され、その模様を収録したライブアルバム「「歌縁」(うたえにし)―中島みゆき RESPECT LIVE 2015―」がリリース。当サイトでも紹介しました。

本作は、その第2弾とも言えるライブアルバム。今回も様々なミュージシャンたちが中島みゆきの楽曲をカバー。前作に引き続き、様々なミュージシャンたちがそれぞれのスタイルで中島みゆきの楽曲を歌い上げているのですが、前作と同様、非常に魅力的なカバーアルバムに仕上がっていました。

まず耳に行くのが半崎美子の「ホームにて」で、落ち着いた感じの声量あるボーカルで、感情たっぷりに歌い上げるカバーになっており、ボーカリストとしての力量の高さを感じさせます。HYの仲宗根泉による「あした」も素晴らしい出来栄え。沖縄民謡からの影響を強く受けたこぶしを利かせたボーカルとなるのですが、これが中島みゆきの楽曲ともしっかりとマッチしています。今回のアルバムの中では、この2曲がベストだったように思います。

ちょっとユニークながらも自らのスタイルを貫いていたのが曽我部恵一の「永遠の嘘をついてくれ」で、飄々としたボーカルスタイルはいつもの曽我部恵一。意外と彼のボーカルと中島みゆきの曲がマッチしており、ともすれば曽我部恵一の曲かと聴き間違えるような内容。中島みゆきのボーカルスタイルとはちょっと異なる方向性ながらも、これはこれでおもしろいカバーに仕上がっていました。

徳永英明の「時代」は、卒なくこなしている感じ。VOCALISTシリーズでカバーしまくった彼だけに、ちょっとスタイルが様式立ってしまっている感じもするのですが、これはこれで魅力的なナンバー。冒頭を飾る山本彩「たかが愛」は歌い方はいかにもJ-POP的な感じがして、相川七瀬とか家入レオあたりを彷彿とさせるのですが、最近の女性シンガーとしては低音部をしっかりと聴かせたボーカルスタイルは好印象。ハンバートハンバートの「流浪の詩」もフォーキーなアレンジがユニークな感じ。斉藤由貴や増田恵子はベテランらしい、しっかりと歌を聴かせる卒ないカバーを聴かせてくれています。

唯一、ちょっと疑問に感じてしまったのが一青窈の「ファイト!」で、朗読のスタイルを入れて、これでもかというほど感情を込めた歌い方をするのですが、正直、ちょっと感情過多な印象が・・・。前作でも満島ひかりが「ファイト!」を感情込めた朗読を取り入れてカバーしており、それに追随した形なのかもしれませんが・・・演技力という面では、一青窈はかなり辛かったように感じます。

ただ、全体的にはやはり聴きごたえのある名カバーが並んでおり、中島みゆきへのリスペストをしっかりと感じつつ、参加したボーカリストたちの実力を感じさせるカバーアルバムだったと思います。アイドル勢からJ-POP勢、実力派ミュージシャンから、ともすれば曽我部恵一のようなサブカル勢まで幅広いセレクトながらも、ちゃんとしっかりと歌を歌える人たちを集めている点も好印象。非常にしっかりとした企画のように感じます。第3弾もあるのかなぁ。前回に引き続き、中島みゆきのファンも大納得のカバーだったと思います。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Nautilus/SEKAI NO OWARI

2022年にリリースしたシングル「Habit」がTikiTokなどから話題となり、大ヒットを記録。その時のレコ大を受賞し、紅白出演も果たすなど、大きな話題となったセカオワ。本作はその「Habit」も収録した約2年半ぶりのニューアルバム。「Habit」もある意味、彼ららしい非常に理屈っぽい歌詞が特徴的でしたが、今回のアルバムも全体的にいかにもSEKAI NO OWARIらしい楽曲が並ぶ作品に。ただ、全体的に明るい雰囲気ながらも、前作に引き続き、いままでの彼らの大きな特徴だったファンタジックな要素は薄れた印象も。良くも悪くも、徐々に「大人」のバンドになってきているという感じでしょうか。ただ、彼らもそろそろアラフォー世代に差し掛かっているだけに当たり前といえば当たり前なのですが・・・。

評価:★★★★

SEKAI NO OWARI 過去の作品
EARTH
ENTERTAINMENT
Tree
Lip
Eye
Chameleon(End of the World)
SEKAI NO OWARI 2010-2019
scent of memory

MARBLES/THE ORAL CIGARETTES

Marbles

THE ORAL CIGARETTEの新作、5曲入りのEPは、全曲、コロナ禍の中で制作されたコンセプトアルバム。タイトルは「MARBLES」=ビー玉、もしくは「Lose my marbles」=気がおかしくなるという慣用句から取られた言葉だそうで、様々な色が閉じ込められているビー玉にコロナ禍の状態を重ね合わせているそうです。2020年から2021年にかけて、あれだけコロナ禍に合わせたアルバムがリリースされたのに、なぜ今さら??という感じは否めないのですが、そんなコロナ禍の状況をあらわしてか、いつもの彼らに増して、これでもかというほどの哀愁たっぷりのメロディーに、コロナ禍の現状にもがくようなダイナミックなバンドサウンドが特徴的。ただ、もう2年くらい前に聴きたかったかも。

評価:★★★★

THE ORAL CIGARETTES 過去の作品
FIXION
UNOFFICIAL
Kisses and Kills
Before It's Too Late
SUCK MY WORLD

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2024年5月10日 (金)

オルタナ系ギターロックからの影響も顕著

Title:Tigers Blood
Musician:Waxahatchee

先日も、女性ソロシンガーソングライターAdrianne Lenkerのアルバムを紹介したばかりですが、今回もまた、女性ソロシンガーソングライターのニューアルバムの紹介です。アメリカの女性シンガーソングライター、ケイティ・クラッチフィールドのソロプロジェクト。どう読むのかかなり迷うところですが、これで「ワクサハッチー」と読むそうです。彼女のアルバムを聴くのは前作「Saint Cloud」に続いて2作目となります。

もともとアメリカーナに影響を受けたミュージシャンながらもロック志向が強かったそうですが、前作「Saint Cloud」はシンプルなサウンドでフォーキーなアルバムに仕上がていました。これはこれで非常に魅力的な作品だったのですが、今回の作品は再びロック路線にシフト。一方ではアメリカーナ的なサウンドも随所に用いられており、前々作以前の彼女の作品は詳しく知らないのですが、おそらく、この路線が本来の彼女の路線なのでしょう。

1曲目「3 Sisters」はギターサウンドをバックにしんみりとフォーキーに聴かせる楽曲で、アメリカーナ路線の強い作品からスタートするのですが、続く「Evil Spawn」はノイジーなギターのリフのイントロからスタートするギターロック路線。さらに続く「Ice Cold」は、まさにイントロはTeenage Fanclubやダイナソー・ジュニアあたりを彷彿とさせるような80年代のギターポップ路線に強く影響を受けたようなサウンドが印象的。ここらへん、オルタナ系ギターロックが好きなら、かなり壺にはまるのではないでしょうか。

その後も「Bored」「Crowbar」のように、ギターサウンドでメロディアスに聴かせるインディー系ギターポップ路線の曲が並んでおり、前作よりもロック路線にシフトした感もありつつも、メロディアスな歌にまずは耳を惹きつけられるような曲が並びます。

ただ、そんなギターロック路線の曲の間にはフォーキーな作風の曲も並ぶのも特徴的。ギターロック路線の「Ice Cold」に続く「Right Back to It」は郷愁感あふれる、いかにもアメリカーナな雰囲気の漂うミディアムテンポのナンバー。同じく、ギターロック路線の「Bored」に続く「Lone Star Lake」は哀愁感たっぷりのギターでゆっくりと聴かせる楽曲に。ここらへん、アメリカ人にとっては郷愁感あふれるイメージなのでしょうが、我々日本人にとっても、どこか懐かしさを感じさせる楽曲となっています。

特に終盤はアコギでフォーキーに聴かせる「365」、郷愁感たっぷりのミディアムチューン「The Wolves」、そしてラストを締めくくるタイトルチューン「Tigers Blood」はこれまた哀愁感たっぷりにフォーキーに聴かせるナンバーと続き、アルバムを聴き終わった印象としては、やはりカントリー、フォーク路線の印象が強く残る作品となっていました。

率直に言うと、冒頭にも書いた通り、先日も似た方向性のシンガーソングライターを紹介したばかりですし、最近多いな、という印象は受けてしまいます。ただ、その中でもやはりポップなメロディーラインは魅力的ですし、インディー系ギターロックの影響を強く受けたギターサウンドはやはり魅力的。素直に郷愁感ただよう歌を楽しめる、そんな良作だったと思います。

評価:★★★★★

Waxahatchee 過去の作品
Saint Cloud

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2024年5月 9日 (木)

K-POPに挟まれる宇多田

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

まず今週1位はK-POPの男性アイドルグループのベスト盤が獲得。

今週の1位はSEVENTEEN「17 IS RIGHT HERE」が獲得。韓国のシングル曲や韓国語楽曲を収録したベスト盤。CD販売数1位、ダウンロード数2位。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上33万3千枚で1位初登場。直近作「SEVENTEENTHE HEAVEN」の初動45万8千枚(1位)からはダウンしています。

2位は宇多田ヒカルのベストアルバム「SCIENCE FICTION」がワンランクダウン。ただし、CD販売数2位、ダウンロード数1位は先週から変わらず。まだまだ強さを感じさせます。

3位には先週2位だった韓国の男性アイドルグループNCT DREAM「DREAM( )SCAPE」がワンランクダウンながらもベスト3をキープしています。

次に4位以下の初登場盤ですが、4位には中森明菜「ベスト・コレクション 〜ラブ・ソングス&ポップ・ソングス〜」がランクイン。30周年記念の2枚組のベスト盤。実質的に活動休止状態の彼女ですが、根強い人気を感じさせます。5位はhide「REPSYCLE~hide 60th Anniversary Special Box~」。1998年に早世したX JAPANのhideの、生誕60年を記念してリリースされたボックスセット。彼が生前にリリースした3枚のアルバムのリマスター版と、ライブ映像のBlu-rayディスクがセットとなっています。7位はロックバンドTempalay「((ika))」がランクイン。本作が6枚目のフルアルバムとなる、人気上昇中の3人組バンド。8位は韓国の男性アイドルグループRIIZEのミニアルバム「RIIZING」がランクインしています。

また、Little Glee Monster「UNLOCK!」が10位にランクインし、6週ぶりのベスト10返り咲き。ランクアップの理由はいまひとつ不明。ライブツアーの影響でしょうか。


今週のHeatseekers Songs

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=heat_seekers

Heatseeekers1位は808「You」。808は兵庫県小野市出身の男性シンガーソングライター。HIP HOPグループ「FLAT FRANKEN」の活動を経て2022年からソロ活動を続けています。本作は、ミディアムチューンのレゲエナンバー。三木道山の「Lifetime Respect」や湘南乃風「純恋歌」を彷彿とさせるような、ベタなラブソング。ちなみに音楽シーンで808といえば、ローランドの伝説の名器、リズムマシーンのTR-808のことを指すのですが、名前の由来はそこでしょうか?


今週のTikTok Weekly

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=tiktok

TikTok Weeklyは先週と変わらず。韓国の女性アイドルグループILLIT「Magnetic」が3週連続の1位を獲得。Hot100では今週5位から6位にダウン。ストリーミング数も2位から4位にダウンしており、若干の下落傾向ながらも、TikTok界隈では根強い人気を感じさせます。


今週のニコニコVOCALOID SONGS

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=niconico

VOCALOID SONGS1位はサツキ「メズマライザー」が初の1位獲得。トランス調のハイテンポのエレクトロサウンドの楽曲。原色メインの派手で明るいMVも印象的ながらも、そのMVと相反するような、ネガティブな歌詞のアンバランスもユニーク。ちなみに「メズマライズ」とは「誰かを魅了して惹きつけること」という意味だそうです。

今週のHot Albums&各種チャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2024年5月 8日 (水)

1位返り咲き

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

やはりといった感のあるのですが、1位返り咲きです。

今週、Creepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」が2位から1位にランクアップ。2週ぶりの1位返り咲きとなりました。ストリーミング数は13週連続、カラオケ歌唱回数も8週連続の1位を確保しているほか、YouTube再生回数も2週ぶりに1位返り咲き。ダウンロード数も4位から3位にランクアップし、これで通算14週目の1位となりました。なお、ベスト10ヒットは16週連続、ベスト3ヒットは15週連続となります。

2位は先週4位のMrs.GREEN APPLE「ライラック」がランクアップ。ベスト10入りから3週目にしてのベスト3入り。ストリーミング数が4位から3位、ダウンロード数が7位から6位にアップしているほか、今週、ラジオオンエア数が1位にランクアップ。今回のランクアップの大きな要因となっています。テレビ東京系アニメ「忘却バッテリー」主題歌。今後、ロングヒットとなっていくのでしょうか。

3位は元ジャニーズ系の男性アイドルグループSixTONES「音色」が初登場でランクイン。CD販売数1位、ラジオオンエア数9位、YouTube再生回数18位。フジテレビ系ドラマ「お迎え渋谷くん」主題歌。オリコン週間シングルランキングでは初動売上52万3千枚で1位初登場。前作「CREAK」の初動47万5千枚(1位)からアップしています。

続いて4位以下を見ていきたいのですが、今週は初登場曲は3位のSixTONESのみ。一方、ロングヒット曲は、まずOmoinotake「幾億光年」。今週は3位から4位にダウンしています。ただ、ストリーミング数は3位から2位にアップ。ダウンロード数も9位から7位にアップ。YouTube再生回数は7位から10位にダウンしてしまいましたが、まだまだ上位を伺える可能性があります。これでベスト10ヒットは12週連続となります。

一方、tuki.「晩餐歌」は6位から5位にアップ。ベスト10ヒットを23週連続に伸ばしています。ストリーミング数の6位、YouTube再生回数5位はいずれも3週連続同順位をキープ。カラオケ歌唱回数も9週連続の2位。ダウンロード数は8位から9位にダウンしましたが、まだまだロングヒットは続きそうです。

またVaundy「タイムパラドックス」は9位から10位にランクダウンながらもベスト10をキープ。最高位が7位ながらも、7位から10位の間を、これで10週連続キープ。ストリーミング数は3週連続の5位。ドラえもん映画の主題歌なので、おそらく子どもたちの支持が強いように思われるのですが、ドラえもん映画が上映中なので、それに伴い根強い支持を得ているということなのでしょうか。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums&各種チャート。

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2024年5月 7日 (火)

とことんシンプルでフォーキーなサウンドが魅力的

Title:Bright Future
Musician:Adrianne Lenker

最近、ここのコーナーでやけに女性シンガーソングライターの作品を取り上げるケースが多いように思います。例えば4月だけでもHurray for The Riff Raff、Hannah Frances、Faye Websterというインディー系の女性シンガーソングライターの作品を紹介しました。インディー系のカテゴリーではありませんが、Norah Jonesもそんなシンガーソングライターの一組でしょう。

特に、インディー系の女性シンガーソングライターはフォークロックの影響を感じられるミュージシャンたちが目立ちます。シンプルで暖かいメロディーラインが特徴的なフォークというジャンルは、女性シンガーソングライターとの相性がいいのかもしれません。今回紹介するAdrianne Lenkerも女性シンガーソングライターの一人。フォーキーな楽曲を清涼感ある暖かい歌声でゆっくりと歌い上げるスタイルは、ここ最近、よく紹介している女性シンガーソングライターと同じようなスタイルと言えるかもしれません。

ただ、彼女はそんなシンガーソングライターたちの中でも、さらにシンプルなサウンドスタイルをとっている点が大きな特徴。例えば1曲目「Real House」はピアノの音色のみをバックにシンプルに聴かせる曲になっていますし、続く「Sadness As A Gift」もアコギとバイオリンのシンプルな編成でのアレンジとなっています。

その後も「No Machine」「Free Treasure」もアコギのアルペジオのみでシンプルに聴かせるスタイル。とことんシンプルでアコースティックにこだわったような暖かいサウンドが特徴的で、そこに流れる歌も非常に暖かく、胸に響きます。もちろん、フォーキーな中にバンドサウンドやサイケなサウンドを取り入れる、アシッドフォークのミュージシャンも大きな魅力ですが、彼女のようなシンプルなフォークを奏でるミュージシャンもとても魅力的に感じます。

実は言うまでもないかもしれませんが、彼女、ここのサイトにも何度か取り上げており、注目を集めているフォークロックバンド、ビッグ・シーフのボーカリスト。実は最初、そのことを知らずにアルバムを聴き始め、後になって彼女がビッグ・シーフのボーカリストということを知りました。ビッグ・シーフもシンプルで美しいメロディーを書く魅力的なバンド。ビッグ・シーフのボーカリストによるソロアルバムならば、それはこれだけ魅力的だよなぁ・・・と納得感を覚えました。

さらにこのアルバムの大きな魅力は、彼女が仲間たちと音楽を奏でている様子を、そのまま録音したかのような状況で音が収められているという点でした。例えば1曲目「Real House」も録音した時の背後の物音も楽曲におさめられています。「Already Lost」も演奏がはじまる前の軽い会話に、最初の掛け声も収録されています。仲間たちと音楽を奏でる、その和気あいあいした雰囲気と、それでいて楽曲を奏でだすとどこか緊張感が伝わってくるピリッとした空気感がアルバムの大きな魅力で、まさにリスナーにとってはすぐ向こうで彼女たちが演奏してくれているような、そんなリアリティーを感じさせる作品となっていました。

ビッグ・シーフが好きなら間違いなく気に入るはずのアルバムですし、少なくともポップス好きならば幅広いリスナー層が気に入るであろう、暖かいポップスアルバムの傑作。彼女の暖かい歌声に魅了された1枚でした。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

JAPANESE SINGLES COLLECTION-GREATEST HITS-/Culture Club

ここでも何度か取り上げている、日本独自企画による、日本でリリースしたシングルを収録したシングルコレクションの、今回はカルチャークラブ。80年代には日本でも「カーマは気まぐれ」が大ヒットを記録し、印象的なサビはCulture Clubを知らなくても一度は聴いたことあるのではないでしょうか。その他にも軽快で明るいポップが並び、またラテンからの影響も感じさせる曲もチラホラ。一方で「戦争のうた」のような、反戦歌のような硬派な側面も垣間見れたりして、さらに同曲ではサビに日本語も登場してくるのも耳を惹きます。「カーマは気まぐれ」以外はほとんどはじめて聴いた楽曲だったのですが、ポップな作風は今でも楽しめる作品でした。

評価:★★★★

JAPANESE SINGLES COLLECTION-GREATEST HITS-/Whitney Houston

そしてこちらも同じく「JAPANESE SINGLES COLLECTION」の、こちらはホイットニー・ヒューストン版。まさに真打登場の感も強いアルバムですが、おなじみの「そよ風の贈りもの」や、日本でも大ヒットを「オールウェイズ・ラヴ・ユー」ももちろん収録。これでもかというほどの力強いボーカルで歌い上げているソウルなナンバーはまさに圧巻。ボーカリストとしての実力をまざまざと見せつけられるアルバムになっています。

評価:★★★★★

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2024年5月 6日 (月)

日本ロック至上に燦然と輝く伝説のロックバンド

本日紹介するのは、日本のポピュラーミュージック史に燦然とその名を遺すロックバンド、はっぴいえんどの作品。活動期間は事実上、1969年から1972年のわずか3年。アルバムもオリジナルアルバムわずか3枚と、非常に短い活動期間にも関わらず、日本語ロックの創始者として、後の世代にも大きな影響を与え、さらには4人のメンバーがいずれも、その後の日本のポピュラーミュージック史に高い功績を残しているという、伝説のバンド。そのバンドの3枚のアルバムが2023年リマスター版として再リリース。さらに各アルバムに未発表の音源がボーナストラックとして収録されている点も大きな話題となっています。

Title:はっぴいえんど
Musician:はっぴいえんど

そのジャケット写真から「ゆでめん」の愛称でも知られる、1970年にリリースした彼らのデビューアルバム。ボーナストラックとして「かくれんぼ」の「歌入れ最終ダビングTake1」と、「12月の雨の日」の「最終ダビングTake2」が収録されています。

Title:風街ろまん
Musician:はっぴいえんど

メンバー4人の顔写真というアートワークも特徴的な1971年にリリースされた2枚目。はっぴいえんどの曲の中で、おそらく一番著名な「風をあつめて」が収録されていることもあってか、はっぴいえんどの代表作として紹介されることが一番多いように思います。ボーナストラックとして「はいからはくち」の「完パケTake1」と「颱風」のFull Sizeバージョンが収録。「颱風」のフルサイズでは、アルバム収録版よりも3分も長いバージョンとなっています。

Title:HAPPY END
Musician:はっぴいえんど

そして、はっぴいえんど解散後の1973年にリリースされた、彼らの3枚目にしてラストとなるオリジナルアルバム。こちらはボーナストラックとして「風来坊」「田舎道」の吉野金次MIXが収録されています。3枚のうち、他2枚は、以前にも聴いたことがあったのですが、このアルバムは今回のリマスターではじめてアルバムを聴きました。

はっぴいえんどと言えば、日本語でロックを演奏した嚆矢的なバンドとして取り上げられることの多いバンドです。ただ一方で、彼らの代表曲として知られる「風をあつめて」はフォーク的な色合いの強い曲ですし、フォークソング的な色合いも強いバンドというイメージも抱いていました。

ただ今回、あらためてこの3枚のアルバムを通して聴くと、やはりフォークという文脈で語られるバンドというよりも、彼らは列記としたロックバンドであるこということをあらためて実感しました。特にそこで奏でられるバンドサウンドは、明確に洋楽のロック、彼らが明確に影響を受けていたバッファロー・スプリングフィールドやその界隈のカントリーロックからの影響が顕著。洋楽からの影響はかなり強いのですが、今聴いても、この時代にこれだけ完成度の高いロックを奏でていたことに、あらためて、その実力の高さを感じさせます。

それと同時にあらためて感じたのが、彼らがかなり自覚的に日本のロックということを意識した曲作りをしていたという点でした。歌詞はあくまでも日本語に拘っているのみならず、かなり「和」をあえて意識したかのような言葉選びを行っていることに気が付かされます。日本のロックであるということの強い意識を彼らが持っていたことを、3枚のアルバムを通して聴くとあらためて感じられます。

当時は、「日本語ロック論争」が巻き起こるなど、一部では日本語でロックを奏でること自体に対する否定的な考え方も根強かったそうです。そんな中、あえて日本語でロックを奏でた彼らですが、ただ、日本のロックを意識している一方で、楽曲自体は実に自然体に日本語を取り入れており、バックに流れる洋楽的なサウンドからは違和感がありません。今の耳で聴くと、彼らの奏でる日本語ロックは別に不思議でも何でもないのですが、おそらく当時の感覚からすると、これだけ自然体に日本語でロックを奏でるというのは驚きだったのではないでしょうか。

ともすれば、いまから50年以上前のアルバムであるものの、今の耳から聴いても十分に魅力的に感じられる名盤3枚。あらためてはっぴいえんどというバンドの実力の高さを感じさせます。日本のロックの歴史のお勉強・・・という観点ではなく、素直にロックのアルバムの傑作として、今の世代でも十分すぎるほどお勧めできる作品でした。

評価:いずれも★★★★★

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2024年5月 5日 (日)

ストリーミングはなし!

Title:Dostrotime
Musician:Squarepusher

以前は、Squarepusher名義以外にもバンドShobaleader One名義でもアルバムをリリースしていたりとワーカホリックぶりが目立ったSquarepusher。ただ、ここ最近はちょっとスピード感が落ちたのか、ちょっと久々のリリースとなりました。約4年ぶりとなるSquarepusherのニューアルバム。本作がユニークなのがそのリリース形態で、レコード、CD、そしてダウンロードのみの販売。要するに、スクリーミングでのリリースは一切なし。Spotifyでも、他のアルバムは普通に配信されているのに、このアルバムだけはリリースされていません。

しかし、確かにストリーミングでのリリースを禁止する理由もわかるような作品になっていたと思います。つまり、アルバム全体を通して聴くことを前提とした作品になっていたということ。プレイリストという形でアルバムの一部をつまみ食いされて聴いては、このアルバムの本質がわからない・・・というよりも、誤解されそうなおそれのある作品だったように思います。

具体的に言うと、1曲目「Arkteon 1」は、いきなりギターのアルペジオでしんみり聴かせるフォーキーな作品に。いきなり雰囲気の違う曲調に、どんなアルバムがはじまったんだ!と驚かされるかもしれません。続く「Enbounce」も最初、荘厳な雰囲気からスタートして、1曲から続き、抑えた雰囲気でのスタートとなります。ただ、途中から疾走感あるエレクトロビートがスタート。メランコリックで荘厳なシンセのメロが流れる中、徐々にSquarepusherらしさが発揮されていく展開となっています。

ここまでがある意味、導入部の「準備体操」といった感じ。ここからは、いかにもSquarepusherらしいエレクトロサウンドが続いていきます。続く「Wendorlan」はリズミカルなエレクトロチューン。ちょっと90年代的な雰囲気を感じつつ、先行シングルにもなっているように、Squarepusherの中では比較的耳なじみやすいリズムが展開されており、こちらは「準備体操」が終わり、Squarepusherの入口、「挨拶代わり」の1曲といった感じになるのでしょうか。

そして中盤あたりからSquarepusherの本領発揮といった感じでしょう。「Duneray」はまさに彼らしい複雑怪奇なエレクトロビートが耳に飛び込んでくるドリルンベースなナンバー。「Kronmec」も不穏な雰囲気のエレクトロサウンドが意外とメランコリックでメロディアスなのが耳を惹きます。続く「Arkteon 2」は1曲目と同様、ギターでフォーキーな作品ながらも、メロディアスな1曲目と異なり、メロが微妙に歪んでいるのがユニークなところ。エレクトロチューンの中の箸休め的なインターリュード・・・ですが、微妙に不気味な雰囲気がこのアルバムの展開の中の妙なバランサーとして機能しています。

その後も後半にかけては強烈なエレクトロビートを前に押し出した楽曲が並んでいます。ある意味、Squarepusherらしい曲が並んでいるといった感じで、彼の本領発揮といった感じでしょうか。そんな中でも「Holorform」「Domelash」のような、複雑で強烈なエレクトロビートの中にメランコリックさを感じさせるメロがしっかりと流れているのも彼らしいといった感じ。実験的とも言えるエレクトロビートの中で以外と聴きやすさを感じる要素がここにあったりします。

そしてこの雰囲気がガラッと変わるのが終盤。「Heliobat」はミディアムテンポのエレクトロサウンドでしんみり聴かせるアンビエントチューン。最後に三度あらわれた「Arkteon 3」は、今度は非常にゆっくりとギターをつま弾く楽曲になっており、こちらもアンビエントの要素の強い作品。最後にしっかりとチルアウトして終わる、まさにアルバムを通じてSquarepusherのステージを体感しているような構成になっていました。

ちなみにこれだけアルバムの構成にこだわりながらも、日本盤では最後にボーナストラック「Heliobat (Tokyo Nightfall)」が収録されていますが、こちらも「Arkteon 3」から自然に続くアンビエントのナンバー。違和感なくアルバムは終了しますので、ボーナストラックを含んでしっかりと構成を考えられたアルバムと言えるのでしょう。

アルバム全体で一体として構成された、アルバムらしいアルバムですし、また、ストリーミングでのリリースを行わないという彼の方針も納得が出来る作品。もちろん出来としてもSquarepusherの魅力にあふれた傑作になっていました。ともすればここ最近、視聴形態がストリーミングにシフトし、ともすればアルバムが単なるシングルの寄せ集めのプレイリスト的になりがちな中、アルバムというフォーマットの魅力を再認識させてくれる作品とも言えるでしょう。是非、通して聴きたい作品です。

評価:★★★★★

SQUAREPUSHER 過去の作品
Just a Souvenir
SHOBALEADER ONE-d'DEMONSTRATOR
UFABULUM
Music for Robots(Squarepusher x Z-Machines)
Damogen Furies
Be Up A Hello
Lamental EP


ほかに聴いたアルバム

Everything I Thought It Was/Justin Timberlake

実に約6年ぶりとなるJustin Timberlakeの最新アルバム。楽曲はメランコリックに聴かせる歌モノがメイン。全体的には明るいポップソングが多かった本作の印象。さらにほどよく今どきのHIP HOPのトラックを取り入れたり、ギターサウンドをヘヴィーに聴かせる楽曲もあったりと、バラエティーを感じさせる構成も魅力的。リズミカルな曲が目立つのもアルバムにインパクトを与えています。良い意味で今風の良質なポップソングという方向性は相変わらず。ただ、それだけに素直に楽しめるアルバムになっていました。

評価:★★★★★

JUSTIN TIMBERLAKE 過去の作品
THE 20/20 EXPERIENCE
THE 20/20 EXPERIENCE-2 of 2
MAN OF THE WOODS

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2024年5月 4日 (土)

ポップアイコンの約4年ぶりの新作

Title:eternal sunshine
Musician:Ariana Grande

日本でも高い人気を誇るポップ・アイコン、アリアナ・グランデ。今回紹介するのは、そんな彼女が約4年ぶりにリリースしたニューアルバムです。毎回、爽快でメロディアスに聴かせてくれるポップチューンがとても心地よい彼女。アルバムは毎作チェックしているのですが個人的に今回のアルバムは、そんな中でももっとも気持ちよく楽しめるポップアルバムになっていたのでは?と思うような傑作に仕上がっていました。

イントロを挟んで事実上の1曲目「bye」がまた、ポップで心地よい作品。ちょっとメランコリックなメロディーラインも耳を惹きますし、リズミカルなテンポよさも心地よく感じます。続く「don't wanna break up again」もキュートな彼女のボーカルが耳を惹く心地よいポップチューンですし、さらにインターリュードを挟んだ次曲のタイトルチューン「eternal sunshine」も、今風なリズムをバックに、ハイトーンボイスで聴かせるメランコリックなメロディーラインが印象に残ります。

正直、今回のアルバムに関して、いままでの彼女のアルバムと比べて目立って変化した、といった感じではありません。ある意味、いつも通り、彼女らしいポップチューンを聴かせてくれたアルバムといっていいでしょう。ただ、その中でも先行シングルが2曲とも、ダンサナブルなエレクトロチューンというのが特徴的。今回のアルバムでも「yes,and?」「we can't be friends(wait for your love)」が、後半に並んで配されています。ある意味、アルバムを聴き進める中で、ちょっとダレはじめたころに、このようなインパクトのあるダンサナブルな楽曲が並んでいる点も上手く構成されている感があります。そのため、ここでグッとアルバムに再び耳を惹きつけられるような、そんな展開になっています。

そして、その後に続く3曲はいずれもミディアムチューンのナンバー。アルバムの締めくくりに相応しい展開とも言えるのですが、その中でも耳を惹いたのが「Imperfect for You」でした。サビの部分の楽曲タイトルが歌われるメランコリックなメロが個人的にはかなり壺。彼女の美しい歌声もあって、つい聴き惚れてしまうそんな楽曲でした。

上にも書いた通り、いままでのアルバムに比べて決して目新しいことを演ったアルバムではありません。いい意味でいつも通りの彼女らしい、ポップアルバムになっていたと思います。ただ、楽曲の出来については、ここ数作の中でも一番の出来だったように思います。彼女のポップミュージシャンとしての魅力を存分に感じられた1枚でした。

評価:★★★★★

Ariana Grande 過去の作品
My Everything
The Best
Sweetener
thank u,next
Positions

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2024年5月 3日 (金)

レジェンドの初のソロ作

Title:Bars of My Life
Musician:Mummy-D

RHYMESTERといえばご存じ、日本のHIP HOP黎明期から活動し、日本のHIP HOPシーンの中でレジェンドとも言える立ち位置のグループ。そのRHYMESTERのMCの一人が彼、Mummy-D。様々なミュージシャンとコラボを行っており、その声にも非常に特徴があるため、おそらくHIP HOPをあまり聴かない方でも、その声を聴けば、「ああ、あの声の人ね」と思い当たる方も多いのではないでしょうか。

その彼が、なんとRHYMESTERとしてのデビューから34年目にしてリリースした初のソロアルバムが本作。かなり豪華なゲスト陣が特徴的で、客演としてH ZETTRIOやミッキー吉野、Nulbarich、さかいゆう。プロデューサーとしてDJ KRUSHなどといったメンバーがズラリと名前をそろえています。

ただ、そんな豪華ゲスト陣の中でも特にインパクトが大きかったのですが、THA BLUE HERBのILL-BOSSTINOが参加している点でしょう。RHYMESTERとTHA BLUE HERB、特にMummy-DとBOSSといえば、かつては両者がBEEF(=争い)を繰り広げられていた者同士。決して激しい応報があった訳ではありませんが、RHYMESTERとTHA BLUE HERBという日本のHIP HOPシーンの中でも人気・評価共に高い実力者同士のBEEFは大きなインパクトを与えました。個人的にもTHA BLUE HERBの「サイの角のようにただ独り歩め」の中の「ミスターアブストラクトって呼び名ははずれたな」というリリックは、かなり印象に残っています。

もっとも、その後はお互い徐々に和解にむかって進み、ライブにも共演するなど完全に和解。今回のMummy-Dでは、なんとゲストとして参加するまでの仲に至った点は、やはり感慨深いものがあります。BOSSが参加した「同じ月を見ていた」は、お互い、札幌と東京にはじめて足を踏み入れた時の感慨を綴ったラップ。最初はMummy-Dのラップからスタートするのですが、中盤、BOSSの独特のラップがスタートした時は、やはりゾクゾクっと来るものがありました。

さて、そんな彼、初となるソロアルバム。タイトルの「Bar」は、音楽用語の小節のこと。人生の小節と題された本作は、彼のHIP HOP人生を振り返るようなリリックが大きな特徴となっています。タイトルチューンとなる「Bars of My Life」はまさにこれまでの歩みをリリックに綴っています。他にも「マイク持つ者よ」もHIP HOPについて綴ったリリックで、タイトル通り、MCへのエールにもなっていますし、「バックミラーの中の街」は横浜の思い出をつづった曲。「Spread Love」では亡くなったラッパーの名前が登場してきますし、ラストを飾る「Kiss Your Life」も自らの子供の頃について、自分の子供に語り掛ける内容の曲となっています。

初のソロアルバムということもあって、自らのこと、HIP HOPのことを綴った楽曲が並んだ本作。ある意味、非常にソロアルバムらしいソロアルバムと言えるでしょう。BOSSの客演といい、その歌詞の内容といい、長年、RHYMESTERを聴いてきたような方なら、おそらく胸に来るものがあるように思います。

またトラックの方も、ジャジーな「Free」やエレクトロトラックを聴かせる「バックミラーの中の街」、ラストの「Kiss Your Life」はアコースティックなサウンドを取り入れた歌モノとバラエティーも豊富。その点でも、彼のキャリアを出し切ったような内容になっていました。

ただ、それだけ聴きごたえもあるアルバムなのですが、ちょっと物足りなさを感じてしまった点があって、それがMummy-Dのラップ自体。彼の声は非常に特徴的で、癖のあるラップなのですが、どちらかというと客演向きの声といったイメージがあり、メインを取るとなると、若干、違和感を覚えてしまった点が否めません。このアルバムに関しても、やはり他のボーカリストやラッパーと絡んだような曲の方がしっくり来ます。こればかりはどうしようもない点ではあるとは思うのですが・・・。いいアルバムだとは思いますし、RHYMESTERが好きなら聴くべき1枚だとは思うのですが、やはりRHYMESTERの方がいいかな・・・とも正直思ってしまった1枚でした。

評価:★★★★


ほかに聴いたアルバム

はじめから自由だった/ハンブレッダーズ

最近、徐々に人気を上げている注目の若手ロックバンド、ハンブレッダーズ。アルバムをリリースすればチャートでも20位圏内に送る込んでくるようになり、ブレイク寸前となっています。今回、はじめて彼らの作品を聴いてみました。タイトルからして、かなりパンキッシュな内容を予想するのですが、楽曲的には良くありがちなJ-POPのギターロックバンドといった印象。楽曲によってはパンキッシュな作品もあるのですが、基本的には日常を歌ったメロディアスな楽曲が並びます。まあ、確かに売れそうな感はしますが・・・。

評価:★★★

覚悟を決めろ!/サバシスター

こちらも最近注目のブレイク寸前の若手ロックバンド。女の子3人組のパンクロックバンドで、あのPIZZA OF DEATH MANAGEMENT所属で、本作がアルバムとしてはデビュー作となります。こちらは軽快ながらもパンキッシュなバンドサウンドをしっかりと聴かせてくれている一方、メロディーは至ってポップでいい意味での聴きやすさも。またメランコリックなメロディーラインはフォークっぽさも感じます。タイトル通り、上京したころの心境を歌った「東京こえー」や、ぬいぐるみに感情をこめて歌った「しげちゃん」などユーモラスながらも印象に残る歌詞もきちっと書いている感じ。サウンドにしろメロにしろ、まだ良くも悪くも若々しさがあり、独自性という意味ではもう一歩な部分もあるのですが、今後に注目したい、そんなバンドでした。

評価:★★★★

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2024年5月 2日 (木)

やはり宇多田ヒカルは強い!

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

2週間前と同じタイトルですが・・・。

今週は宇多田ヒカル「SCIENCE FICTION」が先週の3位からランクアップ。2週ぶりの1位返り咲きとなりました。ダウンロード数は今週も1位をキープ。先週3位にダウンしたCD販売数も2位にアップしています。ちなみに今週、オリコン週間アルバムランキングでも3万枚を売り上げて1位に返り咲き。さすがに売上枚数的には全盛期には及ばないものの、いまなお圧倒的な人気を感じさせる結果となっています。

2位には先週9位にランクインした、韓国の男性アイドルグループNCT DREAM「DREAM( )SCAPE」がこの位置にランクアップ。特にCD販売数が1位にランクインしています。オリコンでも今週2万9千枚を売り上げて、こちらも9位から2位にアップしています。

3位にはALL IN「罵罵罵」がランクイン。8人組の男性アイドルグループによるデビューEP盤で、これで「バババ」と読むそうです。オリコンでも初動売上1万2千枚で3位にランクインしています。

続いて4位以下の初登場盤ですが、4位はカリスマ「カリスマジャンボリー」が初登場。カリスマはYouTubeで配信されている音声ドラマを中心としたプロジェクトだそうです。6位はトゲナシトゲアリ「棘アリ」がランクイン。テレビアニメ「ガールズバンドクライ」に登場する架空のバンドによるデビューアルバム。9位初登場は及川光博「DON'T THINK,POP!!」。ご存じ我らがミッチーの2年ぶりとなるニューアルバム。そして10位には竹内まりや「デニム」が初登場でランクイン。2007年にリリースされたアルバムのアナログ盤がリリースされ、その影響でランクインです。


今週のHeatseekers Songs

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=heat_seekers

今週1位を獲得したのはBABYMONSTER「SHEESH」が2週連続で獲得。韓国の女性アイドルグループ。先週も書いた通り、既にミニアルバムはHot Albumsで上位にランクインしているだけに、次のシングルあたりでブレイクしそうな感じも。


今週のTikTok Weekly

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=tiktok

TikTok Weeklyも韓国の女性アイドルグループILLIT「Magnetic」が2週連続の1位を獲得。Hot100でも今週6位から5位にランクアップ。特にストリーミング数が2位にランクインしており、今後のロングヒットが予想されます。


今週のニコニコVOCALOID SONGS

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=niconico

VOCALID SONGSも先週から変わらず。吉田夜世「オーバーライド」が2週連続で1位を獲得。これで各種チャートはいずれも先週と1位は変わらない結果となっています。ちなみにこの曲はHeatseekersでも3位にランクイン。YouTube再生回数でも13位にランクインするなど、Hot100でも上位を伺わせられる位置にランクインしています。

今週は以上。チャート評はまた来週に!

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2024年5月 1日 (水)

まさかの1位から陥落

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

しばらくCreepy Nutsの独走が続くかと思いきや、なんと今週は1位陥落となりました。

今週、初登場で1位を獲得したのは男性アイドルグループBE:FIRST「MASTERPLAN」でした。ダウンロード数、ラジオオンエア数及びYouTube再生回数で1位獲得。CD販売数2位、ストリーミング数でも7位を獲得し、総合順位ではCreepy Nutsを上回り、1位獲得となりました。オリコン週間シングルランキングでも初動売上10万9千枚で1位初登場。前作「Mainstream」の初動14万6千枚(1位)からはダウンしています。

そしてCreepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」は今週2位にダウン。連続1位記録は13週でストップとなりました。ただ、YouTube再生回数は1位から2位、ダウンロード数も3位から4位にダウンしたものの、ストリーミング数、カラオケ歌唱回数は1位をキープ。来週以降の1位返り咲きを伺います。これでベスト10ヒットは連続15週、ベスト3ヒットも連続14週に伸ばしています。

3位は先週5位にダウンしたOmoinotake「幾億光年」が3週ぶりにベスト3返り咲き。ただ、ストリーミング数は3位をキープしているものの、ダウンロード数は8位から9位、YouTube再生回数も6位から7位にダウンしています。これで11週連続のベスト10ヒット。ベスト3入りは通算3週目となります。

続いて4位以下ですが、初登場曲はあと1曲。6位にジャニーズWEST改めWEST.「ハート」がランクインしています。CD販売数1位、ラジオオンエア数19位。テレビ東京系アニメ「キャプテン翼 ジュニアユース編」オープニングテーマ。WEST.と改名した後、シングルとしてはこれが初となります。オリコンでは初動売上26万5千枚で1位初登場。前作「絶体絶命」の30万枚(1位)からダウンしています。

次にロングヒット曲ですが、まずtuki.「晩餐歌」は7位から8位にダウン。ただストリーミング数6位、YouTube再生回数5位は先週と変わらず。ダウンロード数は9位から8位にアップしており、まだロングヒットは続きそう。これでベスト10ヒットは連続22週目となります。

粘り強い人気を見せるVaundy「タイムパラドックス」は今週8位から9位にダウン。ただ、ストリーミング数は先週と変わらず5位をキープ。これで9週連続のベスト10ヒットとなりました。

そして今週、YOASOBI「アイドル」がついにベスト10から陥落。10位から12位にダウンし、ベスト10ヒットは連続55週でストップとなりました。長らく1位の座に君臨し、圧倒的な人気を見せたこの曲ですが、1位陥落後は思ったより早くダウンしていった印象も。とはいえ、初登場が昨年の4月19日付チャートと、1年以上に渡りベスト10をキープしてきたので、驚異的なヒットだったのは間違いないでしょう。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums&各種チャート!

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