今なお、新たなサウンドにも挑戦
Title:The Collective
Musician:Kim Gordon
元SONIC YOUTHのキム・ゴートンによる、単独名義のソロでは2枚目となるアルバム。2019年にソロ1作目「No Home Record」をリリースしていたのですが、こちらはノーチェックでした・・・。今回の作品では、その前作でタッグを組んだジャスティン・ライセンが再びプロデュースを手掛けた作品となっています。
1曲目は先行シングルともなっている「BYE BYE」からスタートするのですが、まずこれがトラップのリズムからスタートするのが非常に驚かされました。トラップ的なリズムに踏み切りの警報音が鳴る不気味なスタートは、ちょっとベタで、純粋にHIP HOPとしてみた場合には、最先端の音、とは言えないものの、(女性の年齢を言うのは失礼ながらも)齢70歳となる超ベテランミュージシャンの彼女が、いまからこのような今風のサウンドを自らの音として取り入れるアグレッシブなスタイルは驚きとしか言いようがありません。
その後は基本的にインダストリアルやノイズの楽曲が続きます。「I Don't Miss My Mind」はメタリックなビートが鳴り響くインダストリアルなナンバー。「It's Dark Inside」もダイナミックでヘヴィーなノイズが耳を突くナンバー。「The Believers」も空間を切り裂くようなメタリックでダイナミックなサウンドが印象に残ります。
また、ノイジーでメタリックなサウンドをバックに流れるキム・ゴートンの歌声・・・というより「語り」も印象的。女性ボーカルらしい「清涼感」が、サウンドと対比してアルバムの中で大きなインパクトとなっています。それと同時に彼女のボーカルからは、バックのサウンドに負けないパワフルさも感じられ、その点もアルバムの大きな魅力だったと言えるでしょう。
さらに大きな特徴として、1曲目にも顕著だったHIP HOPからの影響を感じる点。「I'm A Man」も不穏なノイズが鳴り響く楽曲ですが、こちらもスネアのリズムにはHIP HOPからの影響も感じます。「Psychedelic Orgasm」や「Shelf Warmer」にも同じく、HIP HOP的なビートが垣間見れます。ともすれば、場合によっては新しいものを嫌悪しそうな年齢にも関わらず、ちゃんと今の耳にアップデートされているという柔軟性には感心させられますし、ある意味、SONIC YOUTHとして先端を走ってきた彼女の矜持のようなものも感じました。
もちろん、アルバム自体も傑作・・・それも今年を代表する傑作の1枚とも言えるだけの充実作だったと思います。いまなお、シーンの先を走り続ける彼女にあらためて感心する傑作アルバム。現在、70歳とはいえ、まだまだ充実した活動が続きそうです。
評価:★★★★★
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コメント
ラップが古いというレヴューもあったけれど、キム姐さんのヴォーカル・スタイルはSonic Youth時代から不変です。
ジェニファー・イーガンの同名小説から着想したという〈The Candy House〉や盟友Julie Cafritz(Free Kitten)の在籍したバンド名(Pussy Galore)を叫んで、「Pussy Pussy Pussy!」 と連呼する〈It's Dark Inside〉など、全11曲・41分。
見開き紙ジャケ仕様、ポスター付き。
ツイッグ・ハーパー(Twig Harper)はアルバム・カヴァ写真を一体どうやって撮ったのかしら?
投稿: sknys | 2024年4月28日 (日) 13時34分
P.S.〈Kim Gordon's Panties〉が物議を醸したこともあるインディ・ロック必殺録音請負人スティーヴ・アルビニ(Steve Albini)が急死しました。
(https://pitchfork.com/news/steve-albini-storied-producer-and-icon-of-the-rock-underground-dies-at-61/)
投稿: sknys | 2024年5月 9日 (木) 12時26分
>sknysさん
>キム姐さんのヴォーカル・スタイルはSonic Youth時代から不変です。
そうですね、確かにあのスタイルは昔から変わらないですね。
あと、アルビニの件はショックです・・・。まだ若いのに。あのサウンドをもう聴けないかと思うと、とても残念です。
投稿: ゆういち | 2024年6月19日 (水) 01時38分