ネクライトーキーは、とにかく楽しい
Title:TORCH
Musician:ネクライトーキー
途中、セルフカバーアルバムやEPを挟みつつ、オリジナルフルアルバムとしては約2年9ヶ月ぶりとなるニューアルバム。本作に収録されている「bloom」はNetflixのアニメ「スコット・ピルグリム テイクス・オフ」のテーマ曲となり話題にもなりました。ちょっと久々となる今回のニューアルバムは、同曲も含む14曲を収録。いままでのアルバムよりも曲数はありつつ、全47分。良い意味でほどよいボリューム感のアルバムとなっています。
ネクライトーキーの楽曲と言うと、とにかく聴いていてワクワクする楽しいポップソングというイメージがあります。今回のアルバムに関しても、そんな明るく、素直に楽しいポップチューンの並ぶアルバムになっていました。分厚いビートとシンセのピコピコサウンドがインパクトのある「浪漫てっくもんすたぁ」は、ユーモラスな作風の典型的にネクライトーキーらしい楽曲でしょう。「どたまかち割るね」というユニークな歌詞もネクライトーキーらしい感じ。ネクライトーキーらしいというとシングル曲でもあった「ふざけてないで」もそんな感じでしょうか。軽快なギターロックナンバーなのですが、リズミカルで明るいポップチューン。ちょっとコミカルなギターリフやユーモラスに入ってくるシンセの音も大きな魅力でしょう。
タイトルもユニークながらもメロディーラインも印象的なのは「新島工場探検隊」で、こちらも軽快なギターロックナンバーなのですが、サビの部分で転調するメロディーがインパクト。この転調するサビが、個人的にどことなく、80年代あたりのエピックソニー系あたりの香りを感じさせるのは私だけ?もっともネクライトーキーもソニーミュージック所属で、ここらへんは脈々と流れるレコード会社の空気感が反映されているのでしょうか。
アルバムの中でほどよい空気感を醸し出しているのが「わっしょいまっしょい」で、日常をほんわかした視点で描く脱力系の楽曲になっているのがユニーク。「浴びるように酒を呑んだなら/明日も仕事を頑張りましょい」という歌詞もいい感じ。この歌詞をもっさの舌ったらずなボーカルで歌われると、ちょっと幼さを感じさせるボーカルなのに、「浴びるように酒を呑んだなら」というギャップのある歌詞もまたユニーク。もっとも彼女は既に29歳らしいので、別に浴びるように酒を呑んでいても全く問題はない訳ですが・・・。
そんな脱力感のある楽曲から、ヘヴィーでダイナミックなサウンドが特徴的な「ねぇ、今どんな気分?」という落差のある展開もユニーク。歌詞も、ほんわかに頑張ろうと歌う全曲からいきなり「最低な一日になっちゃった」という、こちらも落差ある展開がユニーク。そんな展開はありつつ、終盤の「だから、」では力強く歌い上げるミディアムテンポのロックナンバーなのですが、
「昨日まで家だったもんが
瓦礫の山になった」
「昨日まで夢だったもんが
砕けた泡になった」
(「だから、」より 作詞 もっさ)
と、かなり虚無的な世界観がドキリとさせられる楽曲で、ただ明るくコミカルなだけではないネクライトーキーの別の側面も感じられます。
そんな感じで、全体的には前作以上にバラエティーのある展開になっている本作。一方、アルバム冒頭の「ちょうぐにゃぐにゃ」やラストの「石ころの気持ち」などはストレートな疾走感あるポップなギターロックとなっており、ギターロックバンドとしての王道路線もしっかり聴かせてくれます。今回も聴いていてとても楽しい傑作になったのは間違いありません・・・が、全体としての出来としては正直、前作の方が上だったかな、とも感じてしまいました。
正直、前作の「はよファズ踏めや」や「誰が為にCHAKAPOCOは鳴る」のような一度聴いたら忘れられないようなインパクトはちょっと薄め。まあ、自分にとって前作ははじめて聴くネクライトーキーで、その分インパクトも大きかった、という点もあるのかもしれませんが、そうだとすれば、今回のアルバム、前作を踏まえての新たな姿が見ることが出来なかった、という点でもちょっと残念だったかもしれません。
もちろん、前作ほどではなかったとはいえ、間違いなく今回のアルバムも傑作に仕上がっていたと思います。最近、比較的メランコリックなメロディーを聴かせるミュージシャンが多い中、ネクライトーキーのような底抜けに明るいロックバンドは貴重。ポップソングのワクワクさを素直に体現化された作品でした。
評価:★★★★★
ほかに聴いたアルバム
Trio&Charm/大橋トリオ&THE CHARM PARK
ご存じ大橋トリオと、韓国系アメリカ人で、現在は日本を拠点に活動を続けるマルチプレイヤーでシンガーソングライターのCharmのソロプロジェクト、THE CHARM PARKとのコラボアルバム。THE CHARM PARKは以前、アジカンに楽曲提供を手掛けた曲を聴いた程度なので詳しくはわからないのですが、基本的には両者とも、楽曲の方向性は同じようで、アコースティックなサウンドでちょっとメランコリックにしんみり聴かせる「大人のポップス」といった印象の楽曲がメイン。一言で言うと「良質なポップス」といった感じでしょうか。ただ、良くも悪くもいつもの大橋トリオの路線の延長線といった感じで、あまり目新しさを感じなかったのは残念でした。
評価:★★★★
大橋トリオ 過去の作品
A BIRD
I Got Rhythm?
NEWOLD
FACEBOOKII
L
R
FAKE BOOK III
White
plugged
MAGIC
大橋トリオ
PARODY
10(TEN)
Blue
STEREO
植物男子ベランダー ENDING SONGS
植物男子ベランダーSEASON2 ENDING SONGS
THUNDERBIRD
This is music too
NEW WORLD
ohashiTrio best Too
ohashiTrio collaboration best -off White-
カラタチの夢
PORTRAIT/フジファブリック
フジファブリックの新作は、かなりバラエティーに富んだ作風が印象的なアルバム。フレデリックと組んだ「瞳のランデヴー」のようなディスコチューンがあったり、アコギでしんみり聴かせる「月見草」みたいな曲があったり、「ショウ・タイム」のようなギターロックのナンバーがあったりと、バラエティー豊か。その分、若干方向性があいまいな部分もあったりするのですが、それも含めてこの音楽性の自由さがフジファブリックらしさなのかもしれません。
評価:★★★★
フジファブリック 過去の作品
TEENAGER
CHRONICLE
MUSIC
SINGLES 2004-2009
STAR
VOYAGER
LIFE
BOYS
GIRLS
STAND!!
FAB LIVE
F
FAB LIST 1
FAB LIST 2
I Love You
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