ヘヴィーなサウンドとキュートなメロのバランスがユニーク
Title:I Got Heaven
Musician:Mannequin Pussy
アメリカの男女混成4人組パンクロックバンド、Mannequin Pussy。前作「Patience」ではじめて彼女たちの楽曲を聴いたのですが、勢いあるパンキッシュなバンドサウンドを奏でながら、メロディーラインはキュートでポップというアンバランスさがとても心地よく、2019年の私的年間ベストアルバムで9位に選ぶなど、かなりお気に入りの1枚となりました。
ただ、前作「Patience」リリース後、ギターのAthanasios Paulが脱退し、一時期、スリーピースバンドとして活動をしていたものの、昨年、ツアーメンバーだったMaxine Steenが正式なバンドメンバーとして参加。再び4人組として活動を行っています。
そんなバンドの遍歴を重ねつつも、バンドとしての方向性は基本的に前作から大きくは変っていません。前作に引き続き、アメリカのパンクの名門レーベル、エピタフ・レコードからリリースされた本作は、パンキッシュで勢いのあるバンドサウンドとキュートという表現すらピッタリとくるポップなメロディーラインのアンバランスさが心地よい作品になっています。
アルバムはいきなりタイトルチューンの「I Got Heaven」からスタートするのですが、タイトルチューンらしく、ある意味、彼女たちらしさを象徴するような1曲に。楽曲はいきなり力強いギターリフと、ボーカルMarisa "Missy" Dabiceの力強いシャフトからスタートしますが、このギターリフはヘヴィーなサウンドながらも、そこで奏でられるメロはポップで耳なじみやすいもの。90年代のインディーロックの色合いも強いギターリフが特徴的なのですが、さらにボーカルのシャウトに続くサビの部分ではボーカルが一転。キュートな歌声でポップなメロディーを聴かせてくれており、全体的にヘヴィーでパンキッシュな楽曲ながらも非常にポップであるという印象を受けます。
その後もハードコア色の強い「OK?OK!OK?OK!」や「Of Her」「Aching」のような曲で激しいサウンドを聴かせてくれたかと思えば、「I Don't Know」はギターノイズで楽曲を埋め尽くす、シューゲイザー系からの影響がストレートな楽曲。また「Sometimes」も疾走感あるオルタナ系のギターロックの楽曲となっており、こちらも90年代インディーロックからの影響を強く感じさせます。
そして最後を締めくくる「Split Me Open」はノイジーなギターサウンドを中心に据えつつも、ポップなメロを聴かせるメロディアスなナンバー。途中、幻想的な清涼感ある歌声で歌い上げながらも一方ではパンキッシュなバンドサウンドを聴かせる部分もあったりして、このポップな部分もヘヴィーな部分のバランスがとてもユニーク。彼女たちらしいクロージングとなっています。
ダイナソージュニアやPixiesあたりの90年代オルタナ系ロックバンドの影響を強く受けている彼女たちですが、特にヘヴィーなバンドサウンドを奏でつつメロはキュートでポップというバランス感覚は個人的にPixiesに通じる部分もあり非常に壺。前作に引き続き、年間ベスト候補の傑作アルバムだったと思います。来日してライブを行うのならば是非一度行ってみたいなぁ。オルタナ系ロックが好きならば間違いなく気に入りそうな1枚です。
評価:★★★★★
Mannequin Pussy 過去の作品
Patience
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