いつものCocco
Title:ビアトリス
Musician:Cocco
約1年11ヶ月ぶりとなるCoccoのニューアルバム。今回のアルバムタイトル「ビアトリス」は彼女のつくったお手製のマーメイド人形につけられた名前だそうです。ジャケット写真にマーメイド人形に、思いっきり矢印で「ビアトリス」と書かれているのですが、この人形が、そのマーメイド人形ということなのでしょう。
今回のアルバムで一番の特徴となっているのが、長年の盟友である根岸孝旨に加えて、渡辺シュンスケをはじめてサウンドプロデューサーとして起用している点でしょう。全13曲のうち、8曲を根岸が、5曲を渡辺が受け持つスタイルとなっており、その両者を競い合わせた訳ではないとは思うのですが、新たなCoccoのスタイルを模索しようとした結果なのかもしれません。
実際、前作「プロム」でも根岸に加えて様々なミュージシャンがサウンドプロデューサーとして参加し、いままでの作品に比べて音楽的なバリエーションの増えた意欲作となっていました。デビューから25年以上を経て、マンネリに陥るのを防ぐために、Coccoのミュージシャンイメージを保ちつつ、新たな挑戦をしているといった感じなのかもしれません。
ただ、今回のアルバムに関しては、全体的にはCoccoらしい楽曲が並ぶ、安定感のある作品になっていたと思います。いかにも根岸プロデュース作らしいオルタナ系のギターのインストからはじまり、Coccoらしい雄大な沖縄の海を彷彿とさせる「クジラのステージ」からスタート。沖縄をテーマとした「OKINAWAN BLUE」も、沖縄の影も歌いこんだCoccoらしいメランコリックなナンバーに。同じく「飛花落花」も、Coccoらしい哀愁感たっぷりの楽曲。
渡辺シュンスケプロデュースの「春荒らし」も、ピアノやストリングスを美しく聴かせつつ、ダイナミックなバンドサウンドを入れてくる哀愁たっぷりのナンバーで、どこか哀しげに歌い上げるCoccoの歌声にも強く惹かれる楽曲に。こちらもどこか初期くるりを彷彿とさせるようなギターサウンドが印象的な「7th floor」も、ちょっともの悲し気な歌詞も印象に残るナンバー。さらにタイトルとは裏腹に、ダイナミックでヘヴィーなバンドサウンドが印象的な「ファンタジー」と、続いていきます。全体的にそれなりにバリエーションはあるものの、オルタナ系のバンドサウンドで統一された、いかにもCoccoらしい作品が並ぶ今回のアルバム。渡辺シュンスケのプロデュース作も、基本的にはいままでのCoccoのイメージに沿った作風となっており、そういう意味ではCoccoらしいという路線から逸脱することはありません。
そんな中で、ちょっと異色的だったのが「お望み通り」で、哀愁感あるダイナミックさのあるバンドサウンドに、自らの心の奥をさらけ出すような歌詞の世界はデビュー当初の彼女を彷彿とさせるインパクトを持ちつつ、4つ打ちのリズムのダンスチューンに仕上がっており、アルバムの中でも核となるような印象に残る楽曲となっていました。
上にも書いた通り、渡辺シュンスケをあらたなサウンドプロデューサーとして起用したものの、全体的にはいつものCoccoらしい作品といった印象を受けるアルバムとなっていました。ある意味、マンネリさを感じてしまう点は否定できないのですが、一方ではそうとはいっても力強い彼女の歌声とバンドサウンドにやはり惹かれる作品に仕上がっており、最初聴いた時はいいアルバムだけどマンネリ気味かな・・・とも思ったのですが、何度か聴くうちに、Coccoらしい作品に惹きつけられて聴き入ってしまうアルバムになっていることに気が付かされました。マンネリな部分は否定できないものの、やはりCoccoの曲は魅力的だ、そう強く感じさせてくれる1枚でした。
評価:★★★★★
Cocco 過去の作品
エメラルド
ザ・ベスト盤
パ・ド・プレ
プランC
アダンバレエ
20周年リクエストベスト+レアトラックス
Cocco 20周年記念Special Live at 日本武道館 2days~一の巻x二の巻~
スターシャンク
クチナシ
プロム
ほかに聴いたアルバム
Ramble In The Rainbow/TAMTAM
アメリカ・ワシントンのレーベル「Peoples Potential Unlimited」から、初の海外リリースとなったTAMTAMの5曲入りのEP盤。もともと、レゲエ/ダブバンドとして注目を集めた彼女たち。最近ではアルバムによって、様々なスタイルを聴かせる彼女たちですが、本作はレゲエの要素はあまりなく、酩酊感あるサイケなサウンドが魅力的。ただ、彼女たちらしいグルーヴ感は健在で、ハイトーンでクリアなボーカルも効果的に用いた、気持ちよいサウンドを楽しめるアルバムになっていました。
評価:★★★★★
TAMTAM 過去の作品
For Bored Dancers
Strange Tomorrow
Newpoesy
Modernluv
We Are the Sun!
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