バンドとしてのカッコよさを感じる傑作
Title:ラヴの元型
Musician:AJICO
2021年に突如再結成し、さらには実に約20年ぶりとなる新作をリリースしたAJICO。ご存じの通り・・・・・・と言っても、以前活動していたのが20年以上前になるので、若い方はあまりご存じない方も多いかと思うのですが、ソロシンガーとして活躍していたUAが、元Blankey Jet Cityのベンジーこと浅井健一と組んだということで話題となったバンド。2021年の新作リリース後は、またしばらく活動はなかったのですが、約2年10か月ぶりのリリースに新作をリリース。再び、その活動を再開させました。
AJICOに関してちょっとユニークなのは、「UAとベンジーが組んだバンド」という点で話題でありながらも、今や、UAやベンジー自身の活動よりも人気を博している点でしょう。正直、UAもベンジーも、最近は一時期ほどの人気を確保しているとは言い難く、それぞれアルバムをリリースしてもチャートとしては20位圏内に入るもの難しいところ。しかし、AJICOとしては前作「接続」も、さらには本作もヒットチャートではベスト10入りしてくるという結果を叩き出しています。
ただ、理由としてはなんとなくわかるような気もします。まずは何よりもAJICOとしての楽曲がカッコいい、それに尽きるのではないでしょうか。まずなにより耳を惹くのが1曲目であり、表題曲でもある「ラヴの元型」。疾走感あるギターサウンドに、ちょっと気だるさを感じるUAのボーカルもカッコいいですし、なによりもグルーヴィーなベースのサウンドに惹きつけられます。個人的には2024年のベストソングの1曲かも?とも思えるほどの出来。2曲目「あったかいね」は、日常を切り取った歌詞の世界観まさにベンジーらしい、ベンジーのボーカル曲なのですが、メロディアスなメロディーラインもさることながら、微妙にサイケさも加わったドリーミーなバンドサウンドも耳を惹きます。
「微生物」もアコギのアルペジオで美しく聴かせつつ、UAの伸びやかなボーカルとメランコリックなメロディーラインが魅力的。「キティ」も疾走感あるドラムのビートがグルーヴ感を生み出していますし、最後を飾る「8分前の太陽光線」もメロウなUAのボーカルが魅力的な楽曲で、ちょっと幻想的な雰囲気も大きな魅力の楽曲で締めくくられています。
楽曲としては、基本的にベンジーが作曲で統一感を出しつつ、作詞はUA4曲とベンジー2曲という組み合わせ。SHERBETSだと、ベンジーのボーカルが非常に癖があるゆえか、全体的に「似たような曲が多い」という印象を抱いてしまうのですが、ここにUAボーカルが加わることによって、楽曲の幅がグッと広がる点、SHERBETSよりも売上面でAJICOが上回っている大きな要因なのかもしれません。また、加えて、ベースのTOKIE、ドラムス椎野恭一と繰り広げるバンドとしてのグルーヴも非常にカッコいい点も大きな要素でしょう。SHERBETSもバンドとしてもちろんカッコいいのですが、やはり「ベンジーのバンド」というイメージは否めません。AJICOについては、そんなイメージがなく、バンドメンバー4名が対等にその音を出しているあたりが、バンドとしてのカッコよさをより感じられる大きな要素なのかもしれません。
前作「接続」に勝るとも劣らない傑作で、今年のベスト盤候補の1枚と言っても間違いないでしょう。今後はまたマイペースに活動を続けるのでしょうか。なにげにUAとベンジーの相性も良いので、今後もコンスタントに活動を続けてほしいのですが。もちろんバンドとしても文句なしにカッコよさを感じさせる、そんな傑作でした。
評価:★★★★★
AJICO 過去の作品
接続
ほかに聴いたアルバム
天使だったじゃないか/Base Ball Bear
新作としては約2年4か月ぶりとちょっと久しぶりとなるベボベの新作は、彼らの原点であるギターロックに向き合ったコンセプトアルバム。いつもずっとギターロック路線だったじゃな、と思わなくもないのですが・・・。そう考えると、アルバムタイトルも、いかにも彼ららしい感じなのですが、あえて狙ったということなのでしょう。実際、楽曲についてもベボベらしい分厚いノイジーなギターサウンドを軸としてギターロックの楽曲が並びます。最後に収録された「Power(Pop)of Love」も、冒頭の掛け声が、デビュー当初、彼らが色濃く影響を受けていたナンバーガールそのままなのですが、おそらくそれも狙ったことなのでしょう。核になるようなインパクトのある曲がなかった点はマイナスですが、この路線でフルアルバム1枚は聴いてみたいかも。
評価:★★★★
Base Ball Bear 過去の作品
十七歳
完全版「バンドBについて」
(WHAT IS THE)LOVE&POP?
1235
CYPRESS GIRLS
DETECTIVE BOYS
新呼吸
初恋
バンドBのベスト
THE CUT
二十九歳
C2
増補改訂完全版「バンドBのベスト」
光源
ポラリス
Grape
C3
DIARY KEY
Palehell/Paledusk
最近、注目を集めているロックバンドによる新EP。日本のみならず、海外で活躍しているロックバンドでBRING ME HORIZONの楽曲の編曲を手掛けたり、Lil Uzi Vertに楽曲提供したりと、海外での活躍も目立ちます。楽曲的にはメタルの影響をダイレクトに受けつつ、ハードコアの色合いも感じさせるバンド。今回、このEP盤ではじめて聴いてみました。かなり迫力あるメタリックなサウンドながらも、シンセなども取り入れて、テンポよいリズムもあり、意外とメロディアスで聴きやすく、いい意味でも「人なつっこさ」を感じます。海外での活動も視野に入れているあたりも含めて、coldrainやFACTあたりに近い印象も。海外での活動も含めて、今後に期待したいバンドと言えるでしょう。
評価:★★★★
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