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2024年3月15日 (金)

貴重な音源がてんこもり!

Title:PLYING FOR THE MAN AT THE DOOR-FIELD RECORDING FROM THE COLLECTION OF MACK McCORMICK 1958-1971

ここ最近、一時期に比べてブルースの驚くような再発音楽のリリースが減っているそうです。ここ何年も貴重な音源が様々な形でリリースされ、結果、優れた音源が概ね出尽くした、という側面があるのでしょう。そんな中で、昨年、大きな話題となった数少ないブルースの貴重な音源リリースが本作。2015年に85歳でその生涯を終えた、著名なブルース研究家であり、リサーチャーであるマック・マコーミック。彼が生前収集した590リールにも及ぶ音源やその他、貴重な資料の数々が彼の死後、娘のスザンナ・ニックスによってアメリカのスミソニアン博物館に寄贈されたそうですが、その貴重な音源の一部が5枚組のCD/LPとしてリリース。大きな話題を呼びました。

全3枚組66曲に及ぶこの作品には、30人以上のミュージシャンが登場。そのほとんどが本作が初公開という非常に貴重な内容となっています。そのような中でも特に耳に残るのが、ご存じLightnin'Hopkinsの演奏でしょう。本作では9曲が収録されていますが、かなり肩の力が抜けた自然体の演奏を聴かせてくれており、その歌声はもちろん、ゆったりとした雰囲気ながらも力強いアコギのサウンドの演奏が耳を惹きます。本作のスタートは、彼の代表曲でもある「Mojo Hand」からスタートするのですが、非常にリアルな感触のある録音となっており、まずは耳を惹かれます。

全体的に録音は荒々しい感じの録音状態なのが印象的。決して優れた録音状態という訳ではないのですが(ただ、ノイズが強くて聴きとりにくいような音源はないのですが)、逆にこの荒々しい録音状態ゆえに、ミュージシャンのいるその場の空気感をそのまま録音しているようにも感じます。また、ライブ音源をそのまま収録しているため、曲紹介や簡単なMCも収録されており、それもまた、その場所の空気感をそのまま収録しているような感覚に陥らせます。ある意味、聴いていてスピーカーのすぐ向こう側でミュージシャンが居て、演奏しているような、そんな雰囲気を感じさせる、そんな音源が並んでいます。

また、このアルバムでユニークなのは、正統派のギターやピアノをつかったブルースだけではなく、ブルースを起因とした様々なタイプの音源も収録されている点でいた。例えばJoe Pattersonの「Quills」は一生懸命ふいているオカリナの演奏と、その間の短い歌のみという異色的な曲。さらに続くLightnin'Hopkinsの「Ma Pa Cut the Cake」はなんとギターはほとんど登場せずに、タップダンス(?)の音と、その間に彼の語りが収録されているという曲(?)に。同じく彼の「Mr.Charlie」は、ギターをバックに、語りと観客の笑い声が収録されており、いわばギター漫談のような感じなのでしょうか?またMurl"Doc"Websterの「Medicine Show Pitch」はハイテンポの語りで、まるでラップの走りのよう。貴重なブルース音源以上に、当時の貴重な黒人社会での音楽に関するエンタテイメントの状況が垣間見れる音源も、今となっては非常に貴重のように感じます。

もちろん、そのほか収録されているブルースの音源についても力強いギターやピアノのパフォーマンス、そして魅力的な歌を聴かせてくれる音源は数多く。驚くほど充実した音源が収録されている3枚組のアルバム。かなり素晴らしいブルースの再発版となっていました。もうネタ切れかと思いつつ、まだまだこんな音源が世に出てくるあたり、まだまだ貴重な音源が世界には眠っているような予感も。また、マック・マコーミックが収録した音源についても、これはまだまだ一部ということなので、続編にも期待できそう。ブルースファン必聴の作品です。

評価:★★★★★

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