« 日本の移民について考えさせられる1冊 | トップページ | バンドのさらなる成長を感じさせる1枚 »

2024年3月30日 (土)

さらに自由になったソロ2枚目

Title:What Now
Musician:Brittany Howard

現在、活動休止中のロックバンド、Alabama Shakesのボーカリストとして高い評価を集めたBrittany Howardの2作目となるニューアルバム。2021年のグラミー賞では、ソロとしてベスト・ロック・ソング部門を受賞。ソロとしても着実にキャリアを伸ばしている彼女ですが、最新アルバムも前作に引き続きの傑作アルバムとなっていました。

前作「Jaime」ではキーボードに、かのロバート・クラスパーが参加。ロックバンドであるAlabama Shakesと比べると、若干ジャズ寄りのサウンドになっている点が大きな特徴でした。今回のアルバムでも、ドラムにはもともとジャズミュージシャン畑であるネイト・スミスを起用。数多くのミュージシャンのセッション・ミュージシャンとして名を高めている彼ですが、ジャズをベースに様々なジャンルのミュージシャンとコラボを行っています。

実際、今回のアルバムは前作のようなジャズ寄りというひとつの方向性を示すものではなく、ソウルやロックなど、比較的Alabama Shakesを含め、いままでの彼女の活動で顔を覗かしていたような音楽を詰め込んだようなアルバムに仕上がっています。例えば「Earth Sign」「To Be Still」のようなメロウなボーカルを聴かせるソウル風の楽曲もあったり、「Samson」のようにムーディーでジャジーな楽曲があったりします。さらにタイトルチューンとなっている「What Now」はバンドサウンドでファンキーに聴かせてくれるロックテイストの強いナンバーですし、「Power To Undo」も同じくファンキーなビートに彼女の力強いシャウトも印象的な、ロッキンなナンバーとなっています。

特に異色的とも言えるのが「Prove It To You」で、四つ打ちのビートで疾走感あるダンスチューンとなっており、アルバムの中でもひとつのインパクトとなっています。またラスト「Every Color In Blue」はフリーキーなサックスが流れるナンバーに。ダイナミックなサウンドでアルバムは締めくくられています。

前作であえてジャズ寄りにシフトした、という点はおそらくAlabama Shakesとしての活動と差別化するためだったと思われます。今回のアルバムに関しては、Alabama Shakesの活動休止が長くなってしまっている中、あえてAlabama Shakesとの差を意識しないで、なおかつ彼女の演りたい音楽を演りたいように演っていた、そんなアルバムにも感じました。

もちろん今回のアルバムでもBrittany Howardのボーカルは大きな魅力。前作と同じくパワフルなボーカルをこれでもかと聴かせる、というよりもやさしく包容力あるボーカルで歌い上げているという印象を受けるボーカルで、彼女の表現力がより魅力的に感じられる曲が並んでいました。

前作に引き続き、年間ベストクラスの傑作アルバムだったと思います。次はそろそろAlabama Shakesとしての活動を再開してほしい、とも感じてしまうのですが・・・。ただ、ソロ作はソロ作で魅力あふれる作品だと思います。彼女の魅力を存分に感じられる1枚でした。

評価:★★★★★

Brittany Howard 過去の作品
Jaime


ほかに聴いたアルバム

What Do We Do Now/J Mascis

Dinosaur Jr.のボーカリスト、J Mascisによるソロアルバム。楽曲はかなりシンプルかつストレートなオルタナ系ギターロック。分厚いバンドサウンドをバックに、ミディアムチューンでメランコリックな曲調の曲が多く、彼も既に58歳。すっかりベテランのシンガーなだけに、勢いよりも聴かせるタイプの曲が多いように感じる反面、ノイジーなギターロックは、オルタナ系の王道といった感じなれど、若々しさも感じさせます。目新しさはないのですが、安心して聴けるギターロックのアルバムです。

評価:★★★★

|

« 日本の移民について考えさせられる1冊 | トップページ | バンドのさらなる成長を感じさせる1枚 »

アルバムレビュー(洋楽)2024年」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 日本の移民について考えさせられる1冊 | トップページ | バンドのさらなる成長を感じさせる1枚 »