メロウなR&Bポップがラテンと融合
Title:Orquídeas
Musician:Kali Uchis
本作が4作目となるコロンビア出身、アメリカ・ヴァージニア州育ちの女性シンガーソングライターによる新作。前作「Red Moon in Venus」が評判を呼び、ビルボードチャートでも最高位4位と初の大ヒットを記録。一躍ブレイクとなりました。続く本作も大きな評判を呼び、ビルボードチャートでは前作を上回る最高位2位を記録。2作連続のヒットで、その地位を確かなものとしています。
私が彼女の作品を聴くのは、前作「Red Moon In Venus」に続いて2作目。前作もそうだったのですが、まず彼女の大きな魅力は清涼感あふれるハイトーンボイスをメロウに聴かせるその作風でしょう。特にドリーミーなサウンドとピッタリとマッチ。本作でも、冒頭「¿Cómo Así?」もハイトーンボイスでドリーミーに聴かせるパートからいきなりスタートし、その魅力を前面に押し出したスタートとなっています。
その後も「Pensamientos Intrusivos」もファルセットボイスが幻想的で非常に魅力的。「Tu Corazón Es Mío...」もそのハイトーンボイスでメランコリックに、感情たっぷりに聴かせてくれます。この幻想的なサウンドに彼女の美しいボーカルが載るスタイルが非常に魅力的。その夢のような歌声にしばし聴き入ってしまいます。
ただ、そんな中でも今回のアルバムの特に大きな特徴だったのが、彼女の出自を反映させたラテンの要素を多く入れた点でしょう。先行シングルとなっている「Igual que un Ángel」ではメキシコの人気シンガーPeso Plumaが参加。「Te Mata」はラテン風のメロディーで哀愁たっぷりに聴かせるバラードナンバーとなっていますし、「Muñekita」でもリズミカルなレゲエのリズムを取り入れたラップチューンに。同郷のコロンビアのシンガー、Karol Gが参加した「No Hay Ley Parte 2」はリズミカルでメランコリックなレゲトンに仕上げています。
実際、その影響はセールスにもあらわれているようで、前述の「Igual que un Ángel」はメキシコをはじめ、中南米の各国でヒットを記録。またこのアルバム自体も、ビルボードのトップ・ラテン・アルバムで1位を獲得するなど、しっかりラテンのリスナー層にアピールに成功。その結果を残しています。
ただだからといって、それ以外のリスナー層を置いてきぼり、といった感じではありません。むしろ彼女のボーカルといいポップなメロディーラインといい、R&Bやソウルの影響を取り込んでポップにまとめ上げた作風は、いい意味でポップのスタンダードの真ん中を行くような作風。この万人向けとも言える爽快なポップチューンとラテンなサウンド、リズムの融合が非常に絶妙にマッチしており、その点が本作の最大の魅力と言えるかもしれません。
まだまだこれから注目を集める予感のする彼女。日本での知名度はまだまだですが、さらなる大きなヒットも期待できるかも。ラテンの哀愁感あるメロは何気に日本人の琴線に触れそうなタイプのメロディーですし、間違いなく要注目の作品です。
評価:★★★★★
Kali Uchis 過去の作品
Red Moon In Venus
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