高橋幸宏の偉大さを感じるベストアルバム
Title:THE BEST OF YUKIHIRO TAKAHASHI [EMI YEARS 1988-2013]
Musician:高橋幸宏
昨年1月、70歳でこの世を去ったミュージシャン、高橋幸宏。以前から、体調が悪い状況であることは知られていたものの、突然の訃報には多くの音楽ファンがショックを受けました。2023年は3月には坂本龍一も逝去し、わずか3ヶ月で、YMOのメンバーが2人も鬼籍に入るというショッキングな事態となってしまいました。
本作はそんな中リリースされた、高橋幸宏のベストアルバム。1988年から2013年にかけて所属したEMI時代の作品からセレクトしたベストアルバムで、選曲は鈴木慶一。さらに、砂原良徳がリマスターを施すという、単なる既存曲を寄せ集めただけのアルバムではない、なかなか豪華な仕様のベストアルバムとなっています。もちろん、収録されているのは高橋幸宏のソロとしての作品のみですが、彼がどのようなミュージシャンだったのか、あらためて概観できるベストアルバムになっています。
さて今回のベスト盤を聴いて、まずは、高橋幸宏というミュージシャンはとても優しいメロディーを書くミュージシャンということを再認識しました。例えば「しあわせになろうよ」などは、非常に暖かく、ちょっと切なさも感じられるメロディーが印象的。「GOOD DAYS,BAD DAYS」も、胸がキュンとなるような切ないメロと歌詞が強く印象に残りますし、「ちょっとツラインダ」もアコギで聴かせるフォーキーでメランコリックなメロディーラインが胸に響きます。
正直、彼の書くメロディーラインは決して派手ではありません。わかりやすいサビがある訳でもありません。ただ、聴き終わった後、しっかり心に残るメロディーラインを書いてきています。それは本当の意味でメロディーメイカーとしての才能がある、ということなのでしょう。また、大きなポイントなのが、彼のメロディーは聴けばすぐに「高橋幸宏の曲だ」とわかるような個性があります。この点も彼の大きな魅力であり、かつメロディーメイカーとしての実力を持っている証のように感じました。
またサウンド的にもバラエティーに富んでおり、彼が様々な音楽に挑戦していたことがわかります。ちょっと大滝詠一っぽさを感じるシティポップの「青空」、ジャズやボッサの要素を感じる「海辺の荘」、打ち込みでリズミカルな「風につづく道」、レゲエ風の「星屑の町」など、幅広いジャンルへのあくなき挑戦心を強く感じます。
本作でちょっと残念だったのは1988年から2013年までの作品からのベストアルバムということで、それ以前の作品に関しては収録されていない点。例えば1978年のデビューアルバム「サラヴァ!」は彼の代表作の1枚と言ってもいいのですが、このアルバムからの曲は当然収録されていません。次は、オールタイムベスト、さらにはYMOをはじめとする彼が関わったバンドの中から、彼が作曲を手掛けた曲まで収録したようなベストアルバムをリリースしてほしいなぁ。権利関係でいろいろと難しいかもしれませんが・・・。
高橋幸宏というミュージシャンの偉大なる才能を感じることが出来たベストアルバム。まだ70歳という若さでこの世を去ってしまったのは、本当に残念すぎるということを思いました。改めて、彼のご冥福をお祈り申し上げます。
評価:★★★★★
高橋幸宏 過去の作品
Page by Page
GOLDEN☆BEST
LIFE ANEW
Saravah Saravah!
GRAN ESPOIR
IT'S GONNA WORK OUT 〜LIVE 82-84〜
ほかに聴いたアルバム
moonriders アンコールLIVEマニア・マニエラ+青空百景/ムーンライダーズ
2022年12月25日に恵比寿The Garden Hallで行われた、ムーンライダーズの1982年のアルバム「青空百景」と、同年にリリースされた「MANIA MANIERA」の再現ライブの模様を収録したライブアルバム。両方のアルバムはいずれもオリジナルを聴いたことないのですが、様々なタイプのサウンドを組み込んだ実験性も感じられる作風で、それでいてどこかシニカルでありつつ同時にコミカルさも感じられる作風が魅力的。以前聴いた「FUN HOUSE year」のボックス版でも感じた、80年代90年代あたりのムーンライダーズらしさを感じさせるライブ盤でした。
評価:★★★★★
ムーンライダーズ 過去の作品
Ciao!
moonriders Final Banquet 2016 ~最後の饗宴~
It's the moooonriders
Happenings Nine Months Time Ago in June 2022
moonriders「FUN HOUSE years」BOX
Timeless/MUCC
2022年5月4日に結成25周年を迎えたMUCC。この記念イヤーの最後を締めくくるのがこのオリジナルアルバム。前半に関してはかなりカッコいい。ロックバンドとしてのMUCCの側面を全面的に押し出した構成になっており、ヘヴィーでダイナミックなサウンドが耳を惹きます。一方、後半に関しては、かなり哀愁感漂うメロディーラインを前面に押し出したような曲がメイン。ともすれば「ムード歌謡曲」の範疇に入りそうな曲もありました。ここらへんのバランスがMUCCの特徴でファンにとっては魅力なのかもしれませんが、ムード歌謡曲風の曲に関しては、ちょっとベタすぎる感もあっていまひとつ。前半はカッコよかっただけにちょっと残念な感はあるのですが。
評価:★★★★
MUCC 過去の作品
志恩
球体
カルマ
シャングリラ
THE END OF THE WORLD
T.R.E.N.D.Y.-Paradise from 1997-
脈拍
BEST OF MUCC II
カップリング・ベストII
壊れたピアノとリビングデッド
惡
新世界
新世界 別巻
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