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2024年3月 3日 (日)

まさに「究極」

Title:50 ans de concerts(邦題 究極のベスト・ライヴ)
Musician:Malavoi

今回紹介するのは、カリブ海に浮かぶフランスの海外県、マルチニークで結成されたバンド、マラヴォワのベストライブアルバムです。ある程度、ワールドミュージックに興味があるのならば、おそらくその名前は聞いたことあるのではないでしょうか。1972年に結成された彼らは、なんと結成50周年を迎えたそうで、それを記念してリリースされたのがこのライブベストアルバム。1987年にリリースされたライブアルバム「Malavoi au Zénith」、1992年リリースの「Matebis Live」、さらに2011年にリリースされた「Malavoi Symphonique」から厳選されて楽曲を収録したアルバムになっているそうです。

マラヴォワの音楽の特徴は、彼らの出身地であるフランス領アンティル諸島の音楽に、カリブやブラジルの音楽、さらにはジャズの要素が加わった独特の音楽性だそうです。彼らのいる地域は、ちょうどアメリカからもブラジルからも影響を受けやすい地域であり、かつフランス領ということで本国からの影響も受ける、非常に多様な音楽性の影響を受けやすい地域ということでしょうか。それが、独特のマラヴォワの音楽を生み出しているようです。

このライブベストでも、冒頭を飾る「Jou ouve」はメランコリックなブラジル音楽や、ジャズの影響を感じさせますし、続く「La Filo」は哀愁感たっぷりのラテン音楽が特徴的。さらに「Amelia」は軽快なラテンのリズムが楽しい楽曲で会場を盛り上げています。

この哀愁感たっぷりのメロディーラインを聴かせつつも、バンドサウンドやピアノ、パーカッションで軽快に聴かせるサウンドが楽しく、このにぎやかで祝祭感もあるライブの雰囲気がこちらに伝わってくるのがこのライブベストの大きな特徴であり、魅力でしょう。「Amelia」もそうですし、「Apartheid」も軽快でアップテンポなピアノやホーンセッションが楽しいのですが、グルーヴィーなリズムを刻むベースラインも耳に残ります。なによりも、明るく歌い上げるメロディアスな歌も魅力的。聴いていてワクワクするような楽曲に仕上がっています。「Case a Lucie」もメロウなストリングスとピアノが特徴的なブラジル音楽とラテンとフレンチを融合させたような曲なのですが、明るいポップなメロで、会場の観客が一緒に歌っています。確かに聴いていて、こちらまで明るくなるようなポップになっているのは間違いないでしょう。

一方、哀愁たっぷりの歌も大きな魅力で、例えば「Caresse mwen」も、ムード歌謡曲にも通じそうなムーディーな歌を哀愁たっぷりに歌い上げています。この曲のイントロがスタートした段階で観客から歓声があがるので、こちらやはり人気曲なのでしょうか。ボッサ風の「Nou pa moun」もまた、アコギとパーカッションをバックに歌う歌が印象的。こちらは感情を押し出すというよりも、比較的淡々と歌っている感じなのですが、それがまた味があって耳に残ります。

マラヴォワのライブの魅力も強く感じますし、またベスト盤的に彼らの楽曲自体の魅力にも触れられるアルバム。「究極のライブ・ベスト」という邦題は、ちょっとそのまんまなのですが、「究極」と名乗るだけあって、確かに彼らの魅力を存分に押し出した作品になっていたと思います。マラヴォワの名前を知っている方はもちろん、彼を知らなくてもワールドミュージックに興味がある方、ラテンやブラジル音楽に興味がある方にもおすすめしたいライブアルバムです。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

i/o/Peter Gabriel

純然たるオリジナルアルバムとしては実に約21年ぶりの新作となるピーター・ガブリエルのニューアルバム。2023年1月から、毎月、満月の日に新曲をリリースしてきましたが、本作ではそのようにして発表された12曲を収録。ミックス違いで「Bright-Side」「Dark-Side」と名付けて、2枚組で収録されています。いずれもバンドサウンドにストリングスを取り入れたスケール感もあるアレンジで、メランコリックな美しいメロディーラインを聴かせてくれる楽曲。タイトル通り、「Bright-Side」はより爽やかに、「Dark-Side」はタイトル通りよりダークなアレンジになっているのですが、ただ両者、劇的に大きな違いはなく、聴いた感じとしては楽曲の印象として差異はさほど大きくありません。ただ、ここらへんの聴き比べは楽しいかも。

評価:★★★★

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