40周年で次の一歩へ
Title:Carousel Circle
Musician:カーネーション
2023年に、カーネーションとして活動をはじめてから40周年を迎えた彼らが、節目の年にリリースした彼ら。本作は、そんなベテランバンドとして確固たる地位を築いている彼らの約2年ぶりとなるニューアルバムとなります。アルバムタイトルの2つの単語の頭文字がいずれも「C」となっていて、バンド名、カーネーションの「C」と合わせているのは狙ったのでしょうか?
カーネーションの楽曲というと、クオリティーが高く、卒のない、大人のロックという印象を受けつつ、力強いバンドサウンドにはベテランらしからぬ勢いと、なによりも現役感を覚えるのが特徴的。そんな中に多彩な音楽性を加えているのも彼らの実力を感じさせる大きな要素。今回のアルバムに関しても、そんなカーネーションとしての特徴をしっかりと兼ね備えたアルバムに仕上がっています。
ただ、そんな中でも今回のアルバムは、特に力強いバンドサウンドを前に押し出した「ロック」な側面を強く感じました。そもそもアルバム自体、静かなピアノの音からスタートするものの、すぐにギター、そして力強いドラムの音が入ってきて、ロックなアルバムとしての幕開けを感じさせるスタートとなっています。
続くアルバムタイトル曲的な「カルーセル」も爽やかなピアノの音のバックで鳴り響く力強いドラムのリズムが印象的。「愛の地図」もメロディアスでポップなメロのバックではバンドサウンドが鳴り響くギターロックのナンバーに。さらに後半、「ダイアローグ」では非常にヘヴィーでダイナミックな、グランジっぽいナンバーに仕上がっています。
ただ一方ではもちろんバラエティー富んだ作風もアルバムの中には垣間見れます。特に終盤、「Sha La La」ではワウワウギターを入れてソウルなナンバーに仕上がっていますし、ラストの「Sunlight」も、ピアノやストリングスで優雅に聴かせつつ、後半はサイケに仕上がるというユニークなナンバー。さらに今回、特徴的な試みが「深ミドリ」で、本作はバンド史上初となる、ベースの大田譲によるナンバー。シタールを入れたエキゾチックな雰囲気漂う楽曲に。大田自身がボーカルを取り、どこかぎこちなさも感じるのですが、本作に幅を持たせる大きな要素となっています。
そんなロックなカーネーションをベースとしつつ、彼ららしさを感じる楽曲なのですが、ちょっと印象的だったのが、前述のアルバムタイトル的とも書いた「カルーセル」の冒頭。
「どこかで筆を置くべきか
それとも終わらぬ絵と向きあうのか」
「交わることのない線の上で
手がかりを探すことはもうやめよう」
(「カルーセル」より 作詞 直枝政広)
いかにもバンド40周年を迎え、今後のバンド活動について考えを巡らせている彼の姿を感じることが出来ます。そんな中で、次へ進もうとするのは、カーネーションなりの決意といった感じでしょうか。
ロックバンドとしての彼らに現役感を覚えつつ、次の一歩の決意も感じされる今回のアルバム。相変わらずクオリティーの高いアルバムで、いい意味で安心して楽しめる傑作アルバムでした。まだまだ彼らのカルーセルは周り続けそうです。
評価:★★★★★
カーネーション 過去の作品
Velvet Velvet
UTOPIA
SWEET ROMANCE
Multimodal Sentiment
Suburban Baroque
The Very Best of CARNATION "LONG TIME TRAVELLER"
Turntable Overture
ほかに聴いたアルバム
東大900番講堂講義 ep/小沢健二
昨年9月に、彼の母校、東京大学で特別講義を行ったオザケン。このEP盤は、その日に発表された新曲「Noize」と、2022年のツアー「So kakkoii 宇宙 Shows」で披露された「アルペジオ (きっと魔法のトンネルの先)」「いちょう並木のセレナーデ」のメドレーを収録したライブ音源である「River Suite 川の組曲」の2曲が収録されたもの。「Noize」はGEZANのマヒトゥ・ザ・ピーポーがボーカルを担当し、いきなりオザケンではないボーカルが流れてきてリスナーを驚かせますが、楽曲自体はオザケンらしい明るくメロディアスなポップチューン。「River Suite 川の組曲」も含めて、非常に爽やかで明るい雰囲気のあふれるEP盤になっていました。
評価:★★★★
小沢健二 過去の作品
我ら、時
So Kakkoii 宇宙
犬は吠えるがキャラバンは進む
ROUNDABOUT/キタニタツヤ
本作にも収録されている「青のすみか」がアニメ「呪術廻戦 懐玉・玉折」のオープニングテーマに起用されて大ヒットを記録したシンガーソングライター、キタニタツヤによる5枚目のオリジナルアルバム。メランコリックな曲調をベースとしたメロディーラインが特徴的。時折、ジャジーな要素も加わりムーディーな雰囲気を醸し出しているのが魅力的な一方、メランコリック一本調子なのは、ちょっと単調に感じる部分も。
評価:★★★★
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