美メロに複雑なリズムがからむ
Title:Knower Forever
Musician:KNOWER
今日紹介するアルバムは、既に先日発表した、2023年私的ベストアルバムでも洋楽4位にランクインしており、既にその時に取り上げた作品となります。ドラマーであり、プロデューサーやシンガーソングライターとしても活躍しているLouis Coleと女性ボーカリストGenevieve Artadiとのデゥオによるアルバム。ルイス・コールのソロアルバムと同様、ジャズやソウルの要素を取り入れたポップなメロディーは、日本で言うところのシティポップやAORといったジャンルにカテゴライズされるような、あか抜けた感じのサウンドと歌がとても心地よい作品に。しかし一方、そんな中に、複雑なサウンドやリズムが加わり、独特な個性を醸し出している点が大きな特徴となっています。。
イントロ的なタイトルチューンを挟み、事実上の1曲目とも言える「I'm The President」から、まずはそんなKNOWERを象徴するような作品になっています。メランコリックなメロディーラインがとにかく心地よい。特にサビの部分の半音ずつ下がるメロディー展開が、かなり切ない雰囲気となっており、個人的には壺。ほどよくR&B風のサウンドや、途中に入るジャジーなピアノソロも心地よいのですが、特に特筆したいのはラストにさりげなくくわえられているルイス・コールのドラム。かなりテクニカルな複雑なドラムプレイが隠し味のように加わっており、なにげない彼の主張を感じさせます。
それに続く「The Abyss」も疾走感あるエレクトロサウンドが耳を惹く作品。微妙にファンキーなリズムも心地よく、こちらも乱れることのないハイテンポなドラムプレイに魅了される楽曲に。「It's All Nothing Until It's Everything」も爽やかさを感じる歌がとてもポップにも関わらず、変態性を感じるドラムプレイが強烈なナンバー。さらっと聴くと、爽やかなAOR風の楽曲ながらも、この強烈なドラムプレイが強いインパクトを放っています。
後半も、「Do Hot Girls Like Chords?」はいきなりノイジーなギターリフが登場し、むしろハードロック的にすら感じる楽曲。ただ、Genevieve Artadiの清涼感ある伸びやかな歌は変わらず。またここでもルイス・コールの力強いドラムプレイが目立ちます。「It Will Get Real」も主軸となるのはポップで爽快な歌なのですが、こちらもその歌にからむドラムとシンセのサウンドが非常に個性的。思わずサウンドの妙に聴き入ってしまいます。
一方、聴きどころはそんなリズムやサウンドだけではありません。メロディーラインも実に美しい調べを聴かせてくれています。メロディーという面で印象的だったのが中盤の「Same Smile,Different Face」で、フォーキーで美しいメロディーが実に魅力的。カーペンターズを彷彿とさせるような暖かみのある歌を聴かせてくれています。サウンドは基本的にシンプルなストリングスで、ここに変態的なドラムプレイは入っていません。またラストの「Crash The Car」もミディアムテンポの伸びやかなボーカルで美メロを聴かせてくれる楽曲。しっかりKNOWERの持つメロディーラインの魅力を感じさせてくれます。
まさにサウンドやリズムの妙とメロディーラインの美しさ、さらにジャズやファンク、ソウルのグルーヴ感が絶妙にマッチした傑作アルバム。既に年間ベストにランクインしているように、2023年を代表する傑作だったと思います。心地よいサウンドとメロディーに酔いしれたい1枚です。
評価:★★★★★
ほかに聴いたアルバム
Hackney Diamonds(Live Edition)/The Rolling Stones
昨年10月にリリースして世界中で話題沸騰となったローリング・ストーンズのニューアルバム「Hackney Diamonds」。そのリリースからわずか2ヶ月、リリース前夜の2023年10月19日に、アメリカ・ニューヨークの「Racket NYC」で行ったシークレットライブの模様を収録したライブアルバムをつけた2枚組のLive Editionがリリースされました。1枚目は「Hackney Diamonds」そのままですし、正直、ファンに同じCDを2度買いさせるような戦略は、かなりいかがなものかと思うのですが・・・。ただライブの方は、今なお現役感が全く衰えていないパワフルなボーカルが魅力的。ラストの「Sweet Sounds Of Heaven」では原曲同様、Lady Gagaが登場するのですが、彼女のボーカルも力強く、印象に残ります。ライブ盤の中身の方は申し分なし。ただ、ちょっとこの売り方はどうかなぁ・・・と思うので★1つマイナスで。
評価:★★★★
The Rolling Stones 過去の作品
Shine a Light: Original Soundtrack
Some Girls LIVE IN TEXAS '78
CHECKERBOAD LOUNGE LIVE CHICAGO 1981(邦題 ライヴ・アット・ザ・チェッカーボード・ラウンジ・シカゴ1981)(MUDDY WATERS&THE ROLLING STONES)
GRRR!
HYDE PARK LIVE
Sweet Summer Sun-Hyde Park Live
Sticky Fingers Live
Blue&Lonesome
Ladies & Gentlemen
ON AIR
Voodoo Lounge Uncut
Honk
The Rolling Stones Rock and Roll Circus
A Little Bang (Bigger Bang Tour EP)
GRRR Live!
Licked Live In NYC
Hackney Diamonds
Soit la nuit,Soit le jour/Bourrasque
長らく続いていた2023年のベストアルバムの後追いシリーズ。今回が最後となります。Music Magazine誌ワールド・ミュージック部門で10位を獲得した作品。フランスはオルシタニア地方のデゥオの作品のようですが、ネットでも日本語で詳しく説明したサイトがありません・・・。ただ、アラビア風の音楽と、西洋のトラッドを融合したような作品が非常にユニーク。エキゾチックな独特の音楽性が耳に残る作品でした。
評価:★★★★★
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