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2024年2月23日 (金)

海外からのインスピレーション

Title:Worldfly
Musician:ビッケブランカ

今回のビッケブランカのアルバム、なかなかユニークな試行が施されています。今回のアルバム、CDオンリー盤と、CD3枚組+DVD/Blu-rayという組み合わせのバージョンの3パターンが用意されているのですが、ユニークなのはCDオンリー盤の方。こちら、「ラジオ盤」ということで、曲間にトークが挿入されて、まるでラジオを聴いているような感覚で楽しめるアルバムとなっています。・・・といっても、ご存じの方も多いかと思いますが、このスタイル、彼、オリジナルの趣向という訳ではありません。Creepy Nutsが、毎回、アルバムでは「ラジオ盤」と称して、曲間にトークを入れるスタイルの音源をリリースしていました。「誰も真似してくれない」と嘆いていたのですが、まさかこういう形で真似するミュージシャンが出てくるとは・・・。正直、あまりトークが得意なタイプのミュージシャンではないので、このスタイルでのCDリリースは、ちょっと驚いています。

さて、今回の作品、オリジナル音源の方は6曲入りのEP盤となっています。昨年、多くの海外公演を実施した彼。今回のEP盤は、その海外での活動で受けたインスピレーションを楽曲に反映したのだとか。今回、曲の間のトークで、どの国からインスピレーションを受けたのか、話題にしているのですが、ひょっとして、このような情報を広く提供したかったからこそ、このような「ラジオ盤」というスタイルを取ったのかもしれません。

ただ、残念ながら、「海外からのインスピレーション」と言われても、いわばその現地の音楽に影響を受けたような痕跡は皆無。良くも悪くもいつものビッケブランカらしいポップとなっています。ここらへん、日本のポップシンガーにはよくありがちな話ではあるんですよね・・・ワールドミュージックを好んで聴いている立場からすると、物足りなさを感じてしまうのですが。

全体的には、どちらかというと今どきのサウンドを取り入れたビッケブランカらしいメランコリックでメロディアスなポップチューンが並んだアルバムになっています。メランコリックなミディアムチューン「Bitter」からスタートし、エレクトロなダンスチューンはちょっとK-POPっぽさも感じる「Snake」。続く「Sad In Saudi Arabia」はタイトル通り、サウジ・アラビアを訪れた時に受けたインスピレーションを楽曲に反映したもの。この曲に関しては、妖艶な雰囲気にアラビア系の音楽の影響は感じられますが、全体的にはメランコリックなポップチューンというスタイルに大きな変化はありません。

ピアノをバックに軽快でかわいらしいポップソングを聴かせてくれる「Luca」に、スケール感ある「革命」はライブでは既に定番曲になっている、いかにも盛り上がりそうなナンバー。バンドサウンドにホーンセッションも入る賑やかなサウンドも楽しいポップチューンに仕上がっています。そしてラストを締めくくるタイトルチューン「Worldfly」はピアノ弾き語りで歌い上げる、1分というクロージング的な曲。いかにも締めくくり的な曲なのに、その後にトークが入ってくる点も「ラジオ盤」ならでは、でしょうか?

そんな訳で、「海外からのインスピレーション」というテーマ性はともかく、楽曲的にはいつものビッケブランカらしい、楽しくポップ、その中でほどよく今どきなサウンドを取り入れたインパクトのあるポップアルバムに仕上がっていました。熱心なファン以外は、正直、トーク部分のない、ストリーミングで聴けばよいと思うのですが(だからこそ、あえてCD盤をラジオ盤にしたのでしょうが)、ビッケブランカらしいポップソングを楽しめる良作でした。

ちなみにライブ音源の方は、昨年7月31日に東京のZepp Divercityでのライブの模様を収録したもの。こちらもベスト盤的なライブで、ビッケブランカのライブの楽しさが伝わってくる音源となっています。合わせてお勧めの作品です。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

OFF THE WALL -ELLEGARDEN TRIBUTE-

ELLEGARDENに影響を受けたという、7組のミュージシャンたちがELLEGARDENの曲をカバーしたトリビュートアルバム。若干、「本当に影響を受けたの?」といった感じの方もいるのですが・・・。基本的にはヘヴィーなバンドサウンドによるシンプルなカバーアルバムに。ポップスバンドのマカロニえんぴつの「高架線」のカバーで、ボーカルががんばってシャウトするなど、意外と骨太なロックに仕上げているカバーも印象的。無難といえば無難な出来なのですが、エルレのファンも参加ミュージシャンのファンも、ある意味安心して楽しめる1枚ではあると思います。

評価:★★★★

moonriders「FUN HOUSE years」BOX/ムーンライダーズ

彼らがファンハウスに在籍していた1994年から1997年のアルバム、シングルをまとめたボックスセット。ムード歌謡曲にカントリー、レゲエやエレクトロサウンド、ハードロックにサイケ、沖縄民謡まで様々な音楽を取り込みつつ、どこかシニカルで、醒めた感じの作風がユニーク。デビューから約20年経った時期の作品で、当時としてはデビュー20年のバンドといえば、大ベテランとみなされていたのでしょうが、ベテランらしい安定感がありつつも、どこか「大御所」的になることを拒否したような自由さを感じさせる作風になっていました。

評価:★★★★★

ムーンライダーズ 過去の作品
Ciao!
moonriders Final Banquet 2016 ~最後の饗宴~
It's the moooonriders
Happenings Nine Months Time Ago in June 2022

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