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2024年2月11日 (日)

Adoのボーカリストとしての実力を実感

Title:Adoの歌ってみたアルバム
Musician:Ado

昨年の紅白出演時のパフォーマンスも大きな話題となったAdoの初となるカバーアルバム。Adoに歌ってほしいボカロ曲とJ-POP曲を公募し、リクエストの中から選曲した全10曲を収録しています。このアルバムに関してまず言いたいのは、2曲目に収録されている「飾りじゃないのよ涙は」のカバーが絶品。この曲を聴くだけでも本作を聴く価値があるということです。

Adoというと、「歌が上手い」という枠組みで語られることの多いボーカリストです。ただ、いままで率直に言って、彼女は上手いことは上手いかもしれないですが、歌の表現力という面では今一つ。よく日本では、単純に声量があってピッチがあっていれば「歌が上手い」扱いされる傾向にあります。ただ本来、歌の上手い下手は表現力が重要なファクターであり、ピッチがあっているというのは当然のこととして、声量については歌が上手い必須の要素ではないと思っています。実際、Adoの歌は、とにかく「声量」を聴かせる曲が多く、前作「ウタの歌」で聴かせてくれたバラードは表現力不足。Adoの歌の上手さは若干疑問符がついていました。

しかし、本作に収録されている「飾りじゃないのよ涙は」のカバーはまさに絶品。緩急をつけた、色っぽさすら感じられるボーカルは彼女のボーカリストとしての表現力の高さをしっかりと感じることが出来ます。この曲、原曲は言わずと知れた中森明菜。彼女のボーカリストとしての実力も言うまでもありませんが、Adoも彼女に勝るとも劣らない力量を持ったボーカリストだということがはっきりと認識できました。

その他にはJ-POPでは優里の「ドライフラワー」、椎名林檎「罪と罰」、TK from 凛として時雨の「unravel」をカバー。ボカロ曲ではHoneyworks「可愛くてごめん」、てにをは「ヴィラン」、ピノキオピー「神っぽいな」などに挑戦しています。ただ、J-POP曲を含め、彼女のボーカル込みでやはり「飾りじゃないのよ涙は」が頭ひとつもふたつも出ている印象が。ただ「飾り~」は言わずとしれた日本ポップス界の名曲中の名曲中ですから、これと比較するとどうしても分が悪いのかもしれません。

ただ、全体的には「ドライフラワー」を除くと、彼女のパワフルなボーカルを生かそうとした曲がメイン。彼女もそれに答えるように、目いっぱい、その声量あるボーカルを生かしたカバーとなっています。ただ、結果としてやはりボーカルを前に押し出そうとしすぎて若干大味な印象を受けるカバーとなっていました。一方、「ドライフラワー」のようなミディアムテンポのナンバーについては、これまた絶品。同曲についてはともすれば原曲以上では?というほどの泣かせる名カバーに仕上がっていたと思います。

ボカロ曲に関しては、シニカルで、今どきの言葉をそのまま取り入れたユニークな歌詞が耳に残るのですが、正直、あまり歌の表現力を必要としないような曲調の曲が多く、そういう意味でもAdoのボーカリストとしての力量を十分に引き出しきれていない感じも印象も受けました。正直なところ、「飾りじゃないのよ~」のような、哀愁たっぷりの歌謡曲的ナンバーのカバーをもっと聴きたかったなぁ。

とはいえ、総じて力強いAdoのボーカルを聴くことの出来る満足度の高いカバーアルバムで、何よりもAdoのボーカリストとしての実力をしっかりと実感できるアルバムになっていたと思います。また第2弾、第3弾も期待したいところです。

評価:★★★★★

Ado 過去の作品
狂言
ウタの歌 ONE PIECE FILM RED


ほかに聴いたアルバム

景色一空/空気公団

Keshikiikkuu

約2年半ぶりとなる空気公団の新作。タイトルの「景色一空」とは四字熟語の「万里一空」から考えた造語で、「空はつながっている。同じように楽しさも悲しさもすべて。そして生と死も。私たちの暮らしは営まれ、どこかの空の下で悲しみに暮れ、またどこかの街では恋人たちが笑い合っている」というテーマ性を持ったアルバムになっているそうです。基本的には空気公団らしい、アコースティックギターやピアノを軸として、メランコリックに聴かせる暖かい雰囲気のポップが並んでいます。決して目新しさはないのですが、いい意味で安心して聴ける作品が並ぶアルバムに。素直に空気公団らしさを満喫できる作品でした。

評価:★★★★★

空気公団 過去の作品
空気公団作品集
メロディ
ぼくらの空気公団
春愁秋思
LIVE春愁秋思
夜はそのまなざしの先に流れる
くうきにみつる(くうきにみつる)
音街巡旅I
こんにちは、はじまり。
ダブル
僕の心に街ができて
僕と君の希求

9BIT/QUBIT

「打上花火」や「ステップアップLOVE」のヒットでおなじみの女性ラッパーDaokoが、相対性理論の永井聖一らと組んだ5人組バンドQUBITのデビューアルバム。エレクトロサウンドも取り入れたバンドサウンドは、キュートでポップでありつつも同時にパンキッシュという音楽性が魅力的。どちらかというと、相対性理論の変形といった印象も受けるのですが、このポップでパンキッシュな音楽性に、キュートなDaokoのボーカルがピッタリマッチしており、こちらも魅力的。これからの活躍が楽しみなバンドです。

評価:★★★★★

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