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2024年1月15日 (月)

ストーンズの様々な音源を網羅的に紹介

本日は、最近読んだ音楽関連の書籍の紹介です。

昨年、デビュー60周年を迎えたロック界のレジェンド・オブ・レジェンド、The Rolling Stones。今回紹介するのは、彼らの作品を網羅的に紹介した「ローリング・ストーンズ完全版」。他にもヴェルヴェット・アンダーグラウンドやデイヴィット・ボウイで同様の「完全版」が発売されているようで、同シリーズの一環のようです。ミュージシャンやライターとして活躍している和久井光司編集により、様々なライターが寄稿して構成された1冊となります。

まず全体としてはかなりの労作というのが印象的。基本的にローリング・ストーンズのアルバムを録音順に掲載しているほか、そこに挟む形で彼らのライブツアーのスケジュールも掲載されており、文字通り、彼らのバンドとしての歩みを知ることが出来る1冊となっています。そのローリング・ストーンズのアルバムは、ベスト盤や編集盤、ライブ盤も含めてほぼ全て掲載。ライブ盤はリリース時期ではなく、録音時期によって並んでいるため、どんなタイミングでのリリースだったか、よくわかります。またのちにリメイク版や〇周年記念盤などがリリースされているアルバムについては、その記念盤も別枠で取り上げて記載しています。

ストーンズの場合、初期はイギリスとアメリカで別のバージョンのアルバムがリリースされているほか、それぞれの国でベスト盤、編集盤が様々にリリースされており、さらに最近は、「オフィシャル・ブートレグ」と名乗って様々なライブ盤がリリースされていたりするので、それをすべて網羅的に把握するのはファンでも一苦労。そんな中、数多い彼らのアルバムを丁寧に拾い上げて、曲順、リリース日はもちろん、参加ミュージシャンも記載されているのは非常に貴重なデータとなっています。あえて言えば、ヒットチャートの順位も記載してほしかったのですが。

音源に関しては、その他にソロでの作品も収録されており、こちらも貴重なデータに。またライブツアーについては、ツアー日程や主なセットリストも記載。タイトな日程にはそのワーカホリックぶりもうかがわせます。こちらも貴重なデータと言えるでしょう。

活動開始から60年を経て、様々な音源が残されているストーンズにとって、過去の音源を網羅的に、録音順に収録されているという点で、かなり有用な1冊。後追いでファンになった人はもちろん、長年のファンにとっても、いろいろと参考になりそうな1冊だと思います。

ただ一方、「完全版」とは言うものの、これを機にストーンズのアルバムを聴く、という初心者にとってはちょっと厳しい1冊かもしれません。基本的にコラムに簡単なストーンズの歩みは記載されているのですが、ストーンズ自体についての基本的な情報は「所与」のものとなっています。そのため、メンバーがどのように、いつ入れ替わったか、というような記載もありませんし、ミックとキースの出会いに関するエピソードやオルタモントの悲劇の話、ミックの女性関係やキースのドラッグにまつわる話など、ストーンズファンならば当然知っておきたいようなエピソードはあまり記載がない・・・というよりは「知っていて当然」的に話は進んでいきます。そのため、完全な初心者にとっては、ちょっと厳しい1冊だったと思いますし、また「完全版」と名乗るからには、ここらへんのストーンズに関する初歩的な情報やエピソードなども記載してほしかったかも、とは思います。

また、ちょっと残念だったのは、アルバム自体は網羅的に紹介されていたものの、アルバム毎の紹介記事が、アルバム自体の情報を詳しく記載していなかった点。アルバムによっては、ライター自身のストーンズのアルバムにまつわるコラム・エッセイ的な内容になっている点があり、主観的な内容になっているのは残念でした。確かに、それらの記事に関しても決して駄文ではないのですが、本書はどちらかというとストーンズの「辞書」的な内容になっているだけに、ここは、ライターの主観は出来る限り排除した客観的な記事を心掛けるべきだったのではないでしょうか。ここらへんは編集方針がどのようになっていたのか不明なのですが、本書で残念な点でした。

そんな感じで、ストーンズの辞書的な機能面ではちょっと残念な面もあったのですが、前述の通り、様々なストーンズの音源を網羅的に把握するという点においては非常に有用とも言える1冊。とりあえずこの本を足掛かりに、いままで聴いていなかった彼らの音源についてもチェックしてきたいです。

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