様々な音楽性を取り込みつつ、ポップにまとめあげる
Title:Heavy Heavy
Musician:Young Fathers
今回も、年間ベストアルバムを集計したサイトAOTYの2023年年間ベストアルバムにランキングされたアルバムのうち、まだ聴いていなかった1枚。11位にランクインしているYoung Fathersというグループの「Heavy Heavy」。これが4枚目のアルバムとなるスコットランドはエディンバラ出身の3人組ユニット。毎作、アルバムがリリースするごとに高い評価を受けているのですが、NMEで年間3位、Mojo誌で年間5位、The Independent誌で年間9位を記録するなど、軒並み高い評価を受けており、さらにチャート的にも全英アルバムチャートで7位と、初のベスト10ヒットを記録しています。
今回、Young Fathersのアルバムもはじめて聴いたのですが、確かに高い評価も納得の、オリジナリティーの高い、魅力的でかつ聴いていてワクワクするようなポップなアルバムを作り上げています。WikipediaではHIP HOPユニットという記載もされているのですが、ロックやR&B、ゴスペルやトラッドなどの要素を取り交ぜて、かつトライバルな要素も加えている、非常に自由度の高いサウンドが特徴的。なおかつ全体的にはポップにまとめあげており、聴いていて非常に楽しくなってくるような傑作アルバムに仕上がっていました。
まずは1曲目「Rice」からユニーク。楽曲的にはどこかレトロな雰囲気のロックといった様相でしょうか。一方でトライバルなリズムが耳に残ります。続く「I Saw」も非常に強いビートが特徴的な作品に。コミカルなトークのようなボーカルからスタートし、サビのメロは至ってポップ。全体的にはロックテイストの強い作品に。さらに「Drum」もタイトル通り、ドラムのリズムが軽快な、疾走感のあるポップチューンに仕上げています。
サンプリングを取り入れてループするトラックが特徴的な「Shoot Me Down」はアルバムの中でも一番HIP HOP的な要素の強い作品に。また後半に聴かせるゴスペル的なコーラスラインも印象的に。「Ululation」もトライバルな雄たけびからスタートしつつ、トラッド的なサウンドも印象に残りますし、「Sink Or Swim」も疾走感ある軽快なサウンドが楽しいポップな作風がインパクトに仕上がっています。
全体的には様々な音楽的要素を取り込み、自由度の高い作品を作りつつも、次々と繰り広げられる新たなサウンドに聴いていてワクワクするような作品となっていました。アルバムの中で流れるトライバルなリズムと融合した、ブラックミュージック的なグルーヴ感も大きな魅力ですし、さらにそんなグルーヴ感を持たせつつもポップにまとめ上げている点も、ある意味、いかにもイギリスのグループといった印象を受けます。
年間ベストで軒並み上位にランクインしてくるのも納得。個人的にも年間ベスト候補に加わる傑作だと思います。幅広いリスナー層にアピールできるお勧めの傑作です。
評価:★★★★★
| 固定リンク
「アルバムレビュー(洋楽)2024年」カテゴリの記事
- 中年Tylerの想いを綴った新作(2024.12.24)
- 原点回帰を感じさせる高揚感ある楽曲も(2024.12.22)
- 期待のガールズロックバンドの2作目(2024.12.13)
- 90年代に一世を風靡したバンドのレア音源集(2024.12.09)
- 懐かしくも新しい2000年代にフォーカス(2024.12.07)
コメント