80年代90年代を彷彿とさせるエレクトロポップス
今年はじめての通常更新となります。このアルバムが一番最初なのはいつも通り、「私が聴いた順」なので特に意味はありません。ただ、新年早々、大変なニュースが続いてしまっていますが、これからは、このアルバムのように、今年が少しでも明るい出来事も多い1年になりますように。
Title:OKシンセサイザー
Musician:ザ・リーザルウェポンズ
今回は最近、急速に話題を集めているロックユニット。プロデュースや作詞作曲を手掛けた日本人のアイキッドと、アメリカはオハイオ州出身のサイボーグジョーの2人組からなるユニットで、アイキッドはももクロや上坂すみれへの楽曲提供でも活躍しています。1980年代から1990年代、特に80年代の音楽をストレートに取り入れた、バリバリのシンセを前面に押し出した楽曲が特徴的。全ての曲にMVが作成されており、そちらでも80年代や90年代の文化を散りばめられている映像作品が大きな話題となっています。このアルバムも、いきなりビルボードのHot Albumsで19位を獲得するなど、ブレイク寸前という人気を獲得しているようです。
2人の風貌も、いかにも80年代を彷彿とさせそうな「古き良きアメリカンポップス」の雰囲気を醸し出していますし、楽曲も、前述の通り、あえてチープさを強調させたような、懐かしさを感じさせるシンセの音を前面に押し出した楽曲。多分、2000年代前半くらいまでならば「カッコ悪い」といったイメージのあり、逆に今となっては一回りして、懐かしさと共に評価されるようになってきたサウンドといった感じでしょうか。
楽曲に関してもかなりユニーク。ハードロック風ながらも、魚が釣れない、ということだけを延々と歌った「ボウズ」や、「ミッション・インポッシブル」のカバーなのですが、歌詞は曲が全然できない、という点を淡々とつづった内容になっています。また、ある年代の人にとっては、歌詞の内容に含めて懐かしさを感じてしまう「夏の日のメガドライブ」なんていう曲もあったりします。
一方、ユーモラスな風貌や曲調とは反して、意外とまじめな曲も多いのも特徴的で、「キングオブポップ」はタイトル通り、マイケルジャクソンに捧げたナンバーですし、学生時代のノスタルジックな思い出を歌った「ウェザーリポート」という曲もあります。アルバム全体としては、イメージとは裏腹に、意外と真面目な構成というイメージを受けました。
もうひとつ特徴的なのが豪華なゲスト陣で、「シューティングスターレディオ」ではRhymester宇多丸が参加。「ねこねこヘヴン」では上坂すみれが参加し、アニソン風の曲に仕上がっていますし、「サムライディスコ」では眉村ちあきが参加。哀愁感ある曲調の、90年代を彷彿とさせるナンバーとなっており、様々な豪華ゲストもアルバムのバリエーションに花を添えています。
80年代や90年代文化をストレートに表現した作風は、素直に楽しく、特にアラフォー以降の世代にとってはノスタルジックさを感じる作品が並びます。そういう意味では非常に楽しめた1枚ではあったのですが、ただ一方で、これといった核となるような作品がなかったのが気になりました。これがザ・リーザルウェポンズだ、という彼らの魅力や特徴を凝縮したよう曲がなく、全体的にインパクトが薄かったようにも感じます。
具体的に言えば、氣志團の「One Night Carnival」に相当するような、そんな1曲があればグッと注目も増して、さらなるブレイクが期待できるような気がするのですが、残念ながら、彼らにとっての「One Night Carnival」に相当するような曲がなかったような気がします。逆に、そういう1曲に恵まれれば、一気に大ブレイクも間違いなさそう。そんな印象を受ける1枚でした。
アラフォー、アラフィフ世代にとっては、ノスタルジーを直撃しそうなそんなポップス。個人的にはライブも楽しそう。今後に期待のユニットです。
評価:★★★★
ほかに聴いたアルバム
月に願いを/miwa
2022年夏のEP「君に恋したときから」、2023年冬のEP「バレンタインが今年もやってくる」そして2023年春のシングル「ハルノオト」に続く形で秋をテーマとしてリリースされた5曲入りのミニアルバム。表題曲「月が綺麗ですね」は、夏目漱石が「I love you」のことを日本語でこのように訳したという逸話によっているのでしょうが、この逸話自体が創作である説が強いため、若干もやる点も。まあ、それはともかく、全体的には秋らしいしんみりとした曲が並ぶ作品に。2曲目「Wedding Wish」は結婚行進曲をモチーフにしていたりする大ネタになっている点もちょっと気になるのですが、彼女らしい爽やかで聴かせる曲の並ぶポップアルバムに仕上がっていました。
評価:★★★★
miwa 過去の作品
guitarium
Delight
ONENESS
SPLASH☆WORLD
miwa THE BEST
Sparkle
君に恋したときから
バレンタインが今年もやってくる
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コメント
ゆういちさん、こんばんは。そして、明けましておめでとうございます。本年もたくさんのレビューを期待しております。
てか、本年一発目がリーサルウェポンズですか!僕が今1番ハマっている彼らをレビューして下さったとはありがたいです。そして、内容もまあまあ気にいってくれたみたいでよかったです。これからも彼らの作品を聴いていただければ僕もうれしいです。
投稿: 通りすがりの読者 | 2024年1月 3日 (水) 01時40分
>通りすがりの読者さん
なかなかいいアルバムだったと思いますよ!Music Magazineの年間ベストでもベスト10入りしていましたし、今年は一気にブレイクするかもしれません。個人的にはライブに一度行ってみたいかも。
投稿: ゆういち | 2024年1月 5日 (金) 23時35分