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2024年1月21日 (日)

ポップで明るい80年代ソウルの世界へ

今回は最近読んだ音楽関連の書籍の感想です。

今回は最近読んだ音楽関連の書籍の感想です。今回紹介するのはミュージック・マガジン誌の増刊号のディスクガイドシリーズ「ディスク・セレクション・シリーズ」の最新刊。80年代のソウルミュージックのアルバムを紹介した「80年代ソウル」です。

基本的にはこのシリーズ、ディスクガイドとして非常にオーソドックスな内容。前半は「ARTIST PICK UP」と題して、80年代ソウルを代表するミュージシャンたちを紹介し、そのミュージシャンたちのアルバムを2~3枚程度紹介。後半はジャンル毎に章立てし、1ミュージシャン1アルバムで代表的なアルバムを紹介しています。

「ARTIST PICK UP」で紹介されているのも、マイケル・ジャクソン、プリンスを筆頭に、ホイットニー・ヒューストン、ルーサー・ヴァンドロス、ジャネット・ジャクソンなど、まさに80年代を代表するソウルミュージシャンたちが名前を連ねています。後半でもチャカ・カーンやボビー・ブラウンなど有名どころの代表盤が名前を連ねているほか、基本的にアルバム評に関してもライターの個性的な「感想」は抑えめ。ミュージシャン及びアルバム自体の内容の簡単な紹介にとどめています。そういった意味で80年代ソウルの入門としては最適なオーソドックスなディスクガイドとなっています。

ただ、このディスクガイドの発行でも感じるのですが、この80年代という時代、一昔前までは非常に評価が低かったのですが、ここ最近、特にブラックミュージックのジャンルでは評価が著しく高くなってきていることを感じます。実際、この点については本書の冒頭のコラムでも触れていますし、ブルースや70年代以前のオールドファッションなブラックミュージックの専門誌だった「BLUES&SOUL RECORD」誌が最近は80年代についても取り上げるようになった点、80年代ソウルの評価が変わってきた大きな現れと言えるでしょう。

正直、一昔前の80年代ソウルに対する低い評価の理由については、今でも有効と思われる部分はあります。この時代、ポピュラーミュージック業界が巨大化し、70年代以上に広いリスナー層を意識するような音楽がどんどんと誕生してきました。その結果、70年代ソウルのような、ある意味、パワフルな汗臭さを感じるソウルミュージックが鳴りを潜め、代わりに万人受けを目指したようなポップな音楽が登場してきます。ここらへん、良くも悪くも幅広いポピュラリティーが求められた結果、ブラックミュージックのコアな要素が薄くなってしまった感は否めません。

また、これは致し方ない部分もあるのでしょうが、この時代、サウンドにエレクトロサウンドが用いられ始めたのですが、悲しいかな、技術の発展著しく、90年代以降、この時代のエレクトロサウンドの音色が如何せん、「チープ」に聴こえてしまった点は否めません。この点も80年代のソウルの評価が低くなってしまった要因の一つであることは間違いないでしょう。

ただ一方で、マイナス的な要素を抱え込みつつも、それを補って余りある大きな魅力が80年代ソウルには感じられるのも事実で、それは楽曲全体が非常に魅力的な、ポピュラリティーあるメロディーに溢れかえっている点。また、全体的に非常に明るさを感じさせる点。特に80年代後半は、当時世界を覆っていた冷戦が雪どけムードとなり、社会全体に今よりも明るさを感じられたように記憶しています。このディスクガイドで紹介している作品も、全体的にどこか前向きな希望を感じさせる作品が多く、今よりも世界全体が明るく、どこか希望に満ちていた、そんな空気を感じさせる内容となっていました。

そんなポップで楽しく明るい80年代ソウルの魅力がつまったディスクガイド。前述の通り、非常にオーソドックスな内容となっているため、入門書としてもピッタリな内容だと思います。また今回、同書発売にあわせて「70年代ソウル」も復刊されたそうなので、この2冊あわせてソウル入門としてはピッタリでしょう。このディスクガイドを足掛かりにソウルに世界に酔いしれたい、そんな1冊です。

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