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2024年1月30日 (火)

アイリッシュ・フォークをロックを通じて今風に解釈

Title:False Lankum
Musician:Lankum

Falselankum

今回も2023年度のベストアルバムとして紹介されたアルバムのうち、聴き逃していたものを後追いで聴いた1枚。各種メディアの年間ベストアルバムを集計したサイトAOTY2023年年間ベストアルバムの9位にランキングされた作品で、イギリスのMojo誌で3位、さらにイギリスのガーディアン誌では1位を獲得しており、その高い評価ぶりがうかがえます。さらにもともと彼らはアイリッシュ・フォークのグループであり、ユニークなことにMusic Magazine誌ではワールドミュージック部門で第3位にランクインしています。ワールドミュージックの範疇でとらえられるバンドが通常の「年間ベストアルバム」で上位にランクインしてくることは珍しいケースです。

ただ、アルバムを聴いてみると、確かにワールドミュージックというジャンルのみならず幅広く高い評価を受けるのも納得の傑作アルバムだったと思います。もともとパンクやハードコアに出自を持つバンドなだけに、アイリッシュ・フォークという伝統音楽をロックを通じて現代風に解釈するサウンドが大きな特徴。1曲目の「Go Dig My Brave」も最初は厳かな雰囲気のフォークソングでスタートするのですが、後半はダイナミックでヘヴィーなドローンミュージック的な要素が加わり、雰囲気は一変します。それに続く「Clear Away in the Morning」も、清涼感あるフォーキーなメロディーの歌モノを軸に置きつつ、バックに流れるサウンドはサイケそのもの。こちらもフォークとロックがユニークな形で融合した、独特の音楽性が大きな特徴となっています。

中盤の「Netta Perseus」でも最初はアコギのアルペジオやストリングスで美しくフォーキーに聴かせつつ、後半はここにダイナミックでヘヴィーなバンドサウンドが加わり、こちらもフォークとロックの融合が非常にユニーク。アルバムを締めくくる「The Turn」もメランコリックでフォーキーな歌を聴かせつつも、こちらも分厚いドローン的なサウンドでサイケに装飾されたアレンジがユニーク。最後までアイリッシュ・フォークを軸にしつつも、独自の音世界を構築したアルバムに仕上がっていました。

さらにユニークなのが、その間にはしっかりと清涼感あるフォーキーな曲が挟まっている点でしょう。「Master Crowley's」はアコーディオンで軽快に聴かせる、いかにもトラッドらしいインストナンバーになっていますし、「Newcastle」もアコギのみでしんみり聴かせる典型的なフォークソング。前述のサイケに装飾された楽曲についても、ベースにはフォーキーな歌が流れていますし、また大きな魅力として、このフォーキーなメロディーラインもしっかりとインパクトあって魅力的。おそらくヘヴィーなサウンドを取り除いてアコースティックなアルバムとして仕上げても、十分すぎるほどの傑作になるだろうことは容易に予想できる作品になっていました。

各種メディアでもロックやポップス、HIP HOPやR&Bのアルバムと並んでベストアルバムとして紹介されているのも納得の傑作アルバム。個人的にも年間ベストクラスの傑作アルバムだったと思います。ロックのアルバムとしても聴きごたえありますし、フォークのアルバムとしてその美しいメロに魅了されること間違いない1枚。広いリスナー層にお勧めできる作品でした。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Pink Tape/Lil Uzi Vert

こちらも2023年度ベストアルバムを後追いで聴いた1枚。Music Magazine誌「ラップ/ヒップホップ」部門で1位を獲得した、アメリカはフィラデルフィア出身のラッパーによる作品。基本的にトラップ的な今風のリズムをベースとしたメランコリックなサウンドをバックとしたラップを聴かせてくれるのですが、メランコリックな歌モノが多く、いい意味で聴きやすさを感じます。さらにはBring Me The Horizonを迎えた「Werewolf」など、ロックを取り入れたミクスチャー的な曲も目立ち、ロックリスナーにも聴きやすさを感じさせる作品に。ちなみに「The End」ではBABYMETALもゲストとして参加しています。HIP HOPのリスナー層はもちろんですが、ポップやロックリスナーまで、幅広いリスナーが楽しめる作品になっていました。

評価:★★★★★

Lil Uzi Vert 過去の作品
Eternal Atake

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