本来の意味での・・・「エモい」アルバム
Title:Desolation's Flower
Musician:Ragana
今回紹介するのは、ワシントン州オリンピアで結成された2人組ヘヴィーデゥオRagana。MariaとColeyの2人からなるユニットなのですが、姓は明らかにされていないそうで、謎めいた部分を残したユニットとなっています。音源はもちろん、名前を聞くのもこれがはじめて。本作は高い評価を得ているそうで、今回はじめて本作をチェックしてみました。
ブラックメタルやスクリーモを取り入れた非常にヘヴィーな作風が特徴的。まず1曲目はいきなりタイトルチューン「Desolation's Flower」からスタートするのですが、ヘヴィーでメランコリックさもあるサウンドをゆっくり聴かせつつ、途中から空間を切り裂くかのような、女性ボーカルのシャウトが入ってきます。続く「Woe」も同様。ギターノイズを前面に押し出したサウンドは、メタルやスクリーモというよりもインディーロック的な要素を感じさせますが、メランコリックさを感じさせるサウンドに、胸をかきむしりたくなるような、焦燥感のある女性ボーカルのシャウトが印象的です。
このスクリーモ的なヘヴィーでメランコリックなサウンドに、女性ボーカルのシャウトというスタイルが続く前半に対して、後半はちょっと雰囲気が変わります。「Pain」では静かなギターサウンドに、メランコリックで清涼感のある女性の歌が入るというスタイルに。ラストを締めくくる「In the Light of the Burning World」も同様に、静かなギターのアルペジオに狂おしいほど切ない女性の歌が印象的な作品。前半の作品では空間を切り裂くのが女性のシャウトでしたが、後半は、静かなサウンドの中に時折入る、ヘヴィーでダイナミックなギターノイズが空間を切り裂いてきました。
スタイル的には大きく前半と後半でわかれる本作ですが、ただ、荒涼とした雰囲気の世界観はアルバム全体を貫かれています。また、前半の女性のシャウトといい、後半のヘヴィーなサウンドといい、胸をかきむしりたくなるほどのエモーショナルなサウンドである点も大きな特徴と言えるでしょう。「エモい」と言えば、最近の若者言葉として知られており、非常に汎用的な使われ方をしていますが、もともとは音楽のジャンルとしての「エモ」を語源としたもの。彼女たちの音楽は「エモ」ではありませんが、エモーショナルなそのサウンドは、もともとの用語の使い方通り「エモい」と言えるアルバムだったと思います。
ブラックメタルやスクリーモを取り入れたメタリックでヘヴィーなサウンドは好き嫌いがわかれる部分はあるかもしれませんが、そのメランコリックでエモーショナルなサウンドは、おそらく広いリスナー層の心をかきむしるような、切なさを感じさせる作品だと思います。サウンド面でも感情的な面でもガツンと響いてくる本作は、年間ベストクラスの傑作アルバムだったと思います。今後にも注目のユニットです。
評価:★★★★★
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