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2023年12月 4日 (月)

笠置シヅ子の魅力を強く感じる

「笠置シヅ子 ブギウギ伝説」刊行記念トーク!

会場 TOKUZO 日時 2023年11月28日(火)19:00~

今回のライブレポートは、先日実施されたトークライブのレポート。現在、NHK朝の連続テレビ小説で、笠置シヅ子をモデルとしたドラマ「ブギウギ」が放送されています。それに伴い、笠置シヅ子関連の書籍がいろいろと発売されています。以前も近代音楽史研究家の輪島裕介による笠置シヅ子の評伝「昭和ブギウギ 笠置シヅ子と服部良一のリズム音曲」を取り上げたことがありますが、そんな中に発売されたのが「笠置シヅ子 ブギウギ伝説」という評伝。同書を書いた娯楽映画研究家、佐藤利明氏と、ここでもよく紹介する戦前SP盤復刻レーベル「ぐらもくらぶ」の主宰者である保利透氏を迎えてのトークライブが行われて、非常におもしろそうだったので足を運んできました。

Kasagi_talk

実は佐藤氏のトークイベント、5年前に行われたクレイジーキャッツをテーマとした回に足を運んだことがあり、非常におもしろかったので今回、足を運んだ経緯があります。前回は、クレイジーキャッツのリアルタイム世代が多かったのですが、今回もおそらく60代以上がメイン。いくら60代でも歌手の笠置シヅ子のリアルタイム世代ではないと思うのですが・・・。

トークライブはほぼ19時ピッタリにスタート。基本的には今回のトークライブの元となった著書「笠置シヅ子 ブギウギ伝説」に沿った形で、笠置シヅ子の生涯を追った形でのトーク、主に芸能生活をスタートさせた大阪松竹少女歌劇団(OSK)時代からのスタートとなりました。朝ドラの内容との比較を挟みつつだったのですが、自分自身は朝ドラを全く見ていないので、朝ドラとの比較についてはよくわからず。ただ、トークに沿った形での貴重な映像や音源を流しながらのトークとなりました。

トークライブは途中休憩を挟んでの2部構成。1部から戦前「スウィングの女王」と呼ばれた彼女の、そして彼女の曲の大半を手掛けた作曲家、服部良一のすごさについて語られていたのですが特に1部で印象的だったのが、戦前にリリースされた「ラッパと娘」のエピソード。同曲はもともと、アメリカのルイ・アームストロングと女性コメディアンの掛け合いからヒントを手掛けた取り入れたそうですが、笠置シヅ子とトランペット奏者の掛け合い、さらには彼女のスキャットがあらためて聴くと実に見事。今聴いてもモダンな印象を受けます。この日は「元ネタ」の映像も流れたのですが、いかにアメリカの「元ネタ」を笠置シヅ子が上手く取り入れていたのか、さらにトランペットの部分まで自らのスキャットにより表現した、彼女の表現力のすごさも見て取れ、非常に印象的でした。

さらに佐藤氏のトークが冴えまくったのが2部。主に笠置シヅ子と服部良一のリズムへの挑戦をテーマに、服部良一が戦前から戦後にかけて、いかに斬新なリズムを取り入れていったか、そしてその服部良一の挑戦にしっかりと応え、素晴らしいパフォーマンスを行う笠置シヅ子のすごさを、映像や音源を交えながら紹介していきました。特に映像に関しては、昨今ではアップされている映像も多いのですが、この日はYouTubeにアップされていない貴重な映像も数多く紹介してくれました。

やはりまず印象的だったのは服部良一のすごさ。ブギウギのリズムをいち早く取り入れ、戦後にはビバップも取り入れた他、今で言えばワールドミュージックにカテゴライズされるトライバルなリズムもいち早く音楽に取り入れていたそうです。リズムに対する挑戦は、「昭和ブギウギ 笠置シヅ子と服部良一のリズム音曲」でも取り上げられており、知識として知ってはいたのですが、あらためて音源と映像、そして佐藤氏のトークにより、そのすごさを再認識しました。特に歌詞はほとんど意味不明、リズムを聴かせるような笠置シヅ子の曲も紹介されており、ここらへんの曲は、今聴いても全く古さを感じず、むしろモダンにすら感じるほど。服部良一のその先見の明のすごさをあらためて実感しました。

そしてこの日のトークライブで一番印象的だったのが、笠置シヅ子の歌う時の演技で、佐藤氏が「彼女は歌に合わせて演技する。OSK時代の経験が生きているが、それがすごい」(意訳)と言及していたのですが、確かに曲にあわせて変化させる豊かな表情やパフォーマンスが印象的。映像を見ていて非常に惹きつけられるものがあります。この点についてはこの日はじめて知った事実でしたので大きな驚きでもありました。

そう考えると、笠置シヅ子の本当の魅力って、音源を聴くだけではわからないんでしょうね。この日は映像も合わせて、佐藤氏の詳しい解説や見どころを聴くことによって、笠置シヅ子の本当の実力、そして魅力を強く実感することが出来ました。

最後は、彼女が最晩年まで出演していた「カネヨン」のCMが流れて締めくくり。おそらくこの日の客層(50代~60代)あたりの世代にとっては、笠置シヅ子といえばこのイメージなのでしょうが、私は全く見たこともないので、特に懐かしさは感じませんでした(^^;;ただ、この日の映像で見てきた昭和20年~30年代の30代の彼女と、もうおばあちゃんになった彼女のギャップに驚いたくらいでした(笑)。

そんな訳で、佐藤氏の解説も非常に濃く、同席していた保利氏も、戦前SP盤の専門家として、様々な知見を提供しており、興味深いトークイベントでした。途中休憩15分をはさんで終わったのが9時50分ちょっと前でしたので、約2時間半強というボリュームたっぷりのトークライブ。非常に楽しく、そしていろいろと勉強になった濃い時間でした。ちなみに来年はかの喜劇王、エノケン生誕120周年の年だそうで、それに関するトークライブをやりたい、といっていたので、そちらも見に行きたいなぁ。

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