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2023年12月 2日 (土)

齢90。バリバリ現役

Title:All My Love For You
Musician:Bobby Rush

いろいろなところで話題となっている話なのですが、今年に入り、著名なミュージシャンの訃報が相次いでいます。坂本龍一、高橋幸宏、谷村新司、大橋純子、もんたよしのり、X JAPANのHEATH・・・特にBUCK-TICK櫻井の急逝はショックでしたが、個人的に非常にショックだったのが、なんといってもKANちゃんの逝去・・・。個人的に大ファンなミュージシャンなだけにかなりのショックでいまだに引きずっています・・・。

この相次ぐミュージシャンの逝去のニュースに陰謀論的なものを持ち出す人もいるみたいですが、ただ単に、ポップス全盛期のミュージシャンたちが年を取って、お迎えが来るような世代に差し掛かったから、という理由だけだと思います。もっと言えば、ミュージシャンたちの健康寿命が延びた点や、ポピュラーミュージックの新陳代謝が以前ほど激しくなくなったため、年を取っても第一線で活躍するミュージシャンが増えたため、大きなニュースとして取り上げられるミュージシャンの逝去のニュースが増えた、という点も大きいでしょう。

なんでここでこんな話を持ち出すかと言えば、ロックやJ-POP系よりももっと昔に黄金期を迎えたブルースの世界では、とっくの昔から逝去者が相次いでいるからで、特にブルースとオールドソウルの専門誌「Blues&Soul Records」では、毎号のように追悼の特集記事が載っていますし、ニュース欄では、1ページまるごと逝去者のベタ記事というケースも毎号のお決まりのようになっています。そういう意味では、著名なポップミュージシャンの逝去のニュースは今後も続くでしょうし、それはそれで仕方ないことなのかもしれません。

で、ブルースの世界では既に「レジェンド」と言われるようなミュージシャンが、ほとんど鬼籍に入ってしまったのですが、その中で数少ないリビングレジェンドであるのが彼、Bobby Rush。なんと御年90歳!!しかし、約3年ぶりとなるニューアルバムをリリースし、その健在ぶりと、バリバリの現役であるをアピールしています。

1曲目「I'm Free」からして、ホーンセッションを入れて、いまだに艶すら感じさせる力強い歌声を聴かせるファンクブルースからスタート。「Running In And Out」も軽快に力強く聴かせる正統派のブルースナンバー。「I Want To」も、年齢を感じさせないパワフルでロッキンな歌声を聴かせるファンクブルースのナンバーと続いていきます。

その後も伸びやかな歌声でゆっくりと歌い上げるソウルナンバーの「One Money Can Stop a Show」や、ギターとハープをバックに聴かせるミディアムブルースの「I'll Do Anything For You」「You're Gonna Need A Man Like Me」など、現役感バリバリに聴かせる楽曲が並びます。

特に印象的なのは先行シングルにもなっている「I'm The One」で、こちらも力強いブルースナンバーなのですが、歌詞が印象的。おそらく日本人にとっても聞き取れるようなわかりやすい歌詞で、Muddy WatersやB.B.KING、ハウリンウルフなどといったブルースのレジェンドたちの名前を並べつつ、自分は彼らとは違うと異なり、「俺は俺だ」と歌い上げる、そのキャリアに裏付けされたBobby Rushのプライドを感じさせる楽曲となっていました。

正直なところ、さすがにこの年になってからの作品ですので目新しさは感じません。Bobby Rushらしさを体現化したアルバムとも言えるでしょう。ただ一方で、齢90歳になりながらも、これだけ現役感のあるアルバムを作り上げるのは驚異の一言。アルバムの出来としては4つくらい相当なのですが、そのキャリアと、90歳を超えてもお元気なところに敬意を評して1つ追加で。この調子で行くと、これがラストのオリジナルアルバムではない可能性も高いなぁ。これからも末永くお元気で!!

評価:★★★★★

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