6年半のシングルが収録!
Title:ラブ&ピース!マスターピース!
Musician:サンボマスター
今年に入り、以前リリースしたベスト盤を拡張した「“超”究極ベスト全員優勝Edition」をリリースしたり、EP盤である「はじまっていく たかまっていく E.P.」のリリースはあったりしたものの、オリジナルアルバムとしては「YES」以来、実に約6年半ぶりとなるサンボマスターのオリジナルアルバムとなります。
前作からかなりスパンがあったものの、その間、決して彼らの活動がストップしていた訳ではありません。むしろこの6年半の間も積極的に活動を続けており、EP盤1枚にシングル2枚、さらに配信シングル4枚をリリースしており、シングルのリリースで言えば積極的な活動が目立ったように思います。
またバンドとしてもここ最近、比較的脂ののった活動が続いており、個人的には前々作「サンボマスターとキミ」はバンドの最高傑作とも言えるほどの充実作でしたし、前作「YES」も同じく傑作アルバムに仕上がっていました。今回のアルバムに関しても、特にバンドサウンドについては、前々作、前作同様、ロックバンドとしての初期衝動をダイレクトに感じさせる作品が目立ちました。「忘れないで 忘れないで」などはかなり力強いバンドサウンドが魅力的。また、今回YouTubeチャンネル「THE FIRST TAKE」で録音したバージョンの「できっこないを やらなくちゃ」「Future Is Yours」も収録されているのですが、こちらもサンボマスターのバンドとしての実力を感じさせるパワフルなパフォーマンスが収録されています。
一方、そんなロックバンドの初期衝動を感じさせる曲のみならず、「はじまっていく たかまっていく」や「その景色を」ではHIP HOP的な要素を取り入れていたり、「花束」ではモータウンビートを取り入れていたり、様々な音楽性を取り入れているあたり、バンドとしての「偏差値の高さ」も垣間見れる作品ともなっていました。
そして今回のアルバムのもうひとつ大きな特徴はシングル曲の多さ。前述の通り、前作「YES」以降、多くのシングルをリリースしてきましたが、本作ではそのすべてを収録。結果、このアルバムでの新曲は、先行配信曲の「笑っておくれ」と「その景色を」の2曲のみ。さらにTHE FIRST TAKEからの曲、2曲を除き、全曲にタイアップがつくという内容に。さらに今回、2010年にリリースした「できっこないを やらなくちゃ」の再録音も収録されており、シングル曲が並ぶという、ある種のベスト盤的な内容となっていました。
ただ、そのシングル曲に関して、メロディーラインやバンドサウンドが比較的ポップ寄りとなってしまっています。いや、ポップ寄りといっても、サウンドに関しては前述の通り、バンドとしての初期衝動をしっかりと押し出しており、むしろタイアップがついたシングルで、これだけしっかり「ロック」しているという点、感心してしまいます。
しかし一方、かなり気になってしまったのがその歌詞。もともと彼らは前向き応援歌的な歌詞が目立つバンドなのですが、特にシングル曲に関してはその傾向が顕著。今回、その点を差し引いても、さすがにこれだけ前向き応援歌な歌詞が並ぶと、ちょっと歌詞が陳腐すぎないか?と気になってしまいました。
サンボマスターの歌詞は、いい意味での熱さがあって、かつストレート。それが良い方向に作用する場合もあるのですが、前向き応援歌的な作品になると、あまりにストレートな歌詞が悪い意味でのチープさを感じてしまいます。アルバムの中の1、2曲程度ならば気にならないのですが、さすがに今回、シングル曲が並んでかなりの割合、そのような前向き応援歌的な歌詞となってしまっていると、聴いていて、はっきり言うと「うんざり」してしまいました。
さすがシングルをすべて収録せずに、もうちょっとアルバムのみの曲の割合を増やした方がよかったんじゃないかなぁ。バンドとしての勢いはあるだけに、ちょっと残念。それとも、シングルはこういう形でリリースし、近いうちにもう1枚アルバムをリリースするとか?バンドサウンドにカッコよさを感じる反面、チープな歌詞が気になってしまったアルバムでした。
評価:★★★★
サンボマスター 過去の作品
音楽の子供はみな歌う
きみのためにつよくなりたい
サンボマスター究極ベスト
ロックンロール イズ ノット デッド
終わらないミラクルの予感アルバム
サンボマスターとキミ
YES
はじまっていく たかまっていく E.P.
"超"究極ベスト-全員優勝Edition-
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