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2023年12月29日 (金)

徐々に全貌があきらかに・・・

Title:BAUS'93
Musician:裸のラリーズ

Baus93

1960年代から90年代にかけて活動し、耳をつんざくようなフィードバックノイズの嵐で独自の音楽性を築いたものの、音源がほぼ世に出ていなかったため「伝説のバンド」として知られていた裸のラリーズ。中心メンバーだった水谷孝の逝去後、過去の音源が再発された他、新たにライブ音源もリリースされ、徐々にその実態が明らかにされてきています。今回紹介するのは、7月にリリースされたライブ盤「CITTA'93」に続くライブ音源。その「CITTA'93」の演奏が行われた4日前に、吉祥寺バウスシアターで行われたライブ音源を収録したライブ盤。本作も「CITTA'93」と同様、久保田真琴によるミキシング&マスタリングが行われ、その圧巻のライブパフォーマンスが姿をあらわしています。

収録されている音源は「夜、暗殺者の夜」「黒い悲しみのロマンセ」「夜の収穫者たち」「Drakness Returns」の4曲で、全1時間10分のパフォーマンス。2枚組2時間強に及んだ「CITTA'93」に比べると、ちょっと短い収録内容となっています。ただ、そのライブパフォーマンスは、圧巻の一言。2時間以上に及びパフォーマンスだったためか、フォークロックの側面も押し出していた「CITTA'93」に比べると、本作では1時間強、ほぼ全編に及んで強烈なフィードバックノイズの洪水が襲い掛かるような、彼らのサイケの側面を押し出した構成になっていました。

1曲目「夜、暗殺者の夜」では、いきなり耳をつんざくかのような強烈なギターノイズが飛び込んできますし、10分にも及ぶパフォーマンスでは、ミニマルなリズムもリスナーをトリップに誘います。続く「黒い悲しみのロマンセ」もタイトル通り、どこかメランコリックな雰囲気の漂い楽曲。哀愁ただよう歌も印象的ですが、バックに流れるギターノイズの迫力も強い印象に残ります。「夜の収穫者たち」は、まさに疾走感あるリズムに、これでもかというほどフィードバックノイズをたたきつける強烈なギターサウンドが印象的。ラストの「Darkness Returns」もメランコリックな歌を聴かせつつ、ダイナミックなバンドサウンドで、終始、強烈なフィードバックノイズが展開される構成となっています。

「CITTA'93」と同様、哀愁感のあるメロディーラインは、いかにも70年代然した部分があり、1993年というタイミングで聴くには、少々「時代遅れ」的な感は否めません。ただ、それを差し引いても狂気を帯びたようなフィードバックノイズの洪水は、時代を超えて圧巻されるのは間違いないでしょう。「CITTA'93」以上に、その強烈なバンドサウンドが前に押し出された音源になっていました。

また、この「BAUS'93」、大きな魅力だったのが、その日のパフォーマンスを収録したDVDが同封されている点・・・だったのですが、率直に言うと、このDVDがちょっと期待はずれの厳しい内容でした。

映像は、バックに激しい光のフラッシュが終始、続いている状況で、ハレーションも起こしているような状況。例の「ポケモンショック」を引き起こしそうな映像で、自分ですら直視すると危険にすら感じるような映像になっていました。これ、当時のライブも、こんな激しいフラッシュが終始起こるような状況で、それをそのまま収録した、ということなのでしょうか。パフォーマンスの状況もよくわからず、ライブ映像に期待すると、期待外れな内容かもしれません・・・。

こういう映像しか残っていなかったのかもしれませんし、それでもあえて収録しているという点、貴重な映像なのかもしれませんが・・・裸のラリーズの貴重なパフォーマンス映像をしっかりと味わえると期待していただけに、この点はちょっと残念でした。

ただ、このDVDのマイナス点を差し引いても、圧巻のパフォーマンスの貴重な音源である点は間違いないでしょう。このような音源がまだまだ残っているということなのでしょうか。徐々にその全貌をあらわしだした裸のラリーズ。これからの新たな音源にも期待できそうです。

評価:★★★★★

裸のラリーズ 過去の作品
67-’69 STUDIO et LIVE
MIZUTANI / Les Rallizes Dénudés
'77 LIVE
CITTA'93


ほかに聴いたアルバム

式日散花/ドレスコーズ

ドレスコーズ約1年ぶりとなるニューアルバムは、前作「戀愛大全」の続編的なアルバム。前作同様、ヘヴィーなバンドサウンドをベースにしつつ、レトロな要素も含む、これでもかというほどキュートでポップなメロが魅力的な1枚。そのメロディーラインはいかにもドレスコーズらしい切ないメロが印象的。ただ、前作に比べると曲のバリエーションが少々乏しかった点は気になりましたが、その分、こってりとしたメロディーラインを前に押し出した曲が目立った感じに。ドレスコーズの美メロにじっくりと浸れる1枚でした。

評価:★★★★★

ドレスコーズ 過去の作品
the dresscodes
バンド・デ・シネ
Hippies.E.P.

オーディション
平凡
ジャズ
バイエル(Ⅰ.)
バイエル(Ⅱ.)
バイエル
ドレスコーズの音楽劇《海王星》
戀愛大全

replica/Vaundy

「怪獣の花唄」が驚異的なヒットを見せているシンガーソングライターVaundyの2枚目のフルアルバム。同曲以外にもコンスタントに配信シングルのリリースを続けており、本作では前作「strobo」リリース後の配信シングルをすべて収録した結果、全35曲入り2枚組というボリュームながらも、うち21曲が既配信曲という内容になっています。

そのため、純然たるアルバムというよりもプレイリスト感のある作品に。YOASOBIのアルバムもそうだったのですが、ここらへん、どうも「今時のミュージシャン」といった感じなのでしょうか。その結果、アルバム全体として統一感はなく、基本的にはギターロックを主体とした楽曲で、1曲1曲取ると悪くはないのですが、アルバム通しての印象はかなり薄くなってしまっています。楽曲自体もギターサウンドのオルタナ系ロックを志向しているかと思いつつも、全体的にはルーツレスなJ-POPといった感じ。全体的にミュージシャンとしての「主軸」のなさが気になってしまったアルバムでした。

評価:★★★

Vaundy 過去の作品
strobo

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