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2023年12月12日 (火)

荒々しさを感じる初期ライブ盤

Title:Jimi Hendrix Experience: Live At The Hollywood Bowl: August 18, 1967
Musician:Jimi Hendrix

その圧倒的なギタープレイで、今なお多くのロックリスナーを魅了するジミ・ヘンドリックス。もともと膨大な未発表音源やライブ音源が存在し、逝去後も主にブートレグとして数多くの音源が流出。ただ、90年代半ばに、裁判の末、ヘンドリックスの遺族に権利があると確定し、ヘンドリックスの音源を管理するEXPERIENCE HENDRIXが設立されて以降、徐々に音源も整理され、そのような中でも新たな音源が「正規版」として数多くリリースされ続けているのはご承知置きの通りとなっています。

ただ、そのような中、今回公表された音源は、なんとブートレグとしても世に出ることのなかった、完全未発表音源。アメリカデビュー直前の1967年8月に、アメリカのハリウッド・ボウルにて、ママス&パパスの前座として登場したジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンスのパフォーマンスを収録したライブ盤。ジミヘンの比較的活動初期によるライブパフォーマンスであり、いまさらこのような音源が出てくるのか、と驚いてしまうような、貴重なライブ音源となっています。

そんな貴重な音源ではあるのですが、ただ残念ながら、レビューなどを見ていると、その評価は決して高くはないようです。この日のジミヘンはあくまでもママス&パパスの前座。そのこともあってか、フルパワーのパフォーマンスではない、という指摘もあるようです。確かに、そのギタープレイはやはりジミヘンらしい迫力はあるものの、どこかチグハグ的な部分も否めません。また、音質的にも、聴いていて問題はないレベルではないものの、決して高音質ではありません。なによりも、音のバランス的にボーカルが前に出すぎておりバランスが悪く、その点も音源全体としてチグハグという印象を受ける要因だったりします。

ただ、個人的にそんなマイナス点を差し引いても、このライブ音源、非常にカッコよく、耳を惹かれるパフォーマンスだったと思います。チグハグな部分は確かにその通りな部分もあるのですが、このチグハグさも含めて、逆にバンドとしての荒々しさ、その現場に立ち会ったかのようなリアリティーを感じさせます。1967年という時期は、まだジミヘンにとっても、初期の時代。このチグハグさにも、どこか「完成前」であることの魅力を感じました。

さらにこのアルバムでは、ビートルズの「Sgt.Pepper's Lonely Club Band」や、ボブ・ディランの「Like A Rolling Stone」のカバーも披露。どちらも完全にジミヘン色に染め上げたカバーとなっており、非常に聴きどころのある音源となっています。特に「Sgt.Pepper's Lonely Club Band」はかなり圧倒的な迫力のあるギターとダイナミックなバンドサウンドで、原曲とはまた全く異なる魅力を感じさせるカバーとなっていました。

個人的に本作で珠玉い感じたのはMuddy Watersの「Catfish Blues」のカバー。ブルースをそのままロック流に解釈したカバーが魅力的で、味わいのあるブルージーなフレーズをヘヴィーなギターで聴かせてくれており、まさにブルースロックという呼び名の通り、ブルースとロックをダイレクトに融合させたサウンドが耳を惹きます。この曲に関しては、渋みのあるジミヘンのボーカル自体も非常に魅力的。ここらへんはひょっとしたらジミヘンの出自と関係するのかもしれませんが、ブルースロックとカテゴライズされるホワイト・ブルースのミュージシャンとは明らかに異なる、よりブルース寄りのロックがある種のすごみも感じさせました。

評価は決して高くはないようですが、個人的には、いままで聴いたジミヘンのライブ盤の中で下手したら上位に来るようなカッコよさを感じさせるライブ音源だったと思います。なによりも若々しく未完成ゆえの荒々しさが大きな魅力に感じました。間違いなく本作でも彼の実力を感じることが出来るライブ盤だったと思います。

評価:★★★★★

Jimi Hendrix 過去の作品
VALLEYS OF NEPTUNE
People,Hell And Angels
MIAMI POP FESTIVAL(THE JIMI HENDRIX EXPERIENCE)
BOTH SIDES OF THE SKY
Live in Maui
Los Angeles Forum - April 26, 1969(The Jimi Hendrix Experience)

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