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2023年12月22日 (金)

笠置シヅ子の魅力について入門書としてもピッタリの1冊

今回は、最近読んだ音楽関連の書籍の紹介です。

現在、NHKの朝ドラで絶賛放送中の「ブギウギ」。笠置シヅ子をモデルとしたドラマということもあり、本屋に足を運ぶと、このドラマに便乗した笠置シヅ子関連の書籍が多く販売されています。以前、近代音楽史研究家、輪島裕介による笠置シヅ子の評伝「昭和ブギウギ 笠置シヅ子と服部良一のリズム音曲」を紹介しましたが、今回紹介するのもまた、笠置シヅ子の評伝。娯楽映画研究家、佐藤利明による評伝「笠置シヅ子 ブギウギ伝説」。先月、本書販売を記念したトークイベントに参加してきましたが、遅ればせながら、そのトークイベントの元ネタとなる本書も読んでみました。

まず本書で目立つのが、非常に字が大きいという点(笑)。この点はトークイベントでも「ネタ」となっていましたが、本書を読むような世代に合わせた作りということでしょうか。私もそろそろ老眼が・・・という歳になってしまっているのですが、いくらなんでも字が大きいなぁ、と思ってしまいます。もっとも、中身がスカスカか、と言えばそうではなく、しっかりと笠置シヅ子の歩んだ道のりについて詳しく記載されており、ちゃんとボリュームのある、読み応えのある内容になっていたとは思いますが。

さて、そのドラマの「便乗本」をいろいろと見ていると、「便乗本」というネガティブな表現になるのですが、それでもそれぞれ、様々な切り口で笠置シヅ子について語られています。ムック本的な本では、比較的、彼女の身に起こった「出来事」を羅列しているだけ、というケースが多いのですが、先日取り上げた輪島裕介氏の書籍に関しては、服部良一の音楽性の側面をより注目し、分析した内容となっていましたが、本書についても、笠置シヅ子の生涯について語りつつも、音楽的側面、特にリズムの魅力について、より深く語った記載が目立ちました。

そういう意味ではより「音楽的」な記述が目立った内容。さらにもっと言えば、輪島氏の本に比べると、映画や映像作品においての笠置シヅ子のパフォーマンスに焦点をあてた記載が目立ちます。もともと著者は前述の通り、「娯楽映画研究家」を名乗る通り、音楽以上に映画が専門分野のようですが、やはり映像作品によりスポットが当たっているという点は、こちらが彼のホームグラウンドだから、ということなのでしょう。

ただ一方、音楽にしろ映像にしろ、それを文章という形にまとめあげなければならない点、かなり苦労の跡が見受けられました。先日のトークイベントでは、本書に記載されている映像を、実際、その場で見ることが出来たのですが、それを見た上で本書を読むと、著者が訴えたかったことが、やはりすべて表現されているかと言われると難しいところ。ここらへん、本書の記述のいろいろなところから「映像を見てほしい!」という著者の訴えも伝わってくるようでした。

また、音楽的な詳細な分析については、正直なところ、輪島氏の著書に軍配が上がる印象を受けます。しかし、輪島氏の著書は、そんな音楽的な分析と笠置シヅ子の評伝を両立させようとした結果、若干、焦点がぼやけてしまった印象もあるのですが、本書に関しては、あくまでも笠置シヅ子の評伝を主題として構成されているため、笠置シヅ子の評伝としてぼやけず楽しむことが出来る内容となっていました。なにより、ドラマ「ブギウギ」を見て、笠置シヅ子が実際にどんな人だったんだろう、と気になったような初心者にとっても、手を取って楽しめる内容になっていたと思いますし、そんな初心者が、笠置シヅ子と服部良一の音楽的なすごさを理解するにはピッタリの構成になっていたとも思います。そういう意味では、入門書として非常に優れた1冊だったと思います。

先日のトークイベントを聴いた後で本書を読んだため、概ね、先日のイベントで語られていたことが書かれていました。ただ、トークイベントの「復習」として楽しめた1冊。トークイベントの当日、拝見した映像を思い出しつつ、笠置シヅ子のすごさ、魅力についてあらためて感じることの出来た1冊でした。

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