実にラッパ我リヤらしい作品
Title:CHALLENGER
Musician:ラッパ我リヤ
1990年代前半という、HIP HOP黎明期から活動を続け、日本のHIP HOPシーンのレジェンドの一組とも言えるグループ、ラッパ我リヤ。2009年以降、一時期活動休止状態になるものの、2017年には久々のアルバム「ULTRA HARD」をリリース。本作は同作に続く、約6年ぶりのニューアルバムとなります。
今回のアルバムタイトル、「CHALLENGER」というタイトルになるのですが、公式サイトの案内によると「『ベテランアーティストである自分達の様な年代でも、常にチャレンジャー精神が必要だ!』と言う彼らの自身に対する戒めの想いと、今作が『最後のアルバム』になるかも知れない、と言う決意が込められている。」ということ。25年以上のキャリアを誇るベテランの彼らですが、今なお、前向きに進んでいこうという強いスタンスを感じます。
・・・・・・なのですが、ただアルバム自体については、実にラッパ我リヤらしい内容に仕上がっていたと思います。ラッパ我リヤのスタイルというと、非常に硬いライムと、暑苦しさも感じさせる自己主張の強いリリック。今回の作品については、そんなラッパ我リヤらしさが貫かれた作品になっていました。
「飛んでいくぜお前のとこへ」と彼ららしい押しつけがましさ(笑)を感じる「CODE NAME」からスタートし、「俺らが達人」と、ある意味、非常に強い自己主張が特徴的な「TATSUJIN」、自分たちの歩みを振り返る「この道ひとすじ」に、タイトルからして暑苦しい「情熱だけが燃料の蒸気機関車」と、まさにラッパ我リヤらしい、自己主張の強いリリックを、ヘヴィーなトラックにのせて力強くラップするスタイルの楽曲が続きます。
ちなみにゲスト陣もかなり豪華で、かの般若やR-指定をはじめ、梅田サイファーのKZ、KBDに、異色なところではドラえもんのジャイアン役としてもおなじみの木村昴も参加。こちらもかなり暑いラップを聴かせてくれています。
前作「ULTRA HARD」は彼ららしいヘヴィーな楽曲と、ポップな作品がほどよくバランスされており、音楽的な幅も広がった傑作と感じました。ただ正直なところ本作に関しては、良くも悪くもラッパ我リヤらしい作品が並んでおり、音楽的な広がりという点では前作と比べると、物足りなさを感じました。また、「CHALLENGER」というタイトルとは裏腹に、作風としては「いつものラッパ我リヤ」といった感じで、挑戦的な作品はあまりありません。ラッパ我リヤのファンにとっては、おそらく「待ってました」といった感じのする彼らの王道とも言えるアルバムだったのですが、挑戦という観点では、むしろ前作の方が「CHALLENGER」な内容だったように感じました。
実にラッパ我リヤらしいアルバムになっていた本作。正直、この「暑苦しさ」「自己主張の強さ」は好き嫌いがありそうですし、個人的にも正直、ちょっと苦手に感じてしまう部分も否定できません。そういう意味でも前作の方がよかったと思うのですが・・・。ただ逆に、この「暑苦しさ」「自己主張の強さ」が壺にはまるのならば、かなり気に入る傑作になっていたのではないでしょうか。そういう意味では彼ららしい作品ですが、若干人を選ぶアルバムかな、とも感じた1枚でした。
評価:★★★★
ラッパ我リヤ 過去の作品
ULTRA HARD
ほかに聴いたアルバム
Neo Standard/Night Tempo
主に80年代の日本の歌謡曲を取り上げ、再構築したアルバムで注目を集める韓国人DJのNight Tempo。特に、今、海外でも注目を集めているシティポップというジャンルを広めた功績でも注目を集めています。本作はそんな彼の「新作」をあつめたアルバム。小泉今日子や中山美穂、渡辺満里奈や早見優といった往年の80年代アイドルがズラリと参加者に名前を並べている点でも注目を集めています。ただ・・・内容的には残念ながらいささか中途半端。リズミカルなエレクトロチューンがメインなのですが、特に80年代っぽさも感じませんし、シティポップ的な要素も薄い感じ。Night Tempoの追い求めているジャンルのイメージはあまり反映されていません。本人がつくる楽曲は、DJとして取り上げる楽曲とは別といった感じでしょうか。これはこれで悪いアルバムではないかもしれませんが、期待はずれだったかも・・・。
評価:★★★
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