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2023年12月

2023年12月31日 (日)

2023年ベストアルバム(暫定版)

今年はコロナ禍がようやく終わり、日常生活が戻ってきた1年でした。

ただ一方、今年はミュージシャンの訃報が相次いだ1年でもありました。年初の高橋幸宏からはじまり、鮎川誠、ハイスタの恒岡章、sumikaの黒田隼之介、有賀啓雄、坂本龍一、空想委員会の三浦隆一、頭脳警察のPANTA、谷村新司、もんたよしのり、BUCK-TICKの櫻井敦司、X-JAPANのHEATH、大橋純子、ミッシェル・ガン・エレファントのチバユウスケ、海外からもジェフ・ベック、ティナ・ターナー、トニー・ベネット、バート・バカラック・・・。

個人的になによりショックだったのがKANちゃんの逝去のニュース。大好きなミュージシャンだっただけに、かなりのショックで・・・・・・。昨年の12月にライブに行ったばかりなのに、まさか1年後に・・・・・・。

もっとも今年、ミュージシャンの訃報が多かったのは偶然ではなく、前にも書いたかと思いますが、ポピュラーミュージック全盛期に活躍したミュージシャンたちが老年期を迎えてきている点、さらにミュージシャン寿命が長くなり、年を取っても活躍を続けるミュージシャンが増え、特に知名度のある現役ミュージシャンの訃報が増えた点が大きな理由と思います。そういう意味では残念ながら来年以降もこの傾向は続くでしょう。

さて、気を取り直して、今年もあと1時間を切りました。現時点での私的ベストアルバム暫定版です。

邦楽編

まず上半期のベスト5です。

1位 RABBIT STAR★/水曜日のカンパネラ
2位 e o/cero
3位 12/坂本龍一
4位 映帶する煙/君島大空
5位 タオルケットは穏やかな/カネコアヤノ

これに続く下期のベスト盤候補は・・・

1STST/TESTSET
夜汽車を貫通するメロディヤ/中川敬
夢中夢-Dream In Dream-/cornelius
大人の涙/マカロニえんぴつ
no public sounds/君島大空
Sonicwonderland/上原ひろみ Hiromi's Sonicwonderland
8/ROTH BART BARON
感覚は道標/くるり
miss you/Mr.Children
Almost there/GRAPEVINE

下期に関しては、上期以上に豊作傾向。昨年も豊作の1年でしたので、ここ最近、コロナ禍から落ち着いたためか、傑作が多くリリースされてきている感があります。

洋楽編

上半期のベスト5です。

1位 Raw Saw God/Wednesday
2位 10,000 gecs/100 gecs
3位 the record/boygenius
4位 After the Magic/Parannoul
5位 Did you know that there's a tunnel under Ocean Blvd/Lana Del Rey

これに続く下期のベスト盤候補は・・・

My Back Was a Bridge for You to Cross/ANOHNI and the Johnsons
The Death Of Randy Fitzsimmons/The Hives
THE BALLADS OF DARREN/blur
softscares/yeule
Nothing Lasts Forever/TEENAGE FANCLUB
GUTS/Olivia Rodrigo
Changing Channels/Pangaea
The Land Is Inhospitable and So Are We/Mitski

こちらも邦楽同様、全体的には豊作傾向。1年間、素晴らしいアルバムにいろいろと出会えることが出来ました。

ちなみに今年も主要メディアの年間ベストを集計してリスト化したサイトを参照に、未聴の作品をチェックしてみたいと思います。
https://www.albumoftheyear.org/list/summary/2023/

来年もよいアルバムにたくさん出会えますように。それでは、よいお年を!

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2023年12月30日 (土)

2023年ライブまとめ

今年はようやくコロナの制約もはずれ、通常モードとなったライブシーン。恒例のライブまとめです。

1/13(金) THE BAWDIES THE HAPPY NEW YEAR ACOUSTIC SESSION 2023~話して、笑って、歌って、福来て!~(名古屋市千種文化小劇場)
1/17(火) Rina Sawayama Hold The Girl Tour 2023(ダイアモンドホール)
2/20(月) カネコアヤノ Zepp Tour 2023”タオルケットは穏やかな”(Zepp Nagoya)
3/1(水) 奥田民生2023 ラビットツアー~MTR&Y~(日本特殊陶業市民会館フォレストホール)
4/18(火) Bob Dylan "ROUGH AND ROWDY WAYS" WORLD WIDE TOUR 2021-2024(愛知県芸術劇場)
5/19(金) SEX MACHINEGUNS なーるほど ザ ワイルド 春の祭典25周年スペシャル(RAD HALL)
6/16(金) 水曜日のカンパネラ ワンマンライブツアー2023~RABBIT STAR★TOUR~(ダイアモンドホール)
6/25(日) RHYMESTER ニューアルバム「Open The Window」発売記念インストアイベント(オンライン)
7/5(水) Buffalo Daughter 30周年記念企画第3弾 名古屋編(TOKUZO)
7/26(水) blur The Ballad of Darren live at Eventim Apollo(Eventim Apollo(オンライン))
8/28(月) スキヤキ・ミーツ・ザ・ワールド 名古屋2023(TOKUZO)
10/6(金) TRICERATOPS "THE GREAT SKELETON'S MUSIC GUIDE BOOK"25TH ANNIVERSARY TOUR RETURN OF THE GREAT SKELETON 2023(THE BOTTOM LINE)
11/28(火) 「笠置シヅ子 ブギウギ伝説」刊行記念トーク!(TOKUZO)
11/29(水) Alvvays Japan Tour 2023(ElectricLadyLand)
12/21(木) 忘れらんねえよのすべて(名古屋CLUB QUATTRO)
12/22(金) LINDBERG きっと素晴らしいツアーにするんだツアーagain2023(ダイアモンドホール)

そんな訳で、完全に、無事コロナ禍以前に戻った感のあるライブシーン。ライブに足を運ぶ回数も、完全にコロナ禍以前に戻りました。そんな今年のベスト3です。

3位 水曜日のカンパネラ@水曜日のカンパネラ ワンマンライブツアー2023~RABBIT STAR★TOUR~

ボーカルがコムアイから詩羽に代わって、どうなるんだろうか、と心配した水カンでしたが、今となっては、むしろ詩羽なしでは考えられないくらい、すっかり詩羽ボーカルが定着しました。ライブパフォーマンスも、コムアイ時代のライブも素晴らしかったのですが、エンタテイメントという面では、むしろコムアイ以上に楽しいパフォーマンスを見せてくれたライブ。いろいろとパフォーマンスに工夫を凝らし、最後まで楽しませてくれるステージでした。

2位 SEX MACHINEGUNS@SEX MACHINEGUNS なーるほど ザ ワイルド 春の祭典25周年スペシャル

以前、ヒットチャートの上位に食い込んでいた頃は、そのライブパフォーマンスの評判の高さからライブチケットがなかなか取れなかったマシンガンズ。一度見てみたいと思いつつ、結局、行けずじまいとなってしまいましたが、ようやく初めてライブに足を運ぶことが出来ました。会場は当時に比べると、かなりこじんまりとしてしまいましたが・・・。ただ、パフォーマンス自体はその頃の評判に違わないクオリティー高く、迫力のあるもの。これだけのライブを見せてくれながら、正直、なぜここまで人気の面で落ち込んでしまった不思議に感じるほど・・・。昔聴いたパフォーマンスの評判の高さを今なお維持している点に驚きを感じた素晴らしいステージでした。

1位 JUPITER&OKWESS@スキヤキ・ミーツ・ザ・ワールド 名古屋2023

コンゴの首都キンシャサで20年以上活動を続けているミュージシャン、ジュピターを中心としたバンド。2014年のスキヤキ・ミーツ・ザ・ワールドでもそのパフォーマンスを見ており、その時のライブも2014年のライブの2位に選んだほどでしたが、この日のステージも、申し分ないアグレッシブなパフォーマンス。以前見た時の野外ステージでのライブも素晴らしかったのですが、TOKUZOの比較的狭い箱だからこそ、会場全体が一体となるような激しいパフォーマンスを見せてくれ、すっかり魅了されてしまいました。文句なしの今年1番のライブでした。

今年はこの3つ以外にも、全体的に素晴らしいライブが多かったように思います。THE BAWDIES、Rina Sawayama、Bob Dylan、Buffalo Daughter、TRICERATOPS、Alvvays、忘れらんねえよなど、いずれもベストライブとなっても不思議ではないパフォーマンスばかりでした。来年もまた、多くのライブに足を運べますように!

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2023年12月29日 (金)

徐々に全貌があきらかに・・・

Title:BAUS'93
Musician:裸のラリーズ

Baus93

1960年代から90年代にかけて活動し、耳をつんざくようなフィードバックノイズの嵐で独自の音楽性を築いたものの、音源がほぼ世に出ていなかったため「伝説のバンド」として知られていた裸のラリーズ。中心メンバーだった水谷孝の逝去後、過去の音源が再発された他、新たにライブ音源もリリースされ、徐々にその実態が明らかにされてきています。今回紹介するのは、7月にリリースされたライブ盤「CITTA'93」に続くライブ音源。その「CITTA'93」の演奏が行われた4日前に、吉祥寺バウスシアターで行われたライブ音源を収録したライブ盤。本作も「CITTA'93」と同様、久保田真琴によるミキシング&マスタリングが行われ、その圧巻のライブパフォーマンスが姿をあらわしています。

収録されている音源は「夜、暗殺者の夜」「黒い悲しみのロマンセ」「夜の収穫者たち」「Drakness Returns」の4曲で、全1時間10分のパフォーマンス。2枚組2時間強に及んだ「CITTA'93」に比べると、ちょっと短い収録内容となっています。ただ、そのライブパフォーマンスは、圧巻の一言。2時間以上に及びパフォーマンスだったためか、フォークロックの側面も押し出していた「CITTA'93」に比べると、本作では1時間強、ほぼ全編に及んで強烈なフィードバックノイズの洪水が襲い掛かるような、彼らのサイケの側面を押し出した構成になっていました。

1曲目「夜、暗殺者の夜」では、いきなり耳をつんざくかのような強烈なギターノイズが飛び込んできますし、10分にも及ぶパフォーマンスでは、ミニマルなリズムもリスナーをトリップに誘います。続く「黒い悲しみのロマンセ」もタイトル通り、どこかメランコリックな雰囲気の漂い楽曲。哀愁ただよう歌も印象的ですが、バックに流れるギターノイズの迫力も強い印象に残ります。「夜の収穫者たち」は、まさに疾走感あるリズムに、これでもかというほどフィードバックノイズをたたきつける強烈なギターサウンドが印象的。ラストの「Darkness Returns」もメランコリックな歌を聴かせつつ、ダイナミックなバンドサウンドで、終始、強烈なフィードバックノイズが展開される構成となっています。

「CITTA'93」と同様、哀愁感のあるメロディーラインは、いかにも70年代然した部分があり、1993年というタイミングで聴くには、少々「時代遅れ」的な感は否めません。ただ、それを差し引いても狂気を帯びたようなフィードバックノイズの洪水は、時代を超えて圧巻されるのは間違いないでしょう。「CITTA'93」以上に、その強烈なバンドサウンドが前に押し出された音源になっていました。

また、この「BAUS'93」、大きな魅力だったのが、その日のパフォーマンスを収録したDVDが同封されている点・・・だったのですが、率直に言うと、このDVDがちょっと期待はずれの厳しい内容でした。

映像は、バックに激しい光のフラッシュが終始、続いている状況で、ハレーションも起こしているような状況。例の「ポケモンショック」を引き起こしそうな映像で、自分ですら直視すると危険にすら感じるような映像になっていました。これ、当時のライブも、こんな激しいフラッシュが終始起こるような状況で、それをそのまま収録した、ということなのでしょうか。パフォーマンスの状況もよくわからず、ライブ映像に期待すると、期待外れな内容かもしれません・・・。

こういう映像しか残っていなかったのかもしれませんし、それでもあえて収録しているという点、貴重な映像なのかもしれませんが・・・裸のラリーズの貴重なパフォーマンス映像をしっかりと味わえると期待していただけに、この点はちょっと残念でした。

ただ、このDVDのマイナス点を差し引いても、圧巻のパフォーマンスの貴重な音源である点は間違いないでしょう。このような音源がまだまだ残っているということなのでしょうか。徐々にその全貌をあらわしだした裸のラリーズ。これからの新たな音源にも期待できそうです。

評価:★★★★★

裸のラリーズ 過去の作品
67-’69 STUDIO et LIVE
MIZUTANI / Les Rallizes Dénudés
'77 LIVE
CITTA'93


ほかに聴いたアルバム

式日散花/ドレスコーズ

ドレスコーズ約1年ぶりとなるニューアルバムは、前作「戀愛大全」の続編的なアルバム。前作同様、ヘヴィーなバンドサウンドをベースにしつつ、レトロな要素も含む、これでもかというほどキュートでポップなメロが魅力的な1枚。そのメロディーラインはいかにもドレスコーズらしい切ないメロが印象的。ただ、前作に比べると曲のバリエーションが少々乏しかった点は気になりましたが、その分、こってりとしたメロディーラインを前に押し出した曲が目立った感じに。ドレスコーズの美メロにじっくりと浸れる1枚でした。

評価:★★★★★

ドレスコーズ 過去の作品
the dresscodes
バンド・デ・シネ
Hippies.E.P.

オーディション
平凡
ジャズ
バイエル(Ⅰ.)
バイエル(Ⅱ.)
バイエル
ドレスコーズの音楽劇《海王星》
戀愛大全

replica/Vaundy

「怪獣の花唄」が驚異的なヒットを見せているシンガーソングライターVaundyの2枚目のフルアルバム。同曲以外にもコンスタントに配信シングルのリリースを続けており、本作では前作「strobo」リリース後の配信シングルをすべて収録した結果、全35曲入り2枚組というボリュームながらも、うち21曲が既配信曲という内容になっています。

そのため、純然たるアルバムというよりもプレイリスト感のある作品に。YOASOBIのアルバムもそうだったのですが、ここらへん、どうも「今時のミュージシャン」といった感じなのでしょうか。その結果、アルバム全体として統一感はなく、基本的にはギターロックを主体とした楽曲で、1曲1曲取ると悪くはないのですが、アルバム通しての印象はかなり薄くなってしまっています。楽曲自体もギターサウンドのオルタナ系ロックを志向しているかと思いつつも、全体的にはルーツレスなJ-POPといった感じ。全体的にミュージシャンとしての「主軸」のなさが気になってしまったアルバムでした。

評価:★★★

Vaundy 過去の作品
strobo

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2023年12月28日 (木)

今年最後のヒットチャート

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週は非アイドル系の初登場も目立ちましたが、結果、1位初登場は・・・

ただ1位はアイドル系。旧ジャニーズ系男性アイドルグループTravis Japan「Road to A」が獲得。CD販売数及びダウンロード数共に1位。本作がデビューアルバムとなります。オリコン週間アルバムランキングでも初動売上15万3千枚で1位初登場となりました。

2位初登場は松任谷由実「ユーミン乾杯!!~松任谷由実50周年記念コラボベストアルバム~」。CD販売数2位、ダウンロード数3位。タイトル通り、デビュー50周年を記念して、様々なミュージシャンとユーミンがコラボした曲を集めたアルバム。今週のHot100にランクインした「Kissin' Christmas (クリスマスだからじゃない) 2023」が収録されているほか、1985年に松任谷由実、小田和正、財津和夫名義でリリースした「今だから」も収録されていますが、基本的には今回のアルバムのために企画されたコラボ曲が収録されています。そのため、過去のコラボ曲をまとめたアルバムではないため「コラボベスト」とはちょっと違うのですが・・・。オリコンでは初動売上5万7千枚で2位初登場。直近のベストアルバム「ユーミン万歳!~松任谷由実50周年記念ベストアルバム~」の初動19万枚(1位)からはダウンしています。

3位には韓国の男性アイドルグループSEVENTEEN「SEVENTEEN HEAVEN」が先週の32位からランクアップし、3週ぶりのベスト10返り咲き。特にCD販売数が28位から3位と大幅にアップしています。現在、日本ツアー中で、おそらくその会場でのCD販売が加味されたものと思われるのですが・・・。また、今週「SEVENTEEN JAPAN BEST ALBUM『ALWAYS YOURS』」も先週の46位から10位に大幅にランクアップ。9週ぶりにベスト10に返り咲いています。

続いて4位以下の初登場盤です。まず4位にALKALOID「あんさんぶるスターズ!!アルバムシリーズ 『TRIP』」が初登場。CD販売数4位、ダウンロード数12位。男性アイドル育成ゲーム「あんさんぶるスターズ!!」のキャラクターソングCD。オリコンでは初動売上2万2千枚で5位初登場。同シリーズの前作、2Wink名義の「あんさんぶるスターズ!!アルバムシリーズ 『TRIP』」の初動5千枚(11位)から大きくアップしています。

6位には、テレビ東京系ドラマ「ガールズ×戦士シリーズ」の出演者による女性アイドルグループGirls2「アクセラレイト」がランクイン。新曲4曲と同曲のインスト版の8曲入りで、公式サイトでもシングル扱いなのですが、アルバムチャートにランクインとなっています。CD販売数5位。オリコンでは初動売上2万3千枚で4位初登場。前作「Countdown」(5位)から横バイ。

7位初登場はTHE ALFEE「SINGLE CONNECTION & AGR - Metal & Acoustic -」。2013年から2021年までにリリースしたシングル曲を収録したシングルコレクション。CD販売数6位。オリコンでは初動売上1万7千枚で6位初登場。直近作のオリジナルアルバム「天地創造」の初動3万5千枚(2位)からダウン。シングルコレクションとしては前作となる「SINGLE HISTORY VOL.VII 2009-2012」の初動売上4千枚(18位)から大きくランクアップしています。

9位にはなとり「劇場」が初登場。「overdose」が大ヒットを記録したシンガーソングライターのデビュー作。CD販売数11位、ダウンロード数6位。オリコンでは初動売上5千枚で12位に初登場しています。

今週のHot Albumsは以上。来週はちょうどお正月休み真っ最中のため、おそらく次週チャートは1月5日頃の更新になる模様です。

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2023年12月27日 (水)

クリスマスソングが大躍進

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週は集計対象期間が12月18日~24日ということで、クリスマスソングがランクインしてきています。

Ado_show

ただし1位はAdo「唱」が獲得。これで通算12週目の1位獲得。ストリーミング数は14週連続、YouTube再生回数は12週連続の1位。ダウンロード数も3位から2位にアップしています。ベスト10ヒットは16週連続、ベスト3ヒットは15週連続となります。

一方、先週2位のYOASOBI「アイドル」は3位にダウン。ストリーミング数は4週連続の3位。YouTube再生回数は2位から3位にダウン。ダウンロード数は11位から9位にアップしています。これで37週連続のベスト10ヒット&通算34週目のベスト3ヒットとなっています。一方「勇者」は今週5位から9位に大幅ダウン。YouTube再生回数は4位から5位にダウン。ただし、ダウンロード数及びストリーミング数は先週から変わらず6位。ただしCD販売数は9位から22位に大幅ダウン。ただし、これで13週連続のベスト10ヒットとなっています。

そして、その間に割って入ったのがクリスマスソング。桑田佳祐&松任谷由実「Kissin' Christmas (クリスマスだからじゃない) 2023」。もともと2012年に桑田佳祐&His Friends名義でリリースされた曲を桑田佳祐と松任谷由実のデゥオという形でリメイクしたシングル。CD販売数4位、ダウンロード数7位、ラジオオンエア数1位、YouTube再生回数85位で総合順位は2位にランクイン。オリコン週間シングルランキングでも初動売上2万4千枚で3位にランクインしています。

今週は、他にもクリスマスソングがベスト10にランクインしています。まず6位に、すっかりクリスマスの定番となったback number「クリスマスソング」が先週の11位からランクアップ。昨年の12月28日付チャート以来のベスト10入りとなりました。ストリーミング数5位、ラジオオンエア数7位、YouTube再生回数8位、そしてなんとカラオケ歌唱回数では先週まで8週連続1位だったVaundy「怪獣の花唄」を下して、1位を獲得しています。また、これで通算13週目のベスト10ヒットに。

またMaraiah Carey「All I Want For Christmas Is You」(邦題「恋人たちのクリスマス」)も、昨年の12月28日付チャート以来のベスト10入り。ラジオオンエア数3位、ダウンロード数28位、ストリーミング数11位、YouTube再生回数29位。ちなみにこの曲、本国アメリカのビルボードチャートでも今週、見事1位を獲得しています。

他にも山下達郎「クリスマス・イブ」が21位、Ariana Grande「Santa Tell Me」が24位、桑田佳祐「白い恋人達」が25位、BoA「メリクリ」
が41位、Wham!「Last Christmas」が44位にそれぞれランクイン。昨年、ランクインしてきた曲が今年も同じくランクインしてきており、クリスマスの定番ソングとなっています。

続いて4位以下の初登場曲です。4位に指原莉乃プロデュースの声優アイドルグループ、≠ME「アンチコンフィチュール」が初登場。CD販売数1位、それ以外はすべてランク圏外という結果に。オリコンでは初動売上18万2千枚で1位初登場。前作「想わせぶりっこ」の初動18万4千枚(3位)より若干のダウン。

5位にはAKB48の姉妹グループHKT48「バケツを被れ!」がランクイン。CD販売数2位、その他のチャートは圏外となっています。オリコンでは初動売上12万1千枚で3位初登場。前作「君はもっとできる」の初動12万8千枚(2位)よりダウンしています。

またロングヒット曲ですが、King Gnu「SPECIALZ」は5位から7位にダウン。ダウンロード数は8位から10位、YouTube再生回数は3位から6位にダウン。ただ、ストリーミング数は今週3位から2位にアップしています。これで17週連続のベスト10ヒットとなります。

一方、Vaundy「怪獣の花唄」は9位から12位にダウン。ベスト10ヒットは通算49週で再びストップです。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2023年12月26日 (火)

高校時代に戻ったような・・・

LINDBERG きっと素晴らしいツアーにするんだツアーagain2023

会場 ダイアモンドホール 日時 2023年12月22日(金)19:00~

Lindberg_live_2023

2023年最後のライブ。前日の忘れらんねえよから2日連続となるライブとなりましたが、LINDBERGのワンマンライブに足を運んできました。このサイトでも何度か書いたことがあるとは思うのですが、私が高校時代にもっともはまったミュージシャンがLINDBERGと渡辺美里。2014年の再始動後、ライブを中心に活動を続けていることは知っていたのですが、ちょうど足を運べるタイミングでのライブがあったため、今年最後のライブに足を運んできました。LINDBERGのワンマンライブは、2002年の解散ライブ以来、実に21年ぶり(!)。ちなみに高校生の頃、一度ワンマンライブに行ったことがあったので、これが3度目となります(ちなみにプラス1回、イベントライブを見たことがあるので、これが4度目のLINDBERGのライブとなりました)。

会場はダイアモンドホール。今回は椅子席でしたが、ほぼ満員という状態。で、これ昔のワンマンライブの時にも感じたのですが、観客が全員ほぼ同年代。自分が高校の頃、一世を風靡したバンドですからね。やはりその時代のファンが懐かしく集まっているという感じなのでしょう。やがてメンバーが登場。ただ、久々のLINDBERGのメンバーは、大変失礼ながら、「歳を取ったな…」という感想を抱いてしまいました(笑)。まあ、それはお互い様なのですが。とはいえ演奏がスタートすると、いい意味でベテランらしい、安定感ある演奏を聴かせてくれ、さすが、といった印象を強く抱いたのですが。

実は今回、会場に来てはじめて知ったのですが、このツアー、1994年のアルバム「LINDBERGⅦ」リリースに伴うライブツアー「きっと素晴らしいツアーにするんだ」の再現ライブだとか。私自身、「LINDBERGⅦ」自体はリアルタイムで聴いていたものの、正直、方向性がポップになりすぎて、個人的にこれ以降、あまり熱心なファンでなくなってしまった頃のアルバムなだけに、あまり思い入れはなかったのですが・・・。

そんなこともあって「Cute or Beauty」「love on the border」「TAXI」と「LINDBERGⅦ」の曲からスタート。ただ、続いては「LINDBERGⅡ」のナンバー「JUMP」へ。まさに高校時代に聴きまくっていた楽曲なだけに、思わず大興奮してしまいます。とはいえ、この段階でかなり気になったのが、渡瀬マキのボーカル。バンド自体は往年と変わらない演奏を聴かせてくれているのですが、彼女のボーカルは低音部が全く出ておらず、正直、かなり不安定・・・。彼女、2017年に機能性発声障害を発表し、活動を休止していました。ひょっとしたらその影響なのでしょうか。ちょっと心配にも感じました。

続いてはMCでは「30年前に来ていた人!」という観客へのアンケートも。さすがに何人か手があがりました。逆に今回はじめてという人も何人か。「なぜ、今?」と言われていましたが(笑)。その後は再び「LINDBERGⅦ」から「きっと素晴らしい部屋にするんだ」「八月の鯨」と続き、続いては「LINDBERGⅣ」から「OH!ANGLE」とかなり懐かしいナンバーに!ただこの曲、彼女たちの曲の中では特に低音部を聴かせる曲なだけに、かなり不安定さは否めなかったのですが。

その後はバンドメンバーはサポートキーボードの佐藤"darling"達也を残してステージを去り、渡瀬マキの2人のみという状況に。ここでダーリンのキーボード1本でしんみりバラードナンバー「風のない春の午後」に。これまた「LINDBERGⅤ」からの知る人ぞ知る的な曲に、個人的にも「そういえばあったなぁ!」と思い出し、懐かしく聴き入ります。その後は再びバンドメンバーが戻り、「清く正しく行こう」へと続きます。

次にMCでは、公式TikTokをはじめた、という話。「TikTokのアプリを入れている人!」という客席への呼びかけについては、チラホラと手があがる程度で、LINDBERGのファン層の年代の高さを感じてしまいます。そのため、フォロワー数も伸び悩んでいるそうですが、同じバンドのTUBEのフォロワー数はかなり伸びているそうで、「ファン層は近いはずなのに・・・」というぼやきが入っていました。

ここからライブは一気に後半戦へ。「LINDBERGV」の「赤い自転車」「Magical Dreamer」と続き、ここでおなじみの大ヒット曲「今すぐKiss Me」で一気にライブは最高潮へ。個人的にこの日のライブで一番興奮したのはこれに続いた「LINDBERGⅣ」の「だからI'm On Fire」だったかもしれません。「LINDBERGⅣ」は高校時代に聴きまくったアルバムだったので、同作のアルバム曲をライブで聴けたのは、かなり興奮しました。さらに「GAMBAらなくちゃね」と続き、ラストは彼女たちの代表曲「BELIEVE IN LOVE」へ!!まさにライブは最高潮の中、幕を下ろしました。

もちろん会場は盛大なアンコールへ。アンコールではこれまた懐かしい「10セントの小宇宙(ゆめ)」、そしてラストのラストは大定番「LITTLE WING」で締めくくり。最後の最後まで大興奮の中、2時間弱のステージは幕を下ろしました。

前日の忘れらんねえよのステージは、精神的に高校時代を思い出したステージでしたが、この日はまさに、リアルに高校時代を思い出したステージでした。特に今回、「LINDBERGⅦ」リリースに伴うツアーの再現ライブということで、前半は「LINDBERGⅦ」からの曲がメインだったのですが、中盤以降は「LINDBERGⅤ」以前の曲がメインとなっており、自分がLINDBERGに一番はまっていた時代の曲が続いたセットリストに。かなり懐かしく、そのステージを楽しめる構成になっていました。

バンド自体の演奏はむしろベテランとなって、いい意味での安定感が増した感じがするステージで、そのバンドとしての実力も感じさせました。ただ気になったのは渡瀬マキのボーカル。低音部が全く出ておらず、歌い方が昔と比べるとかなり変わってしまっており、昔の曲に関しては、若干辛そうな部分もありました。この点はちょっと心配に感じてしまいました。

なお、最後の最後に、マイクを通さず渡瀬マキが「今度はもっと大きなところに連れて行くからね!」と叫んでいたのが気になりました。正直、いまから再ブレイクというのも難しそうに感じると同時に、逆に、ベスト盤とかを大々的にリリースし、その後ツアーを実施すれば、彼女たちの往年の人気から考えると、十分、(名古屋だと)市民会館くらいでは今でも演れそうな感じもします。来年はデビュー35周年なので、ひょっとしたら、そういう計画があるのかも、と思ってしまったりして。もしそうなら、是非また足を運びたいなぁ。そんな高校時代に戻ったような錯覚を覚えた、そんな一夜のステージでした。

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2023年12月25日 (月)

とても熱いライブ

忘れらんねえよのすべて

会場 名古屋CLUB QUATTRO 日時 2023年12月21日(木)19:00~

Getimage

年末のこの日、忘れらんねえよのライブを見てきました!前作「週間青春」がかなりの傑作で、かつ今回は「15周年集大成ワンマン」ということもあり足を運んできました。会場はクラブクワトロ。仕事の都合で19時10分くらいに会場入りしたのですが、会場の入りは正直、後ろの方はすいていて、ちょっと寂しい感じ。見るには余裕があってかなりよかったのですが・・・。私が会場入りした時、ちょうどライブがスタートしたタイミングでした。

最初はいきなり代表曲のひとつ「夜間飛行」からスタート。さらに「悲しみよ歌になれ」と続き、「集大成」らしい代表曲が続きます。バンドサウンドもかなり力強いのですが、それ以上に、曲そのまま熱い、柴田のボーカルが印象的。そして続いて短いMCでは、チャットモンチーの「ハナノユメ」を聴いて衝撃を受けてバンドをはじめたことが滔々と語られます。

その後も最新アルバムから「アイラブ言う」に「キミの音」「音楽と人」と代表曲が続き、「書いてきた曲が多すぎるので・・・」ということで「青春メドレー」と題して「この街には君がいない」「明日とかどうでもいい」など数曲をメドレー形式で披露。さらにここで「みんなの中にも陰キャの要素があるはず」という煽りのMCから「踊れ引きこもり」へ。会場がダンスフロアのように(??)盛り上がります。この曲、途中にラップ+女性ボーカルのR&Bという当時の流行歌(本人曰く「西野カナみたいな曲」)が入るのですが、この日は女性ボーカルもいないため、柴田ボーカルによる[Alexandros]の「ワタリドリ」のカバーを間に挟んできました。確かにこの曲も「陽キャ」っぽい曲ですが(笑)。

中盤では、MCで「いろいろな別れがありました」というトークから「別れの歌」や、「ドストエフスキーを読んだと嘘をついた」では、最初「渋谷の飲み屋…」と歌いかけた後、「名古屋の飲み屋で…」と歌いなおす場面も。

「戦って勝ってこい」の後のMCでは、彼がバンドを組むきっかけになったチャットモンチーの橋本絵莉子とミュージックビデオを撮ったエピソードが語られます。彼女との共演は自分の中でひとつの「完成形」だと思ったらしく、「もうあなたとは二度と会いません」とえっちゃんに言ってしまったらしく、「えぇ…」と引かれたというエピソードも(笑)。いや、この相手のことを考えずに自分の思いだけを伝えちゃうあたり痛いなぁ(笑)。でも、自分も高校生の頃か、下手したら20代前半あたりまでは同じようなことを言っちゃってたかもなぁ・・・と妙に共感を覚えてしまいました。まあ、柴田はもう40歳を超えているんですが(苦笑)。

ただ、このMCから会場の空気は最高潮に達し、続く「ばかばっか」では柴田が観客席にダイブ!そのまま観客に運ばれてバーカウンターまで行き、ビールを購入(わざわざ千円札を出して買うあたり、かなり律儀に感じましたが)。さらに観客席の中央で、観客の上に立ち、ビールを一気飲みするというパフォーマンスを見せてくれました。

そこからは終盤戦。「僕らチェンジザワールド」から、この日一番盛り上がったのは続く「CからはじまるABC」。客席前方では軽いモッシュも発生。ダイブするファンも登場するなど、大盛り上がり。モッシュ&ダイブが起こるワンマンライブは久しぶりだなぁ・・・。さらに「バンドやろうぜ」ではみんなの大合唱も起こり、ラストは「この高鳴りをなんと呼ぶ」で本編は締めくくりとなります。

もちろんその後はアンコールへ。アンコールのMCでは、名古屋の初ライブが池下のCLUB UPSETだった話。そこのオーナーが「おっさん」と呼ばれていたけど、自分は若手だったので「おっさん」とは呼べず「おっさんさん」と呼んでいた話。さらに、「アップセットに行ったことある人」と観客に呼ぶかけると9割くらいの人の手があがりました(私も行ったことありますが)。決して大きなライブハウスでもないため、これはちょっとビックリ。「お前ら、本当にバンド好きだな!!」と言った後に、アンコールでは「忘れらんねえよ」へ。「忘れらんねえよ」ではサビで大合唱。最後は観客だけに歌わせるシーンも。さらに携帯の懐中電灯を光らせて左右に振らせていました。そしてライブは2時間弱で終了。最後は観客席をバックに記念撮影を行いライブは終わりとなりました。

そんな訳で、初の忘れらんねえよのワンマンライブ。かなり熱いステージになると予想していたのですが、予想以上に熱いステージでした。特に、途中のMCも熱いし、演奏自体もかなり激しく、そして4人編成というシンプルなバンド構成でしたが、かなり分厚いバンドサウンドを聴かせてくれました。また、途中のMCの「イタタ…」なエピソードは自分が高校生の頃を思い出してしまって、妙な親近感も。ただ、その「若さ」のまま、いままでバンドを続けている柴田のバイタリティーのすごさにもあらためて感心しつつ、この痛さも忘れらんねえよの大きな魅力にも感じました。

ライブに参加すると、「自分はこのバンドのこと、実はこんなに好きだったんだ」と思う場合は少なくありませんが、この日の忘れらんねえよのライブに関しても、そんな思いを感じつつ会場を後にしました。最高のライブパフォーマンス。また、是非彼のライブには足を運びたいです!

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2023年12月24日 (日)

マッドチェスタームーブメントの楽曲を網羅的に収録

Title:come together adventures on the indie dancefloor 1989-1992

1980年代後半から1990年代にかけて、イギリスはマンチェスターを中心に行ったムーブメント、マッドチェスター。マンチェスター・サウンドという名前でも知られているのですが、Wikipediaによると「ダンサブルなビートとドラッグ文化を反映したサイケデリックなサウンドが特徴とされるロックのスタイルを指す」と定義付けされています。ストーン・ローゼズやシャーラタンズ、ハッピー・マンデーズが代表的なミュージシャンとされるのですが、私自身、これらのミュージシャンについてリアルタイムに聴いていた世代ではありません。ただ、これらのミュージシャンがoasisをはじめとして90年代後半のブリットポップに大きな影響を与え、その流れから、このムーブメントについては知っていました。今回紹介するのは、そのマッドチェスターのミュージシャンたちの曲を集めたコンピレーションアルバム。前述のミュージシャンをはじめ、インスパイラル・カーペッツ、808 State、James、Spaceman3、さらにはPrimal Screamなど、マッドチェスターの代表的なミュージシャンたちの曲がズラリと並ぶ、全4枚組の、ボリューム感あるもののかなり充実したコンピレーションアルバムとなっています。

個人的には、マッドチェスターについては、自分の好きなoasisのルーツではあるものの、ストーン・ローゼズの1stや、primal screamの「Screamadelica」は聴いていたのですが、そんなに幅広く聴いていたことはありませんでした。それで今回はじめて、マッドチェスターの楽曲をまとめて聴いてみたですが、個人的に思いっきり好み!完全に壺にはまりました。

まずアルバムは、マッドチェスターを代表するHappy Mondaysの「W.F.X.」からスタート。ギターサウンドにパーカッションを入れたグルーヴィーなリズムが心地よいのですが、よれよれのボーカルもいかにもといった感じ。このどこか酩酊感あるサウンドが、ドラッグ文化を反映しているといったところなのでしょう。808 Stateの「Pacific State」も、スペーシーな四つ打ちテクノが心地よいリズミカルなチューン。The Farmの「Stepping Stone」もぶっといグルーヴィーでファンキーなサウンドが身体に心地よく響きます。

Disc2はおなじみThe Stone Rosesの「Fools Gold」からスタート。こちらもグルーヴィーなサウンドとイアン・ブラウンのなよなよなボーカルが魅力的。そういえば、昔、フジロックでイアン・ブラウンを見たことがあって、その時はあまりに下手なボーカルに「どこがいいんだろ?」と思ったんですが、今聴くと、このヘタウマなボーカルがサウンドに酩酊感を加えて、非常にマッチしているんですね。今さらながらその魅力に気が付きました。

Disc3ではThe Shamen「Pro>Gen」のような、4つ打ちテクノにラップが載るスタイルの曲も。ちなみにDisc4に収録されているRuthless Rap Assassinsの「And It Wasn't A Dream」みたいなHIP HOPチューンもあり、この時代の初期のHIP HOPを取り入れていたこともわかります。様々なジャンルを取り込んでいたという意味では、Disc4の冒頭を飾るThe Soup Dragonsの「I'm Free」も印象的。レゲエのリズムを取り入れて祝祭色が豊かなナンバーながらも、マッドチェスターらしいグルーヴ感も同時に感じさせる楽曲となっています。

あと余談ながら、Disc1収録のParis Angels「All On You」やDisc4のMC Tunes Versus 808 State「Tunes Splits The Atom」などは、初期電気グルーヴっぽい感じのサウンドになっており、いまさらながら電気グルーヴのマッドチェスターからの影響の強さを感じました。以前、YouTubeで、電気グルーヴのルーツを語る「Roots of 電気グルーヴ」という番組があったのですが、その時、彼らのルーツの1つとして語られていたPop Will Eat ItselfもDisc4に「X,Y and Zee」が収録されています。

そんな訳で、ギターサウンドを主体としつつ、ファンクやソウル、HIP HOPやテクノ、レゲエまで取込み、酩酊感あるグルーヴィーなサウンドに仕立て上げているマンチェスター・サウンド。ある意味、自由度も高いサウンドなのですが、その魅力は何か、と考えた時、誤解を恐れずに言えば、ニセモノであるということが、マンチェスター・サウンドの大きな魅力だったのではないか、ということを感じました。

彼らは様々なサウンドを取り入れていますが、ファンクにしろHIP HOPにしろテクノにしろ、イギリスが「本場」ではありません。なおかつ、本格的にそのジャンルに取り組むというよりも、自分たちのサウンドに、そのエッセンスを取り入れた、という点を強く感じます。

ただ、一方で、あくまでもサウンドの心地よさを追及したグルーヴ感が実に魅力的。前述のWikiの説明では「アーティストと観衆の上下関係や垣根を取り払うことを目指した」と書かれているのですが、音楽性のこだわりは2の次。いかに観衆に心地よく響くか、心地よく踊ってもらえるかを目指した結果として、様々なジャンルのサウンドの「いいとこ取り」なのでしょう。結果として、この「こだわりのなさ」が、ある種のマンチェスター・サウンドの大きな魅力につながっていたようにも感じました。「本場」であれば、このような「いいとこ取り」はある種のこだわりは、コミュニティーからの反発もあってなかなか出来ないでしょう。マンチェスターの地が「本場」ではなく、取り入れたサウンドも「ニセモノ」であることが逆にこだわりなく、観衆の心地よさだけ追及するサウンドを生み出すことが出来た、そんな印象を受けました。

かなりボリューミーなコンピレーションアルバムだったのですが、個人的に壺をつきまくった作品の連続で、最後まで一気に楽しむことが出来たアルバム。途中、耳が一切離せないような内容になっていました。実に魅力的なオムニバスアルバム。リアルタイムにマンチェサウンドを楽しんでいた層はもちろん、oasisやblurが好きだった私の同世代、さらにはもっと若いロックファンまで、おすすめのコンピレーションです。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Random Access Memories (Drumless Edition)/Daft Punk

2013年にリリースし、各所で高い評価を受けた、Daft Punkのラストアルバム「Random Access Memories」。先日、同作の10周年記念盤がリリースされましたが、こちらは異色作。本作からドラムパートを抜いたドラムレスバージョンだそうです。正直、いままであまり行われなかった試みのような感じがするのですが・・・。原曲に比べると、やはりリズムパートを抜いただけに、メロディーラインがより際立った感じのあるアレンジに仕上がっています。ただ一方ではリズムパートを抜いたところで全体としての印象はあまり大きく変わらなかったかも、という感じも。興味深い試みですが、どちらかというとファンズアイテム的な1枚かもしれません。

評価:★★★★

DAFT PUNK 過去の作品
TRON:Legacy
RANDOM ACCESS MEMORIES
Random Access Memories (10th Anniversary Edition)

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2023年12月23日 (土)

AIを使った挑戦的な作品も

Title:クロスロード
Musician:UNICORN

メンバー全員、アラ還に近づきながらも積極的な活動を続けるUNICORN。特に再結成後は、自由度の高い音楽性のアルバムが魅力的で、そんな「おじさんの遊び心」は年を取れば取りほど顕著になっている感はあります。今回、約2年ぶりとなるニューアルバムとなりますが、いつに増して好き勝手に音楽で遊んだような、肩の力の抜けた自由度の増したアルバムに仕上がっていました。

今回のアルバムもまた、メンバー全員がほぼ平等に作詞作曲を担当し、それぞれボーカルを担当しているのですが、それぞれが好き勝手にいろいろなジャンルの音楽に手をつけている作風となっています。レトロなアメリカンポップのタイトルチューン「クロスロード」からスタートし、オールドスタイルのロックンロールチューン「米米夢」に、スカパンク風の「オカゲサマ」、最後を締めくくるのは、全員でコーラスに参加して、メンバー全員の仲の良さも感じさせる「100年ぶる~す」で締めくくり。最後まで自由度の高い楽しいポップスが詰め込まれた作品となっています。

ただ、彼ら、さらにすごいのが、メンバーそれぞれ好き勝手に音楽を楽しんだアルバムでありながらも、彼らなりの「挑戦」を行っている点。今回、このアルバムリリースに先駆けて、過去のUNICORNの楽曲のオマージュ曲を、AIボーカルによって歌わせるEP盤を配信限定でリリースしています。

Title:ええ愛のメモリ
Musician:UNICORN

Eeai

「Maybe Blue」のオマージュ「ネイビーオレンジ」からスタートし、「WAO!」そのままの「OAW!」まで、どこかで聴いたことあるような曲が並んでいます。それがAIによって歌われている訳ですが、「かつての若い頃」をイメージしたボーカルスタイルとなっており、その点でも、「昔聴いたことあるような、ないような・・・」といった不思議な感覚を受けるユニークなアルバムになっていました。

ある意味、このAIによる技術にしても、賛否があって、抵抗感を覚えるようなミュージシャンもいる中、むしろ積極的に活用し、かつ、大上段に構えるでもなく、その技術を楽しむようなスタイルは、いかにも彼ららしさを感じます。ちなみに、AIではなく、「今のボーカル」によって歌われたバージョンはアルバム「クロスロード」に収録。両者の聴き比べも楽しいでしょう。ちなみに、奥田民生が一番違いがあったように感じます。粋がっていて、いかにも「ロック」然としてかつてのスタイルと、渋みのある脱力スタイルの今のボーカルはかなり雰囲気が異なりました。

年を取ってもなお、今の技術を抵抗感なく受け入れ、全力で楽しむスタイルと、一方で年齢を経たからこそ感じる「余裕」さを併せ持った、UNICORNの魅力あふれるアルバム。前作「ツイス島&シャウ島」はロックンロールという一本の軸があり、統一感のあるアルバムでしたが、今回は自由度が増しただけにアルバム全体はバラバラといった印象はありますが、それはそれで彼ららしい大きな魅力になっていました。さすがの「貫禄」すら感じさせる傑作アルバム。彼らにしか出来ない1枚だと言えるでしょう。

評価:どちらも★★★★★

ユニコーン 過去の作品
シャンブル
I LOVE UNICORN~FAN BEST
URMX
Z
ZII
Quarter Century Single Best
Quarter Century Live Best

イーガジャケジョロ
ゅ13-14
半世紀No.5
D3P.LIVE CD
UC100V
UC100W
ツイス島&シャウ島

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2023年12月22日 (金)

笠置シヅ子の魅力について入門書としてもピッタリの1冊

今回は、最近読んだ音楽関連の書籍の紹介です。

現在、NHKの朝ドラで絶賛放送中の「ブギウギ」。笠置シヅ子をモデルとしたドラマということもあり、本屋に足を運ぶと、このドラマに便乗した笠置シヅ子関連の書籍が多く販売されています。以前、近代音楽史研究家、輪島裕介による笠置シヅ子の評伝「昭和ブギウギ 笠置シヅ子と服部良一のリズム音曲」を紹介しましたが、今回紹介するのもまた、笠置シヅ子の評伝。娯楽映画研究家、佐藤利明による評伝「笠置シヅ子 ブギウギ伝説」。先月、本書販売を記念したトークイベントに参加してきましたが、遅ればせながら、そのトークイベントの元ネタとなる本書も読んでみました。

まず本書で目立つのが、非常に字が大きいという点(笑)。この点はトークイベントでも「ネタ」となっていましたが、本書を読むような世代に合わせた作りということでしょうか。私もそろそろ老眼が・・・という歳になってしまっているのですが、いくらなんでも字が大きいなぁ、と思ってしまいます。もっとも、中身がスカスカか、と言えばそうではなく、しっかりと笠置シヅ子の歩んだ道のりについて詳しく記載されており、ちゃんとボリュームのある、読み応えのある内容になっていたとは思いますが。

さて、そのドラマの「便乗本」をいろいろと見ていると、「便乗本」というネガティブな表現になるのですが、それでもそれぞれ、様々な切り口で笠置シヅ子について語られています。ムック本的な本では、比較的、彼女の身に起こった「出来事」を羅列しているだけ、というケースが多いのですが、先日取り上げた輪島裕介氏の書籍に関しては、服部良一の音楽性の側面をより注目し、分析した内容となっていましたが、本書についても、笠置シヅ子の生涯について語りつつも、音楽的側面、特にリズムの魅力について、より深く語った記載が目立ちました。

そういう意味ではより「音楽的」な記述が目立った内容。さらにもっと言えば、輪島氏の本に比べると、映画や映像作品においての笠置シヅ子のパフォーマンスに焦点をあてた記載が目立ちます。もともと著者は前述の通り、「娯楽映画研究家」を名乗る通り、音楽以上に映画が専門分野のようですが、やはり映像作品によりスポットが当たっているという点は、こちらが彼のホームグラウンドだから、ということなのでしょう。

ただ一方、音楽にしろ映像にしろ、それを文章という形にまとめあげなければならない点、かなり苦労の跡が見受けられました。先日のトークイベントでは、本書に記載されている映像を、実際、その場で見ることが出来たのですが、それを見た上で本書を読むと、著者が訴えたかったことが、やはりすべて表現されているかと言われると難しいところ。ここらへん、本書の記述のいろいろなところから「映像を見てほしい!」という著者の訴えも伝わってくるようでした。

また、音楽的な詳細な分析については、正直なところ、輪島氏の著書に軍配が上がる印象を受けます。しかし、輪島氏の著書は、そんな音楽的な分析と笠置シヅ子の評伝を両立させようとした結果、若干、焦点がぼやけてしまった印象もあるのですが、本書に関しては、あくまでも笠置シヅ子の評伝を主題として構成されているため、笠置シヅ子の評伝としてぼやけず楽しむことが出来る内容となっていました。なにより、ドラマ「ブギウギ」を見て、笠置シヅ子が実際にどんな人だったんだろう、と気になったような初心者にとっても、手を取って楽しめる内容になっていたと思いますし、そんな初心者が、笠置シヅ子と服部良一の音楽的なすごさを理解するにはピッタリの構成になっていたとも思います。そういう意味では、入門書として非常に優れた1冊だったと思います。

先日のトークイベントを聴いた後で本書を読んだため、概ね、先日のイベントで語られていたことが書かれていました。ただ、トークイベントの「復習」として楽しめた1冊。トークイベントの当日、拝見した映像を思い出しつつ、笠置シヅ子のすごさ、魅力についてあらためて感じることの出来た1冊でした。

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2023年12月21日 (木)

比較的、非アイドル系も目立つチャートに

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

すっかり「アイドルグッズの売上ランキング」となっているHot Albumsですが、その中でも今週は比較的、非アイドル系も目立つチャートとなりました。

まず1位はアイドル系。Kinki Kids「P Album」が獲得。CD販売数1位。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上18万9千枚で1位初登場。前作「O Album」の初動13万6千枚(1位)よりアップしています。

そして2位は「唱」が大ヒット中のAdo「Adoの歌ってみたアルバム」がランクイン。タイトル通りのカバーアルバムなのですが、「飾りじゃないのよ涙は」が選曲されている一方、同じ並びでボカロ曲がカバーされている構成がユニーク。CD販売数2位、ダウンロード数1位。オリコンでは初動売上7万枚で2位初登場。前作「ウタの歌 ONE PIECE FILM RED」の初動10万4千枚(2位)からはダウンしています。

3位にはKing Gnu「THE GREATEST UNKNOWN」が先週の5位からランクアップ。2週ぶりのベスト3返り咲きとなっています。

続いて4位以下の初登場盤です。まず4位にMidnight Grand Orchestra「Starpeggio」がランクイン。バーチャルYouTuber星街すいせいと作曲家のTAKU INOUEによるプロジェクトによるデビューアルバム。CD販売数4位、ダウンロード数3位。オリコンでは初動売上1万4千枚で4位に初登場しています。

5位には俳優で、シンガーソングライターとしても活動している松下洸平「R&ME」がランクイン。CD販売数3位、ダウンロード数10位。オリコンでは初動売上1万2千枚で6位初登場。前作「POINT TO POINT」の初動1万1千枚(4位)から微増。

6位にはいきものがかり「〇」が初登場。メンバーの山下穂尊脱退後、2人組になって初となるオリジナルアルバム。CD販売数7位、ダウンロード数6位。オリコンでは初動売上1万3千枚で5位初登場。前作「WHO?」の初動1万9千枚(4位)からダウン。3作前の「FUN! FUN! FANAFARE!」は初動10万を超えていましたので、それを考えると、かなり寂しい結果となってしまっています・・・。

7位初登場はJun.K(From 2PM)「THE BEST」。韓国のアイドルグループ2PMのメンバーJun.Kによるベストアルバム。CD販売数6位、ダウンロード数25位。オリコンでは初動売上1万1千枚で7位初登場。前作「THIS IS NOT A SONG」の初動8千枚(7位)よりアップしています。

8位には刀剣男士 formation of 江 おん すていじ「VIVA CARNIVAL」がランクイン。ゲーム「刀剣乱舞」を元としたミュージカルで使用された曲をまとめた配信限定のミニアルバム。ダウンロード数で2位にランクインし、総合順位でもベスト10入りとなりました。

最後、9位には今年の紅白出場も決定し、注目を集めているano「猫猫吐吐」がランクイン。彼女は、あのという名前で元々アイドルグループゆるめるモ!でデビューし、2019年に脱退。2020年からano名義でミュージシャンの活動を行っており、昨年、配信リリースした「ちゅ、多様性。」がTikiTokを中心にスマッシュヒットを記録。知名度も一気にあがり、今年の紅白出演につながったようです。本作はそんな彼女のデビュー作。CD販売数9位、ダウンロード数8位。オリコンでは初動売上7千枚で9位に初登場しています。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2023年12月20日 (水)

Ado vs YOASOBI 再び

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週は強力な新譜がないこともあり、再びAdoとYOASOBIが上位にランクインしてきました。

Ado_show

まず1位にはAdo「唱」が1位返り咲き。ストリーミング数は13週連続、YouTube再生回数は11週連続の1位。ただし、ダウンロード数は2位から3位に再びダウン。これで15週連続のベスト10ヒット&14週連続のベスト3ヒット&通算11週目の1位獲得となっています。

そして2位にはYOASOBI「アイドル」が先週の4位からランクアップし、2週ぶりのベスト3返り咲き。ストリーミング数は3週連続の3位、YouTube再生回数は3位から2位にアップ。ダウンロード数は先週から変わらず11位。これで36週連続のベスト10ヒット&通算33週目のベスト3ヒットとなっています。また今週「勇者」も6位から5位にアップ。YouTube再生回数は4位を維持したものの、ダウンロード数は4位から、ストリーミング数は5位から、それぞれ6位にダウン。ただし今週、CDがリリースされ、CD販売数が9位にランクイン。総合順位は先週からアップとなっています。これで12週連続のベスト10ヒット。ちなみにオリコン週間シングルランキングでも初動売上1万4千枚で7位初登場。前作「アイドル」の初動4万9千枚(2位)よりダウンしています。

3位は初登場。元ジャニーズ系アイドルグループSexy Zone「人生遊戯」がランクイン。日テレ系ドラマ「ゼイチョー〜『払えない』にはワケがある〜」主題歌。CD販売数1位、ラジオオンエア数73位、YouTube再生回数31位。オリコンでは初動売上19万6千枚で1位初登場。前作「本音と建前」の初動22万6千枚(1位)よりダウンしています。

続いて4位以下の初登場曲ですが、まず7位にハロプロ系女性アイドルグループアンジュルム「RED LINE」が初登場。CD販売数2位、ダウンロード数13位。オリコンでは初動売上4万3千枚で2位初登場。前作「アイノケダモノ」の初動4万4千枚(2位)から微減となっています。

8位にはBUMP OF CHICKEN「Sleep Walking Orchestra」が初登場。テレビアニメ「ダンジョン飯」主題歌。ダウンロード数及びラジオオンエア数で1位を獲得していますが、その他のチャートが圏外となっているため、総合順位はこの位置に。

続いて今週のロングヒット曲ですが、まずKing Gnu「SPECIALZ」。今週は3位から5位にダウン。ただ、ストリーミング数は3週連続の3位をキープしているほか、ダウンロード数は先週と変わらず8位をキープ。YouTube再生回数も5位から3位にアップしています。これでベスト10ヒットは16週連続となりました。

さらにVaundy「怪獣の花唄」は今週7位から9位にダウン。カラオケ歌唱回数は8週連続、通算20週目の1位獲得。ストリーミング数も4週連続の7位。これで通算49週目のベスト10ヒットとなります。

ちなみに先週までロングヒットを続けていたシャイトープ「ランデヴー」は今週14位にダウン。ベスト10は通算11週でストップとなりました。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2023年12月19日 (火)

SHISHAMOの魅力がより鮮明に

Title:ACOUSTIC SHISHAMO
Musician:SHISHAMO

先日紹介したヤバイTシャツ屋さんも、10周年記念のベスト盤をリリースしていましたが、こちらもCDデビューから10周年目を迎えるバンド、SHISHAMO。ご存じ、スリーピースのガールズバンドで、ポストチャットモンチー的な立ち位置で出てきたガールズバンドの中でも、サウンド的にはロックな方向性が強く、なおかつメロディーラインはポップという、ある意味、チャットモンチーの後釜の最右翼的バンドという印象を受けているバンドです。

そんな彼女たちが10周年を記念してリリースするのは、ベスト盤、ではなく、自分たちの代表曲をアコースティックアレンジにカバーした、アコースティックアルバム。ベスト盤は2019年にリリースしたばかり、という影響もあるのでしょう。ただ、率直にいうと、最初、かなり地味な印象も受けた企画になっていました。ただ、ここでわざわざ大枠で取り上げらたことからもわかる通り、これが予想外の傑作アルバムに仕上がっていました。

まずアコースティックアレンジを施すことによって楽曲の印象がかなり異なります。もともとバンドサウンドによるアレンジの段階でも比較的シンプルなアレンジの多い彼女たちですが、アコースティックアレンジにより、その印象も大きく変化します。聴いていてロックバンドというよりも、「アコギ女子」みたいな名前の与えられそうな、アコギを抱えて弾き語る、女性シンガーソングライターの曲を聴いているような印象を受けます。

逆に、それだけ彼女たちの曲が、アコースティックアレンジとマッチしていた、ということも言えるかもしれません。彼女たちの書くメロディーはシンプルでなおかつメロディアス。いわばロック系によくありがちな、リズムやバンドサウンドの勢いに頼ることなく、しっかりとメロディーを聴かせる曲ばかり。歌詞についても同様。シンプルなラブソングが多いのですが、女の子の感情を素直に吐露した、聴いていてキュンとなるようなラブソングが多く、アコースティックアレンジにもピッタリとマッチしています。

そしてアコースティックアレンジにしてあらためて感じるのは、メロディーにしろ歌詞にしろ非常に優れたバンドなんだな、ということをあらためて感じました。バンドサウンドにすると、どうしてもサウンドの方が目立ってしまってしまうのですが、アコースティックアレンジでは、このメロと歌詞の良さが、よりはっきりと前に出てきた結果、SHISHAMOの持つ、メロディーと歌詞の良さがより際立ったアルバムになっていました。

SHISHAMOの持つ魅力、特にそのメロディーラインと歌詞の魅力をより伝わる傑作アルバムになっていたと思います。アコースティックアレンジが、これほどSHISHAMOにピッタリくるとは思いませんでした。普段のSHISHAMOにさほどピンと来なくても、このアルバムで彼女たちの実力を感じることが出来るかもしれません。彼女たちがどんなバンドを知るためにも最適な1枚でした。

評価:★★★★★

SHISHAMO 過去の作品
SHISHAMO 3
SHISHAMO 4
SHISHAMO 5
SHISHAMO BEST
SHISHAMO 6
SHISHAMO 7
ブーツを鳴らして-EP
恋を知っているすべてのあなたへ


ほかに聴いたアルバム

聖なる交差点/神聖かまってちゃん

こちらは結成15周年。神聖かまってちゃんの2枚目となるベストアルバム。2015年にベストアルバム「ベストかまってちゃん」をリリースしており、それ以来のベストアルバムとなるため、比較的、最近の曲が多く収録されています。ちょっとゴチャゴチャした感のある、シンセも取り入れたサウンドや、エフェクトを使って、あえてハイトーンとしているの子のボーカルなど、癖のある点が強いバンドなのですが、よくよくメロディーや歌詞を聴くと、実は非常に優れたメロや歌詞を書けるバンドということはよくわかります。今回、「フロントメモリー」でずっと真夜中でいいのに。のACAね、「僕は頑張るよっ」ではanoをボーカルとして起用。の子のハイトーンボイスを女性ボーカルに入れ替えることにより、いい意味でのわかりやすさが増した感じがします。全体的にはエキセントリックな方向性ばかりが目立ってしまっている点がマイナスなのですが、まだまだこれからへの期待も感じさせるベストアルバムでした。

評価:★★★★

神聖かまってちゃん 過去の作品
友だちを殺してまで。
つまんね
みんな死ね

8月32日へ
楽しいね
英雄syndrome
ベストかまってちゃん
夏.インストール
幼さを入院させて
ツン×デレ
児童カルテ

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2023年12月18日 (月)

あえてCDで出す

Title:BEST of the Tank-top
Musician:ヤバイTシャツ屋さん

ロックバンド、ヤバイTシャツ屋さんが、結成10周年を記念してリリースした初となるベストアルバム。彼らの代表曲19曲に、このベスト盤リリースに合わせて作られた、そのものズバリ「BEST」、さらには未発表曲や別バージョンの曲などが収録されたボーナストラックがついて、全27曲入りというフルボリュームでのアルバムとなっています。

ヤバTの印象としては、私のような、そろそろアラフィフに手が届くような世代からすると、「感覚が非常に若いバンドだな」という印象を受けています。コミカルな歌詞が大きな特徴なのですが、そのノリが非常に軽い。代表曲である「ハッピーウェディング前ソング」「ノリで入籍してみたらええやん」という、ある種の「キラーフレーズ」をはじめ、とにかく明るくインパクトあるサビをつくって、それについて歌っただけの「鬼POP激キャッチー最強ハイパーウルトラミュージック」、無線LANの便利さについて歌っただけの「無線LANばり便利」、肩幅と「肩 have a」の語感を合わせただけの「肩 have a good day」など、歌詞の意味よりも、その場の楽しさを追及したような楽曲が並んでいます。

ある意味、徹底的に「深い意味の歌詞」や「熱いラブソング」を排除する「軽いノリ」には、ちょっと偏見が入るのかもしれませんが、おじさん世代から見ると、いかにも「若い世代」と感じてしまいます。もっともメンバー、既にアラサーで、決して非常に若いバンド、という訳ではないのですが・・・。ただ一方で、ある種の「雑音」的な部分を徹底的に排除して、楽曲自体の楽しさや曲を聴くことの気持ちよさを追及する姿勢には、一周回って彼らなりのこだわりを感じさせますし、ちょっとふざけたような企画やらパフォーマンスやらを含めて、彼らなりのある種の「信念」も感じられます。

いかにもな「若いバンド」なスタンスを感じさせる一方で、逆に、自分たちと同じような感覚を覚えたのが、今回、あえてベストアルバムを出した彼らのスタンス。そのスタンスが、そのまま新曲「BEST」で歌われているのですが、サブスク全盛期で、プレイリストでも事足りるのに(事務所も乗り気じゃないのに)あえて「形に残す」ためにベストアルバムをリリースする、という彼らのスタンスがそのまま語られています。ここらへんは、CDというフィジカルアイテムを聴き続けてきた、私くらいの世代に非常によくわかる感覚。なんだかんだいっても30歳前後のメンバーも、CDというアイテムになじみのある最後の世代なのでしょう。ここらへんは逆に「若いバンド」らしからぬこだわりに、おじさんとしてはうれしくもなってきます。

ハードコアやパンク、ギターロックに、曲によってはスカやらソウルやらも取り入れている、難しいこと抜きにとにかくリスナーを楽しませよう、それ以上に自分たちも楽しもうというスタイルのポップな楽曲もとにかく楽しく、80分近いフルボリュームのアルバムながらも、一気に楽しめる作品でした。今どきの若者、といっても、そろそろ「若い」世代ではなくなってきている彼ら。このベスト盤がそんな彼らにとってのひとつの区切りになりそう。これからの彼らの活躍にも注目したい、そう感じさせるベストアルバムでした。

評価:★★★★★

ヤバイTシャツ屋さん 過去の作品
We love Tank-top
Galaxy of the Tank-top
Tank-top Festival in JAPAN
You need the Tank-top
Tank-top Flower for Friends


ほかに聴いたアルバム

The Goldmine/GLIM SPANKY

前作から約1年3ヶ月ぶりとなるGLIM SPANKYのニューアルバム。前作「Into The Time Hole」ではルーツロックやブルースロックの強い影響を受けつつ、一方、歌謡曲的な雰囲気を感じさせるメランコリックな要素も大きな特徴でしたが、今回のアルバムに関しては、いわばこの方向をさらに推し進めたもの。特に、この「歌謡曲的な哀愁メロ」という方向については、薄めることなく逆に推し進めた結果、ルーツロックやブルースロックとの見事融合を果たし、GLIM SPANKY独自のサウンドを形成しています。個人的には、これが彼女たちのひとつの到達点とすら感じられた、そんなアルバムでした。

評価:★★★★★

GLIM SPANKY 過去の作品
ワイルド・サイドを行け
Next One
I STAND ALONE
BIZARRE CARNIVAL
LOOKING FOR THE MAGIC
Walking On Fire
Into The Time Hole

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2023年12月17日 (日)

「教養としての・・・」というよりも・・・

今日は最近読んだ、音楽関連の書籍の紹介です。

当サイトでも著作を何度か紹介したことのある音楽評論家川﨑大助氏による最新作「教養としてのパンク・ロック」。以前から「日本のロック名盤ベスト100」「教養としてのロック名盤ベスト100」「教養としてのロック名曲ベスト100」を紹介してきましたが、そのシリーズの最新作ということになります。

まずはタイトルにかなり違和感のある1冊だと思います。そもそも「パンク・ロック」というジャンルを教養で聴くという観点自体に強烈な違和感を覚える方は少なくないのではないでしょうか。それでなくとも昨今、巷にあふれる「教養としての~」というタイトルで発売される、800円程度の新書本に対して疑問を感じる方は少なくないのではないでしょうか。そんな安上がりな「教養」に対する批判的な見解として「ファスト教養」なるタイトルの新書本も話題になりましたが、まさに本作は、そんな「ファスト教養」的なイメージも持たれかねない1冊である点は否定できないでしょう。

実際、著書もこの批判を気にかけているようで、序章においてそんな批判に対しての反論を載せています。ただ、その反論に関してあえて言えば、彼が述べているのは、この著書に関しては「教養としてのパンク・ロック」(=一般教養を得るために聴くべきパンクロック)ではなく、「パンク・ロックを聴くための教養」。そういう意味では、ポピュラーミュージックの知識が全くない人が、手っ取り早くパンクを知るための入門書、とはちょっと異なる方向性に感じます。

事実、本書で述べられているのは、そのようにパンク・ロックを聴く時に知るべき時代背景という点がメイン。特に第3章から第4章にかけてはパンク・ロックがアメリカやイギリスでなぜ生まれ、そして人気を博していったのか、詳しくその背景を説明しています。セックス・ピストルズがどのように登場し、どのように暴れ回って世間の顰蹙を買ったのか、というのは、「ロックの入門書」的な本でよく紹介されているのですが、本書ではそれに加えて、この時期に関してのイギリスやアメリカの経済的状況や社会的状況について詳しく解説されており、パンク・ロックのような音楽がなぜ登場してきたのか、そして世間はどのように見ていたのか、その背景について非常に勉強になる1冊だったと思います。

また、以前の川﨑大助氏の著書では、彼のロック史観がかなり炸裂していました。彼のロック史観というのは独自の、というよりも、最近ではすたれてきてしまっている、ロックと日本独自の歌謡曲を対立軸におき、前者を肯定し、後者を否定するような考え方。この点は第5章の日本におけるパンク・ロックの受容史において特に彼のロック史観が炸裂しています。この5章も、日本においてパンク・ロックがどのように捉えられてきたのか、非常に興味深い考察が行われているのですが、歌謡曲に対しては「外来文化をすべて飲み込み『土着化』させては権威に帰順させようとする」存在のロックの仮想敵として、かなり厳しく糾弾しています。確かに、20年くらい前までは、洋楽を好んで聴くようなリスナー層に関して、歌謡曲に対してこのような見方が一般的だったように思います。そういう意味では、彼の考え方は、今の時代は若干「時代遅れ」という印象を抱く人は少なくないかもしれません。ただ個人的には、歌謡曲に対しても一定の評価を下しつつも、歌謡曲は日本における一種の「権威」という見方もまた、日本のポピュラーミュージックを考えた時に、頭の中に入れておくべき見方なのかな、という印象も受けます。

「ファスト教養」的なタイトルと裏腹に、新書本としてはかなりボリュームのある、濃い内容の1冊だったと思います。パンク・ロックを聴く人が、ここにある知識を入手すべきだ、とは思いませんが、やはりパンク・ロックを深く知るためには欠かすことのできない知識を紹介してくれる1冊だと思います。ただ逆に、純粋な入門書としては、本当に「入門」的な知識は省略されているので、ピストルズもザ・クラッシュもアルバムを聴いたことがない、ダムドに至っては名前すら知らない・・・というような「本当の初心者」にとっては、最初の1冊としてはあまりお勧めできないかもしれません。名盤リストもあるのですが、タイトルとジャケット写真が載っているだけで、内容の紹介はほとんどありませんし。そういう意味ではタイトルと内容がちょっと齟齬のある1冊だったとは思いますが、パンク・ロックをより深く知りたい人にとってはお勧めの1冊です。非常に勉強になりました。

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2023年12月16日 (土)

6年半のシングルが収録!

Title:ラブ&ピース!マスターピース!
Musician:サンボマスター

今年に入り、以前リリースしたベスト盤を拡張した「“超”究極ベスト全員優勝Edition」をリリースしたり、EP盤である「はじまっていく たかまっていく E.P.」のリリースはあったりしたものの、オリジナルアルバムとしては「YES」以来、実に約6年半ぶりとなるサンボマスターのオリジナルアルバムとなります。

前作からかなりスパンがあったものの、その間、決して彼らの活動がストップしていた訳ではありません。むしろこの6年半の間も積極的に活動を続けており、EP盤1枚にシングル2枚、さらに配信シングル4枚をリリースしており、シングルのリリースで言えば積極的な活動が目立ったように思います。

またバンドとしてもここ最近、比較的脂ののった活動が続いており、個人的には前々作「サンボマスターとキミ」はバンドの最高傑作とも言えるほどの充実作でしたし、前作「YES」も同じく傑作アルバムに仕上がっていました。今回のアルバムに関しても、特にバンドサウンドについては、前々作、前作同様、ロックバンドとしての初期衝動をダイレクトに感じさせる作品が目立ちました。「忘れないで 忘れないで」などはかなり力強いバンドサウンドが魅力的。また、今回YouTubeチャンネル「THE FIRST TAKE」で録音したバージョンの「できっこないを やらなくちゃ」「Future Is Yours」も収録されているのですが、こちらもサンボマスターのバンドとしての実力を感じさせるパワフルなパフォーマンスが収録されています。

一方、そんなロックバンドの初期衝動を感じさせる曲のみならず、「はじまっていく たかまっていく」「その景色を」ではHIP HOP的な要素を取り入れていたり、「花束」ではモータウンビートを取り入れていたり、様々な音楽性を取り入れているあたり、バンドとしての「偏差値の高さ」も垣間見れる作品ともなっていました。

そして今回のアルバムのもうひとつ大きな特徴はシングル曲の多さ。前述の通り、前作「YES」以降、多くのシングルをリリースしてきましたが、本作ではそのすべてを収録。結果、このアルバムでの新曲は、先行配信曲の「笑っておくれ」「その景色を」の2曲のみ。さらにTHE FIRST TAKEからの曲、2曲を除き、全曲にタイアップがつくという内容に。さらに今回、2010年にリリースした「できっこないを やらなくちゃ」の再録音も収録されており、シングル曲が並ぶという、ある種のベスト盤的な内容となっていました。

ただ、そのシングル曲に関して、メロディーラインやバンドサウンドが比較的ポップ寄りとなってしまっています。いや、ポップ寄りといっても、サウンドに関しては前述の通り、バンドとしての初期衝動をしっかりと押し出しており、むしろタイアップがついたシングルで、これだけしっかり「ロック」しているという点、感心してしまいます。

しかし一方、かなり気になってしまったのがその歌詞。もともと彼らは前向き応援歌的な歌詞が目立つバンドなのですが、特にシングル曲に関してはその傾向が顕著。今回、その点を差し引いても、さすがにこれだけ前向き応援歌な歌詞が並ぶと、ちょっと歌詞が陳腐すぎないか?と気になってしまいました。

サンボマスターの歌詞は、いい意味での熱さがあって、かつストレート。それが良い方向に作用する場合もあるのですが、前向き応援歌的な作品になると、あまりにストレートな歌詞が悪い意味でのチープさを感じてしまいます。アルバムの中の1、2曲程度ならば気にならないのですが、さすがに今回、シングル曲が並んでかなりの割合、そのような前向き応援歌的な歌詞となってしまっていると、聴いていて、はっきり言うと「うんざり」してしまいました。

さすがシングルをすべて収録せずに、もうちょっとアルバムのみの曲の割合を増やした方がよかったんじゃないかなぁ。バンドとしての勢いはあるだけに、ちょっと残念。それとも、シングルはこういう形でリリースし、近いうちにもう1枚アルバムをリリースするとか?バンドサウンドにカッコよさを感じる反面、チープな歌詞が気になってしまったアルバムでした。

評価:★★★★

サンボマスター 過去の作品
音楽の子供はみな歌う
きみのためにつよくなりたい
サンボマスター究極ベスト
ロックンロール イズ ノット デッド
終わらないミラクルの予感アルバム
サンボマスターとキミ
YES
はじまっていく たかまっていく E.P.
"超"究極ベスト-全員優勝Edition-

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2023年12月15日 (金)

全盛期oasisの充実ぶりを物語る名盤

Title:The Masterplan - 25th Anniversary Remastered Edition
Musician:oasis

2014年から2016年にかけて、「チェンジング・ザ・サン」プロジェクトと題して、デビュー作「Definitely Maybe」から3rdアルバム「Be Here Now」までの3作の再発・リマスターが行われてきたoasis。今後は徐々に「Standing on the Shoulder of Giants」以降の作品もリマスターされていくのかなぁ・・・と漠然と考えていたのですが、このアルバムを忘れてはいけない!とばかりに、1998年にリリースされた、彼らのシングルのカップリング曲を集めた、いわゆるB面ベストである「The Masterplan」の25周年記念盤がリリースされました。

本作がリリースされた90年代中盤の音楽シーンを、リアルタイムで体験された方ならわかると思うのですが、この時期のoasisの人気はすさまじいものがありました。特に1995年にリリースされた「 (What's the Story) Morning Glory?」の頃の人気はすさまじく、同作は全世界で2500万枚という驚異的なヒットを記録しています。同作は、どの曲もシングルカットできそうなくらいの捨て曲のない充実した内容であり、この時期のoasisの勢いを、内容の面からも感じさせるアルバムになっていると思います。

ただ、もしoasisが1990年代に、いかに脂がのりまくっていて勢いがあったかを知るか知りたい、と言われたら、間違いなくこの「The Masterplan」を勧めるでしょう。

このアルバムは、前述の通り、この時期のシングル曲のカップリングを収録したB面ベスト。通常、シングルのカップリングと言えば、一番目立たない存在であり、ある意味、穴埋め的な曲が多く、もしくは目立たないからこそ、アルバムに収録すると違和感の出るような挑戦的な曲が多い、という印象があります。

しかし、このアルバム、どの曲もシングルカットしても不思議ではないような、インパクトのある楽曲が並んでいます。特に1曲目はいきなり「Acquiesce」からスタート。oasisの代表曲の1曲といっても過言ではない曲で、ノエル、リアム兄弟が2人でボーカルを交互に取っているのが印象的な楽曲。そういえば、この曲ってカップリングだったっけ・・・といまさらながら驚いてしまいます。

続く「Underneath the Sky」もメランコリックなメロディーラインが胸をつく名曲。これと「Don't Look Back In Anger」がカップリングとは・・・どれだけこの時期のノエルのメロディーメイキングは冴えまくっていたんだ、と驚かされます。

その後も疾走感あるギターロック「Fade Away」も、これシングルじゃなかったっけ??って驚かされる、彼らの代表曲の1曲とも言える作品ですし、「Half the World Away」もベスト盤にも収録されている代表曲の1つ。こちらもメランコリックなメロに胸がキュンとなりそうなナンバー。ラストを飾るタイトルチューンともなっている「The Masterplan」も、oasisらしいストリングスやホーンを入れてメランコリックに聴かせる美メロがさく裂している楽曲。こちらもベスト盤に収録されており、彼らの代表曲のひとつと言えます。

カップリング曲集なのに、なんでここまで彼らの代表曲になるような曲が並んでいるのか!とこれだけでも驚かされるのですが、その他にもストリングスが入って、ちょっと優雅にメロディアスに聴かせる「Going Nowhere」やoasisらしい力強いギターサウンドとメランコリックなメロがインパクトある「Listen Up」、爽やかで軽快なギターロックが楽しい「Stay Young」など名曲揃い。下手なオリジナルアルバムに負けない・・・どころか個人的には内容の充実さでは、oasisのアルバムの中でも「 (What's the Story) Morning Glory?」「Definitely Maybe」に次ぐ出来栄えではないか、と感じさせる名盤に仕上がっています。

ちなみに後に、oasisが全盛期ほどの名盤を出せなくなってしまった頃、「あの頃にいい曲を惜しげもなく出しすぎた。取っておけばよかった。」みたいなことをノエルがぼやいていたことを記憶しています。ただ、おそらくあの頃のノエルは、これだけのメロディーが、湯水のごとく、次から次へと浮かんできたのでしょうね。それだけの充実ぶりを感じさせますし、そのころのoasisのものすごさを垣間見れるアルバムとなっています。

ただ、ちょっと残念なのは25周年記念盤ということですが、オリジナル盤をリマスターしただけで、追加のボーナストラックなどは収録されていません。また、日本盤のリリースもなく、輸入盤のみのリリースとなっています。せっかくなので、その当時のライブ音源や、これらの曲のデモ音源、あるはカップリング曲ながらも同作未収録になっている曲などを追加してほしかったのですが・・・。その点は残念なのですが、oasisを語る上で、避けては通れない名盤なのは間違いありません。全ロックリスナー、必聴の1枚です。

評価:★★★★★

oasis 過去の作品
DIG OUT YOUR SOUL
Time Flies 1994-2009
Original 1993 Demos
Definitely Maybe (Remastered) (Deluxe)
(WHAT'S THE STORY)MORNING GLORY?(Remasterd)(Deluxe)
BE HERE NOW(Deluxe)
KNEBWORTH 1996


ほかに聴いたアルバム

RUSH!(ARE U COMING?)/Måneskin

今年1月にリリースされたアルバム「RUSH!」に新曲5曲を加えたリメイク版。最初5曲がこのアルバムの新曲になるのですが、力強いサウンドとメランコリックなメロディーラインというスタイルは他の曲と同様。基本的にそのスタイルに大きな変化はありません。これぞロック!といった感じの力強いギターとリズミカルなビートはとても心地よいのですが、新装版となって22曲1時間7分。このタイプの楽曲なら、もうちょっとすっきりとした短さの方がよかったかも。

評価:★★★★

Måneskin 過去の作品
Teatro d'ira - Vol.1
RUSH!

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2023年12月14日 (木)

再びアイドル系ばかりのチャートに・・・

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週はまた、Hot Albumsは「アイドルグッズの売上ランキング」になってしまっています・・・

まず1位は旧ジャニーズ系。Hey!Say!JUMP「PULL UP!」が初登場。CD販売数1位。オリコン週間アルバムランキングでも初動売上19万9千枚で1位初登場。前作「FILMUSIC!」の初動20万2千枚(1位)からダウンしています。

2位初登場はLDH系。FANTASTICS from EXILE TRIBE「FANTASTIC ROCKET」が初登場。CD販売数2位、ダウンロード数21位。オリコンでは初動売上10万6千枚で2位初登場。前作「FANTASTIC VOYAGE」の初動1万2千枚(8位)から大きくアップしています。

3位は韓国の男性アイドルグループATEEZ「THE WORLD EP.FIN : WILL」がランクイン。韓国盤2枚目となるフルアルバム。CD販売数3位。オリコンでは初動売上8万7千枚で3位初登場。直近作はミニアルバム「THE WORLD EP.2 : OUTLAW」で、同作の初動6万8千枚(1位)よりアップしています。

続いて4位以下の初登場盤です。まず6位にスターダストプロモーション所属の男性アイドルグループONE N' ONLYのミニアルバム「You are/Hook Up」がランクイン。CD販売数7位。オリコンでは初動売上2万9千枚で4位初登場。直近のフルアルバム「Departure」の初動1万4千枚(6位)よりアップしています。

7位は、こちらは韓国の男性アイドルグループCRAVITY「Dilly Dilly」がランクイン。CD販売数6位。初の日本盤で、5曲入りのEP。オリコンでは初動売上1万6千枚で8位初登場。直近作は韓国盤のミニアルバム「SUN SEEKER」で、同作の初動1千枚(38位)から大きくアップしています。

8位にはŹOOĻ「Źquare」が初登場でランクイン。CD販売数及びダウンロード数共に8位。スマホ向けゲーム「アイドリッシュセブン」に登場する架空のアイドルグループ。オリコンでは初動1万5千枚で9位初登場。前作「einsatZ」の初動1万7千枚(7位)から若干のダウン。

そして、ここでようやく非アイドル系が初登場。3人組ロックバンド羊文学「12 hugs (like butterflies)」が9位初登場。CD販売数10位、ダウンロード数3位。前作「our hope」がいきなりベスト10ヒットを記録して驚いたのですが、2作連続ベスト10ヒットとなり、人気を確固たるものとしています。オリコンでは初動売上6千枚で10位初登場。前作「our hope」の4千枚(5位)からアップしています。

初登場最後は韓国の女性アイドルグループRed Velvet「Chill Kill」が10位に初登場。CD販売数9位。オリコンでは輸入盤の発売日の関係か、11月27日付チャートで初動売上2千枚(25位)を記録。先週のチャートで5千枚を売り上げて最高位12位を記録し、今週のチャートでは圏外となっています。

さらに今週はベスト10返り咲きも。韓国の男性アイドルグループSocial Path (feat. LiSA)「Super Bowl -Japanese ver.-」が先週のベスト50圏外から一気に4位にランクアップ。5週ぶりのベスト10返り咲きとなっています。これはおそらく12月10日にパシフィコ横浜で行われたイベント会場での特典付き販売の売上が加味されたのではないかと思われます。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2023年12月13日 (水)

Adoはついに1位陥落

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

先週まで6週連続1位をキープしてきたAdo「唱」ですが、今週は2位にダウン。1位陥落となりました。

Adoに代わり1位を獲得したのが乃木坂46「Monopoly」。CD販売数で1位を獲得。ダウンロード数は9位、ラジオオンエア数9位、YouTube再生回数91位でしたが、総合順位では1位獲得となっています。オリコン週間シングルランキングでも初動売上53万8千枚で1位初登場。前作「おひとりさま天国」の初動56万6千枚(1位)からダウンしています。

一方、Ado「唱」は2位にダウン。とはいえ、ストリーミング数は12週連続、YouTube再生回数も10週連続の1位をキープ。ダウンロード数も3位から2位にアップしています。これで14週連続のベスト10ヒット&13週連続のベスト3ヒットとなりました。

今週3位は、King Gnu「SPECIALZ」が5位から2ランクアップ。これで、10週ぶり通算4週目のベスト3ヒットとなっています。ストリーミング数が先週から引き続き2位をキープしているほか、ダウンロード数が18位から8位、YouTube再生回数も6位から5位にアップしています。ベスト10ヒットはこれで15週連続となりました。

続いて4位以下のベスト10初登場曲ですが、まず8位にロックバンド緑黄色社会「花になって」が先週の14位からランクアップし、ランクイン6週目にしてベスト10初登場。日テレ系アニメ「薬屋のひとりごと」主題歌。今週、CDがリリースされ、7位にランクインし、ベスト10入りの要因となりました。そのほか、ダウンロード数3位、ストリーミング数18位、ラジオオンエア数10位、YouTube再生回数24位。オリコンでは初動売上6千枚で8位初登場。前作「サマータイムシンデレラ」の初動4千枚(17位)からアップしています。

そして、おそらく今週、チャートの中でもっとも要注目なのが先週の69位から9位に大きくアップし、ランクイン2週目にしてベスト10入りしたHIP HOPグループ舐達麻「FEEL OR BEEF BADPOP IS DEAD」。舐達麻は最近、高い評価を受け注目を受けているHIP HOPグループなのですが、この曲、来年2月に東京ドームライブでの解散が決定しているHIP HOPグループ、BAD HOPへのDis曲。HIP HOPでは、相手を貶す「ディス」という文化があるのですが、舐達麻とBAD HOPは以前からいざこざがあり、その流れから今回、舐達麻からBAD HOPへのDis曲を発表。大きな話題となり、ダウンロード数4位、ストリーミング数13位、YouTube再生回数4位を記録し、なんと、ベスト10ヒットを記録しました。

ちなみに今回のイザコザに関しては、こちらのサイトに経緯などの詳しい説明がありました。この、アメリカのHIP HOPで生じているディスという文化を日本に持ち込んでいる点は、賛否両論あり、もともとディスという文化がアメリカのブラックコミュニティーの歴史的背景があり、日本とは関係ない点や、またアメリカでもディスの応酬の結果、殺人事件にまで発展した事例もあり、ディス文化を無批判に日本に取り込むのに関しては個人的には否定的です。ただ、その前提はあっても、この曲、結構よく出来ているんですよね・・・。「ネットに愚痴る事情や苦情なら/仲間と今日曲を書こう」というフックでのリリックも、前向きですし。トラック含めて、ついつい聴き入ってしまいます。話題性もさることながら、曲自体がよく出来ている点もヒットの大きな要素なのでしょう。

続いてロングヒット曲ですが、YOASOBI「アイドル」は今週4位にダウン。ストリーミング数及びYouTube再生回数は先週から変わらず3位をキープ。ダウンロード数は10位から11位にダウン。ベスト10ヒットは35週連続に伸ばしています。また、YOASOBI「勇者」は先週と変わらず6位をキープ。ただしこちらはダウンロード数は4位から6位、ストリーミング数も5位から6位、YouTube再生回数は4位から7位といずれもダウンしています。これでベスト10ヒットは11週連続となりました。

Vaundy「怪獣の花唄」は先週と変わらず7位をキープ。カラオケ歌唱回数は7週連続、通算19週目の1位獲得。ストリーミング数は3週連続の7位。これで通算48週目のベスト10ヒットとなっています。

そしてシャイトープ「ランデヴー」は先週からワンランクダウンの10位。ストリーミング数は先週の4位から5位にダウン。ダウンロード数は31位から37位に、YouTube再生回数も37位から47位にダウンと、伸び悩んでいます。これで通算11週目のベスト10ヒットとなりましたが、来週以降は厳しそう。思ったほどのヒットにはならなかった印象です。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2023年12月12日 (火)

荒々しさを感じる初期ライブ盤

Title:Jimi Hendrix Experience: Live At The Hollywood Bowl: August 18, 1967
Musician:Jimi Hendrix

その圧倒的なギタープレイで、今なお多くのロックリスナーを魅了するジミ・ヘンドリックス。もともと膨大な未発表音源やライブ音源が存在し、逝去後も主にブートレグとして数多くの音源が流出。ただ、90年代半ばに、裁判の末、ヘンドリックスの遺族に権利があると確定し、ヘンドリックスの音源を管理するEXPERIENCE HENDRIXが設立されて以降、徐々に音源も整理され、そのような中でも新たな音源が「正規版」として数多くリリースされ続けているのはご承知置きの通りとなっています。

ただ、そのような中、今回公表された音源は、なんとブートレグとしても世に出ることのなかった、完全未発表音源。アメリカデビュー直前の1967年8月に、アメリカのハリウッド・ボウルにて、ママス&パパスの前座として登場したジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンスのパフォーマンスを収録したライブ盤。ジミヘンの比較的活動初期によるライブパフォーマンスであり、いまさらこのような音源が出てくるのか、と驚いてしまうような、貴重なライブ音源となっています。

そんな貴重な音源ではあるのですが、ただ残念ながら、レビューなどを見ていると、その評価は決して高くはないようです。この日のジミヘンはあくまでもママス&パパスの前座。そのこともあってか、フルパワーのパフォーマンスではない、という指摘もあるようです。確かに、そのギタープレイはやはりジミヘンらしい迫力はあるものの、どこかチグハグ的な部分も否めません。また、音質的にも、聴いていて問題はないレベルではないものの、決して高音質ではありません。なによりも、音のバランス的にボーカルが前に出すぎておりバランスが悪く、その点も音源全体としてチグハグという印象を受ける要因だったりします。

ただ、個人的にそんなマイナス点を差し引いても、このライブ音源、非常にカッコよく、耳を惹かれるパフォーマンスだったと思います。チグハグな部分は確かにその通りな部分もあるのですが、このチグハグさも含めて、逆にバンドとしての荒々しさ、その現場に立ち会ったかのようなリアリティーを感じさせます。1967年という時期は、まだジミヘンにとっても、初期の時代。このチグハグさにも、どこか「完成前」であることの魅力を感じました。

さらにこのアルバムでは、ビートルズの「Sgt.Pepper's Lonely Club Band」や、ボブ・ディランの「Like A Rolling Stone」のカバーも披露。どちらも完全にジミヘン色に染め上げたカバーとなっており、非常に聴きどころのある音源となっています。特に「Sgt.Pepper's Lonely Club Band」はかなり圧倒的な迫力のあるギターとダイナミックなバンドサウンドで、原曲とはまた全く異なる魅力を感じさせるカバーとなっていました。

個人的に本作で珠玉い感じたのはMuddy Watersの「Catfish Blues」のカバー。ブルースをそのままロック流に解釈したカバーが魅力的で、味わいのあるブルージーなフレーズをヘヴィーなギターで聴かせてくれており、まさにブルースロックという呼び名の通り、ブルースとロックをダイレクトに融合させたサウンドが耳を惹きます。この曲に関しては、渋みのあるジミヘンのボーカル自体も非常に魅力的。ここらへんはひょっとしたらジミヘンの出自と関係するのかもしれませんが、ブルースロックとカテゴライズされるホワイト・ブルースのミュージシャンとは明らかに異なる、よりブルース寄りのロックがある種のすごみも感じさせました。

評価は決して高くはないようですが、個人的には、いままで聴いたジミヘンのライブ盤の中で下手したら上位に来るようなカッコよさを感じさせるライブ音源だったと思います。なによりも若々しく未完成ゆえの荒々しさが大きな魅力に感じました。間違いなく本作でも彼の実力を感じることが出来るライブ盤だったと思います。

評価:★★★★★

Jimi Hendrix 過去の作品
VALLEYS OF NEPTUNE
People,Hell And Angels
MIAMI POP FESTIVAL(THE JIMI HENDRIX EXPERIENCE)
BOTH SIDES OF THE SKY
Live in Maui
Los Angeles Forum - April 26, 1969(The Jimi Hendrix Experience)

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2023年12月11日 (月)

新曲が加わり大幅にボリュームアップ!

ご存じ、いまなお絶大な人気があり、多くのミュージシャンへの影響を続けているThe Beatles。今年、なんとここに来て新曲がリリースされて大きなニュースとなりました。さらに、今回、「赤盤」「青盤」の愛称で知られる彼らの2組のベストアルバムに、その新曲や、その他の曲が加えられ、「2023エディション」として再リリースされ、話題を呼んでいます。

Title:The Beatles 1962-1966(2023 Edition)
Musician:The Beatles

こちらは「赤盤」。タイトル通り、1962年から1966年に発表された曲を集めたベストアルバム。

Title:The Beatles 1967-1970(2023 Edition)
Musician:The Beatles

こちらは「青盤」。こちらは1967年から1970年の楽曲が収録されています。

まずやはり注目なのは「The Beatles 1967-1970」の最後に収録されている新曲「Now And Then」。1996年にリリースされた「Real Love」以来、27年ぶりの新曲だそうです。もともとジョン・レノンが70年代後半に書いていた楽曲で、1994年に行われた「ザ・ビートルズ・アントロジー」プロジェクトの際に新曲としてリリースしようと試みたのですが、当時の技術ではデモ音源に入っている雑音の除去が困難ということで、制作作業が中止されていました。ただその後、AI技術の発展により雑音の除去も行えるようになり、このたび見事、「新曲」と日の目を見ることになったそうです。

楽曲は非常にメランコリックなメロディーラインが印象的。ジョンのボーカルに対して、ポール・マッカートニーやリンゴ・スターのコーラスラインが非常に印象的。さらに過去の音源からジョージ・ハリスンの声もバッキングボーカルとして加わっているそうです。4人のハーモニーを聴かせているあたり、4人の繋がりをあえて強調しているように感じます。メロディーラインは物悲しく、ノスタルジックな雰囲気もあり、過ぎ去ったビートルズとして現役だった日々を思い起こしているようにも感じさせます。これが最後であるという物悲しさを、どこか感じさせる楽曲にも感じました。

さて、今回、リメイク盤のリリースにあたり、「1962-1966」では12曲、「1967-1970」では新曲をふくめ9曲、あらたに追加しています。追加曲は「I Saw Her Standing There」「Here And There Everywhere」のような「この曲、ベスト盤に収録されていなかったのか」と驚くような代表曲も多く、The Beatlesの名曲の多さにあらためて感心してしまいました。ちなみに元のベスト盤は全てオリジナル曲だったのですが、「Twist And Shout」「Roll Over Beethoven」のようなビートルズのバージョンが有名なカバー曲が収録されています。

収録曲に関しては言うまでもなく名曲揃いで、ビートルズの魅力をしっかり感じされるアルバムなのは間違いありません。ただ・・・ただ単に収録曲を増やしたという点は若干疑問があって、結果として「1962-1966」は63分から94分、「1967-1970」は99分から134分に一気に収録時間が伸びています。個人的には元のバージョンくらいの長さが、アルバム通じて楽しめる長さとしてはちょうどよい(それでも99分はちょっと長いのですが)と思っていたのですが・・・。ちょっとただ単に長くなりすぎているようにも感じました。もっとも、ストリーミングの時代、これだけの長さにしたのは、ひょっとしたら「プレイリスト」を意識したのかもしれませんが。

しかし、ほぼ毎年のように手を変え品を変え、「ニューアイテム」をリリースし続けるThe Beatles。それがほぼすべてベスト10入りするくらいヒットを続けているあたり驚きなのですが、今年はついに「新曲」をリリース。次の「弾」は何になるのかなぁ。このビートルズ商法、若干呆れつつも、ここまでくると同時に楽しみにもなってくるのですが。さてさて。

評価:どちらも★★★★★

The Beatles 過去の作品
LOVE
On Air~Live At The BBC Volume2
1+ (邦題 ザ・ビートルズ 1+)
LIVE AT THE HOLLYWOOD BOWL
Get Back (Rooftop Performance)


ほかに聴いたアルバム

Japanese Singles Collection-The Greatest Hits-/Janet Jackson

日本でリリースされたシングルを網羅的に収録した日本独自企画によるベスト盤「ジャパニーズ・シングル・コレクション」シリーズ。このシリーズ、どちらかというと80年代に人気を博したミュージシャンが多いのですが、彼女の場合は90年代以降がメイン。本作にも収録されている2000年にリリースされたシングル「Doesn't Really Matter」はリアルタイムでのヒットを知っている世代なだけに、非常に懐かしく感じました。

もちろん彼女は80年代から活躍している訳で、ユニークなのはその時代に応じてスタイルを徐々に変えている点。80年代はやはり80年代っぽく、お兄ちゃんの影響を受けたようなファンキーでリズミカルな曲調が多いですし、90年代以降はもっとメロウなR&Bチューンがメインになってきます。この柔軟さも彼女が長く人気を維持している大きな理由なのでしょう。

現時点で直近のアルバム「Unbreakable」から、もう8年が経過しているものの、同作はビルボードでしっかり1位を獲得するなど、まだまだバリバリの現役の彼女。これからもヒットシングルをリリースし続ける予感も。ただあらためて彼女の実力を振り返るには最適なベストアルバムだったと思います。Janet Jacksonの魅力がしっかりとつまったアルバムでした。

評価:★★★★★

Janet Jackson 過去の作品
Number Ones(ベスト・オブ・ジャネット・ジャクソン)
Unbreakable

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2023年12月10日 (日)

大黒ミサの模様を完全収録

Title:聖飢魔II 期間再延長再集結「35++執念の大黒ミサツアー -東京FINAL-」
Musician:聖飢魔Ⅱ

1980年代後半から1990年代にかけて人気を博し、当時、日本では「マイナー」な分野だったヘヴィー・メタルというジャンルを一気にメジャーなものに引き上げたロックバンド、聖飢魔Ⅱ。自らを「悪魔」と名乗り、バンドを音楽を媒体として「悪魔教」を布教する教団と名乗っている彼ら。その徹底したコンセプト作りは、おそらく熱心な信者じゃなくてもご存じのことでしょう。1999年に地球制服が完了した、としてバンドは解散したものの、2005年に地球デビュー20周年を記念して再集結。その後もほぼ5年毎に再集結しており、地球デビュー35周年を記念して2020年も再集結を予定していました。

ただ、2020年といえば、新型コロナが世界に蔓延し、ライブが一切できなくなった時期。「悪魔」とはいえ例外ではなく、大黒ミサツアー(=ライブツアー)は中止。ただ、ライブが徐々に再開できる状況になった後、まさに「執念」とも言える再結成ツアーを実施。この大教典(=アルバム)は、そんな彼らの大黒ミサツアーのファイナル、2023年2月15日に東京、代々木第一体育館で行われた黒ミサの模様を収録したものとなります。

こちらはその日の模様をおさめたアルバムなのですが、最大の特徴としてはオープニングからエンディングまで、大黒ミサの模様をほぼ全て納めているという点。途中のMCはもちろん、オープニングや途中の休憩時間に会場に流れたトーク、さらには客だしのエンディングまで収録されているという徹底ぶり。MCを含めて全体的な演出で楽しませてくれる聖飢魔Ⅱの大黒ミサの雰囲気が、CD音源であってもしっかり伝わってくる作品に仕上がっています。

楽曲は往年の代表曲に、2022年にリリースされた最新アルバム「BLOODIEST」の作品が間に挟まったような構成。「BLOODIEST」からの曲に関しては、かつての代表曲から20年以上のインターバルを持ってのリリースなだけに、若干、いかにも80年メタルの影響を感じるかつての曲に比べると、今風なヘヴィーロックの色合いが強い点も印象的。ただ、かつての代表曲も最新アルバムからの曲も並列に聴いてもさほど違和感のない点、しっかりと聖飢魔Ⅱとしての個性が楽曲に反映されているからでしょうし、また、20年以上たった今でも、その実力に衰えのない証拠とも言えるでしょう。また、最近の音にアップデートされた「BLOODIEST」からの楽曲が加わることによって、黒ミサ全体に新鮮味が加わり、彼らがいまでもしっかり現役のバンドなんだということが、はっきりと認識できるように感じました。

一方、10万歳を超える悪魔の彼らですが、「世を忍ぶ仮の身体」は老化は否めず、特にデーモン閣下のボーカルについては、かつてほどの声量が出ていない旨の指摘をレビューなどでも見かけました。確かに全盛期に比べれば衰えは否めませんが、それても今なおしっかり艶のある伸びやかなボーカルを聴かせてくれており、その歌唱力は天下一品。バンドの演奏についてももちろん衰えもなく、高い演奏力、高い歌唱力というバンドの実力は、しっかりその健在ぶりをうかがせます。

あえていえば3時間超えという時間にも関わらず休憩やトークも多く、全19曲という曲数はちょっと少なめで、その点、やはり体力の面で・・・という感は否めないのですが、MC自体、非常に楽しませてくれますし、そのステージのすばらしさはこの音源からもしっかりと伝わってきます。

コロナ禍による延長という自体もあって、既に再来年が結成40周年となってしまうそうで、MCでは結成40周年での再集結も(ほぼ)約束していました。ほぼ5年毎に集結するのって、もうバンドとして解散していないのでは??と思わなくもないのですが(笑)、この「代々木第一体育館」はバンドとして過去最大の動員数だったそうで、ここに来て人気が高まっている点は驚き。ただ、その理由も納得の、CDで聴いているだけでも楽しさ、すばらしさのわかる大教典でした。40周年の時は、是非とも足を運びたいなぁ。

評価:★★★★★

聖飢魔Ⅱ 過去の作品
XXX-THE ULTIMATE WORST-
BLOODIEST
聖飢魔Ⅱ 期間再延長再集結「35++執念の大黒ミサツアー -大阪-」


ほかに聴いたアルバム

Rest In Punk/HEY-SMITH

パンクロックバンドHEY-SMITHの実に約5年ぶりとなるニューアルバム。分厚いバンドサウンドにホーンセッションを入れたパンクロックが軽快で楽しく、ライブだととにかく盛り上がりそうな予感も。スカの要素も入ったリズムもとても軽快で楽しい感じに。長さも全11曲25分とあっという間に聴き切れる長さなだけに、ポップパンクらしい、難しいことを考えずにまずは楽しめる、そんなアルバムになっていました。

評価:★★★★

HEY-SMITH 過去の作品
STOP THE WAR

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2023年12月 9日 (土)

あれからもう20年・・・。

今回は最近見た映像作品の紹介です。

2003年に、エピックレコードの創立25周年を記念して行われたライブイベント「LIVE EPIC 25」の模様を収録したBlu-ray。もともと公演直後にDVDとして映像化されたのですが、このたび「LIVE EPIC 25(20th Anniversary Edition)」として、Blu-rayで再発売されました。

エピックレコードといえば、1978年に設立。特に80年代から90年代にかけて、特に当時の日本のポップスシーンの中では「尖った」ミュージシャンを多くデビューさせ、注目を集めました。私自身も、「レーベル」という単位で注目したのはこのエピックレコードー当時は「エピックソニー」という名前でしたので、そちらの方がなじみがあるのですがーがはじめて。大ファンの渡辺美里の所属レーベルであり、他にもTM NETWORKや大江千里、もうちょっと時代は下りますが、JUDY AND MARYや久宝留理子など、個人的に好きだったミュージシャンが多く所属していたということもあり、エピックソニーという名前はまだ高校生だった当時から気になるレーベルでした。

それだけにこの「LIVE EPIC 25」というイベント、リアルタイムで足を運んでいます。今回のBlu-rayに収録されているのは2003年2月23日に行われた最終公演でしたが、私が足を運んだのは1日前の2月22日。当時のライブレポは既にサイトから消えているので、今回、あらためてアップしました。

LIVE EPIC ライブレポート(@代々木第一体育館 2003年2月22日)

まず、今回、20周年記念盤がリリースされるということで強く感じたことは、エピックレコード創立から25年目のイベントから、既に20年という月日が経過した、という驚き。このライブイベントの時点で、ここに出演していたミュージシャンの全盛期は「かなり昔」ということを感じていたのですが、その時点から既に20年も経ったとは・・・。月日の経過の早さをあらためて感じます。まあ、ただこの「20年間」に自分に起こった出来事を振り返ると、確かにそのくらいたったなぁ、とは思うのですが。

もうひとつ感じるのは、ここから20年を経過しているのですが、ここにいるミュージシャンたちの日本の音楽シーンにおける立ち位置に、おそらくほとんど変化がない、という驚きです。あえて言えば大江千里はニューヨークに移住し、ジャズミュージシャンになってしまいましたが、他のミュージシャンたちは、復活したBARBEE BOYSを含めてバリバリの現役ですし、おそらく人気の程度も当時とあまり変化はないのでは?おそらく今、「LIVE EPIC 45」として同じミュージシャンを集めても、同じように代々木第一あたりは十分埋まりそうな気がします。それだけ、参加ミュージシャンたちの実力があると感じる反面、20年間の日本の音楽市場にドラスティックな変化が起きておらず、停滞気味という事実も感じてしまうのですが。

また、今回久しぶりに20年前に書いたライブレポートを見たのですが、その当時感じたことと、今、映像を見て感じたことにほとんど変わりがないことに気が付きました。確かに懐メロ的な雰囲気は強く、大江千里なんて全然声が出ていませんし、TM NETWORKも、小室哲哉もまだglobeとしての活躍がメインだった時期で、TMとしての活動は限定的。どこか「懐かしのヒット曲」的な雰囲気が漂っている点は否めません。

一方、その日も感じたのですが、ベストアクトはBARBEE BOYS。今でこそ、その後、何度か再結成を行い、現在は復活している状況を知っているのですが、これが1999年の解散後、初となる再結成。それにも関わらず、往年と変わらないようなアグレッシブで、なおかつ緊張感のあるステージを見せてくれており、その実力が健在であることを感じました。特にBARBEE BOYSといえば、ボーカルのKONTAと杏子の緊迫感ある男女の掛け合いが魅力的なのですが、ひょっとして一度距離を置いて久々のステージだったからこそ、より緊迫感あるステージを見せてくれたのかもしれません。

ちなみに余談ですが、この「LIVE EPIC 25」、岡村靖幸が当初、参加を予定していたのですが、直前で急遽、参加が取りやめになった、ということがありました。ステージで、松岡英明がその旨を詫びて、自分の曲の中に岡村靖幸の「だいすき」のフレーズを取り入れていたりしていたのですが・・・今となってはよく知られているとおり、この時の参加中止は、覚せい剤所持で逮捕されていた影響。ちなみに鈴木雅之のステージでも、暗にMCで田代まさしの話をしており、覚せい剤の逮捕者が妙にイベントに関わっているのが印象的(苦笑)。ただ、20年を経った今、岡村ちゃんは何度も逮捕されて一時期、再起が危ぶまれていたものの、見事復活したのに対して、田代まさしは・・・。

ちなみに本作、映像特典として事前のリハーサルでの模様をおさめたドキュメンタリーが収録されています。7分程度の短い内容ながらも、参加者の人となりも知れる感じの映像で、こちらもなかなか見ごたえがあります。ただこちら、ジャケットに全く記載がなく、わざわざメニュー画面まで戻って選択しないと見れないような、「隠し映像」・・・ではないのですが、気が付かない人もいるかも・・・。なんでジャケットに何も記載がないのだろう?

そんな訳で、20年前のイベントを懐かしく思いつつ、今なお感じる魅力的なメンツに、3時間強というボリュームながらもまったくダレることなく一気に楽しめた映像作品になっていました。イベントに参加した方はもちろん、イベントに足を運び損ねた方、その後、エピックの魅力に触れた方、アラフィフ世代感涙の、お勧めの映像作品です。

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2023年12月 8日 (金)

キュートなギターポップを堪能

Alvvays Japan Tour 2023

会場 ElectricLadyLand 日時 2023年11月29日(水)19:00~

カナダのインディーロックバンド、Alvvays。2022年にリリースしたアルバム「Blue Rev」にはまり、2022年の私的年間ベストアルバムに選定するなどはまったのですが、このたびジャパンツアーが実施され、ちょうど日程的に行けそうだったので、足を運んできました。

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場所は名古屋大須のElectricLadyLand。なんとなくのイメージだけど外タレでこの箱はちょっと珍しい印象も。どちらかというと、クワトロやボトムラインというイメージが強いので。

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ステージのバックには大きくバンド名が。ちょっとビックリしたのですが、会場はほぼ満員。後ろまで人がギッシリ詰まっていました。日本でも高い注目を集めているバンドということを実感しました。

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19時10分ちょっと前くらいにメンバーが登場。5人プラスサポートの1名という構成でライブはスタートとなりました。風貌としては失礼ながら、いかにもインディーバンドらしい、あか抜けない大学生5人組といった雰囲気。というか、この手のインディーバンドの風貌は、日本も海外も変わらないんだなぁ、と親近感(?)を覚えつつみていました。

楽曲は現時点での最新アルバム「Blue Rev」の1曲目「Pharmacist」からスタート。その後は、同じく「Blue Rev」の「After the Earthquake」へと続きます。その後も基本的に「Blue Rev」からの曲を中心に、過去のアルバムからの曲も披露されるような構成。彼女たちらしい軽快でキュート、ポップなギターロックナンバーが続きます。

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最新アルバムからは「Many Mirrors」「Tom Verlaine」「Belinda Says」「Bored in Bristol」などが続きます。全体的に比較的淡々と、キュートなポップチューンの美メロを聴かせていく展開。決して派手なパフォーマンスはなく、淡々としたプレイなのですが、そのメロディーラインの美しさに耳を傾けます。

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ギターボーカルのモリー・ランキン。バンドのソングライターでもあります。この日もギター片手にキュートなボーカルを聴かせてくれました。

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キーボードのケリー・マクラーレン。黒髪長髪の風貌が、いかにもインディーバンドっぽい雰囲気・・・。

本編ラストは「Dremas Tonite」から、「Easy on Your Own?」へと続き終了。もちろんその後はアンコールが起こりますが、比較的早いタイミングで、再びメンバーがステージ上に戻り、アンコールとなります。

アンコールは最新アルバムから「Velvetten」そして「Lottery Noises」の2曲を披露して締めくくり。全1時間半弱という、(予想はしていたのですが)比較的短い時間でのステージで幕を閉じました。

前述の通り、基本的にはキュートでポップなギターロックが淡々と続くようなスタイルで、大きな盛り上がり、みたいなものはありませんでした。ただ、終始、美しいメロディーラインが楽しめたステージで、モリーのキュートなボーカルもあって、最初から最後まで爽やかな雰囲気が会場を包む、とても心地よいステージになっていました。会場はほぼ満員で、これがはじめての名古屋公演、MCでも「はじめてきました」とコメントしていましたが、それにも関わらずこれだけの動員があるあたり、バンドへの期待の高さをうかがわせますし、それにしっかりと応えた素晴らしいステージだったと思います。

なによりも、シューゲイザーの影響も加わったほどよくノイジーなサウンドに、TFC直系のポップなメロディーが個人的には壺をつきまくり。また、名古屋に来ることがあればライブを見てみたいなぁ。非常に心地よく楽しめた1時間半でした。

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2023年12月 7日 (木)

見事、あのロックバンドが1位を獲得

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

すっかり「アイドルグッズの人気投票」的な場所になりつつあるHot Albumsですが、今週は見事、あのロックバンドのアルバムが1位獲得です。

1位はKing Gnu「THE GREATEST UNKNOWN」が見事獲得。大ヒットを記録した「一途」や、現在もロングヒット中の「SPECIALZ」を含む全21曲入りの約4年ぶりとなるニューアルバム。CD販売数及びダウンロード数で共に1位を獲得。オリコン週間アルバムランキングでも初動売上20万3千枚を記録し、1位初登場。ただ、前作「CEREMONY」の初動売上23万8千枚(1位)からはダウンしています。

2位には、旧ジャニーズ系男性アイドルグループA.B.C-Z「5 STARS」が獲得。CD販売数2位。全8曲入りのEP盤となっています。オリコンでは初動売上3万3千枚で2位初登場。前作「BEST OF A.B.C-Z」の初動売上5万4千枚(1位)からダウンしています。

さらに3位4位にもロックバンドのアルバムがランクイン。LUNA SEA「MOTHER」「STYLE」がそれぞれ3位4位にランクインしています。こちらは1994年にリリースされた4thアルバム「MOTHER」と1996年にリリースされた5thアルバム「STYLE」のセルフカバーアルバム。2011年に同じく「LUNA SEA」のセルフカバーアルバムをリリースしていますが、それに続くセルフカバーとなります。「MOTHER」はCD販売数5位、ダウンロード数2位、「STYLE」はCD販売数6位、ダウンロード数4位。オリコンでは「MOTHER」が初動売上1万5千枚で4位、「STYLE」が1万4千枚で6位にランクイン。直近作はオリジナルアルバム「CROSS」で、同作の初動2万9千枚(3位)からダウンしています。

続いて4位以下の初登場盤です。まず5位に韓国の女性アイドルグループaespa「Drama」がランクイン。CD販売数3位、ダウンロード数65位。オリコンでは今週、1万4千枚を売り上げて5位にランクイン。ただ、輸入盤のリリースは11月10日にリリースされており、先々週のチャートで初動7千枚を売り上げて11位に初登場しています。おそらく12月3日より、特典付きのアルバムがワーナーミュージック・ストアでリリースされたため、その分が加味された影響かと思われます。

9位には声優内田雄馬「Y」が初登場。CD販売数8位、ダウンロード数45位。オリコンでは初動売上8千枚で9位初登場。前作「Equal」の初動1万1千枚(7位)からダウンしています。

最後10位には優里「響」がランクイン。CD販売数9位、ダウンロード数17位。「ドライフラワー」や「ベテルギウス」などの彼のヒット曲をオーケストラアレンジを施したアルバム。オリコンでは初動売上6千枚で10位初登場。直近作は80年代の邦楽をカバーしたカバーアルバム「詩-80's」で、同作の初動売上7千枚(7位)から若干のダウン。この手のオーケストラアレンジアルバムとしては健闘した結果ではないでしょうか。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2023年12月 6日 (水)

今週もAdo vs YOASOBI

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週もAdoとYOASOBIが並びました。

Ado_show

まず1位はAdo「唱」。これで6週連続通算10週目の1位獲得となります。ストリーミング数は11週連続、YouTube再生回数は9週連続の1位を獲得。ただし、ダウンロード数は1位から3位にダウンしています。

一方、YOASOBI「アイドル」は先週と変わらず2位をキープ。これで34週連続のベスト10ヒット&通算32週目のベスト3ヒットとなっています。ただ、ストリーミング数、YouTube再生回数は先週の2位から3位にダウン。ダウンロード数は先週から変わらず10位をキープしています。一方、「勇者」も4位から6位にダウン。こちらもダウンロード数は2位から4位、YouTube再生回数も3位から4位にダウン。ストリーミング数は5位をキープしています。ただ、こちらも10週連続のベスト10を維持しています。

3位は初登場曲。女性声優アイドルグループ=LOVE「ラストノートしか知らない」がランクイン。CD販売数1位にランクイン。そのほかのチャートはすべてランク圏外でしたが、総合チャートでベスト3入りとなりました。オリコン週間シングルランキングでは初動売上20万6千枚で1位初登場。前作「ナツマトペ」の初動17万9千枚(1位)よりアップしています。

続いて4位以下の初登場曲ですが、まず4位にKID PHENOMENON「存在証明」がランクイン。CD販売数2位、ラジオオンエア数1位ながら、その他のチャートはランク圏外となり、総合順位はこの位置に。LDH所属のダンスグループによる2枚目のシングル。オリコンでは初動売上6万5千枚で2位初登場。前作「Wheelie」の初動8万4千枚(4位)からダウンしています。

8位にはtuki.「晩餐歌」が先週の13位からランクアップし、ベスト10初登場。若干15歳の女性シンガーソングライターによるデビュー作。SNSから大きな話題となり徐々にランクアップし、チャートイン9週目にしてベスト10入りとなりました。ダウンロード数7位、ストリーミング数6位、YouTube再生回数13位。今後のロングヒットも期待できそうです。

続いてロングヒットですが、まずKing Gnu「SPECIALZ」が先週と変わらず5位をキープ。ダウンロード数は6位から18位、YouTube再生回数も4位から6位にダウンしているものの、今週、ストリーミング数が「アイドル」を抜いて4位から2位にアップしています。これで14週連続のベスト10ヒットとなりましたが、今後のさらなるロングヒットも期待できそうです。

Vaundy「怪獣の花唄」は先週の8位からワンランクアップの7位。カラオケ歌唱回数は今週も6週連続、通算18週目の1位を獲得。これで通算47週目のベスト10ヒットとなっています。

さらにシャイトープ「ランデヴー」は7位から9位にダウン。こちらは先週まで3週連続の3位だったストリーミング数が4位にダウン。ダウンロード数は24位から31位、YouTube再生回数も28位から37位にダウンといまひとつ伸び悩んでいます。ただ、これで通算10週目のベスト10ヒットとなりました。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2023年12月 5日 (火)

架空のラジオ番組を楽しめる、良質なシティポップコンピ盤

今回は、話題のシティポップのコンピレーションアルバムの紹介です。

Title:FM STATION 8090~GOOD OLD RADIO DAYS~ DAYTIME CITYPOP by Kamasami Kong

Title:FM STATION 8090~GENIUS CLUB~ NIGHTTIME CITYPOP by Katsuya Kobayashi

架空のFMラジオ局「FM STATION 8090」から流れるラジオ番組をイメージしたコンピレーションアルバム。ラジオ番組そのままに、曲の間にMCのコメントや簡単な曲紹介が入るスタイル。曲間のMCも全て英語となっており、FM局でも、特にInter FM系、もしくは(90年代あたりの?)JFL系を彷彿とさせる雰囲気となっています。

そして参加しているMC勢も豪華。「DAYTIME CITYPOP」の方はカミサマ・コング、「NIGHTTIME CITYPOP」は小林克也と、FMのMCとしてはおなじみの大御所が参加しています。その名前を知らなくても、声を聴けば、おそらく「ああ、あの人」と誰もが思うような声だと思います。

「架空のラジオ番組」という点ではかなりこだわりがあるようで、特に「DAYTIME CITYPOP」の方では、曲間になんとゲストとして早見優が登場し、曲をリクエストする、なんていう、いかにもラジオ番組らしいコーナーもあったりして。聴いていて本当にラジオ番組を聴いているかのように錯覚してしまいそうな、凝った構成になっています。

楽曲は、最近では海外からも高い評価を受けているシティポップの楽曲が並びます。「DAYTIME CITYPOP」はタイトル通り、昼間に聴くのにピッタリな明るく爽やかなポップス、「NIGHTTIME CITYPOP」はムーディーな雰囲気漂う、夜に聴くのにピッタリな曲が並んでいます。どちらも「8090」というタイトル通り、80年代90年代の楽曲がメイン。聴いていて懐かしさを醸し出すような構成になっていました。

「懐かしさ」という点では、非常に印象的なのはそのジャケット写真ではないでしょうか。かつてFM専門誌として発売されていた「FM STATION」をイメージした構成。当時、「FM STATION」の表紙を手掛けていたイラストレーターの鈴木英人が手掛けています。このジャケットを眺めながら、当時の曲を聴くと、その時代を思い起こして懐かしさを彷彿させるのではないでしょうか・・・

・・・と言っておいて、若干、この「懐かしさ」という点では疑問もあります。まず第一に、「懐かしい」といってもこの英語MCのトークを挟んだスタイルって、Inter FMとかだと今も変わらないですよね?最近はFMもあまり聞かなくなってしまったので、今のスタイルは詳しくはわからないのですが・・・。もうひとつ、どちらかというとこちらの方が疑問点なのですが、ここで流れていたようなポップスって、洋楽中心だった80年代90年代にはあまりFMで流れなかったのでは?という疑問。特に「NIGHTTIME CITYPOP」に収録されている大橋純子の「シルエットロマンス」や寺尾聰の「出航 SASURAI」あたりは、今でこそ「シティポップ」的な評価をされるようになりましたが、80年代は完全に「歌謡曲」の枠組みで、Inter FMはもちろん、JFL系でもまず流れなかった曲なのでは?なんとなく、本当に80年代90年代のFMラジオ番組を再現した、というよりは、懐かしいというイメージだけをピックアップしたフェイクなのでは?と感じました。

もっとも、エンタテイメントにとって、ある種の「フェイク」というのは重要で、そういう意味では「フェイク」だからといってこのコンピレーションの価値が下がるものではありません。最近では、むしろ海外で高い評価を受けている松原みきの「真夜中のドア~Stay With Me」をはじめ、おなじみ杏里「オリビアを聴きながら」や杉山清貴、来生たかお、EPOなど、豪華なメンバーがズラリと並んでおり、最近評価の高い、「シティポップ」とは何か、ということを知るには最適なコンピレーションアルバムだったと思います。

ちょっと残念だったのは、松任谷由実の「ルージュの伝言」「やさしさに包まれたなら」「CHINESE SOUP」が権利の関係か、ユーミン歌唱ではなく、絢香と土岐麻子によるカバーだった点。このカバーももちろんよかったのですが(純粋な歌唱力という意味ではユーミンよる上かも?)、他がオリジナルだっただけにちょっと残念。他にもシティポップの名曲はいろいろとあるのだから、無理にユーミンを入れなくてもよかったとは思うのですが。それとも、若手(というよりももうキャリア的にはベテランなのですが)のシンガーを入れることによって、もっと下の世代を呼び込みたかったのでしょうか?

個人的には「NIGHTTIME」の方は、ちょっとムーディーな曲が多くて、悪い意味で「歌謡曲」すぎないか?という疑問もあったのですが、その点を差し引いても、全体的にラジオ番組を聴いているように楽しめたコンピレーションアルバムでした。80年代90年代にリアルタイムで聴いていた方はもちろん、最近、評価が高くなっているシティポップを知りたい若い世代の方にもおすすめのコンピです。

評価:DAYTIME CITYPOP ★★★★★
NIGHTTIME CITYPOP ★★★★


ほかに聴いたアルバム

カラタチの夢/大橋トリオ

大橋トリオの新譜は5曲入りのEP盤。ただ、この収録曲のタイアップがかなり豪華。5曲中3曲がドラマ主題歌。あと1曲もテレビ番組のテーマソングと、5曲中4曲までがタイアップ付きという内容となっています。確かにアコースティックアレンジにメランコリックに聴かせるポップソングは、いい意味で癖のなく、万人受けしそうな「良質なポップソング」。テレビのタイアップ曲としてはピッタリなんだろうなぁ、とは思います。ただ、良質なポップソングはポップソングなのですが、もうちょっとある種の「毒」は欲しい感じはしてしまうのですが。

評価:★★★★

大橋トリオ 過去の作品
A BIRD
I Got Rhythm?
NEWOLD
FACEBOOKII
L
R

FAKE BOOK III
White
plugged
MAGIC
大橋トリオ
PARODY
10(TEN)
Blue
STEREO
植物男子ベランダー ENDING SONGS
植物男子ベランダーSEASON2 ENDING SONGS
THUNDERBIRD
This is music too
NEW WORLD
ohashiTrio best Too
ohashiTrio collaboration best -off White-

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2023年12月 4日 (月)

笠置シヅ子の魅力を強く感じる

「笠置シヅ子 ブギウギ伝説」刊行記念トーク!

会場 TOKUZO 日時 2023年11月28日(火)19:00~

今回のライブレポートは、先日実施されたトークライブのレポート。現在、NHK朝の連続テレビ小説で、笠置シヅ子をモデルとしたドラマ「ブギウギ」が放送されています。それに伴い、笠置シヅ子関連の書籍がいろいろと発売されています。以前も近代音楽史研究家の輪島裕介による笠置シヅ子の評伝「昭和ブギウギ 笠置シヅ子と服部良一のリズム音曲」を取り上げたことがありますが、そんな中に発売されたのが「笠置シヅ子 ブギウギ伝説」という評伝。同書を書いた娯楽映画研究家、佐藤利明氏と、ここでもよく紹介する戦前SP盤復刻レーベル「ぐらもくらぶ」の主宰者である保利透氏を迎えてのトークライブが行われて、非常におもしろそうだったので足を運んできました。

Kasagi_talk

実は佐藤氏のトークイベント、5年前に行われたクレイジーキャッツをテーマとした回に足を運んだことがあり、非常におもしろかったので今回、足を運んだ経緯があります。前回は、クレイジーキャッツのリアルタイム世代が多かったのですが、今回もおそらく60代以上がメイン。いくら60代でも歌手の笠置シヅ子のリアルタイム世代ではないと思うのですが・・・。

トークライブはほぼ19時ピッタリにスタート。基本的には今回のトークライブの元となった著書「笠置シヅ子 ブギウギ伝説」に沿った形で、笠置シヅ子の生涯を追った形でのトーク、主に芸能生活をスタートさせた大阪松竹少女歌劇団(OSK)時代からのスタートとなりました。朝ドラの内容との比較を挟みつつだったのですが、自分自身は朝ドラを全く見ていないので、朝ドラとの比較についてはよくわからず。ただ、トークに沿った形での貴重な映像や音源を流しながらのトークとなりました。

トークライブは途中休憩を挟んでの2部構成。1部から戦前「スウィングの女王」と呼ばれた彼女の、そして彼女の曲の大半を手掛けた作曲家、服部良一のすごさについて語られていたのですが特に1部で印象的だったのが、戦前にリリースされた「ラッパと娘」のエピソード。同曲はもともと、アメリカのルイ・アームストロングと女性コメディアンの掛け合いからヒントを手掛けた取り入れたそうですが、笠置シヅ子とトランペット奏者の掛け合い、さらには彼女のスキャットがあらためて聴くと実に見事。今聴いてもモダンな印象を受けます。この日は「元ネタ」の映像も流れたのですが、いかにアメリカの「元ネタ」を笠置シヅ子が上手く取り入れていたのか、さらにトランペットの部分まで自らのスキャットにより表現した、彼女の表現力のすごさも見て取れ、非常に印象的でした。

さらに佐藤氏のトークが冴えまくったのが2部。主に笠置シヅ子と服部良一のリズムへの挑戦をテーマに、服部良一が戦前から戦後にかけて、いかに斬新なリズムを取り入れていったか、そしてその服部良一の挑戦にしっかりと応え、素晴らしいパフォーマンスを行う笠置シヅ子のすごさを、映像や音源を交えながら紹介していきました。特に映像に関しては、昨今ではアップされている映像も多いのですが、この日はYouTubeにアップされていない貴重な映像も数多く紹介してくれました。

やはりまず印象的だったのは服部良一のすごさ。ブギウギのリズムをいち早く取り入れ、戦後にはビバップも取り入れた他、今で言えばワールドミュージックにカテゴライズされるトライバルなリズムもいち早く音楽に取り入れていたそうです。リズムに対する挑戦は、「昭和ブギウギ 笠置シヅ子と服部良一のリズム音曲」でも取り上げられており、知識として知ってはいたのですが、あらためて音源と映像、そして佐藤氏のトークにより、そのすごさを再認識しました。特に歌詞はほとんど意味不明、リズムを聴かせるような笠置シヅ子の曲も紹介されており、ここらへんの曲は、今聴いても全く古さを感じず、むしろモダンにすら感じるほど。服部良一のその先見の明のすごさをあらためて実感しました。

そしてこの日のトークライブで一番印象的だったのが、笠置シヅ子の歌う時の演技で、佐藤氏が「彼女は歌に合わせて演技する。OSK時代の経験が生きているが、それがすごい」(意訳)と言及していたのですが、確かに曲にあわせて変化させる豊かな表情やパフォーマンスが印象的。映像を見ていて非常に惹きつけられるものがあります。この点についてはこの日はじめて知った事実でしたので大きな驚きでもありました。

そう考えると、笠置シヅ子の本当の魅力って、音源を聴くだけではわからないんでしょうね。この日は映像も合わせて、佐藤氏の詳しい解説や見どころを聴くことによって、笠置シヅ子の本当の実力、そして魅力を強く実感することが出来ました。

最後は、彼女が最晩年まで出演していた「カネヨン」のCMが流れて締めくくり。おそらくこの日の客層(50代~60代)あたりの世代にとっては、笠置シヅ子といえばこのイメージなのでしょうが、私は全く見たこともないので、特に懐かしさは感じませんでした(^^;;ただ、この日の映像で見てきた昭和20年~30年代の30代の彼女と、もうおばあちゃんになった彼女のギャップに驚いたくらいでした(笑)。

そんな訳で、佐藤氏の解説も非常に濃く、同席していた保利氏も、戦前SP盤の専門家として、様々な知見を提供しており、興味深いトークイベントでした。途中休憩15分をはさんで終わったのが9時50分ちょっと前でしたので、約2時間半強というボリュームたっぷりのトークライブ。非常に楽しく、そしていろいろと勉強になった濃い時間でした。ちなみに来年はかの喜劇王、エノケン生誕120周年の年だそうで、それに関するトークライブをやりたい、といっていたので、そちらも見に行きたいなぁ。

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2023年12月 3日 (日)

本来の意味での・・・「エモい」アルバム

Title:Desolation's Flower
Musician:Ragana

今回紹介するのは、ワシントン州オリンピアで結成された2人組ヘヴィーデゥオRagana。MariaとColeyの2人からなるユニットなのですが、姓は明らかにされていないそうで、謎めいた部分を残したユニットとなっています。音源はもちろん、名前を聞くのもこれがはじめて。本作は高い評価を得ているそうで、今回はじめて本作をチェックしてみました。

ブラックメタルやスクリーモを取り入れた非常にヘヴィーな作風が特徴的。まず1曲目はいきなりタイトルチューン「Desolation's Flower」からスタートするのですが、ヘヴィーでメランコリックさもあるサウンドをゆっくり聴かせつつ、途中から空間を切り裂くかのような、女性ボーカルのシャウトが入ってきます。続く「Woe」も同様。ギターノイズを前面に押し出したサウンドは、メタルやスクリーモというよりもインディーロック的な要素を感じさせますが、メランコリックさを感じさせるサウンドに、胸をかきむしりたくなるような、焦燥感のある女性ボーカルのシャウトが印象的です。

このスクリーモ的なヘヴィーでメランコリックなサウンドに、女性ボーカルのシャウトというスタイルが続く前半に対して、後半はちょっと雰囲気が変わります。「Pain」では静かなギターサウンドに、メランコリックで清涼感のある女性の歌が入るというスタイルに。ラストを締めくくる「In the Light of the Burning World」も同様に、静かなギターのアルペジオに狂おしいほど切ない女性の歌が印象的な作品。前半の作品では空間を切り裂くのが女性のシャウトでしたが、後半は、静かなサウンドの中に時折入る、ヘヴィーでダイナミックなギターノイズが空間を切り裂いてきました。

スタイル的には大きく前半と後半でわかれる本作ですが、ただ、荒涼とした雰囲気の世界観はアルバム全体を貫かれています。また、前半の女性のシャウトといい、後半のヘヴィーなサウンドといい、胸をかきむしりたくなるほどのエモーショナルなサウンドである点も大きな特徴と言えるでしょう。「エモい」と言えば、最近の若者言葉として知られており、非常に汎用的な使われ方をしていますが、もともとは音楽のジャンルとしての「エモ」を語源としたもの。彼女たちの音楽は「エモ」ではありませんが、エモーショナルなそのサウンドは、もともとの用語の使い方通り「エモい」と言えるアルバムだったと思います。

ブラックメタルやスクリーモを取り入れたメタリックでヘヴィーなサウンドは好き嫌いがわかれる部分はあるかもしれませんが、そのメランコリックでエモーショナルなサウンドは、おそらく広いリスナー層の心をかきむしるような、切なさを感じさせる作品だと思います。サウンド面でも感情的な面でもガツンと響いてくる本作は、年間ベストクラスの傑作アルバムだったと思います。今後にも注目のユニットです。

評価:★★★★★

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2023年12月 2日 (土)

齢90。バリバリ現役

Title:All My Love For You
Musician:Bobby Rush

いろいろなところで話題となっている話なのですが、今年に入り、著名なミュージシャンの訃報が相次いでいます。坂本龍一、高橋幸宏、谷村新司、大橋純子、もんたよしのり、X JAPANのHEATH・・・特にBUCK-TICK櫻井の急逝はショックでしたが、個人的に非常にショックだったのが、なんといってもKANちゃんの逝去・・・。個人的に大ファンなミュージシャンなだけにかなりのショックでいまだに引きずっています・・・。

この相次ぐミュージシャンの逝去のニュースに陰謀論的なものを持ち出す人もいるみたいですが、ただ単に、ポップス全盛期のミュージシャンたちが年を取って、お迎えが来るような世代に差し掛かったから、という理由だけだと思います。もっと言えば、ミュージシャンたちの健康寿命が延びた点や、ポピュラーミュージックの新陳代謝が以前ほど激しくなくなったため、年を取っても第一線で活躍するミュージシャンが増えたため、大きなニュースとして取り上げられるミュージシャンの逝去のニュースが増えた、という点も大きいでしょう。

なんでここでこんな話を持ち出すかと言えば、ロックやJ-POP系よりももっと昔に黄金期を迎えたブルースの世界では、とっくの昔から逝去者が相次いでいるからで、特にブルースとオールドソウルの専門誌「Blues&Soul Records」では、毎号のように追悼の特集記事が載っていますし、ニュース欄では、1ページまるごと逝去者のベタ記事というケースも毎号のお決まりのようになっています。そういう意味では、著名なポップミュージシャンの逝去のニュースは今後も続くでしょうし、それはそれで仕方ないことなのかもしれません。

で、ブルースの世界では既に「レジェンド」と言われるようなミュージシャンが、ほとんど鬼籍に入ってしまったのですが、その中で数少ないリビングレジェンドであるのが彼、Bobby Rush。なんと御年90歳!!しかし、約3年ぶりとなるニューアルバムをリリースし、その健在ぶりと、バリバリの現役であるをアピールしています。

1曲目「I'm Free」からして、ホーンセッションを入れて、いまだに艶すら感じさせる力強い歌声を聴かせるファンクブルースからスタート。「Running In And Out」も軽快に力強く聴かせる正統派のブルースナンバー。「I Want To」も、年齢を感じさせないパワフルでロッキンな歌声を聴かせるファンクブルースのナンバーと続いていきます。

その後も伸びやかな歌声でゆっくりと歌い上げるソウルナンバーの「One Money Can Stop a Show」や、ギターとハープをバックに聴かせるミディアムブルースの「I'll Do Anything For You」「You're Gonna Need A Man Like Me」など、現役感バリバリに聴かせる楽曲が並びます。

特に印象的なのは先行シングルにもなっている「I'm The One」で、こちらも力強いブルースナンバーなのですが、歌詞が印象的。おそらく日本人にとっても聞き取れるようなわかりやすい歌詞で、Muddy WatersやB.B.KING、ハウリンウルフなどといったブルースのレジェンドたちの名前を並べつつ、自分は彼らとは違うと異なり、「俺は俺だ」と歌い上げる、そのキャリアに裏付けされたBobby Rushのプライドを感じさせる楽曲となっていました。

正直なところ、さすがにこの年になってからの作品ですので目新しさは感じません。Bobby Rushらしさを体現化したアルバムとも言えるでしょう。ただ一方で、齢90歳になりながらも、これだけ現役感のあるアルバムを作り上げるのは驚異の一言。アルバムの出来としては4つくらい相当なのですが、そのキャリアと、90歳を超えてもお元気なところに敬意を評して1つ追加で。この調子で行くと、これがラストのオリジナルアルバムではない可能性も高いなぁ。これからも末永くお元気で!!

評価:★★★★★

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2023年12月 1日 (金)

実にラッパ我リヤらしい作品

Title:CHALLENGER
Musician:ラッパ我リヤ

1990年代前半という、HIP HOP黎明期から活動を続け、日本のHIP HOPシーンのレジェンドの一組とも言えるグループ、ラッパ我リヤ。2009年以降、一時期活動休止状態になるものの、2017年には久々のアルバム「ULTRA HARD」をリリース。本作は同作に続く、約6年ぶりのニューアルバムとなります。

今回のアルバムタイトル、「CHALLENGER」というタイトルになるのですが、公式サイトの案内によると「『ベテランアーティストである自分達の様な年代でも、常にチャレンジャー精神が必要だ!』と言う彼らの自身に対する戒めの想いと、今作が『最後のアルバム』になるかも知れない、と言う決意が込められている。」ということ。25年以上のキャリアを誇るベテランの彼らですが、今なお、前向きに進んでいこうという強いスタンスを感じます。

・・・・・・なのですが、ただアルバム自体については、実にラッパ我リヤらしい内容に仕上がっていたと思います。ラッパ我リヤのスタイルというと、非常に硬いライムと、暑苦しさも感じさせる自己主張の強いリリック。今回の作品については、そんなラッパ我リヤらしさが貫かれた作品になっていました。

「飛んでいくぜお前のとこへ」と彼ららしい押しつけがましさ(笑)を感じる「CODE NAME」からスタートし、「俺らが達人」と、ある意味、非常に強い自己主張が特徴的な「TATSUJIN」、自分たちの歩みを振り返る「この道ひとすじ」に、タイトルからして暑苦しい「情熱だけが燃料の蒸気機関車」と、まさにラッパ我リヤらしい、自己主張の強いリリックを、ヘヴィーなトラックにのせて力強くラップするスタイルの楽曲が続きます。

ちなみにゲスト陣もかなり豪華で、かの般若やR-指定をはじめ、梅田サイファーのKZ、KBDに、異色なところではドラえもんのジャイアン役としてもおなじみの木村昴も参加。こちらもかなり暑いラップを聴かせてくれています。

前作「ULTRA HARD」は彼ららしいヘヴィーな楽曲と、ポップな作品がほどよくバランスされており、音楽的な幅も広がった傑作と感じました。ただ正直なところ本作に関しては、良くも悪くもラッパ我リヤらしい作品が並んでおり、音楽的な広がりという点では前作と比べると、物足りなさを感じました。また、「CHALLENGER」というタイトルとは裏腹に、作風としては「いつものラッパ我リヤ」といった感じで、挑戦的な作品はあまりありません。ラッパ我リヤのファンにとっては、おそらく「待ってました」といった感じのする彼らの王道とも言えるアルバムだったのですが、挑戦という観点では、むしろ前作の方が「CHALLENGER」な内容だったように感じました。

実にラッパ我リヤらしいアルバムになっていた本作。正直、この「暑苦しさ」「自己主張の強さ」は好き嫌いがありそうですし、個人的にも正直、ちょっと苦手に感じてしまう部分も否定できません。そういう意味でも前作の方がよかったと思うのですが・・・。ただ逆に、この「暑苦しさ」「自己主張の強さ」が壺にはまるのならば、かなり気に入る傑作になっていたのではないでしょうか。そういう意味では彼ららしい作品ですが、若干人を選ぶアルバムかな、とも感じた1枚でした。

評価:★★★★

ラッパ我リヤ 過去の作品
ULTRA HARD


ほかに聴いたアルバム

Neo Standard/Night Tempo

主に80年代の日本の歌謡曲を取り上げ、再構築したアルバムで注目を集める韓国人DJのNight Tempo。特に、今、海外でも注目を集めているシティポップというジャンルを広めた功績でも注目を集めています。本作はそんな彼の「新作」をあつめたアルバム。小泉今日子や中山美穂、渡辺満里奈や早見優といった往年の80年代アイドルがズラリと参加者に名前を並べている点でも注目を集めています。ただ・・・内容的には残念ながらいささか中途半端。リズミカルなエレクトロチューンがメインなのですが、特に80年代っぽさも感じませんし、シティポップ的な要素も薄い感じ。Night Tempoの追い求めているジャンルのイメージはあまり反映されていません。本人がつくる楽曲は、DJとして取り上げる楽曲とは別といった感じでしょうか。これはこれで悪いアルバムではないかもしれませんが、期待はずれだったかも・・・。

評価:★★★

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