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2023年11月27日 (月)

ジブリソングを素直に楽しめる

Title:スタジオジブリトリビュートアルバム「ジブリをうたう」

何月号か忘れたのですが、「rockin'on」で、サマソニで来日するblurデーモン・アルバーンのインタビュー記事が載っていたのですが、そこで、来日した際に足を運びたい場所として「ジブリパーク」の名前があげられていました。以前なら、観光地的にはほとんど無視されがちだった名古屋近辺でしたが、「ジブリパーク」が世界的な観光地として名前があがることになった点、地元民としては非常にうれしかったのですが、それ以上に「ジブリ」というブランドが世界的に浸透している点をあらためて感じたインタビュー記事でした。

本作は、そんなスタジオジブリの作品を彩る楽曲を、様々なミュージシャンたちがカバーしたトリビュートアルバム。武部聡志プロデュースによる作品だそうですが、豪華なメンバーがジブリの楽曲をカバーしています。ただ、参加しているミュージシャンは、家入レオやYOASOBIの幾田りら、ももクロの玉井詩織や木村カエラといった、どちらかというと「ポップ寄り」のミュージシャンが占める中、ちょっと目を惹いたのがくるり岸田繁。それもカバーした楽曲が「となりのトトロ」と、ともすればジブリ楽曲の人気No.1を誇りそうな曲なだけに、特に目立ちました。

ただ、「ポップ寄り」のミュージシャンが並んでいることからも予想は出来るのですが、基本的には原曲に沿ったカバーとなっており、このカバーで雰囲気がガラリと変わったような目新しいカバーはありません。あえて言えば、前述の「となりのトトロ」は、原曲の女性ボーカルが、男性ボーカルにガラリと変わった点くらいでしょうか。もっとも岸田繁はシンプルにポップにまとめあげており、「となりのトトロ」のイメージを大きく変わるものではありませんでした。

その他に目立ったカバーとしてはLittle Glee Monster「テルーの唄」で、もともと原曲から伸びやかなボーカルを聴かせる、ボーカリストの力量が試される曲なのですが、その点はさすが彼女たちがしっかりと原曲の魅力を伝えています。またWakanaの「もののけ姫」も、原曲の幽玄な雰囲気をしっかり伝えるカバーに。Wakanaというミュージシャンははじめて知ったのですが、Kalafinaの元メンバーなんですね。その実力がしっかりと伝わるカバーでした。

幾田りらの「いのちの名前」も清涼感あるボーカルが魅力的ですし、家入レオの「君をのせて」もエキゾチックな雰囲気のカバーは彼女のイメージにもピッタリとマッチ。玉井詩織の「風の谷のナウシカ」も、アイドルっぽい雰囲気となっているのですが、もともとからアイドルっぽさを感じる楽曲だっただけに彼女のボーカルにもピッタリとマッチ。また、木村カエラの「ルージュの伝言」もカエラらしい明るいカバーに仕上がっています。

「テルーの唄」「もののけ姫」のようなボーカルの力量が問われる曲は、しっかりと力のあるボーカリストを配しており、さらに他の曲に関しても、ボーカルのタイプと曲の雰囲気がピッタリとマッチ。ここらへんの差配に関しては、プロデューサーの武部聡志の力を感じさせますし、だからこそ聴いていて全く違和感なく楽しめるカバーアルバムに仕上がっていました。

ただ逆に、そういった意味では意外性がない、という点はマイナスだったようにも感じます。1曲2曲は、例えば原曲の雰囲気をガラリと変えるようなロックやパンクなカバーだったり、原曲をバラバラに解体するようなエレクトロやポストロック系のカバーがあったらおもしろかったなぁ、とは強く感じました。

もっとも、おそらくこのトリビュートアルバムの趣旨としては、音楽的なおもしろさを求める音楽ファン向けというよりは、素直に聴いてみて無難に楽しめるような、ライトリスナー層向けだからこそ、このようなプロダクションとなったのでしょう。そういう意味では私の感じたマイナス点については、企画の趣旨からすると的外れなのかもしれませんが・・・ただ、それでもやはり1、2曲は冒険してほしかったなぁ、とは感じました。

もちろん、もっともそれだけからこそ、原曲の雰囲気を崩すことなく、素直に聴いていて楽しめるポップアルバムに仕上がっていたと思います。参加ミュージシャンに興味がある方はお勧めのアルバム。またジブリソングが好きなら素直に楽しめるトリビュートアルバムでした。

評価:★★★★


ほかに聴いたアルバム

Journey/SPECIAL OTHERS

スペアザの9枚目となるオリジナルアルバム。毎月25日に「ニコニコの日」と題してリリースしてきた配信シングルをすべて含む作品。スペアザといえば、陽気で明るいインストバンドというイメージがあるのですが、今回はやはり「ニコニコの日」にリリースした作品が中心だからでしょうか。いつも以上に陽気で明るいインストポップが並んだ作品となっていました。気軽に楽しめる1枚です。

評価:★★★★

SPECIAL OTHERS 過去の作品
QUEST
PB
THE GUIDE
SPECIAL OTHERS
Have a Nice Day
Live at 日本武道館 130629~SPE SUMMIT 2013~
LIGHT(SPECIAL OTHERS ACOUSTIC)
WINDOW
SPECIAL OTHERS II
Telepathy(SPECIAL OTHERS ACOUSTIC)
WAVE
Anniversary

Blue Birds/SING LIKE TALKING

SING LIKE TALKING約2年ぶりの新作は、表題曲を含む新曲3曲+ライブ音源3曲の計6曲入りのEP盤。実質的なシングルのような作品ですが。ただ、新曲に関しては、悪くはないけども微妙・・・といった感じ。彼ららしいメランコリックでメロディアスな作品なのですが、楽曲のインパクトという面では平凡。聴いた後、いまひとつ印象に残らなかった・・・。ただ、良かったのは初回限定盤についてくるDisc2で、こちらは架空のラジオ局"radio JAOR"による、SING LIKE TALKINGの代表曲をFMラジオ風でノンストップでつなげたアルバム。よくあるDJ Mix盤のように、途中でブツ切りになっている感じではなく、基本的に全曲ほぼフルで収録されており、ベスト盤的な感覚で楽しめるアルバムになっていました。こちらは素直にSING LIKE TALKINGの曲の良さを楽しめるアルバムでした。

評価:★★★★

SING LIKE TALKING 過去の作品
Empowerment
Befriend
Anthology
Heart of Gold
3rd REUNION

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