等身大のミスチル
Title:miss you
Musician:Mr.Children
2022年にメジャーデビュー30周年を迎えたMr.Children。昨年は周年記念となるベストアルバムをリリースしましたが、オリジナルアルバムのリリースはなく。本作は前作「SOUNDTRACKS」から2年10ヶ月ぶりとなるニューアルバムとなります。
今回のアルバムの特徴は主にメンバー4人だけがプライベートスタジオに集結し、録音したオリジナルアルバムであるという点。ある意味、30周年を経て、新たな一歩を踏み出す彼らが、あらためてMr.Childrenは4人によるバンドである点を見つめなおした、という意味合いがあるのかもしれません。ただその結果として、非常にシンプルな構成のアルバムとなっており、ミスチルのコアな部分が抽出された作品と言えるかもしれません。
1曲目の「I MISS YOU」はまずピアノとアコギで哀愁たっぷりに歌い上げるナンバー。続く「Fifty's map~おとなの地図」はストリングスを入れてスケール感を持たせつつ、必要以上に仰々しさもないシンプルなポップソングになっています。さらに「青いリンゴ」についてはシンプルなアレンジのメロディアスなポップチューンになっており、初期を彷彿とすらさせるようなミスチルらしいポップチューンに仕上がっています。
「雨の日のパレード」もメロウな作風ながらも、シンプルなエレピで奏でる等身大のポップチューンに仕上がっていますし、「Party is over」もアコギのみで聴かせるシンプルでフォーキーな作品に。「黄昏と積み木」についても、こちらも非常にシンプルなポップス。恋人同士(というよりも夫婦同士?)の日常を描いたほっこりとした暖かみのあるポップスがとても魅力的です。
最後を締めくくる「deja-vu」「おはよう」も等身大な歌詞も魅力的ですし、シンプルなアレンジの等身大のポップソングになっているのも、初期の彼らを彷彿とさせるようなナンバー。ちなみにこの2曲、ピアノは小谷美紗子が参加しており、個人的にはかなりその点もトピック的な作品になっています。
一方、歌詞についても落ち着いた作風の曲が多く、特にタイトルそのまま「Fifty's map~おとなの地図」だったり、「LOST」や「Party is over」のような、主人公が大人、もっと言えば、ミスチルメンバーと同年代の50代あたりを想像させるような歌詞の曲も目立ちます。楽曲的にもシンプルなアレンジの等身大的な作風がメインでしたが、歌詞についても、彼ら自身をそのままに描いた等身大な作風の歌詞が目立ったような印象を受けました。
ちなみに歌詞と言えば印象的だったのは中盤に配され、ラップ的な歌がインパクトのある「アート=神の見えざる手」で、社会派な歌詞の作品。ミスチルは以前から社会派的な曲もチラホラ歌ってきたのですが、ただ立場的なものもあるのか、社会派とはいえ比較的無難な内容にとどまっていた歌詞が多かった印象も受けます。ただ、この曲に関しては
「中華人民共和国と北朝鮮のアンビリーバブルな行動
非常識だと報道するけれど
じゃあどの国が常識的だと
あの金髪女は言うのでしょう?」
(「アート=神の見えざる手」より 作詞 桜井和寿)
と、かなり具体的な内容にまで踏み込んでいるのが印象的。中国や北朝鮮を批判しつつも、同時に、彼らに対する安易な差別的発言も戒めるような歌詞は、同国に対して批判というよりも差別的な言動まで行う、一部の人たちに対する非難まで至っているもの印象的でした。
そんな挑戦的な歌詞もありつつも、ただ全体的には4人のみでのセッションを中心とするアルバムということで全体的にシンプルな作風となっている本作。ミスチルというと、特にモンスターバンドとなっているここ最近、必要以上にスタジアムバンド的なスケール感のある曲が目立ったように感じます。そんな中、ある意味原点回帰的とも言える、非常にシンプルで、ポップバンドとしての彼らの魅力を感じさせる作品に仕上がっていました。正直、無駄にスケール感だけを感じさせる作品については、ファンとして嫌いではないもののどこかよそよそしさを感じる部分もあったのですが、今回のシンプルなポップソングを聴いて、自分が中学生以来好きだったミスチルはこれだよ、これ!!と心から感じ、あらためて自分はミスチルというバンドが好きなんだな、ということを実感する、そんなアルバムに仕上がっていました。個人的には、2015年の「REFLECTION」以来の、年間ベストクラスの傑作アルバムだと思っている本作。やはりミスチルは素晴らしいバンドだなぁ、そう感じさせてくれた1枚でした。
評価:★★★★★
Mr.Children 過去の作品
SUPERMARKET FANTASY
SENSE
Mr.Children 2001-2005<micro>
Mr.Children 2005-2010<macro>
[(an imitation) blood orange]
REFLECTION
重力と呼吸
SOUNDTRACKS
Mr.Children 2011-2015
Mr.Children 2015-2021&NOW
ほかに聴いたアルバム
LaiLa/大西ユカリ
前作から約5年3ヶ月ぶり、久々となった大西ユカリのニューアルバム。ジャケット写真からわかるように、ラテンのテイストたっぷりのタイトルチューン「Laila」「贖罪天国」からスタート。全体的にはラテンのテイストの強いムーディーな作風となっている作品に。また力強い彼女のボーカルもムード感たっぷり。ねっとりとしたいい意味での泥臭く、暑苦しさを感じる大西ユカリらしいアルバムに仕上がっていました。
評価:★★★★★
大西ユカリ 過去のアルバム
HOU ON
やたら綺麗な満月
直撃!韓流婦人拳(韓国盤)
直撃!韓流婦人拳
ニガイナミダが100リットル
肉と肉と路線バス
EXPLOSION
BLACK BOX
Catch Up/WANIMA
途中、MONGOL800とのスプリットEPやサブスク用の企画盤のリリースはあったものの、純然たるオリジナルアルバムとしては実に約4年ぶりとなるWANIMAのニューアルバム。彼ららしい陽性の強い、ポップなパンクチューンがズラリと並ぶ作品になっているのですが、全20曲1時間強という、かなりボリューミーな内容に。サブスク全盛の今、比較的、サブスクに対して否定的だった彼らですが、結局、サブスク解禁せざる得なくなった今、アルバムとして聴かせるのならば、やはりCDに収録できる精一杯の作品を詰め込みたい、そんな意思も感じるオリジナルアルバムでした。
評価:★★★★
WANIMA 過去の作品
Are You Coming?
Everybody!!
COMINATCHA!!
Cheddar Flavor
Fresh Cheese Delivery
愛彌々(MONGOL800×WANIMA)
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