優しさを感じさせるボーカルとサウンドが魅力的
Title:Madres
Musician:Sofia Kourtesis
今回紹介するのは、ベルリンを拠点にして活動するペルーのDJ、Sofia Kourtesis(ソフィア・コルテシス)のデビューアルバム。各種メディアで非常に高い評価を受けている作品で、彼女に関しては、音源はもちろん、名前を聴くのも初めてだったのですが、今回、その評判のデビューアルバムをチェックしてみました。
楽曲的には、リズミカルなエレクトロチューンがメイン。リズミカルなサウンドが聴いていて心地よさを感じさせるのですが、その「心地よさ」を決定づけているのが彼女のボーカルでしょう。基本的にはエレクトロなリズムトラックが主軸となるサウンドで、彼女のボーカルはこの手のエレクトロアルバムではよくあるパターンなのですが、サウンドのひとつ、として位置づけられている構成となっています。ただ、優しく暖かみのあるサウンドは、アルバムの中でも大きな魅力となっているのは間違いありません。また、その結果として、エレクトロサウンド全体としても暖かみの感じさせる音色となっており、エレクトロのアルバムながらも、どこか暖かみを感じさせるという点が本作の大きな魅力となっていました。
アルバムは、いきなりタイトルチューンの「Madres」からスタート。壮大な印象もある伸びやかなサウンドには、どこかトライバルな雰囲気も感じさせます。本作は彼女の母親について書いた曲だとか。伸びやかな清涼感あるボーカルも魅力的な楽曲に仕上がっています。また、3曲目の「Vajkoczy」は、癌と診断された彼女の母親の命を救った、著名な神経外科医の名前から取られた作品だとか。リズミカルで軽快なエレクトロサウンドが魅力的な楽曲となっています。
前半は、そんなリズミカルで清涼感もあるエレクトロチューンがメイン。基本的にはストレートにリズミカルな楽曲がメインとなっており、いい意味で聴きやすさが印象に残る楽曲が並びます。四つ打ちのリズミカルなサウンドがメインながらも、どこかトライバルな要素も見え隠れする点もひとつの魅力に感じました。
一方、ダウナーな歪んだサウンドに語りにようなボーカルが入る「Moving Houses」を挟んで、終盤は少々違った雰囲気に。続く「Estacion Esperanza」では、かのManu Chaoも参加。前半でも隠し味のように入っていたトライバルな要素をより前に押し出した作品に。続く「Cecilia」も疾走感あるエレクトロチューンながらもトライバルな要素が入った作品になっていますし、ラストを飾る「El Carmen」も同様。最後は、アルバム全体に流れているトライバルな要素を押し出した締めくくりとなっていました。
優しいボーカルとリズムトラックが魅力的な前半と、前半から隠し味的に加わりつつも、後半でより鮮明になるエッジの効いたトライバルなリズムが魅力的なアルバム。いい意味で聴きやすさがありつつも、どこかひっかかる癖のような要素も入っている、魅力的なエレクトロサウンドの作品でした。広いリスナー層にもアピールできる傑作アルバムだったと思います。ライブで聴いても気持ちよさそうですが、CDや配信で聴いてもその魅力に魅了される、そんなアルバムでした。
評価:★★★★★
ほかに聴いたアルバム
Lahai/Sampha
イギリスはロンドン出身のシンガーソングライター、Samphaの約6年ぶりとなるニューアルバム。エレクトロベースなサウンドにしんみりとメランコリックに聴かせるソウルなボーカルが載るスタイル。全編的にエレクトロビートを取り入れつつも、どこかオーガニックな色合いすら感じさせる暖かみのある楽曲が大きな魅力。ソウルミュージックがベースながらも、メロはシンプルなポップという点、いかにもUKソウルという印象も受ける1枚。幅広いリスナー層が楽しめそうな暖かみのあるソウルアルバムでした。
評価:★★★★★
1989 (Taylor's Version)/Taylor Swift
"Taylor's Version"としてリリースしている過去作のリメイク最新作は2014年にリリースしたアルバム「1989」のリメイク。同作は、いままでカントリーという枠内で活躍していた彼女が、その壁を取り払い、ポップミュージシャンとして大きく飛躍した1枚でした。今回、久々に同作を聴いてみたのですが、いい意味でポップミュージシャンらしい、明るく、広いリスナー層が楽しめる楽曲が並ぶアルバムだと、改めて気がつかされました。ポップミュージシャンとしての本領発揮の1枚とも言えるのではないでしょうか。今や、世界的な人気を誇るポップシンガーである彼女ですが、ある意味、その一歩を踏み出したアルバムと言えるでしょう。
評価:★★★★★
TAYLOR SWIFT 過去の作品
FEARLESS
RED
1989
REPUTATION
Lover
folklore
evermore
Fearless (Taylor's Version)
RED(Taylor's Version)
Midnights
Speak Now(Taylor's Version)
| 固定リンク
「アルバムレビュー(洋楽)2023年」カテゴリの記事
- マッドチェスタームーブメントの楽曲を網羅的に収録(2023.12.24)
- 全盛期oasisの充実ぶりを物語る名盤(2023.12.15)
- 荒々しさを感じる初期ライブ盤(2023.12.12)
- 新曲が加わり大幅にボリュームアップ!(2023.12.11)
- 本来の意味での・・・「エモい」アルバム(2023.12.03)
コメント
先日、某ディスクユニオンで、アルバム(CD)を購入。
熱心に物色することのないハウス / テクノ棚にあったので、入手が少し遅れちゃった。
重篤な癌に冒された母親の命を延命させたドイツの脳神経外科医ピーター・ヴァイコツィに敬意を表した〈Vajkoczy〉。
敬愛するManu Chaoに手紙を書いたことからコラボが実現したという〈Estación Esperanza〉はペルーの反同性愛者嫌悪への抗議デモ(a Peruvian anti-homophobia protest)のシュプレヒコールに合わせて、「今何時ですか、私の心は?」(¿Qué horas Son, mi corazón?)と繰り返す。
全10曲・49分。見開き紙ジャケ仕様。
Róisín Murphy、Yeule、Nabihah Iqbalなど、2023年はニンジャ・チューンの当たり年なのかも?
投稿: sknys | 2023年11月28日 (火) 21時01分
>sknysさん
情報、ありがとうございました。
投稿: ゆういち | 2024年1月 5日 (金) 23時32分